エミリア
「うまく抜け出せましたね」
にこりと微笑むエミリア
「ありがとうございます、エミリア王女殿下」
頭を下げるミレイユ
「ミレイユ様私のことは気軽にエミリーと呼んで下さい」
「いいえ、そう言うわけには、」
「貴女とお話がしたかったの、気軽にお願いね」
王女らしく気高い雰囲気のエミリア
「それでは、エミリー様とお呼びしてよろしいですか?」
「構いません」
微笑むエミリアの顔は美しい
「わたくしのことは呼び捨てでお呼びください」
「分かったわ、ミレイユ、クロヴィスの事で嫌な思いをさせてしまい申し訳ございません」
エミリアがミレイユに頭を下げる
「およし下さい、エミリー様わたくしに頭を下げるなんて、いけません」
「恐ろしかったでしょう?」
「恐ろしくなかったと言えば、嘘になります。わたくしがきちんとクロヴィス殿下と向き合っていればこんな事にはならなかった…」
「それは今だから言えるのでしょう?」
「…はい」
「昔話をしても良くって?」
「はい、勿論です」
「10年ほど前だったかしら?クロヴィスが両陛下と我が東の国へ来たことがあってね、母上の戴冠の時でした」
「はい」
「歳が近かったので、私が城内を案内して差し上げましたの、その時に庭でね白いバラが咲いていました」
「はい」
「クロヴィスがそのバラを見て言ったのよ、このバラはまるで私の婚約者のように気高いって笑ったの、その顔がすごく優しい顔をしていて、好感を持ったの」
「そんな事が…」
「私は白バラには程遠い、きつい性格ですから、あんな優しい顔をさせるような貴女に興味が湧いたの」
「…はい」
「この国の社交界は噂ばかりで嫌になったわ、本心を聞きたいのに噂話ばかり…」
「…はい」
「クロヴィスも好感を持っていたのに本当にクズで…貴女のことを好きなくせに蔑ろにして」
「わたくしも悪いですから」
「それはそうだけど、私の思い出を返して欲しいくらいに、ムカついてね…初対面だなんて、あの鳥頭……」
「えっ?」
「私もどうかと思うけど…クロヴィスの事が気になるのよね、クズなのに」
「ふふっ」
「クズでしょう?」
「不敬罪です、ふふっ」
「あのクズを更生させて見せるから、私に任せてくれない?」
「わたくしの許可なんて、」
「本気よ?良い?」
「クロヴィス殿下は…エミリー様の様なしっかりした方に手綱を取られた方が良いとかと思います」
「あら!言うじゃない!」
「わたくしには出来ませんもの、良くも悪くも幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもなくて…こんなことを言うのも烏滸がましいですけど…クロヴィス殿下の事をどうかよろしくお願いします」
頭を深く深く下げるミレイユ
「はい、お任せください、クズとバカは放っておいて私達は仲良くしない?」
「はい、よろしくお願いします」
にこりと微笑むミレイユ
「ミレイユ、笑っている方が良いわよ、さぁお化粧直しをしましょう」
その頃バルコニーにいるクロヴィスとレナードの姿を見て、ルイは回れ右をした
…なんで二人だけなんだ?ミレイユとエミリア王女殿下はどこに行ったんだよ…
冷やしたタオルを取りに行き戻ってきたら、二人が睨み合っていた。
「ルイ、お前こっちに来い」
「…はい、義兄上」
空気が重い…
「…クロヴィス、お前は死にたいのか?」
「なんの話だ?」
「俺の婚約者に手を出そうとしたよな?」
「…あぁ」
「悪いがミレイユはもう俺のだ、お前の出番はもうない」
「…みたいだな」
力なく答えるクロヴィス
「俺はもうすぐ臣下に降りミレイユと公爵を名乗ることになる」
「そうか」
「国同士今まで仲良くやってきた、これからもそうしなければならん」
「あぁ、そうだな…」
「ミレイユの事は俺に任せてくれ」
「不幸にでもしたら、お前の事を殺すぞ」
「それはないから安心してくれ、お前も頑張れよ…」
「お前に言われると腹が立つ」
ハラハラと見守るルイ
「義兄上そろそろ僕会場に戻ろうかなぁ…」
「ルイには何かあった時に仲裁をしてもらわなきゃならん」
「できませんよ…王子同士の仲裁なんて」
「なぁ、ルイは私の事を義兄と呼んだことなんてなかったよな?」
クロヴィスがルイを見る
「…そうでしたっけ?」
惚けるルイ
「私の事を認めてなかったんだろうな…」
「…はい。あっ!」
気まずい表情のルイにまた重い空気になる…
「仕方がないか…私はルイにもミレイユにも信頼なんてなかっただろうしな、悪かったな」
「いえ、僕の方こそ頑なな態度をとっていました、申し訳ございませんでした」
臣下らしくお辞儀するルイを見て
「レナードに言われたからではないけど…頑張るよ、皆の信頼を今度こそ取り戻せる様に…エミリアと共に」
「はい」




