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1戦目:童貞のまま死ねるか②

 で、今に至る訳だ。

 女の子を助けるために決闘を挑んだ訳だけども。

 本当にやれるのか?

 特別な魔法とやらをもらったけど、果たして信用して良いのやら。

 まぁ、どうせ一回死んだ身だ。

 やるだけやってやるさ!


「さぁ、かかって来い! 変態野郎!」

「ガキが! ナメるんじゃねぇ! 決闘開始だ!」


 その瞬間、目の前にパネルのようなものが4枚並ぶ。


 ――は?


 混乱する俺。

 ぱっと敵を見ると、おっさんの前にも4枚のパネルのようなものが浮いている。


「ガキだからって容赦しねぇ! 俺から行くぞ!」


 そして気合を溜めるように構えるおっさん。


「まずはレベルアップ! レベル1! 100G獲得!」


 何を言い始めたんだ、あのおっさんは。


「俺はシミターを装備する!」


 そう言っておっさんが腰に下げていた反りのある剣を抜いた。

 すると、おっさんの目の前にあったパネルの1枚が飛び出し、くるりとこちらに反転する。


 ===============

 レベル:1

 名前:【シミター】

 種類:アイテム 剣

 コスト:100G

 効果:・耐久2

    ・剣技ダメージ+100

 ===============


 パネルにはそう書かれていた。


「テメェの番だ!」


 ――え?


 ぽかんとだらしなく口を開ける俺。

 今、一体何が起こっているの?

 思考が追いつかず呆然と立ち尽くしてしまっていた。


 ――誰かこの状況を説明して!


 そんな心の声が届いたのか、突然背後から可愛らしい声がした。


「あの……決闘をご存知ない、ですか?」


 バッと振り向く俺。

 そこには、たわわな胸をぐっと強調するようにもじもじと手を前にした素晴らしく可愛い女の子が立っていた。

 学校一カワイイ真奈美ちゃんなんか目じゃないくらいの可憐な少女。そして、完璧なプロポーション。


 ――君は女神ですか?


 だが、ハッと我に返った俺はだらしなく開けた口を急いで塞ぐ。


「ええ、実は……。恥ずかしながら遠い異国から来たもので、この国のことを良く知らず……。ただ、目の前でこんなに美しい方が襲われているのを見たら居ても立ってもいられず……」


 まぁ、空中だったから居ることも立つことも当然出来ないのだけど。


「そ、そんな、う、美しいだなんて……」


 さらにもじもじと豊満な胸を揺らす少女。


「そんな謙遜することないです! あなたの困ってる姿を見て、助けない男などいやしない!」

「う、うう……」


 そんなうめき声を出しながら、少女は真っ赤になって顔を俯かせる。


 なんて!

 なんてなんて!

 なんて理想的な女性なんだ!!


 こんなマンガみたいな女性が天然で実在するなんて!

 テンプレであざといと思うだろう?

 だが、天然で純真無垢としか思えないとんでもなくカワイイ女性が目の前でそんなことやってみろ。


 ――脳を焼かれるね。


 もう全てがどうでも良い。

 このまま二人で教会に駆け込んで式を挙げたい。

 子供は何人くらい欲しいかなぁ。

 子供……?

 つまり、それって……?

 再びだらしなく口が開いていくのが自分でも良く分かった。


「おーい、何してんだー? 早くしろーい」


 おっさんの汚い声に現実へ引き戻される。

 そうだな。

 まずはあいつを倒してから教会で挙式だ。


「あの、お嬢さん。そしたら、決闘の仕方を教えてもらって良いかな?」

「あ、ハイ!」


 少女は慌てて顔を上げると丁寧にお辞儀をする。


「私セリアって言います。よろしくお願いします!」

「俺はキサラギトウマ。トウマで良いよ」

「分かりました、トウマさん。それではまずは基本的なところから……」


 そう言ってコホンと一つ咳払いするとセリアが説明を始める。


「決闘、つまり『マジック&ウェポン』はお互いのスキルやスペルを駆使し、相手を倒す伝統ある決闘方法です。ただし、好き放題にスキルやスペルを使える訳ではありません。あくまで決闘はお互いにとって平等なもの。ですので、そのための様々な条件があります。その条件というのを先程のあの人の行動を振り返りながらご説明します」


 セリアがおっさんを指差す。

 先程の行動か。


「確か、なんか構えてレベルアップって叫んでたよな?」

「そうです! まずターンの一番最初にレベルアップをします! レベルは非常に重要な概念です。全てのスキルやスペル、アイテムを使用するためにはレベルが必要になります。例えば、あなたのレベルが1であればレベル1のスキル、スペル、アイテムを1回使用出来ます。レベルが2に上がれば、レベル2のそれらを1回使用出来ますが、レベル1のものを2回使用することも出来るのです!」

「なるほど。つまり使用するスキルやらスペルやらのレベルの合算が、自分のレベルを超えなければ良いってことだな」

「すごいです! その通りです! そして、次の自分のターンになったら、また自分のレベル分だけスキルやスペルを使えるんです」

「そうして毎ターン、レベル1から始まってレベルアップしていくってことは徐々に高いレベルのものが使えたり、低いレベルのものをたくさん使えたりするようになるってことだな」

