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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私の親友は

作者: 咲森碧

短編とは思えないくらい長くなりましたが…暇潰しにお読み頂ければいいなと。


「はっきり言おう。君の恋は実らない。何故なら――その恋は君にとっては初恋だからだ。」


目の前に立つ彼女はぴっと私に指差し、落ち着いた声ではっきりと告げた。その言葉に意識が遠のいてしまう様に感じられた。




私はナプトラス王国の第一王子、カルセイン・ヴェステルマン。父譲りのオレンジブラウン系髪色に母譲りの透き通った碧眼の容姿を持ち、将来この国の王となる為に勉学を励んでいる。


父はこう言った。


『カルセインよ、お前にはこの国を背負う覚悟はあるか?もし、その覚悟があるならば常に心掛けよ。』


その言葉を胸に刻み、私はこの国がずっと安泰でいられる様にこの国の歴史、他国の事情、様々な経済を把握し、剣術、乗馬を学び、伴侶と共にこの国を―――。




「やぁ!こんにちは。勉強中?偉いね~。」


自室で勉学中の私に窓外から話し掛けてきたのは()()()()()大人の女性で、ここは王宮で余程の高さがあるのに満面の笑顔でひらひらと手を振っている。


奇妙な光景に私は大胆に椅子から転げ落ち、悲鳴を上げてしまい、扉の外に居た護衛達が入ってきた。護衛達が私のところへ駆け寄り、状況を確認する。


「殿下!?どうかなされましたか!?」

「そ、外に…知らない女性が…!」

「えっ…!?……あ、あの女性というのは…?どこも見当たりませんが。」


きょろきょろと周りを見る。演技ではなく、確かに見えてないようだ。


なっ、護衛達は彼女が見えないのか!?浮いたまま、こっちを見ているというのに!


「恐れながら申し上げます、殿下。貴方様は大変お疲れの様なので勉学はここまでにした方が宜しいかと…。ゆっくりと眠れる様に使用人にティーをご用意させて頂きます。」

「あ、ああ…。そうする。」


護衛の手を借り、ふらふらとベッドに横たわる。護衛達は自室から退室し、数分後にはメイドがカモミールティーを持ってきてくれたのでそれを飲み、私は眠りに付いた。



再び、目を開けると外はもう日が落ちていた。空はオレンジ色に染まり、もうすぐ夜になるだろう。溜め息を吐きながら、仰向けになろうと思い、身体を動かす。


「おはよう、ゆっくり眠れた?」


外に居た筈の彼女は今度は私の目の前に(浮きながら)居たので、二度目の悲鳴を上げた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「そういやカルセイン、今は13歳なんだっけ。月日が流れるのって本当にあっという間だな。」


王宮図書館で私の目の前に座っている彼女――リアンはそう言った。


リアンが私の前に現れてから、3年が経った。出会ったばかりの頃は警戒したが、何度も話を重ねるとこの人は悪魔とか幽霊でもなく普通に接してくるので悪い人――いや、人なのかどうかは分からないが、とにかくリアンは悪い人ではないと信じる事にした。


けれど、ずっと一緒に居るわけではなく、たまにふらっとどこかに行ったりしているが。


彼女はどうやら私以外の人に見えない様に魔術を使用したそうだ。父上や母上や他の人にリアンの姿は見えず、最初は悪魔か幽霊かと思ったが足は普通にあるし、私に触れる事も出来る。女性だが、すらっとした高長身で腰辺りまである白銀の髪の毛を1つ三つ編みにし、神官の様な衣装を身に纏っている。瞳の色は金色で見ているとまるで吸い込まれる様な感覚に襲われる。


「元気にすくすくと成長して、お姉さんは嬉しいぞ。あと、身長もだんだんと伸びてきてるね~。子供の成長って早いなぁ。」


うんうんと頷きながら、私の身長を確かめる。


確かに…自分の容姿を改めて見ると背は順調に伸びているし、剣術の腕も上がっていると師が褒めてくれるのは素直に嬉しい。顔付きはまだ幼いが…更に成長すればリアンの背を越える事が出来るだろう。


「はぁ…。」

「およ?嬉しくないの?病気もなく元気でいられるのは素晴らしい事だぞ。」

「いや、それはそうなんだけどね…。ほら、今度王宮でお茶会を開催するんだけど、そろそろ婚約者を決めてくれと両親からせがまれてね。」

「あちゃあ…陛下と王妃様に言われてるのかぁ。でも、13歳でもう婚約者を決めるとか早すぎないか。」

「王妃教育もあるからだろう。あと、後ろ盾を得る必要もある。」

「お金持ちの社会って本当に魑魅魍魎どろどろな世界だな。カルセインはどんなタイプが好きなんだい?お姉さんに教えてくれたまえよ~。」

「リアン。」

「へぁっ!?」

「みたいな人だったらいいなって思うんだ。王家の血を持つ私に敬語ではない喋り方で話し掛けてくれるから心地よい―――って、リアン?どうしたんだ?」


リアンは何故かテーブルに項垂れている。


「いや、なんでもないなんでもない!!そういう意味ね。」

(あ~吃驚した。だけど、イケメンからこんな事言われたらそりゃときめくよね。)


直ぐ様、リアンは顔を上げ、なんでもない表情をした。もしや、私は何か失礼な事を言ってしまったのだろうか。


「私みたいなのがタイプってのは嬉しいけど、普通令嬢は私みたいな喋り方はしないでしょ。」

「それは分かっている。分かってはいるが…私の周りに居る者は皆、王家との繋がりが欲しがっていたからな。」


第一王子であり、恵まれた容姿を持ち、未来の王として育てられた私の周りの大人達はそんな下心見え見えだった。だからこそ、そんな環境で育った私は笑顔で本心を隠し、その大人達と上手く付き合っていく方法を早い内に覚えた。


「とにかく、お茶会に来る令嬢令息はどんな人達かじっくりと見ようではないか。あっ、料理も食べてもいいよね。王宮用の料理って何であんなに美味しいんだろうねぇ。」


リアンは周りに花を咲かせながら料理を楽しみにしているが、逆に私の心情は複雑であった。


―――どうせ、今年もいつも通りで私の婚約者になりたい令嬢は私の容姿が目当てだろうな。


そう思いながら、私は読んでいた本を閉じ、窓から空を眺めた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



数日後、王宮でお茶会が始まった。


本音を言えば行きたくなかったが王族であるゆえ参加しない訳にもいかないので、いつも通りの偽笑顔で両親と共に大広間に向かった。父上が参加者に向かって挨拶を終えるとすぐに私のところに令嬢令息達が長い列を作り、うわべだらけの言葉と下心見え見えの笑顔で対応してきた。


呆れつつ、偽笑顔で挨拶をこなすと視線を感じ、視界をずらすとリアンが困り笑顔で見ている。手には既に様々な料理を乗せている皿を持っていた。料理も皿も魔術で見えない様にしているらしい。あんな便利な魔術を私も扱える事が出来たら、皆と会話しなくて済むのに。


