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3戦目:純白パンツは悪魔の嘲笑②

 俺は椅子に座りながら頬をさすっていた。


「あー、痛かった。そんなに怒るなよ。ちょっとした事故だって」

「う、うるさい!」

「悪かったよ。真面目にスペル習得するから」

「……まったく。では、基本的なことから教えていくかの」

「お願いします!」

「まずはウィザードの基本かつ主要なスペル、エレメンタルじゃ」

「ああ、見たことあるな。俺のファイアボールだろ?」

「そう、エレメンタルの基本中の基本のスペルで、ウィザードと名乗る者に使えない者はいないじゃろうな」

「あー、はいはいそうですか」

「エレメンタルとは火や水といった自然の力、つまり元素を利用するスペルじゃ。元素によってスペルの効果はそれぞれ違った装いを見せるが、主にダメージを与えるスペルが中心じゃな。ウィザードのほとんどがこのエレメンタルスペルの使い手じゃ」

「ほとんどかよ。じゃあ、あとはどんなのがあるんだ?」

「呪術と時空じゃ」

「あー、呪術ね。わたくしの専売特許のやつですね」


 俺は自慢気にニヤニヤと笑って見せる。


「あれ? もう一つの時空って……」

「おお、そうじゃ。わたしの専売特許のやつじゃったな」


 ルルもからかうようにニヤニヤ笑って見せる。


「わかったわかった。それで?」

「なんじゃ。ツマラン奴じゃの。時空というのはわたしの師匠のような限られたウィザードしか習得しとらんスペルじゃな。その名の通り時間と空間を操るスペルじゃが、まだまだ未知なスペルじゃ。エレメンタルスペルとは違って、補助的な役割が多いのも特徴の一つじゃな」

「そして大トリを飾るのは呪術スペルという訳か」

「そう、誰も知らん良く分からんスペルじゃ」

「なんだその説明は!」

「仕方ないじゃろう。誰一人として使う者はおろか見た者すらいないスペルなんじゃから。一部の文献には、他を呪い殺し、この世ならざるモノを喚び出す禁忌の呪法とある」

「ふーん、大体あってそうだな」

「確かにそうじゃな」

「ウィザードのスペルは大体そんなとこか?」

「そうじゃ。では、実際に習得していくかの」

「お、ルルが先生ってことは時空スペルを伝授してくれるってことか?」

「時空スペルを? 阿呆。お前さんのような素人が扱えるか。お前さんにはエレメンタルスペルをみっちり叩き込んでやろう」


 そう言ってドサッと俺の目の前に置かれたのは大量の本だった。


「ゲホゲホッ! いきなりなんだよ! まさかコレ、全部読めって訳か?」

「フッ、やはり筋が良いのぉ」

「いや、褒めても無駄だからな」

「良し、ではさっさと読め。血ヘドを吐いても目を離すでない」

「急に手のひら返したな! 分かったよ。読むけど、そんなんで習得出来るのか?」

「出来る訳ないじゃろ」

「えー!」

「当たり前じゃ。使ってみて初めて習得出来るのじゃ。じゃが、使うためにはどんなスペルがあるか知識がなければ使えんじゃろ」

「なんでそこだけリアルなんだよ。ご都合主義にしといてくれよ」

「何を訳の分からんことを。読み終えるまでメシ抜きじゃ」

「あんた、鬼か!」

「フッ、そんな無駄口叩いてるヒマがあれば読み進めた方が賢明じゃぞ」

「くっそー! うぉぉおお!!」


 俺は目の前の本にかじりつくようにページをめくりまくる。

 そんな俺の様子にルルは笑いながら部屋から出ていってしまった。

 その後、ダイニングから女の子二人の楽しげな声が聞こえてくる。

 そして、ふんわりと美味しそうな良い香りが鼻をくすぐる。


「負けるかぁぁぁあああ!!」


 俺はひたすらページをめくる。

 目を走らせるごとに文字がぼんやりと光り、魂に染み付いていくようだった。

 そうしてどれくらいの時間が経っただろうか。

 もう幾本目かのロウソクが消えかけようとする頃、暗い部屋の扉が軋んだ音をたてる。


「あ、あの、トウマさん……」


 その優しい声は紛れもなくセリアのものだった。

 俺は勢い良く振り返ると、彼女の手にするトレーが目に飛び込む。


「サンドイッチ作ってきました。ルルさんにはナイショですよ」


 するとセリアは人差し指を立ててそれを口元に当てる。

 

 ――ズキューン。


 今まさに相応しい効果音はこれしかないだろう。

 俺のハートは間違いなくあの人差し指の銃口に撃ち抜かれた。


「セリア! ありがとう!」


 俺はトレーを受け取ると一気にサンドイッチにかぶりつく。

 ハードなパンの中にふわふわのタマゴとハム、そしてチーズがたっぷり入っている。


「やっぱりセリアの料理は最高だな。これでまた頑張れる!」

「そんな……。頑張ってるトウマさんも、その……カッコイイです」


 消え入るような声でそう言うと、セリアは恥ずかしそうに部屋を後にした。

 

 ――カッコイイです。


 俺はその言葉を深く心に刻み込んだ。

 刻み込んだそばから早速再生する。


 ――カッコイイです。

 

 何という素晴らしい言葉だろう。

 身体の底から力が込み上げてくる。


「よっしゃ! もう一頑張りだ!」


 そして俺は次のロウソクに火を灯すのだった。


『マジック&ウェポン』

~決闘の掟~

ウィザードのスペル3種

「エレメンタル」:火や水の元素を魔力で増幅し、利用するスペル。

         ほとんどのウィザードが使用し、主にダメージを与える効果を持つ。


「時空」:時間や空間といった概念を魔力で操作するスペル。

     限られたウィザードしか習得出来ず、主に「相対」や補助的な効果を持つ。


「呪術」:古に封じられた禁忌の呪法。

     術者の身を滅ぼすとされ、習得しているウィザードは現存しない。

     主に「召喚」や妨害的な効果を持つ

     

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