「そうです! では、次にGです」

「ああ、確かレベルアップと叫んだあとに、100G獲得とか言ってたな」

「Gとはこの国の通貨です。ターンの最初のレベルアップと同時に、Gも100Gずつ獲得出来ます」

「お金か。そんなの一体何に使うんだ?」

「Gはアイテムを使う時に必要になります! アイテムはレベルとGを消費して使うことが出来るのです。Gを払ってアイテムを購入するようなイメージですね。ただし、Gはレベルと違って消費したら戻ってきません」

「例えば、レベル1の時にレベル1のアイテムを100G消費して使ったら、次のターンでレベル2になって100G獲得しても、スキルとスペルはレベル2まで使えるが、アイテムはレベル2までで、かつ100Gまでのものしか使えないということか」

「飲み込みが早くてビックリです……」

「脱衣麻雀やってたおかげかな?」

「だついまーじゃん?」

「い、いや何でもない! レベルとGの概念は分かった」

「は、はい。それでは復習を兼ねてあの人の行動を順を追って見てみましょう」

「まずはレベルアップでレベル1になった。と同時に100Gを獲得」

「そして大事なのは次ですね」

「奴はシミターを使った。あのパネルには確か……」


 ===============

 レベル:1

 名前:【シミター】

 種類:アイテム 剣

 コスト:100G

 効果:・耐久2

    ・剣技ダメージ+100

 ===============


「つまり、レベル1のアイテムであるシミターを100G消費して使用したと言うことか! そして何も出来ることがなくなったから自分のターンを終了した」

「大正解です! ちなみにアイテムは1ターンに1回しか使用出来ませんから注意して下さい」

「分かった。覚えておく。ところで、耐久2ってのと剣技ダメージ+100ってのは何なんだ? まぁ、大体察しはつくけど」

「耐久2というのは、そのアイテムの効果を2回発動したら破壊するという意味です。剣技ダメージ+は剣技スキルを使用した時にそのスキルのダメージに数値分プラスするということです」

「おっけー! 想像通りだ。それじゃあ、そろそろ俺のターンかな!」

「ちょっと待ってください。あともう少しだけ良いですか。あの頭上の赤いバーが見えますか?」


 セリアが指差すおっさんの頭上には、確かに赤い横長のバーが浮かんでいる。

 そして、そこには1,500という数字が書かれていた。


「あれが相手のHPです。あれを0にすればあなたの勝ちです。逆に、ほら」


 今度は俺の頭上を指差す。

 俺は真上を見上げると確かに奴と同じ1,500と書かれた赤いバーが浮かんでいた。


「おお、いつの間にか俺にも」

「当然、これが0にされてしまえばあなたの負けです。次に、あなたが先程パネルと言っていたものですが」

「ああ、最初に4枚ずつお互いの前にあったコレか。配牌みたいなもんだろ? ランダムに配られたコレを使って勝負していく」

「そうです! ……はいぱいっていうのはちょっと良く分かりませんが。これはストックと言います。最初はお互い4枚のストックから始まります。そして、最大で5枚のストックまで持つことが出来ます」

「ストックってのか。なるほど」

「そして、最後にクラスについてです」

「クラス?」

「そう、もう一度あの赤いバーを見てください」


 セリアが再びおっさんの頭上を指差す。


「あのバーの下に何か書いてありませんか?」

「下? ああ、本当だ! ええと、シーフって書いてあるな」

「それがクラスです! 皆、何かしらのクラスとして戦っています。レベル1から5まではノービスクラスと呼ばれる基本的なクラスで、シーフもその一つです。他には、ファイター、ウィザード、プリーストなどがあって、それぞれに特徴があります」

「へー、どんな特徴があるんだ?」

「そうですね、では相手のクラスの詳細を知りたいと念じてみてください」

「念じる? うぬぬ。シーフとは一体どんなクラスだ! 誰か教えろ! こんな感じ?」


 その瞬間、おっさんの横に別のパネルが浮かびだす。

 そこにはこう書かれていた。


 ===================================

 クラス:【シーフ】

 レベル:1~5

 装備:剣、短剣、宝物

 アビリティ:あなたのターンにスキルを3回以上使用した時、100G獲得する。

       このアビリティは1ターンに1回だけ使用出来る。

 ===================================


「おお、また新たな情報が……。上から解説をお願いします」

「分かりました! シーフはクラス名ですね。その下のレベル1~5というのは使用出来るスキル、スペル、アイテムのレベル制限です。ノービスクラスは全てレベル5までのものしか使用出来ません」