ある令嬢の容姿を笑顔で褒めると嬉しそうに笑い、頬を染めて潤んだ眼差しで私をじっと見つめる。社交辞令なのだが、ちっとも気付いていないな。


「頑張れ、あと少しで挨拶が終わるから。」


(ありがとう、リアン。)


リアンが作ったイヤーカフを装備すればこの様に念話が出来る。挨拶が終わったら少しだけ席を外そうと考えていた時、見覚えのある令息が私の前に現れた。


「ダニエル、あなたも来ていたのか。」


ダニエル・ハイデリヒ侯爵令息。茶色の髪の毛と鮮やかな翡翠の瞳色を持ち、父であるイルセム・ハイデリヒ侯爵は大臣で将来爵位を継ぐ長男。


「はい、お久しぶりです、殿下。今回は妹の付き添いで参りました。さぁ、エレイン。殿下にご挨拶を。」


ああ、確か妹が2人居ると言っていたなと思い出す。ダニエルの後ろに隠れていた小柄な令嬢はドレスの裾を摘まみ、会釈をしながら私に挨拶をする。


「初めまして、エレイン・ハイデリヒと申します。殿下にお会いする事が出来て、嬉しく思っております。」

「あなたがエレイン嬢ですか。こちらこそ、お会い出来て嬉しいです。ダニエル、こんな愛らしい妹が居るとは思わなかったよ。」

「ありがとうございます、殿下。良かったね、エレイン。」

「……ええ、ありがとうございます。殿下。」


いつも通りの偽笑顔でにっこりと笑うと、ダニエルは笑みを溢したが、エレイン嬢は口元は笑っているが鮮やかな翡翠の瞳から光が消えた様に見えたので私は少しだけ目を大きく開いた。更にエレイン嬢は信じられない事を口に出す。


「では…失礼致します。お兄様、私はあちらに居ますので。」

「えっ、エレイン!?」


ダニエルがエレイン嬢を引き留めようとするが、スタスタとどこかに行ってしまったので私は思わず唖然とした。こんなの今まで見た事が無い。いつもなら私ともっと話がしたくてここから離れないのに。堪らず、念話でリアンに話し掛けた。


(り、リアン!!リアン!!彼女を追いかけてくれ!)


「えっ、誰を追いかけるの?」


(エレインという令嬢だ。茶髪と翡翠の瞳で白いドレスを着ている!見失わない様に早く行ってくれ!)


きょろきょろと周りを見ると見つけた様でリアンは早速足を動かした。ダニエルは妹の行動に詫びをし、去っていくと挨拶を済ませた令嬢達がすぐに私の周りを囲む。令嬢達が邪魔でリアンもダニエルも――エレイン嬢も見えなくなった。仕方なく、私は令嬢達と話をしながら念話でリアンにエレイン嬢を見つけたかどうかを聞いてみた。


「あ~、うん見つけたよ。お兄さんと一緒に居るよ。というか、この子…エレインちゃんって凄く可愛いね!ケーキを美味しそうに食べているしっ。他にも美味しそうな料理沢山あるのに皆食べないもんな~。食材は国民からの税金で買っているし、料理人が一生懸命作ったというのに勿体無いよ!!」


リアンからの情報に思考停止する。な、なんだそれは…!?とても気になるじゃないか。私もそこに行きたいのに彼女達が邪魔だ…!


足を動かすと彼女達も付いてくるので内心で溜め息を吐く。仕方無い、ここは―――。


「皆さん、少しだけ私を自由にさせて貰えませんか。ああ、ご安心下さい。また後で皆さんとお話もしますので…。」


そう言いながら、偽笑顔を彼女達に向けると嬉しそうにうっとりと私を見つめる。令嬢達の群れから解放された私は周りを確認すると、ふよふよと浮いているリアンが手を大きく振っている。姿は私以外には見えず、神官の様な衣装は白く目立ちやすいから助かる。


リアン達が居るところへ向かうと―――そこには周りに花を咲かせながら、何かを美味しそうに食べている天使(エレイン嬢)が居た。それを見た瞬間、私の心臓が大きく鳴った。


……彼女は笑うとあんな感じなのか。


初めての感情に戸惑いながら、足を動かす。そして、ようやくリアン達のところに辿り着き、私はエレイン嬢に話し掛けた。エレイン嬢は私に気付かなかった様で少しだけ驚いたが、すぐに表情を変える。


「私に何かご用ですか、殿下。」

「失礼、驚かせてしまったようですね。料理の味はいかがですか?」

「はい、どれも美味しいです。どれも美味しそうですが、皆さんはお食べにならないので少しだけ勿体無い気がしますが…。」


エレイン嬢はリアンと同じ事を言うんだな。


「もし、良ければあちらの席に座って一緒に食べま―――。」

「いえ、十分味を堪能しましたので…。料理人に美味しかったとお伝え下さい。」


空になっているお皿とフォークを給仕に渡し、ぺこりと会釈されてしまった。ダニエルは青ざめ、私の横に居るリアンは大笑いをする。リアン…そこまで笑わなくてもいいだろう。


表情をなんとか崩さずにしているとエレイン嬢は上を向いているので、釣られて私も上を向いてみた。


「エレイン嬢、もしかして天井画を見ているのですか?」

「はい、殿下。お兄様の言った通り…大広間の天井には沢山の竜が描かれているのですね。こんなに神秘的だとは思いませんでした。」


王宮の大広間の天井に竜が描かれているのには理由がある。


遥か昔、この国で『死紋病』という流行病があった。身体のあちこちに黒い斑点が浮かび、熱にうなされながら死ぬ病。治す方法は見つからず人々は悲しみに包まれたが、ある日、竜が現れ、沢山のモグリ草を王家に渡した。その草には『死紋病』を治す効果があった。モグリ草は人間の足で行く事が不可能とされる高山に生えていたが、空を飛べる竜ならそれを採るのは容易い。それ以来、この国は竜を崇拝しているが最後に姿を見たのは何百年前かは分からない。それでも、竜に感謝を示す為に王家の紋章にも竜の姿が刻まれている。


ダンスの曲が流れると、エレイン嬢はダニエルにこう言った。


「お兄様、一緒に踊りましょう。殿下、失礼致しますね。」

「えっ、えっ?エレイン!?」

「エレイン嬢!?」


エレイン嬢は動揺しているダニエルの腕にしがみつき、ダンス場に行ってしまった。唖然としているとリアンが私の肩に手をぽんと置き、「逃げられたね。」と生暖かい眼差しで言った。


(いや、ダニエルとのダンスが終わったら次は私と…!)


