社交界での噂
「出来損ないの王子妃候補である」
「一つも笑わない人形のような令嬢である」
「自分の意思を持たぬお人形さん」
「言われたことしか出来ぬ令嬢」
「王子妃の座に執着をしている」
「幼少の頃から教育されてもあの程度」
「殿下に固執されてみっともない」
「男性には人気がおありなのにね…」
「お顔と身分だけはよろしいですもの」
「ご自分から婚約したいと父親に泣きついたそうよ」
「まぁ、お里が知れますわね…」
陰口が叩かれていた
表向きは淑女の鑑と言われているのに…
「知らなかった…」
愕然とするクロヴィス
「なぜ私は知らないんだ…?私の周りは皆ミレイユを褒めるのに」
「それは娘の本質を知っていただけているからです。パーティーへ行く時は皆が本当の娘を知っているわけではありません、悪い噂が先行するのです、面白おかしく尾鰭が付きますからね」
ミレイユの父であるフランク侯爵が答えた
「そんな、バカな…私はどうすればいい?」
「娘と婚約を解消していただけませんか?貴方が他の令嬢に現を抜かしている間に、隙を狙われたのですよ」
お茶を一口飲む侯爵
「現を抜かしてなどいない、私が昔から好きなのはミレイユなんだっ!」
「貴方以外の人はそれを知りませんし、娘でさえそんな事知りませんよ。大勢の前で娘をバカにしたような行動を取り、更に娘の心を傷つけておりますよね?そしてかの令嬢達はその後、殿下がリップサービスで言った婚約破棄について本気にしていたと、供述しております…侯爵家の令嬢に対する態度ではないと令嬢達の親からは謝罪を受けました、貴方の事は婚約詐欺と噂になっております」
「…それはまずいな」
「そうでしょうか?ご自身の行いを一度見直して、娘との婚約を解消してくださいますか?」
にこりと微笑む侯爵
「一度とは何だ?」
「貴方が娘の悪い噂を全て払拭させるのです、その後まだ娘の事が気になるのであれば娘に会いに来てください。その後に娘が同意すれば婚約しなおせば良いでしょう?」
クロヴィスに提案をする侯爵
「その間に他の男がミレイユを攫ったらどうするんだ!」
「それは貴方との縁が無かったということ。貴方が蒔いた種ですよ?あの子は傷ついています。身も心も…そして妻のいる領地に帰りたいと願っています。親としては叶えてやりたい。あの子の側にルイがいなかったら…心は壊れていたでしょう」
侯爵がクロヴィスに頭を下げる
「学園はどうするんだ?」
「休学でも退学でも、あの子の成績は上位です。上の学年に行かなくても全く問題はありませんよ」
「噂の払拭は今すぐやるよ、だから解消と言うのは勘弁してくれないか?頼む、この通りだ!」
立ち上がり深々と頭を下げるクロヴィスに侯爵は
「それでは娘が自由に過ごせません、妻が領地にいますので、変な男には捕まりませんよ、きっと」