表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/237

王都での暗雲(2)

 もちろん、これに腹を立てた貴族や王族が、38名に文句を言おうとした事も度々あった。

だが、この国で『二番目・三番目』に地位が高い、王子からの口止めもあり、言いたくても言えない状況。

 

 その上、この国の『最高地位』に立つ王でさえ、その話をはぐらかすばかりで、まともに対応して

 くれない。


 まるで、『庶民』の意見をないがしろにしてきた

 自分達への『自業自得』と言わんばかりに


 元から城に住んでいた人々は、全員がヤキモキしていた。

何の努力もせず、何の功績も上げていない、ただこの国に迷い込んだだけの子供達が、突然自分達と同じ地位になったのだから。

 (理不尽だ!!)と思うのは当然である。


 彼らが本当に、それ程の事を成し得て貴族になったのかは分からない。

偽・王家同様、何らかの『裏工作』で貴族や王族になった一族もいるだろう。

 38名の場合、『裏工作』というよりは、王子からの『慈悲』である。しかも、かなり寛大な慈悲。

その慈悲が、自分達には与えられない。それだけで、彼らを恨む理由になってしまう。


 嫉妬の目・懐疑の目を向けられても、仕方ない。しかし、彼ら全員、この世界では珍しい覚醒者で

 あるのは事実。

それだけでも、彼らが優遇されるのは納得できたのかもしれない。

 

 だが、引き取られた本人達が、『覚醒者らしからぬ態度・対応』であるが為、更に貴族や王族の苛

 立ちを悪化させている。

覚醒者は、能力を持たない人間達を守る。それが、『力を持つ者の義務』である。


 だが、彼らは民を守るどころか、一度も武器に触れた事すら無い様子。

一度彼らの武器を調べた、王都の武器職人達も、何故これほどまで装備が豪勢なのに、使って形跡が一つもないのか。


 それは、今まで38名を保護してきた村人や町人の『愚痴』が、決して覚醒者をひがんでいる

 ものではなかった事を暗示していた。

彼らは戦う義務があるにも関わらず、道中はまともに戦っていない。

 戦えたとしても、村民や町民任せで、自分達はただ傍観していただけ。


 そんな覚醒者は、一度も聞いた事はない。

ほぼ全ての覚醒者は、自らの宿命と使命を胸に、危険な状況でも武器を振るい、人々を守る。

 その姿には、貴族や王族でも頭が上がらない。

地位が高い人々は、覚醒者を何人も雇い、自分の財力をアピールする程。


 覚醒者の雇い賃は、一般的な使用人の3倍はある。

主人を守る仕事もこなしつつ、王都の周りで悪さをするモンスターを退治する、多忙な覚醒者も。

 しかし、38名は、そんな地位を鼻にかけ、当たり前な顔で贅沢三昧な日々。


 だからこうして、王子の見ていないところで、グチグチと文句を垂れるしかできない貴族や王族。

王子に話を聞かれていては、地位や財産を剥奪されるだけでは済まなくなるかもしれない。

 もうこの件で、何人かの貴族が城から追いやられ、何人かの王族がその地位を剥奪されている。

38名は、貴族や王族にとって『厄介者』でしかない。


 にも関わらず、王子は相変わらず、38名を大切にしている。

ろくに戦わない、ろくに仕事もしない38名を、野放しにしているのだ。

 この対応にも、貴族や王族の不満が積もりに積もる。




 お酒を飲みながら喋る貴族の愚痴は、いつまで経っても止まらない。

今までに感じた事のない屈辱と怒りで、貴族2人の顔は、真っ赤に燃え上がっていた。



「・・・・・だが、聞いてないか?」


「何をだ?」


「最近、王子が『魔術部屋』に籠りきりだそうだ。」


「『魔術部屋』・・・って・・・

 あの忌まわしい部屋か?! あんな場所に行く者がいるものか!!」


 ただでさえ苛立っている精神を逆撫でされたせいで、初老の貴族は大声を上げて、まだ若い貴族を

 怒鳴りつける。

怒られた若い貴族は、ただオロオロとしながらドアを見た。騒ぎを聞かれたら面倒だから。

 

 だが、外で待機している兵士達の目は、優雅に中庭を散歩しているクラスメイト数名に向けられて

 いた為、外の者に聞かれる事はなかった。


 外を散歩しているのは、学級委員長とその友人数名。

彼女達は、旧世界の頃とは比べものにならないくらい、派手な服装と装飾品を身に纏っていた。

 旧世界の頃は、髪を後ろに結んだだけで、派手なヘアゴムや髪留めを付ける事はなかった。

文房具もコンビニで売っているような地味な物ばかり。カバンにキーホルダーの一つも付けた事はなかった。


 そんな彼女が今では、煌びやかなドレスやアクセサリーを見に纏い、髪にまで宝石を散りばめ、目

 が痛くなるくらいの豪華絢爛な姿になってしまった。

過去の彼女とは、まるで別人である。


 彼女は、もう既に『学級委員長』としての役目も、地位も必要なくなったのだ。

その解放感と、王子からの『寛大なもてなし』により、色々と壊れてしまった。

 しかも周りの女子達は、そんな委員長の変化を、全く気にしていない様子。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