「残念だけど、ここは社交の場だよ。そんで、令嬢令息達のお相手をするのも王家の務めだよね?ずっとエレインちゃんに構っている場合ではないと思うけど。周りを見てごらん。」


令嬢達の視線がずっと私に向けられている事も感じていた。両親も居るので、耐えて他の令嬢達の相手をしようと思い、行動を開始する前に軽く息を吐く。


「エレインちゃんの事、気になり始めた?」


リアンからの問いに肯定する。すると、リアンは私の目の前に立ち―――。


「はっきり言おう。君の恋は実らない。何故なら――その恋は君にとっては初恋だからだ。」


そう言いながら、ぴっと私に指差し、落ち着いた声ではっきりと告げた。その言葉に意識が遠のいてしまう様に感じられた。


それからどうなったかというと、エレイン嬢とダニエルはダンスを終えた後にその足で王宮を出たらしい。お茶会が終わると私はすぐに父上にエレイン嬢を婚約者にしたいと訴えた。父上は快く承諾してくれた。更にハイデリヒ侯爵にこの件を報告する為に明日、王宮に呼び出す約束も。


翌日、王宮にやってきたハイデリヒ侯爵にエレイン嬢と婚約者になって欲しいと父上が言うとハイデリヒ侯爵は最初は驚いたが、すぐに快く受け入れてくれた。早くもエレイン嬢に会いたくて、「エレイン嬢に会わせて頂けますか?」とハイデリヒ侯爵に言うと、喜びながら私を伴って屋敷に戻る為の馬車に乗った。屋敷に到着し、ハイデリヒ侯爵はウキウキしながら、「すぐにエレインを呼んできてくれ。」と執事に伝える。


サロンに案内してもらい、来るのを待つとノックが聞こえた。入ってきたのはエレイン嬢と後ろに居るのは侍女だろうか。昨日ぶりに会えたエレイン嬢を見て、堪らずソファーから立ち上がり彼女の名を呼び、手を握る。ハイデリヒ侯爵が「喜びなさい。エレインは殿下の婚約者となったのだよ。」と言うとエレイン嬢は目をぱちくりとした。


ちなみに先程から傍観者の様に見ていたリアンは「嵐の様な行動力ぅ…。」と呟いた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



私がエレインの婚約者になったのは良いが、すぐに問題が起きた。エレインが王妃教育から逃げているらしい。更に婚約者になってから3ヶ月過ぎたというのに―――。


「エレインちゃんにドレスやら宝石やら花をあげようとしても、きっぱりと断られて、未だに一度も受け取ってくれてないよね。」


王宮の庭園で私と共に歩いているリアンが呆れた眼差しで言う。


そう、そうなのだ。エレインは私からの贈り物を全て拒否し、会話もあまり進まない。使用人から「本日のエレインお嬢様はご気分が優れない様なので…。」と言われて顔を見れず王宮に戻ったりも。ちなみに今日もエレインに会えなかった。これでは婚約発表会も出来ない。あまり他の令嬢達と会話したくないというのに。


一番耳を疑ったのは―――。


『殿下。私は殿下の事が嫌いなのではなく、ただ私の様な未熟者は殿下の婚約者に相応しくないと思うのです。いつでも婚約破棄をお待ちしています。』


と遠回しに言われた時は空気が冷たくなり、使用人達も護衛達も青ざめた。


「私が言う台詞じゃないけど、王家に対して礼儀がなってないからもういっそ婚約破棄したら?」

「しない!!!」


庭園で大声出すと、少しだけ離れていた護衛達がやってきた。リアンは私以外の人には見えていないのに大声を出してしまった。慌てて、「なんでもない。」と言うと護衛達は大人しく引き下がったので、視線をリアンに戻して念話で会話する。


(リアン、以前言っていたな。恋は実らないと。それはどうしてなんだ。)


「ん~、恋愛経験がゼロの状態から始める初恋は相手との適度な距離が分からなかったり、自分から好意を伝え過ぎると相手は引いてしまったりとか。」


(……?好意を伝えた方がエレインは喜ぶのでは?)


「全ての女性がそうとは限らないよ。まぁ…原因はカルセインにもあるんだけどね。でも、カルセインはその原因に気付いてない。」


(私にも原因が?それはなんだ。教えて欲しい!!)


その原因を教える為に「明日、ハイデリヒ侯爵家に行く前に花束を用意して。」とリアンに言われたのでその通りにした。小さめの花束だが、王宮に咲いている青薔薇にカスミソウとグリーンを一緒に包んであるので見た目は神秘的になっている。花束を見たリアンは「エレインちゃん、喜んでくれるといいね。」と言った。護衛には見えないが、リアンも馬車に乗らせる。何故か、リアンが居てくれると心強いのだから。


ハイデリヒ侯爵家に到着し、サロンでエレインが来るのを待つと、足音が聞こえてきたのでソファーから立った。しかし、入ってきたのはエレインではなかった。


「殿下!今日()来てくれたんですね!!」


次女、ミリア・ハイデリヒ。透明に近い透き通った空色の髪色と瞳色でエレインより2つ年下の10歳。可憐で花の妖精の様に見えるが、私にとってはエレインの方が天使の様だからそっちが好きだ。


ちらりとリアンを見ると手で顔を覆っている。


「わぁ!その花束とても綺麗です。青薔薇って初めて見ました!」


いつの間にかミリアが私の目の前に居た。頬を染めながら、青薔薇を見つめている。ミリアが青薔薇に触れようとすると、後ろから引っ張られた。リアンが私を一歩下がらせたからである。そのせいでミリアの手は空振りした。


(……リアン?)


「カルセインは女性への接し方は完璧だけど、完璧ではないよねぇ。特に恋愛に関しては。今、カルセインが会いたいのは誰?その花束を渡したい相手は誰?その相手に渡したい理由はなに?」


私の後ろで冷静に話すリアン。後ろ向きなので顔は見えないが、背筋に悪寒が走る。もしや、リアンは怒っているのか?いや、そっちを気にしている場合ではないか。先程、リアンに言われた事を思い出す。そこで私の出した答えは―――。


「ミリア嬢、今、私が一番会いたいのはエレインだ。」

「え…?」

「今日はどうしてもエレインと話がしたい。」

「お姉様ならまだ来ていないので、来るまで私が話相手になりますよ。」

「カルセイン、可哀想かもしんないけど心を鬼にしてサロンから追い出してやって。そんで、エレインちゃんが来るまでもうちょい待ってみよう。ほら、早く早く。」


リアンの言う通りにサロンの扉まで歩き、ドアノブを回しながら言う。


「ミリア嬢、悪いがサロンから出ていって貰え―――んんっ!?」


なんと、扉を開けたらエレインが立っていた。エレインは「あっ…。」とか「えっと…。」と呟きながらおろおろとしている。


「お姉様!せっかく殿下がいらっしゃっているのに、何故来てくれないんですか。殿下が可哀想です!」

「カルセイン!!ここに来た目的を忘れていないよね?」


ミリアの言葉よりもリアンの言葉の方が私の耳にすんなりと入った。


「ミリア、殿下の前で大声を―――えっ?」

「エレイン、どうかこの花束を受け取ってくれないかな?王宮に咲いている青薔薇だけど、私はまだエレインの好きな花を知らない。でも、とても綺麗な薔薇だっからエレインに贈りたかったんだ。」

