誕生祭
ドレスが届いた。
誕生祭の前日の早朝だった
母とトルソーに掛かったドレスを見る
「素敵ね…」
「うん、短期間でこんなに素敵なドレスを用意してくださるなんて…」
上はシックなブラックがグラデーションになっていて重すぎず腰にはブラックと高価なゴールドの二色づかいのリボンが、腰から下はゴールドに見える生地が使われていて光沢が素晴らしい見たことのない生地だった。
難しい組み合わせの二色を、上品で華やかに仕立て上げたデザインは見事であった。
婚約式でも肩を出したデザインだったが、今回も肩と腕デコルテを出す形となる。
それに合わせた首飾りや、耳飾り、ブレスレットも用意されていた。
見るからに高価なものと分かる。
レナードの新領地は鉱石も取れると言っていたので、領地で採れた宝石が使われているようだった。
「ちょっと、恥ずかしいような気もするのだけれど、お母様どう思われますか?」
「何を言っているの?レナード様の色じゃないの…貴女このドレスを断れる勇気ある?」
「…ありません」
レナードの髪と瞳の色を纏うと思うと、勇気が湧いてくるから不思議な感覚だった。
身体全体がレナードに抱きしめられているようで、くすぐったい気持ちになる。
「何をニヤけているのよ…」
「ニヤけてなんていませんっ!」
陛下の誕生祭の当日になった。久しぶりの夜会で朝から湯あみをし、マッサージ、軽く食事を取り半日かけての準備となる
「ミレイユ様はお美しいですからお化粧は薄めでよろしいでしょう」
「髪型はドレスに合わせてアップにしましょう」
「ヘッドドレスはこちらがよろしいわ」
メイド達がきゃいきゃいと楽しそうに準備を手伝ってくれる
レナードから贈られたドレスを身に纏うと周りからは感嘆の声が漏れる
「美しいです」
「お嬢様に見惚れてしまいます」
「女神様のようで…」
「み、皆それは言い過ぎよ…わたくしは目立ちたくないのよ…」
「「「無理ですっ!」」」
コンコンコンとノックをする音が聞こえて返事をするとルイが迎えにきた
「もうすぐレナード様が到着するから呼びに来た、用意出来てる?」
かちゃりと扉を開くルイ
「ルイ、どう?変じゃない?肌が出て恥ずかしいのだけど…」
ミレイユが困った顔をする
ルイはミレイユを見て見惚れてしまう
「美しいです」
「なによ、それ…」
ルイはミレイユを直視できず
「と、とりあえず行こうか?」
手を差し出しミレイユがルイの手を取る
「それじゃ行ってくるわね」
留守番のメイド達に声を掛ける
「「はい、いってらっしゃいませ」」
送り出され笑顔で返す事にした
会話もないままエントランスまで歩くとちょうど父がレナードを迎えていた
「ミレイユ!」
「レナード様」
にこりと微笑みを浮かべる
「なんて美しいんだ…」
ミレイユの近くによりルイの手を払い
「俺のパートナーだから」
レナードが、笑みを浮かべルイを見る
「はいはい、邪魔はしませんよ」
両手を軽く上げて父の近くへと移動する
「やだね、嫉妬深い男は」
父とルイは笑っていた
「ミレイユ、これで仕上げだ」
すっとミレイユの指にリングを嵌める
大きな宝石だが可愛らしいデザインでミレイユの好みだった
「可愛いですけど、こんな高価なものを…」
躊躇してしまう
「ミレイユにプレゼントしたくて、作らせたんだ。ミレイユが貰ってくれないとゴミになるんだが…」
困った顔をするレナードを見て、返却することは出来ない
「ありがとうございます、嬉しい」
頬をピンクに染めるミレイユ
「いちゃつくのは二人の時にして!」
「そうだね、私は見たくない」
ルイと父が文句を言ってきたので
馬車に乗り城へ向かう事になった
「緊張してる?」
レナードに聞かれるも
「覚悟は出来ました。レナード様にプレゼントしていただいたドレスを着てると勇気が湧いてくるもの…素敵なドレスをありがとう」
「気に入ってくれたんだ」
「うん、いつもありがとう、この前のレナード様の言葉嬉しかった」
「何か言った?」
すっとぼけるレナード
「うん、覚えていなくてもいいの。このドレスを着たら少しだけ自信が出てきた」
「それは良かった」
「何かあったらレナード様に任せれば良いんだものね」
くすくすと笑うミレイユ
「そう言う事です」
ほんわかした気分のまま、気がつくと城内に馬車が到着したようだった
「行きますかね、ミレイユ姫」
「はい、レナード王子」




