自由になりたい
「なんの話です?」
眉間に皺を寄せるミレイユは苛立ちが隠せなくなる
「ケイティこそ、たまたまそこにいた、使えそうな女の子だと思った」
「理解できませんわね…」
「ミレイユが私の事に興味を持たないから、利用させてもらっただけだよ」
「なんという事を…」
「おまえがあそこで簡単に身を引くだなんて思うか?私とおまえは理想のカップルと呼ばれているんだぞ?」
「…えぇ」
「…ならば関係はこのままだ」
ソファに戻り腰掛ける
「そう言うわけにはまいりません、ケイティ様は殿下の事をお好きなんですのよ?」
「あのな…いちいちそんな事を言っていたら国中の女と結婚せねばならんではないか!」
理解が追いつかない…
顔に出たのだろう、クロヴィスは
「…私はあの女に騙されたんだ」
「殿下ともあろうお方が?」
少しだけ話を聞いてもいいと思った
「おまえに少しでも嫉妬させたかったからあの女の話に乗ったんだよ…」
「嫉妬、ですか…」
ぽかんとするミレイユ
「私が令嬢に囲まれていても何一つ文句も言わない」
「殿下は人気がございますもの」
「おまえは私のフィアンセだ、文句をつける権利があるだろう?」
「殿下は令嬢に囲まれて楽しそうでしたもの、文句など言えません」
「おまえに嫌と言われたら、相手にせん」
「お話は大事な社交ですわよ」
「おまえ、義弟と仲良すぎないか?」
「ルイ、とですか?」
「あぁ…」
「家族です」
「血は繋がってないだろう?」
「親戚です」
「あいつも男だろう?」
「義弟です」
「気に食わない!」
「はぁ、そう言われましても…」
「いつも一緒に行動してるよな?」
「一人で街に散策など行けませんもの。学園にも一緒に行った方が、邸のものに迷惑が掛かりませんし…」
「これからは毎朝迎えに行く」
「結構です!殿下に朝から毎日来られると邸のものに仕事が増えます」
「…そんなに私と過ごすのが嫌なのか?」
「嫌というか…日々の生活で一杯ですもの…」
「茶に誘っても来ないし、最近はパーティー以外で顔も合わせていない、近頃ではまともに話も出来ていないんだぞ?」
「王子妃の教育でスケジュールがいっぱいですもの。あれはダメこれはダメ、もうどうすれば良いのか分からないのです」
頭を左右に振るミレイユ
「教師と周りが悪い…おまえに期待を持ちすぎているんだ、こんな事を言ってはなんだが、兄上のフィアンセはそこまで期待されていない…」
「わたくしの代わりに、殿下の事を愛してくださり教育を喜んで受けでくださる令嬢は山ほどおられますわ…」
「いないよ」
「わたくしを自由にさせてくれたら王都に戻って来ませんし、殿下とも本日をもって会う事も致しませんから…」
「そんなに辛いのか…?」
「ケイティ様は…あのような場所でしたが、わたくしに真っ向に伝えてくださりました、あの方でしたらきっと殿下を支えてくださいます。肝が据わっていますもの」
「勝手に決めるな…」
はぁっとため息を吐き頭をくしゃっとさせるクロヴィス