「あ………。あ、りがとうございます。とても、綺麗ですね。」


ふわりと笑顔で花束を見つめるエレインに―――。


「それだよ。その笑顔が見たかったんだ。初めて私からの贈り物を受け取ってくれたね。嬉しいな。」


エレインに向けて笑ったがこれは偽笑顔ではなく、本心の笑顔だ。エレインは目を大きく開き、俯くが数秒後に侍女のベラに花束を渡す。


「ベラ、これは私の部屋に飾っておいて。」

「畏まりました、お嬢様。」


自分の部屋に飾るという事は好意を受け入れているという事で合っているのだろうか。メイド達がティーセットを持ってきたので、入れ替わりにミリアにはサロンを出ていって貰った。私はエレインと一緒にソファーに座った。紅茶を飲みながらリアンを見るとぐっと親指を立てて、「私はどっか行ってるね。」と言って姿を消した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



カルセインがエレインと会話をしている時――、リアンは屋敷の中をてくてくと歩く。使用人達とすれ違ってもリアンの姿は全く見えていないので気にしないで歩けるが、だんだんと泣き声が聞こえたのでリアンは溜め息を吐いた。念の為にサロンまで泣き声が聞こえない様に遮音魔術を掛ける。


いつもならエレインが来るまで、ミリアがカルセインの話相手をしていた。


これが原因だ。そして、エレインにとっては逆効果である。カルセインの考えとしてはこうだろう。エレインの家族に好印象を持って貰い、その後エレインとの仲を深めようと。


しかし、下手したらすれ違い恋になり、カルセインはヤンデレになりエレインを監禁フラグである。ノー!!監禁、駄目、絶対。


カルセインは容姿端麗で頭脳明晰だが、恋愛初心者。だから、優秀不断なところがあるかもしれない。それと、サロンでのミリアの行動はカルセインから見たら姉思いの妹に見えているかもしれないが、真剣に恋がしたいなら言葉と心と行動を一致にするべきだ。しかし、恋愛に関しての勉強は無いので自分で考えるか、既婚者に聞いてみないと無理かもしれない。


執事長や使用人達がどれだけ叱責してもミリアは癇癪を起こしてばかり。護衛達がカルセインを窘めようとしても、彼は王家で第一王子なので不敬罪として捕らわれるかもしれないのでできない。


まぁ、私だったらスバっと言うけどね!!こんな便利な魔術を持っているから逃げようと思えば逃げられるし。


にたりと笑うと少しだけ開いている扉の隙間を見つけたので、魔術でその部屋に勝手に入ると、大人の女性が泣き喚いている少女を必死に慰めている。少女と同じ髪色が照明の明かりに反射していてゆらゆらと煌めく。


「ひっく、えっ…!お母様、お母様ぁあああ!!」

「ああ、ミリア。泣かないで頂戴。今度、ミリアの好きなケーキ用意してあげるわ。」

「わっ、わた、しは…!ただ、殿下と仲良くしたいだけなのにぃ!お姉様が全然来てくれないから私がなんとかしてあげなきゃって思ってるだけだもん!!」

「ええ、ええ。ミリアは優しいもの。」


一番の元凶は母親がこれである。分かりやすく言えば毒母。


ローズマリー・ハイデリヒはダニエルとエレインとミリアの母親。ダニエルとエレインの髪色と瞳色は父親譲りで、ミリアの髪色と瞳色は母親譲り。だからなのか、ローズマリーはそんなミリアを大変可愛がっている。ミリアの泣き顔は庇護欲を擽られる。


普通、そこは「殿下はエレインの婚約者なのだから勝手に入っては駄目よ。」と言うべきでしょ…。


何故こんなに詳しいのかというと、この3ヶ月、リアンはカルセインに内緒でハイデリヒ侯爵家の事情を観察したからである。エレインへの贈り物も先に見せたのはいつだってミリアだ。「チィッ!!」と大胆に舌打ちすると、扉が開く。入ってきたのは兄のダニエル。


「ミリア、今日もエレインより先に殿下に会った?駄目だよ。殿下はエレインの婚約者なんだから。」

「ダニエル!そんな事を言わなくてもいいでしょう。ミリアは今、傷付いているのよ。」

「母上、あまり甘やかさないであげて下さい。時には厳しく言わないとあとで後悔する事になります。」


ハイデリヒ侯爵は3人の子供を平等に可愛がり、ダニエルも2人の妹の話を聞いてあげたりしているが、ミリアは忍耐力が弱すぎる。エレインがミリアにしつけをしようとしても毒母が邪魔している。


『姉なのだから我慢しなさい。』

『ミリアは何も悪い事はしていないでしょう。』

『ミリアは本当に私に似てて可愛いわね。』


妹を庇いまくり、可愛がりまくりの母の姿にエレインはすっかり呆れている。


ミリアが産まれるまではエレインにも愛情を与えていたかもしれないが、父親似と母親似の子供を比べると、どうしても母親似の子供を可愛がりたくなる病気なのだろう。母親からの愛情をあまり貰わなかったエレインは父と兄と使用人達以外を信用しなかった。カルセインからの褒め言葉もどうでもいいと思って、塩対応したのだろう。それがこの結果―――エレインは殿下の婚約者になってしまったのである。だが、最初から警戒をしてサロンに入る前に扉の隙間から覗くとエレインはカルセインとミリアの仲睦まじい雰囲気に見ていられなくなり、部屋に戻ってしまった。


やっぱり、可愛くない姉よりも可愛い妹の方がカルセインの婚約者に相応しい―――とすぐに結論を付けたのである。そして、カルセインからの言葉は全てうわべだらけの言葉なのだと決め付けた。


「お兄様もお姉様も酷いわ!!お姉様は殿下からの贈り物を全部断っているんだから私が貰ってもいいでしょ!」

「ミリア、それでも駄目なものは駄目だ。」

「青薔薇の花束、すっごく綺麗だったのに…。もっと見たかったのに…。」

「花束を…?それをエレインはどうしたの。」

「受け取ったわ。部屋に飾っておくみたい。」

「………!!そう、それは良かった。」


ローズマリーが答えるとダニエルは目を細める。ようやく、殿下からの贈り物を受け取ってくれたのだ。兄は妹には幸せになって欲しいから、喜ぶのは当たり前である。父と兄がまともで良かった。ハイデリヒ侯爵家の事情を知らないカルセインがこれを知ったらどうなるか。


いや、まだ言わないでおこう。さて、今回のカルセインの行動で吉と出るか、凶と出るか…。




日が暮れ始めた頃にカルセインは王宮に戻った様なので、リアンも王宮に行った。カルセインがリアンを呼んでるのを感じたのでカルセインの部屋に入る。異性の部屋に入るのは駄目なのだが…カルセインはすこぶるご機嫌中だ。周りに花を咲かせている。部屋に遮音魔術を掛けたので、念話での会話も必要ない。


