不安が募る
「ミレイユどうした?」
レナードがミレイユの顔に触れる
一瞬の事でびくっとするが
「…なんでもない」
「嘘だね」
ミレイユの目には涙が
「どうした?俺には話せない?」
「わからなく、なってきた」
「何が?」
「レナード様が好きなのに…」
「うん」
「今更クロヴィス様の顔が…悲しそうな顔が…」
ひっく…ひっく…ミレイユの泣き声がレナードの胸で籠って聞こえる
「困ったね…」
はぁ。ため息を吐くレナード
「まさか他の男のことで泣かれるとは…」
ひっく…
「クロヴィスに会うのが怖いんだろう?」
「うん」
「自分がどう見られているかとか考えているんだろう?」
「ひっく、うん」
「優しいよ、ミレイユは」
「やさしくなんて、ない」
ミレイユのしゃくる声は辛そうだ
「過去と言ったのはミレイユだ、過去と決別するために夜会へ行く、強くなれミレイユ」
ミレイユの頭を撫でるレナード
「…怖い。わたくしは社交界で嫌われています…悪く言われるのは辛いの、だから逃げてきたのに」
「逃げてきたのは前進だ!ミレイユは悪くない」
「逃げた先がレナード様だったのかもしれないもの。都合がよかっただけかもしれないもの。こんなわたくしに嫌気が差したでしょ?」
レナードから離れようとするミレイユ
「都合が良かった?それはグッドタイミングだな」
力を込めてレナードから離れようとするが力では勝てない
「今だからそんな事が言えるんだ、ミレイユと再会した時はそんな事を考える余裕もなかったぞ?逃げ出した理由なんて人それぞれだが…その時は最善だったんだよ、もう自分を責めるな!」
「だって…」
「クロヴィスのことは過去だ!忘れろとは言わないが、決別する決心を持て。だから気持ちが揺らぐんだ、自分の気持ちに素直に従え、俺の事を好きだと言ったのは嘘か?」
ふるふると頭を振るミレイユ
「俺を頼ってくれ、迷惑なんかじゃない」
涙がはらはらと溢れるミレイユ
「悪い、言いすぎたか…?」
「ううん、」
ギュッとレナードの首に抱きつく
ミレイユの背中を撫で
「不安にさせたか…悪かった。逃亡先が俺のところなら、存分に甘やかさないと気が済まない」
「こんなわたくし、嫌いになったでしょ?疲れたからなんて…嘘。卑怯なの…全部、嫌になったの」
「今は?」
「レナード様が、好き…もっと自分に自信が持てるようにならなきゃ…」
「分かっているなら良い、もう流されるなよ?不安に思う事があったら俺にも教えてくれ」
「レナード様…」
ミレイユの頬に手を添えて、何度も何度も口付けをする
「んっ…」
「愛してるよ、ミレイユそれだけは忘れないで」
「っん…レナード様」
ぽやんと蕩けるような顔をするミレイユ
「やばい…可愛いすぎる」
コンコンコンとノックする音に驚く二人
甘い雰囲気のまま
「…どうぞ」
声を掛ける
「なに?またいちゃいちゃしてたわけ?」
ルイがレナード睨む
「まぁな…」
しれっと答えるレナード
「レナード様っ!」
赤い顔をしてミレイユが抗議する
「邪魔して悪いねっ!これミレイユに!」
手紙を渡してくるルイ
「どなたかしら?」
後ろを見ると王家の蝋印でクロヴィスからだった!
「…………」
チラリとレナードを見る
「開けてみたら?」
「そうね…」
ルイとレナードのまえでクロヴィスの手紙を開かされる。拷問のような間である…
読み終わり手紙を片付けると
「なんて?」
「何のようだ?」
二人からは冷たい目で見られ、責められているような感覚に陥る…
「今度の陛下の誕生祭のときに話がしたいって書いてあるんだけど…」
チラリとレナードを見る
「話し合いが必要なら、行くと良い。俺が、居て話しにくいようならルイを連れて行け」
レナードがルイを見る
「まぁ…そうなる…よね」
ルイが答える
「…うん、分かった」
誕生祭…しんどい




