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99・血脈

「・・・そこの4名よ、こちらへ来なさい。」


 ずっと話を聞いていた4名は、突然呼ばれてびっくりした。

だが、翠との会話で、そのリザードマンが決して怪しい存在ではない事は明確だった為、4人はスッと素早くリザードマンの元へ近づいた。


 そのリザードマンが、5人のなかで一番熱い視線を送っていたのは、やはり正当なる王家の末裔で

 あるグルオフ。

当たり前だ、リザードマンや太古の戦士達と、共に戦った仲間のリーダーの末裔。


 その上グルオフは、正真正銘、正当なる王家の末裔。

リザードマンの慕っていたリーダーと、似通っている箇所があるのだ。

 鋭いリザードマンの瞳からは涙が溢れ、今にも崩れ落ちそうなくらい、膝がガクガク震えている。


「あぁ・・・そっくりだ・・・あのお方と・・・・・


 我々を、『大切な仲間』だと・・・

 『大切な国の一員』と言って下さった、あのお方に・・・・・

 生き延びで下さり、本当にありがとうございます。」


 その言葉に、思わずグルオフも、ボロッと大粒の涙を溢した。

彼にとって、初めて言われた言葉だった。


 『生き伸びて下さり、本当にありがとうございます。』


 それは、今まで必死になって、懸命に生きようと争い続けたグルオフにとって、一番の褒め言葉。

そして、一番『聞きたかった言葉』であった。

 

 彼とリザードマンの涙を見ただけで、他の4人も号泣してしまう。

グルオフの事を一番近くで、4人の中で一番長く見ていたラーコでさえ、堪え切れずにグルオフを抱きしめた。


 何度も折れかけ、何度も弱音を吐きかけて堪え続けたグルオフ。

その心境を、決して口には出さなかった。出さないように堪え続けていた。

 だが、リザードマンから送られたその言葉は、グルオフの悲劇的な人生を全て肯定してくれる、優

 しい言葉だった。


 ラーコは、悔しくもあり、嬉しくもあった。

自分では支え切れなかった節に追い討ちをかけるようなものであるが、グルオフが笑顔で頷き続けるその姿に、感動していた。

 グルオフも、そんなラーコの心境に気づいたのか、ラーコの両腕をギュッと抱きしめる。


 感動的なシーンでもあるが、同時に5人は、抱かずにはいられなかった。

正当なる王家であるにも関わらず、グルオフがこんな目に遭っている事に、知らん顔をしながら王座に座る、偽・王家に対する怒りを。

 

 だがそれは、リザードマンも同じ様で、リザードマンが次に語るのは、自身についての事。


「私は、コエゼスタンスに所属していた。

 ・・・・・いや、コエゼスタンス創設に関わったモンスターである。」


「あ・・・貴方が?!」


 クレンは、目を丸くしてリザードマンを見る。

そんな彼を見て、リザードマンも何かを察した様子。

 恐らく、彼の『瞳の色』を見て、思い出したのだ。


「・・・あぁ・・・・・『アメニュ一族』も生きながらえていたのか・・・」


「そ、そうです・・・・・

 ほら、姉さん立って!」


 クレンは、腰に力が入らないラーコを引っ張り、リザードマンに瞳を見せた。


「そうか・・・・・君達も大変だったな・・・」


「ちなみに彼も、コエゼスタンスの一員の末裔です。」


「はっ、はい!! リータと申します!!

 えっと・・・祖先はドロップという名で・・・」


「ドロップ・・・・・


 ・・・あぁ、コエゼスタンスが、正式に国家の組織になった際に加わったメンバーだね。」


「??」


 リータは、少しだけ首を傾げた。


「私は国家制定戦争の際、命を落としてしまった。

 だが、私はこの世に残り続け、この世界の繁栄と平和を願い続けていた。

 その段階で、コエゼスタンスにドロップという名の『魔術師』が所属していた事も知ったのだ。」


「貴方は・・・一体どれくらいの期間、この世界に留まり続けていたんですか?」


 リータのその発言に、リザードマンはしばらく考え込んだ。

モンスターの中には、人よりも遥かに長生きの種族は多い。

 それをリータは知っていた為、リザードマンの思考がまとまるまで待ってあげた。


 しかし、どんなに過去を巡っても、もう年月の経過の感覚がなくなってしまう程、この地に残り続

 けていたリザードマン。

思い出せる筈もなく、曖昧な返答しかできない。


「さぁ・・・もう忘れてしまったよ。

 ただ、戦争が終結しても、私の心の中に、『わだかまり』があった。だからこの地に残り続

 けたのだよ。」


「『蟠り』・・・・・とは?」


 大泣き状態からようやく平常心を取り戻したグルオフが、立ち上がって再びリザードマンと目を合

 わせる。

すると、リザードマンは、『言いにくい表情』をしながらも、自身の胸に秘めていた『悪い予感』を話し始める。


「戦争中にも、国内で『派閥』があった。

 仕方のない事だ、まだ国として定まっていなければ、『支配者』や『権力』も曖昧だった。」


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