「遮音魔術掛けといたから普通に喋っていいよ。その様子だとエレインちゃんと沢山話が出来たみたいだね。原因は分かった?」

「原因……それは分からない。だから、教えてくれないか?」

「…………ぶっちゃけ言うと、エレインちゃんにはギュンターの方がお似合いだと思う。」


王弟殿下の令息、ギュンター・カトレアルフは金髪碧眼で穏やかな笑顔が似合っていて、カルセインと仲が良いのも知っているがその名前を出すとカルセインからドス黒い何かが出てくる。ワオ。


「何故、そこでギュンターが出てくるんだ。」

「血が繋がっている従兄弟でもエレインちゃんと仲良くなったりするのは嫌?カルセインよりギュンターが先にエレインちゃんに会ったりするのも嫌?」

「当たり前だ!もし、エレインが私よりギュンターの方を好きになってしまったら……あ、まさかエレインは私がミリア嬢を好きになるのかと?違う、私が好きになったのはエレインでミリア嬢はエレインの妹だ。」


そう言うと、リアンは舌打ちした。


「人の心は移ろいやすく、乙女心も色々と複雑なんじゃい!!」


それにミリアはカルセインに自己紹介した時に好きになってしまったから。ああ、容姿端麗って本当に罪過ぎ。リアンはカルセインにアイアンクローする。


「いたたたた!!!!リアン、頭が割れる!」

ミリアよりも婚約者(エレイン)を優先して言葉と心と行動を一致しろや、このド低能馬鹿王子!!言葉と心と行動を一致する、はい、復唱!」

「こ、言葉と…心と…。」

「声が小さぁあああああい!!!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



その2日後にエレインが王妃教育を受ける事になったと聞いた。あの日以降、リアンの言う通りに私はハイデリヒ侯爵家に行っても、ミリアとはあまり長く会話せず、軽く挨拶をしてからエレインが来るのを待つまでミリアを一度もサロンや中庭に入らせる事は無かった。少しずつエレインの趣味嗜好等を知り、様々な贈り物も受け取ってくれた。


婚約発表会も無事に済み、半年が経ち、母上からこう言われた。


「カルセインは良き伴侶を見つけましたね。母は嬉しいですよ。」


王妃になる為には貴族以上のマナーや常識、経済や他国の歴史等…覚える事は沢山ある。家庭教師は厳しいが、褒める時は褒める。すぐに弱音を吐いたら王妃としての役割は務まらない。それをエレインはしっかりとやっているので、母上はエレインが娘になるのをまだか、まだかと待ちわびている。


「今度、私と一緒にあなたとエレインでお茶会をしましょう。」

「はい、母上。」





護衛の1人を連れ、エレインと一緒に王宮内を歩くと「大広間に行きたいです。」とお願いされたので大広間に案内する。大広間に入ると、エレインは上を見ながらゆっくりと歩く。


「エレインは本当にこの天井画がお気に入りだね。」

「はい。いつ見ても神秘的で迫力があって好きです。特に……あの白い竜になんだか目を奪われそうで。竜って実際見ると、どんな感じなんでしょう。願うなら生きている内に見てみたいですが、無理でしょうね。そんな簡単に姿を現してくれるかどうかも分かりませんから。」

「もし、竜がエレインの前に現れたらどうしたい?」

「勿論、撫でてみたいです!!」


私に向けて、太陽の様に笑ったエレインに心臓が大きく鳴った。




―――それから月日は流れ、ある日の王家主催お茶会にエレインと妹ミリアが来た。ダニエルはもう17歳なのでハイデリヒ侯爵と共に業務に付き合ったりで忙しいそうだ。令嬢令息からの挨拶に対応すると、さりげなく自分をアピールをする令嬢も居るが冷静に対応した。


次の挨拶番の貴族はエレイン達だった。14歳になったエレインは更に美しくなっていた。婚約者になったばかりの頃と比べると、表情をコロコロと変えたりする様になっている。見ていて飽きないので早めに婚約者にしといて正解だったなと思わず笑みを溢す。エレインの首には私が贈った青薔薇のネックレスを付けていた。おっと、見惚れている場合じゃなかったな。


「エレイン、ミリア嬢、来てくれてありがとう。どうかお茶会を楽しんでくれ。」

「ありがとうございます、殿下。」

「ありがとうございますっ。」

「ああ、そうだ。エレイン、ダンスの曲が流れたら私と2()()踊ろうね。」

「―――!!は、はい…殿下。」


普通、ダンスは1回しか踊らないが、婚約者同士や女性同士ならダンスは2回踊っていい。エレインは一瞬、目を大きく開いたがすぐに表情を戻す。けど、その鮮やかな翡翠色の瞳にはキラキラと煌めいて頬も少しだけ染まっている。ああ、可愛い…!!


……実はエレイン達の隣にリアンが居るが、般若の顔になってない。これは私がちゃんと言葉と心と行動が一致しているかどうかの採点だ。今回もあんなに沢山料理を食べているが、そういえば彼女は王宮の料理以外はどこで食事しているのか。よくよく考えてみたら出会って5年経つが、リアンの事はあまり知らない。


「殿下、お姉様とのダンスが終わったら次は私と踊って下さい。私、頑張ってダンス練習したんです。」

「それは楽しみだね。」



令嬢令息達と会話をしていたらダンスの曲が流れたので、その場から離れて私はエレインの手を取り、ダンス場に向かった。2回踊り終えたが、本音を言えばもっと踊りたい。けど、王家に泥を塗るわけにはいかないので耐えた。エレインの次はミリア嬢と1回踊り、エレインのところまで戻ろうとした時、腕を引っ張られた。引っ張られた相手は勿論、ミリア嬢。私の腕にがっしりとしがみついてる。


「殿下、もう1回踊りたいです!」

「ミリア嬢、悪いが次の相手と踊らないといけないから…。」

「お姉様とは2回踊ったじゃありませんか。」

「そうだね。だけど、エレインは私の婚約者だから良いんだ。」

「そ、そんな……どうしてですか。私はただ殿下ともっと踊りたいだけなのに。」

「ミリア。」


エレインが私のところにやってきた。険しい表情を浮かべ、私からミリアを引き離し、謝罪をする。


「申し訳ありません、殿下。妹が大変失礼致しました。謝罪の言葉で許される事ではありませんが…。」

「私は大丈夫だよ。だから、どうか気にしないでくれ。」

「お心遣いありがとうございます、殿下。さぁ、ミリア。こちらに。」


ミリアを連れてダンス場から離れる2人を眺めながら、私は違和感を感じた。令嬢令息は成長するにつれ、所作を身に付け、マナーやダンスレッスンを受けるものなのだが…。私は思考を切り替え、次の相手と踊った。





それを眺めていたリアンは溜め息を吐いた。ミリアも成長すれば変わるだろうと思っていたが、なんせ母親があれなのだ。ダンスは殿下と踊りたかったからレッスンは真面目に受けていたが、勉学や所作はいまいち。


