別々の道
涙が止まらないミレイユ
「可哀想にエミリアに虐められて」
レナードがミレイユの肩を抱く
「違うの…そうじゃなくて」
言い淀むミレイユ
「レナード、甘やかすなって言ってるでしょ?」
エミリアが目を細めてレナードを見る
「ミレイユの可愛い目が腫れたらどうするんだ!ルイ冷やしたタオルをもってきてくれ」
「はい、はい…」
レナードに言われた通りに会場へ戻るルイ
「ミレイユ様、このクズに言うことあったら今のうちに言っておきなさいよ?」
「…はい」
ふぅっと呼吸を整えてレナードの手をギュッと繋ぐ。自分の口でちゃんと言わなくては…
「思いっきり言いなさいよ?スッキリするから」
にこっと笑いかけられた
「幼い頃から一緒に学んで、遊んで…婚約者になって、頑張ってきました。貴方が令嬢に囲まれている頃、わたくしは教師に体罰を受けていた、学園で無視されていた、パーティーに出れば悪口ばかり言われていた。貴方は何も知らなかったとは言え、何年もバカみたいに耐えて…家の為だなんて立派なことを言ったけど…わたくしの貴族としての矜恃が邪魔した。仲のいい婚約者ではなかったけど…リップサービスで婚約破棄なんて…そんなことを言われる筋合いはありません!」
クロヴィスを見る
「悪かった、反省している」
「わたくしは…初めて好きになった人がレナード様です。もう過去は振り返りません、クロヴィス様もお願いだから前を向いてください…」
「ミレイユが私を見捨てるなんてな…」
「クロヴィス様にはエミリア王女殿下と言う素晴らしい方がおられます、同じことを繰り返さないで」
「エミリアにも悪いことをした」
「私は大丈夫よ、クズを更生させて好みの男に仕上げるから…任せなさい」
「頼もしいな」
「うちの国は女が強いのよ、知っているでしょう?」
力なく笑うクロヴィス
「自分の気持ちを押し付けるのは愛情とは言えないのよ、相手の気持ちを尊重しないと」
ハッと気付かされる言葉だった…
「昔からレナードはミレイユの事を好きだった。私より先にミレイユに婚約を申し込んだのはレナードだった、だから奪うようにミレイユを婚約者にした。それで安心したんだろうな…レナードが仮の婚約者まで作っていたと聞いてまだミレイユを諦めていないのかと呆れたよ」
「仲がいいと言う話は一切聞かなかったから、まだチャンスがあると思った」
レナードがクロヴィスに言う
「私はミレイユの事は好きだったけど、成長しきれなかったんだろうな…ミレイユが城にいるだけで安心していた。一番危険な場所だったのに…分かっていなかった」
「好きだったって今言ったわよ?」
エミリアに言われてハッとする…
「言ったか?」
「えぇ」
「幼い時から一緒にいたから…ミレイユに執着していたんだ、それは自分でも分かる」
「クロヴィス様の事は、幼馴染として嫌いにはなれないけど、一緒にはいられない…もう道は分かれてしまったの」
「そうだな…」
「言い方は悪いけど、クロヴィスはミレイユ様の事をお気に入りの玩具のように思っていて、取られちゃったから取り返したくなった、違う?」
「レナードに取られたのが悔しかったのかもな…」
「粘着質でストーカーな男より、呆れるほどクズだけど貴方の方が可愛くて好みよ?」
「失礼な女だなっ!」
レナード
「クズ…か」
クロヴィスが肩を落とす
「さぁミレイユ様、涙はおさまった?私と一緒に別室に行きましょうか?お顔を直してきましょう」
ミレイユに近寄り手を差し出す
「こんな失礼な女にミレイユをあずけられるかっ!」
グイッとミレイユの肩を強く抱くレナード
「ううん、エミリア様と行きます、レナード様、あとでね」
胸をぐいぐいと押されて体を離された
「クロヴィス、あとで迎えにきてね、分かった?」
エミリアがクロヴィスを睨む
「…あぁ、分かった」




