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95・地面の下に隠されていたもの

 だが、今翠が見ている蛇『リザードマン』は、『体長1メートル以上』である。

『目』もだが、肌にびっしりと生えている鱗がウネウネと動いている様子は、かなり生々しい。

 実態がよく分からないにも関わらず、生きている様に見えるのは、何とも不思議な話である。


 翠にはもちろん、他の4人にも『霊感』はない。

そもそもこの世界に、『霊感』や『霊』の概念があるのかは分からない。

 だが、明らかに5人が見ているのは、『幽霊』そのもの。


 スルスルと森の奥へと向かっていくリザードマンに、5人は(誘い込まれているんじゃないか?)

 と思ったが、リザードマンが動きを止めた場所を見て、すぐ違和感を感じた全員。


「・・・・・此処・・・明らかにおかしいと思わない?」


「ミドリもそう思う?

 なんか、明らかに『手が加えられたような跡』がいくつも・・・・・




 ・・・ヘルハウンド??」


 2人が顔を見合わせている間に、ヘルハウンドはリザードマンの足元まで寄り、そのまま勢いよ

 く、地面を掘り始める。

いきなり無我夢中で穴を掘るヘルハウンドに、5人は思わず後ずさる。


 勢いよく舞い上がる土は、あっという間にヘルハウンドの後ろに溜まる。

だが、何故ヘルハウンドがいきなり穴を掘り出し始めたのか、5人にはさっぱり分からない。

 飼い主であるクレンは、止めようか否か、オロオロと迷っている様子。

クレンのヘルハウンドが、何の考えもなく土を掘っているようには見えない。


 ヘルハウンドの頭上にいるリザードマンも、ヘルハウンドの穴掘りを応援するような視線を送って

 いる。

翠も、4人も、リザードマンも、しばらくヘルハウンドの様子を見る事に。


 ・・・が、待つのが退屈になってしまった翠も一緒になって、自分の杖で地面をヅカヅカと突き始

 める。

地面は不思議なくらい簡単に砕け、どんどん下へと向かっていくヘルハウンドと翠。

 まるで『宝探し』の様だが、5人が見つけたものは、予想以上に大きいものだった。






 ガツンッ!!!


「ん??? なんか・・・突いた???」


 明らかに土の感覚とは違う、『硬い物』にぶつかった衝撃に、杖の振動が翠の両手を伝う。

『岩』よりもちょっと柔らかい感覚で、翠は恐る恐る、杖を地面から引っこ抜く。

 すると、杖で掘られた穴の向こうに、『不思議な模様』が見える。

クレンがライトで照らしてみると、穴の向こうに見えたのは『木の木目』


 クレンと翠は目を合わせ、彼女はもう一度掘り進める。

今度は『真下』ではなく、穴を広げるように掘り進める。

 既に翠の真っ白な服や、幾度も改造を施した杖は真っ茶色に染まり、彼女の額からは汗が染み出し

 ている。


 リータはそんな彼女の額を布で拭いながら、一緒になって両手で地面をかき集める。

深さ自体はそこまで深くないのだが、地面が風化しているせいで、地面が若干硬くなっている。

 だが明らかに、真下には何かある。

その何かは、意図的に隠されたのか、それとも長い年月のせいなのかは、まだ分からない。


 しばらく地面を掘り続けていると、焚き火の処理を終えたグルオフとラーコも合流して、4人で穴

 掘り、クレンが灯りを担当する。

そして、どれくらいの時間、地面を掘り進めたのかは分からないが、ついに地面の下に隠された存在が姿を見せる。


 それは、木製の『ドア』


 取手は掘っている段階で取れてしまったものの、隙間に杖を差し込めば、強引に開けられる。

鍵もかかっていたが、あまりにも風化が進んでいた為、ドアの金具は壊れてしまった。

 ドアの大きさは、人がやっと通れるくらいの大きさで、翠が照らした杖を穴の底で振り回しても、

 何の反応もない。 


 ラーコは近くにあった木をロープで結び、慎重にドアの先に向かって降りていく。

穴の底もそれほど深いわけではなく、地下への出入り口だった井戸の深さの半分くらい。

 だが、底に到着して見た光景に、思わず声を上げて驚くラーコ。


「な・・・・・なんて広い部屋なの・・・?!!」


 ラーコが大声を上げると、壁や天井に反響して、彼女の声がいつまでも地下に響き続ける。

ラーコに続いて隠し部屋に降り立った4人も、予想外の広さに唖然としていた。

 5人の目の前に広がっている光景は、5人が何度も利用した『宿』にそっくり。


 きちんとベッドがある上に、テーブルや椅子もまだ現存している。

ベッドの数が不思議なくらい多く、上に敷かれている布は、長い間放置されていた為、手に取るだけでポロポロ散ってしまう。


 かなり極秘な隠し部屋なのか、通気口すら見当たらない。

久しぶりに外界の空気を取り込んだその空間は、5人を『沢山の埃』で歓迎する。


 井戸の下よりもかなり空気が悪いその空間に、グルオフとラーコは一時撤退する。

その空間に数分居るだけで、口と鼻がダメになってしまいそうな程、5人が部屋に来た衝撃で舞い上がった埃と土煙が酷い。


 翠・クレン・リータは、とりあえず部屋の中の空気だけでもどうにかしようと、3人で空気を外へ

 流して、空気を回す。

そして、埃と土煙も、せっせと部屋の外へと追い出す。


 埃の波が外まで届くと、グルオフとラーコは、逃げるようにその場から離れる。 

その段階でも、もうグルオフは咳き込んでしまう。


「ケホッ!! ケホッ!!


 ゔゔん・・・・・

 こんな所に、どうしてこんな場所が・・・・・」


「さぁ・・・・・

 でも、何か『意図』があるのは確かな筈よ、グルオフ。」

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