ローズマリーの容姿はそれはもう大変美しい。ハイデリヒ侯爵がようやく、心を鬼にして諫めたら―――。


『どうしてあなたまで酷い事を言うのですか!ミリアは可愛くないとでも!?』

『違う、そういう事ではない。ただ、このままではミリアに嫁ぎ先が見つからなくなるかもしれないんだ。頼む、どうか分かってくれ。』

『ミリアの事は私が一番分かっております!人それぞれ向き、不向きがあるではありませんかっ。』


ハイデリヒ侯爵はそれ以上何も言えず、口を閉ざした。王妃教育の事は「弱音を吐かないのは偉いね。だけど、あまり無理はしない様に。」とエレインを褒めてあげた。けれど、それを聞いたミリアは「どうせ、私はお姉様みたいに頭が良くないもの!」と泣き、ハイデリヒ侯爵はおろおろとした。別に差別している訳ではない。何故、そういう結論になるんだ。


カルセインが青薔薇のネックレスを付けていたエレインに見惚れていた時、ミリアはそれを自分が可愛いから見惚れていると勘違いしていた。まぁ、それをカルセインに言わなくてもいいだろう。だって、カルセインはちゃんとエレインを愛しているのだから。料理をぱくりと食べ「ん~、うまっ!」とリアンは幸せを噛み締めた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「なんじゃこりゃ。」


王宮の執務室に入ってきたリアンが言う。すかさず遮音魔術も掛けてくれた。


「なに?この紙だらけは。テーブルにも床にも紙が沢山落ちてるけど。」

「落ちてるではなく、置いてるだけだ。これはエレインの社交界デビューに着るドレス案を考えたのだが、どんどんデザインが浮かんできてな…。」


貴族の社交界デビューは16歳なのでエレインが16歳になる前に色々と準備しなければならない。リアンはデザイン案を踏まない様に浮きながら私のところに来てデザイン案を見る。


「いや、デザインって…似たようなものばかりに見えるけど?」

「全然違う!ほら、このデザインはAラインになっているが、こっちのデザインはエンパイアラインだ。」

「パターン増やしてるだけじゃん。今日の分の業務やらなくていいの?」

「とっくに終わっている。」

「ああ、そう…。にしても、カルセインが本当にヤンデレにならなくて良かった。」

「……?さっきから何ぶつぶつ言ってるんだ?」

「ん~にゃ、なんでもない。っと、誰か来るみたいだから遮音魔術解くね。」


そう言いながらリアンは遮音魔術を解き、執務室にある本棚の方に行った。側近のシーモアが執務室に入って、この紙だらけの光景に「なんですか、これは!?」と叫んだ。




今日はエレインの社交界デビューの日で夜会を行う。一緒に王宮の大広間へ向かいながら私はエレインに話し掛けた。


「エレイン、とても似合っているよ。」

「ありがとうございます、殿下。あの…シーモア様が仰っていたのですが、このドレスデザインを考えたのは殿下だと…。」


エレインがおずおずと私に問う。私はにっこりと笑って、手の上に置かれている彼女の手をぎゅっと握り締めると「で、殿下…!?」と驚いてしまった。私の接し方でエレインがこんな風に表情を変えてくれるとは。エレインは期待の眼差しで見つめてくる。今まで私に向けた令嬢達の眼差しとは違う――そう、心地良いのだ。


「うん、そうだよ。エレインには鮮やかな色合いが似合うと思っていたから。」


私の髪色と同じ様にオレンジ色を多めに、白も所々入れてグラデーション配色にしておけば歩くたびに花が咲き誇る様に目立つだろう。対して、私の正装は深緑。寒色系に近い中性色だ。問いに答えるとエレインは喜んだが、眉を下げる。


「お、お気持ちは大変嬉しいのですが、それでは殿下が目立ちにくくなります。」

「これはエレインの社交界デビューなんだよ。私が目立ってどうするのかな。」

「あ、う…はい。」

「さぁ、大広間に行こうか。」


エレインはそれ以上何も言わなかったが、私の手をぎゅっと握り締め返した。ちらりと見ると、笑ったので私も笑みを返した。今朝からリアンを見掛けていないが、きっと先に大広間に行って料理を眺めているのかもしれないな。


大広間に入場し、エレインをエスコートしながら貴族達と挨拶をする。ダンス曲が流れ始めると、大広間は更に賑やかになる。私がファーストダンスを申し込むとエレインは快く受け入れた。ダンス場に向かい、ゆっくりとステップを踏む。緩やかな動きに合わせ、音楽が静かに流れる。嬉しそうに楽しそうに微笑みながら踊るエレインに誰もがその目に奪われる。それをエレインには気付かれていないが、出来れば一生気付いて欲しくない。社交界デビューを果たしたら次は結婚式。早く準備を済ませて、エレインの夫になりたいのだが―――。その時、視線を感じたので周囲に目を配る。


視線の正体はミリア嬢だった。


ミリア嬢はまだ14歳。社交界デビューはまだなのだが、恐らく家族に我儘を言ったんだろうな。空色の瞳にあるのは憎悪と羨望と嫉妬。その違和感はすぐに分かった。ミリア嬢は姉であるエレインに嫉妬している。それにミリア嬢は令嬢にとってあるまじき行為が目立つようになってきた。社交場に行くたびに良くない噂が耳に入るし。もし、あの時リアンの言葉に耳を傾けなかったら、ミリアを遠ざけなかったらどうなっていたか聞いてみた。


『そうだね。エレインちゃんはこっそり逃げていたんじゃないかな。カルセインがちゃんとエレインちゃんの事を思ってくれたからお姉さんが1つ教えてあげよう。ミリアはカルセインに一目惚れしたから、エレインちゃんよりも先にサロンに入ったりしてたんだぞ。この世で一番恐ろしいのは欲望にまみれた人間だしね~。だから、どうしてもカルセインを自分のものにしたかったのさ。』


それを聞いて私はどうなったかというと、膝から崩れ落ち放心していた。エレインがミリア嬢の視線に気付かない様にくるりと向きを変える。私の体格ならエレインを隠すには十分だ。エレインが一瞬、驚いたが私のステップに付いてきてくれているので問題ない。


「エレイン、ずっと私だけを見て欲しいな。」

「え、ず、ずっと見ていたつもりですが……。」

「ふふ、ありがとう。」


ダンスを終えると拍手が鳴り響く。ダンス場から戻ったその瞬間、場がざわめく。疑問に思った私は周囲を確認すると、こちらに向かって歩いてくる1人の男性―――いや、女性が原因だった。黒を基調とし、金の刺繍が美しく施された男性用の正装を身に纏っている。すらっとした高身長のせいか、歩く姿も気品に溢れ、目を奪われそうな男装の麗人である。


いや、リアン何しているんだ!!??何故、男装を!?


頭上にはてなマークが浮かぶが、よく見ると皆リアンを見ている。私以外には見えない魔術を解いているのだと理解した。エレインも目を大きく開いたままリアンを凝視している。私とエレインの前に立ち、紳士の挨拶をしてきた。


「初めまして、カルセイン殿下、エレイン様。私の名はリアンと申します。先程のダンス、とても素晴らしかったです。そして、エレイン様、社交界デビューおめでとうございます。」

「えっ、はっ…!あ、ありがとうございます。」


慌てて背筋を伸ばし、男装しているリアンにお礼を言う。無理もない。挨拶の仕草も美しいと思ってしまったせいか、エレインは見惚れてしまったのだ。……まぁ、私もだが。リアンがいつもの喋り方ではないのは周囲の目があるからだろう。リアンが顔を上げ、エレインに向けてにっこりと笑うと、エレインは頬を染めた。周囲に居る貴族達もリアンの笑顔に見惚れている。


……リアンの性別が女性で良かった!本当に良かった!!