「マジか! レベルも5で止まるのか?」

「いえ、レベルはそれ以上も上がり続けます。ただ、上位のスキルなどを使う場合は上位クラスにクラスチェンジする必要があるのですが……。それはまた別の機会に」

「とりあえずはノービスクラスってので戦うって訳だな。その次は?」

「次は、剣、短剣、宝物とあるのは、そのクラスが装備出来るアイテムになります。アイテムの種類によってもそれぞれ特徴があります」

「それも何となく想像出来る。弓と剣じゃ全然違うだろうからな」

「そういうことです! 最後は長ったらしい文章が書いてありますが、これはアビリティと呼ばれるものです」

「クラスによってそれぞれ違うアビリティを持ってるってことだな」

「さすがです! シーフの場合は条件を満たすとGを獲得出来るアビリティですね」

「相手のクラスを良く把握しとかなきゃならないな。ところで、俺のクラスは?」


 俺は頭上を見上げる。

 そこにはウィザードとあった。


「お! 俺ってウィザードなの!? うぬぬ。ウィザードとは何ぞや! 教えろ!」


 すると今度は俺の目の前にパネルのようなものが現れる。


 =========================================

 クラス:【ウィザード】

 レベル:1~5

 装備:ロッド、本

 アビリティ:あなたのターンにスペルを3回以上唱えた時、対象一つに200のダメージを与える。

       このアビリティは1ターンに1度だけ使用できる。

 =========================================


「スペルを3回唱えるとダメージか。なかなか好戦的なアビリティだな」

「では、いよいよあなたのターンを開始してみましょう!」

「よし! じゃあ、早速! レベルアップ!」


 その瞬間、俺の体の周りからオーラのようなものが噴き上がる。

 なんだか力が湧き上がってくるようだった。


「まずはレベル1、100G獲得! さて、お次は……」

「次はリフィルしてください!」

「リ、リフィル? なんかまた新しい言葉が出てきたな」

「リフィルとはストックを補充することです。毎ターン、レベルアップの後に1枚のストックをリフィル出来ます。ただし、先行の1ターン目にはリフィル出来ないのと、ストックが5枚を超えるリフィルは出来ませんのでお気をつけください」

「ストックの補充ね。じゃあ、今俺のストックは初期の4枚だから5枚目のリフィルは出来る訳だ。じゃあ、リフィル!」


 すると、俺の目の前にパネルが1枚新たに浮かび上がり、全部で5枚のパネルが並んでいた。


「さて、この5枚から今使えるのはレベル1のもの1枚だな。よし、俺はこいつを唱える!」


 そう言って俺は1枚のストックに触れる。

 その瞬間、それは勢い良く飛び出し反転する。


 =================

 レベル:1

 名前:【ファイアボール】

 種類:エレメンタルスペル 即時

 効果:対象に100のダメージを与える。

 =================


「喰らえ! ファイアボール!」


 直後、俺の手に火球が燃え盛る。

 分かってはいたが、目の前で本当に起こっているのを見ると正直驚きを隠せない。

 俺にこんなことが出来たのか。

 とてつもないワクワク感が胸の内からこみ上げる。


「いっけー!!」


 勢い良く手を前に突き出す俺。

 火球が真っ直ぐにおっさんに向かい放たれる。


「うぎゃあああ!!」


 直撃を受け悶え苦しむおっさん。


 ========

 【悪漢】

 HP:1,500→1,400

 ========


「はぁはぁ。やりやがったな!」

「よし、これで俺のターン終了……」

「ちょっと待ってください!」


 またまたセリアが俺を制止する。


「なんだ? まだ何かあるのか?」

「ええ、実はリフィル出来るのはターンの最初だけではないんです」

「と言うと?」

「ストックを見てください」

「ん? あれ?」


 見ると俺の目の前には5枚のストックが並んでいた。


「さっき5枚のストックからファイアボールを唱えたから、ストックは4枚になってるはずじゃあ?」

「そう、リフィルはスキルやスペルを唱えた時にも出来るのです!」

「だったらストックは永遠に減らなくないか?」

「そこがミソですね。あくまでリフィル出来るのはスキルとスペルを唱えた時で、アイテムを使用した場合はリフィル出来ません」

「あ、だからあのおっさんのストックは初期の4枚からシミターを使って3枚のままなのか」

「そうです! だからストックのことは気にせず決闘らしくガンガン殴り合ってください!」

「とりあえず基本的な流れは以上かな? よし! 今度こそ俺のターンは終了だ!」


 俺はビシッとおっさんを指差す。


『マジック&ウェポン』

~決闘の掟~

①決闘者は互いにスキル、スペル、アイテムを駆使し、相手のHPを0にした決闘者が勝者となる。

②決闘者はアビリティというクラス固有の能力を使用することが出来る。

③決闘者は毎ターンの開始時に、レベルが1アップし、どこからともなく100Gが支給される。

④決闘者は毎ターンの開始時にストックを1枚リフィルする(先手の1ターン目は除く)。

⑤ストックは6枚以上保有出来ない。

⑥決闘者はスキル、スペル、アイテムを使用する際、それぞれのレベルの累計が、使用者のレベルを超えて使用することは出来ない。

⑦スキル、スペルを使用した場合、ストックを1枚リフィルする。

⑧アイテムは1ターンに1回のみストックから使用出来る。

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