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97・ついに 話さなければいけない時が来た

 グルオフは覚えていたのだ、母が昔、王室に『リザードマンの鱗のお守り』が、丁寧に保管されて

 いた話を。

ガラスケースに入れられ、見るからに柔らかいクッションに座らせていた。


 そして、国の代表である王様でも、なかなか手に取れる物でなかった事も、グルオフの母は息子に

 教えていた。

それくらい、王家にとっては大切な物だったのだ。


 それが、今もまだ有るかは分からない、そもそもしっかり保存されているかすらも分からない。

偽・王家が、戦争の歴史を風化させたいのなら、そのお守りがどれだけありがたい物なのかも、理解していないのが自然である。


 だが、リザードマンの鱗のお守りが、何故王室で大切に保管されていたのか、その理由も覚えてい

 たグルオフ。

遠い記憶ではあるものの、グルオフは決して、家族との思い出を手放さなかった。


 どんなに小さくて、些細な記憶だとしても、グルオフにとっては、手放したくない『繋がり』

追放されていたグルオフの母が、追放される前から熱心に勉強をしていたおかげで、グルオフにも様々な話をする事ができたのだ。


「確か・・・・・

 その王室で保管されている鱗のお守りは、かつてこの国で起きた『戦争』の際、当時の国王に進呈

 された品だった・・・とか。」


 国の歴史に詳しいのはグルオフだけだった為、全員が首を傾げ、微妙な顔をする。

そんな4人に対し、グルオフは丁寧に、ゆっくりと話す。

 だが彼の話は、王家でしか伝えられていないような、極秘の話でもあった。


「まだ世界中に、『国の定義』がはっきり定まっていない時代、この国は他国の侵略に脅かされてい

 た時代があったそうです。

 だから当時の国王・・・・・つまり、僕の祖先は、この国を守る為、毎日のように戦い続けたんだ

 とか。

 戦いはかなり長い間続きましたが、モンスターの協力もあって、どうにか侵略を防ぎ、ようやく国

 として成立した。


 ・・・母の話では、どうやらその時に共闘してくれたモンスター達が、『コエゼスタンスの原型』

 だとか。」






「・・・・・ねぇ、クレン。ちょっと聞いていい?」


「何?」


 グルオフが話している最中だが、翠は、どうしても聞いておきたい事があり、クレンを小声で呼ん

 だ。


「あのさ、変な事を聞くようで悪いんだけどさ・・・」


「だから何??」


「・・・・・・・・・・あのさ・・・




 この国の名前ってさ




 『ジパング』


 で・・・合ってるよね??」


「・・・・・・・・・・はい?? 何を今更??」


「いやいや、ちょっと確認したかっただけ。」


「自分達の住んでいる国の名前が曖昧なんて・・・・・


 翠、ひょっとして具合でも悪い?!

 だから思考力が鈍って・・・?!!」


 この世界に転生したばかりの翠は、まだこの国の名前を知らなかった。

だが、地図や本で見る限りでは、一番出てくる名前が『ジパング』だった為、そう認識していた。

 だって、聞けるわけがなかった。「この国の名前って何?」なんて。

「この国の名前を知らなかった」と言えば、それで済む話なのかもしれないが、そんな事言ってしまえば、皆が混乱してしまう。


 普通、自分達が旅している国の名前は、覚えているのが当たり前だ。

翠が転生する前も、日本人が「此処って『日本』だよね?」なんて事を聞いてくる人はいなかった。

 でも、そろそろはっきりさせないと、翠の頭が混乱しそうだったのだ。

せめて国の名前だけでもはっきり覚えておかないと、この先の話についていけなくなる。


 この国の名前を確認するのは、購入した地図や、図書館の本で調べられた。

でも、実際に誰かから聞いたわけでもなかった為、翠はずっと不安だったのだ。

 例えるなら、ネットだけの情報では真偽が分からず、余計に不安になるのと同じ

やはり、どんな事柄であれ、『専門家』や『当事者』から聞いた話の方が、一番信頼できる。


 翠は、自分の心にずーっと居座っていたモヤモヤを、どうにかして和らげる為、思い切ってクレン

 に聞いたのだ。

だが、翠のその爆弾発言に、4人全員が驚愕して、慌てふためいてしまう。


「ミドリさん?! 具合が悪かったのならすぐ言ってください!!」


 あまりのパニックに、思わず翠の両肩をガッチリ掴むリータ。

彼が心配している気持ちは痛いくらい伝わっている翠だが、リータの力の強さに、翠も思わずあたふたしてしまう。


「ど・・・どうしよう、ラーコブ!! 此処でちょっと休んでもらう?!」


「いやいや! こんな場所だと治るものも治らないでしょ!!

 ここは一旦外に出て・・・・・」


 グルオフは、翠の側にあるベッドに彼女を寝かせようとするのだが、ラーコがそれを静止する。

確かに、ある程度埃を追い払ったとはいえ、まだ不衛生であるこの場所で寝ていたら、むしろ体調が悪化してしまう。


 だが、次の村がある場所までまだ距離がある為、4人はただただ混乱していた。

一方翠は、どうやって弁解しようか悩んでいた。

 『転生者』である事を打ち明けるべきか、嘘で誤魔化すべきか、はぐらかすべきか・・・




 そんな5人を救ってくれたのは、地下でずっと彼らを見守ってくれていた・・・・・






「『転生者 翠』よ、もうここで全てを打ち明ける時である。」


「っ?!!」「っ?!!」「っ?!!」「っ?!!」「っ?!!」


 5人が一斉にびっくりしたのは、『転生者』という言葉ではない。

そう、今まで一才声を発していなかった


 リザードマン 


が、ついに語り始めた。

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