「殿下、もし、差し支えなければ教えて頂きたいのです。お二人の結婚式は来年の春に行うと聞いたのですが。」

「そうだよね、エレイン。」

「はい、そうです。」

「さようでございますか。ああ、益々楽しみになってきました。殿下のお隣に聡明で気品あるエレイン様が居て下さればこの国は安寧でしょう。」

「ま、待って下さい!!」


私達の会話に入り込んできたのはミリア嬢。


「お姉様は社交界デビューしたばかりなんですよ。なのに、もう結婚式を決めたとか早すぎます!!」

「ミリア嬢は私とエレインの結婚を祝ってくれないのかな?」

「殿下がお姉様と結婚したら、殿下はもう屋敷に来てくれないじゃないですか。嫌です。私はもっと殿下と話がしたいんです。何故、私とお話して下さらないのですか!」

「ミリア!殿下になんて事を!ああ、殿下、ミリアは私がなんとかしますので…。重ねてお詫び申し上げます!」


ハイデリヒ侯爵が顔真っ青にしながらミリア嬢を止めるが、彼女は涙を零しながら叫ぶ。


「どうして、どうしてですか!どうして殿下は私を選んでくれないのですか!!私の方が殿下を愛しています!お姉様よりも私の方が殿下の婚約者に相応しいです!!」

「私が愛しているのはミリア嬢ではなく、エレインだ。例え、ミリア嬢が私を愛していると何度言われようが、君を選ぶ日は一生来ない。」


エレインの肩に手を置き、私の胸に引き寄せる。驚きを隠せない表情でエレインが私を見つめてきたので、頷くと笑みを浮かべた。これでエレインの不安は消えただろう。


―――しかし。


「嫌!!いやいやぁ!!なんでなんでなんで……なんで、お姉様なのよぉ!!」


ミリア嬢は癇癪を酷く起こした。近衛兵に命令を下そうとした時、痛々しい音が響いた。リアンがミリア嬢の頬を叩いたのだ。その場でへたり込み、放心状態のミリア嬢にローズマリー侯爵夫人が駆け寄る。


「ミリア、ミリア…!!ああ、なんて事。頬が赤く…。あなた、私の娘に何を―――。」

「黙れ。」

「ひっ……!?」

「何が“私の方が殿下を愛しています”だ?なら、当然その覚悟もあるんだろうね?殿下の婚約者になるという事は王妃になるという事。王妃とは国母で、陛下と共にナプトラス王国の未来を築く唯一の同伴者。それに王妃になる為には普通のマナー教育よりも厳しい教育が待っているんだ。それでも――殿下の婚約者になりたいの?」

「わ、たしは……ただ、殿下が好きで…。」

「好きとか愛とかその前にそれがどれだけ責任重大か考えた事はあるの?ハイデリヒ侯爵、私はこの子が哀れでなりません。何故、もっと早く行動を起こさなかったのですか。」


リアンの冷たい言葉にハイデリヒ侯爵は目を虚ろにし、ミリア嬢と同じ様にへたり込む。


「―――ええ、あなたの仰る通りです。私が、もっと早く…気付けば…。いえ、自業自得ですね。すまない、マリー。」

「あなた、何故謝るのですか。ミリアが打たれたのですよ。あなた、見た事無い顔だけど家名は!?」

「あ、私、貴族ではないので家名とか爵位は持っていません。」


その身なりで!?明らかに貴族の正装にしか見えないが。


リアンは口に手を当て、考える素振りをしてから私を見た。


「……どうしようね、カルセイン。この大広間、貴族達が沢山居るけど。でも、いきなりやるのもなぁ…。」

「いや、私に聞かれても困るんだが。いつもの喋り方に戻ってるぞ。」

「カルセインよ、その貴婦人はお前の知り合いなのか?」


父上が口を挟んできた。このまま事実を言っていいのか。正しい答えはどれなのか、リアンに視線を向けると笑顔で頷き、「どうぞ、カルセインのお好きに。」と言われた。これまでリアンは私に助言や他愛ない話をしたり、身内には言いづらい話もリアンは黙って話を聞いてくれた。


「父上、リアンは数少ない私の大事な友人です。いえ、友人と言うより、私の中では親友と呼びたいくらいでしょう。リアンが私と出会ったのは10歳の時です。」


私の答えに父上は目を丸くする。リアンを凝視してから、また私に視線を戻す。


「いつ、どこで会ったのだ。私はこれまでにその貴婦人をこの目で見た事を一度もないのだが…。」

「自室で勉学していた時に、窓の外からです。リアンは私以外の人には見えない様に魔術を掛けていました。」

「は……?その様な魔術は聞いた事がないぞ。いや、というか窓の外から?何故、そんな得体の知れない者を今まで黙っていたのだ。」

「せ……洗脳よ!」


今までローズマリー侯爵夫人の腕の中で黙っていたミリア嬢がリアンを指差す。


「殿下は洗脳されているんだわ!!それでお姉様を好きになる様に洗脳魔術を掛けたのよ。そうよ、何かおかしいと思ったわ。だって、私の方がお姉様よりも可愛いもの。その人は……悪魔なのね!!」


ミリア嬢の言葉に場がざわめき、貴族達は悲鳴を上げ、近衛兵達がくるりとリアンを囲み、刃を向ける。違う、リアンは私に洗脳を掛けていない。エレインを好きになったのは私の一目惚れなのに。刃を向けられているが、リアンは一歩もそこから動かず。何故、逃げないんだと疑問に浮かびながらその光景を眺めると、リアンは腕を組んだ。


「ふむふむ。成程~、そうくるか。」

「リアン、何をしているんだ!?逃げろ!!」

「危険です、殿下。お前達、殿下をお守りしろ!」

「ねぇ、カルセイン。私、嬉しかったんだよ。まさか、私を親友だと思ってくれたとはね。だから―――。」

「捕らえろ!!」


近衛兵の一言に刃が一気にリアンに突き掛かる。


「この場に居る皆さんに()()姿()をお見せしようではないか。」


その瞬間、近衛兵達が持っていた刃は勝手に宙に浮かび、リアンの身体が白き光に包まれる。眩しいという感じではなく、目を開けられるくらいの輝きで。そんな光の中で姿がどんどん大きくなり―――バサリと()()()が広がった瞬間にその姿を披露した。


身体は白鱗で覆われ、漆黒の双角を生やしており、獣眼である金色の瞳が輝く。


『こっちが真の姿です。皆さん、初めまして。竜のリアンと申します。』


ぐるるると喉を鳴らし、目を細める。まさか、とは思い天井画を見た。その竜は特にエレインが気に入っていた白き竜――そのものだったのだから。


『私、一度もカルセインに洗脳を掛けた覚えはないんですけどね~。』

「り、リアン…なのか?」

『そうそう。ええと、ほらあの天井画に描かれている竜と同じ姿だね。人間の姿になったりする事も出来るよ。』


すると、父上が倒れた。


「父上!?」

「陛下!?お気を確かに!!」

「う、む……少しだけ目眩がしただけだ。はっ…!い、いかんっ。」


父上は顔を真っ青にしながらも、竜の姿のリアンに深く頭を下げた。


「私の失言を含め、我が国の者が大変失礼をした!!」


このナプトラス王国は竜を崇拝している。もし、竜がモグリ草を持ってこなかったら、この国は滅亡したのかもしれないのだから。リアンの正体を知らなかったのは無理もないが「得体の知れない者」と言い、竜に刃を向けたという事は竜の怒りを買ったという証。リアンが『顔を上げて下さい。私は気にしていませんので。』と言うと、父上は涙を浮かべる。


「寛容な心遣い、感謝する…。」

『うむうむ。あっ、そうだ。エレインちゃん。カルセインは君が12歳の時に王家主催のお茶会で一目惚れしたから、それを信じてあげて欲しいな。次の日にカルセインの婚約者になったと聞いた時は吃驚したでしょ。』

「え……。」

「リアン、何故バラすんだ!?」

『いや、だって洗脳とか勘違いしてるかもしれないから事実を言わないと。』

「だからってこの場で言わなくてもいいだろう…!」

『今、言わなくていつ言うの?今でしょ!!』


竜の姿で叱責されるとは思わなかった。まだ理解が追い付いてないエレインの手を取り、優しく包む。


「……そうだよな、リアンの言う通りだ。エレイン、私は君に惚れてしまったんだ。私は君と共にナプトラス王国の未来を築きたい。」

「殿下……はい、私も同じ気持ちです。一緒にこの国を…守りましょう。」


鮮やかな翡翠色から涙がぽろぽろと零れる。宙に浮かんでいた刃を近衛兵の手に戻し、再び人間の姿になるリアン(男装で)が拍手をすると周りの人々も釣られ、未来の陛下と王妃に拍手喝采を送った。


―――少々騒ぎはあったが、こうして夜会は無事に終わりを告げた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



あれから、2ヶ月が経ち――私は多忙な日々を送っている。エレインと会う回数も減っている。「何故、こんなに忙しいんだ。」とぼやいたら、シーモアは舌打ちしながら次の書類の山を執務机に置いた。しょんぼりとしながら書類に目を通し、ペンを走らせる。


「それを今日中に終わらせる事が出来たら、明日はハイデリヒ侯爵家に行きましょうか。」

「えっ!?分かった!!」


シーモアはやれやれと言いながら、執務室を退室する。


ハイデリヒ侯爵家はどうなったかと言うと、問題は無事に解決した。ミリア嬢は偽りの証言で竜であるリアンを悪者に仕上げ、王家を誑かしたので修道院送りとなった。罪を軽くしたくてもあの性格では改心は難しい。修道院は山奥にあり、とても厳しいところなので元貴族にとっては厳しい生活が待っている。


ローズマリー侯爵夫人は離婚された。何故、離婚しなければならないのか、何が悪かったのか全く理解出来ていなかった。ある意味、彼女も哀れだろう。もっと視野を広げていたら変わっていたのかもしれない。ハイデリヒ侯爵にとっては渋々の決断だろうな。だが、ダニエルが教えてくれた。


『リアン様がたまに父上と一緒に酒飲みに付き合い、愚痴を聞いてくれています。飲み過ぎは身体に毒なので、魔術でこっそりアルコール度を薄めているそうですよ。』


母親が居なくなったエレインには私の母上が沢山可愛がってくれる筈だ。この間、新しいドレスの採寸に付き合っていたし。


リアンはお茶会や夜会に行く時は必ず男装で付いてくる。令嬢達に囲まれたり、男性パートでダンスをしたりするのでファンクラブが出来ている。何故ドレスを着ないのか聞いたら、「分かってないね。男装にはロマンが詰まっているのさ。」と言われたが意味が分からない。



そうこうしているうちに月日は流れ―――ナプトラス王国にある大聖堂で結婚式が執り行われた。純白の衣装を身に纏い、エレインと共にバージンロードを歩く。神父の前で愛の誓い、指輪交換、口付けを済ませると参列者から盛大な拍手と祝いの言葉が飛び交じる。すると、大聖堂を光が包み込む。それはリアンからの祝福だった。


「おめでとう!!これは私からの祝福だよ。」


きらきらと光る青薔薇の雨が大聖堂に躍り、祝福の光を灯す。嬉しくて泣いてるエレインをそっと抱き寄せ、リアンを見る。




私の親友は料理を食べるのが好きで、言いたい事はハッキリと言う。


そして―――竜だった。



ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

可愛い妹に婚約者を奪われるのって婚約者がビシッと言わないとすれ違いが起きてしまうなって思います。



~おまけ~


リアン:須藤莉愛すどうりあん

転生者で前世は日本人女性でゲームオタク。ブラック会社に勤めていたが、残業続きやパワハラのせいで20代の若さで死んだ。哀れに思った神様が第二の人生を与える為に異世界転生を行う。

どんな人生を過ごしたいか聞かれたので、


「自由が欲しい。」

「傍観者になりたい。」

「権力には更に上の権力でぶつけたい。」

「人間はぶっちゃけめんどいから、人外に転生したいな。不老不死な竜とかかっこいいよね。あ、人間姿にもなったりとかいいよね。」


と無茶振りなお願いを言うが、神様はあっさりと承諾したので大喜びした。竜を崇拝してる国なら住みやすいだろうと言われたので、そこに行くと決める。

最初から大きい竜の姿で、魔術は社畜で鍛えた精神力のお陰で簡単に使いこなせた。人間姿がめっちゃ綺麗なお姉さんなのは神様の趣味。前世は身長161cmだったが、今世では175cm。前は山の中で寝ていたが、今は王宮で寝室を用意してくれたのでそっちで寝てる。美味しい料理を食べたり、令嬢達から恋の悩みを聞いたり、今世では楽しいニートライフを過ごしている。


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― 新着の感想 ―
[良い点] リアンかっこいいー!!ファンクラブ出来るのも納得!!彼女とダンス出来た令嬢はいい思い出つくれただろうなあ…。 このあと子供やその子供の代までだらりと見守るのかな?飽きたら山に引っ込みそうだ…
[一言] 諸悪の根源は、あのおかんかー。 「毒親」って言う辺りで、転生者かな?と思ったけど、さらに一捻り加えてくるとは。たらこさんもおっしゃってましたが、伏線があったのに気がつかなかった事が一寸悔しい…
[良い点] 内容はとても面白かったです [気になる点] 言葉使いや、言葉選びがめちゃくちゃすぎる。 あと敬語も。
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