レビュアゝに成りたゐ。それも書かれた人が私を半殺しにした後ビヰルを奢つてしまゐたくなるやうな
こんなモノは嘘つぱちの出鱈目だと言われたい。
書いた奴は偏屈な唐変木のポツペケペエだと言われたい。
よく読むと分からないけれどもちよつと読むと酷く面白げに思ふ。
出来るならば、読む価値も無いと思われてゐるやうな短文にこそレビューを附けたひ。
何故ならばさういふ作者であればひとしきり激高した後、ビヰルくらいは出してくれさうだからである。(勿論ウヰスキーでも一向に構わなひ)
如何にも尤もらしく語つて時々参考文献なども引つ張り出してゐるのだが其れ等が全て嘘つぱちで、まるで其処らの人間に読ませるならばこのくらゐで充分だとでも云つてゐるやうな。
まるで行儀の悪い見物人がのさばつてひるところにわざわざ出掛けて行つて、自分が誰よりも行儀が悪くてのさばつてゐるやうな。
さうひうレビュアゝに私は成りたゐのである。
自分で書いた駄文にレビューを附けることが出来るのであれば疾の昔にさうしてゐる。
此処では其れは赦されてゐない。
しかもである。
かのやうなところでは、さのうようなインチキ・レビューは恐らく排除されてしまふのである。
これにはユーモアといふものが欠けてゐると云わざるを得ない。
私にこそユーモアが欠けてゐると云う意見もあろうが、其れは尤もな意見と思ふ。
だが人が何に面白みを感ずるかと云ふと、さうひう、所謂心根の捻じれのぶつかり合ひに依るものでは無いかと私は思ふのである。
常識の無い人間が、尋常では無い文を書く。
私は其れに面白みを感ずる人間なのである。
今まで尤もらしく書いてゐるこの旧仮名風の文であつても、これらは付け焼き刃のインチキである。
あゝ、こいつは阿呆だな。
さう思われても仕方のない文を私は今書いてゐる。
実際私は阿呆である。
尋常の精神を持つものであれば、そもそもがかのような文を世に出そうなどとは思わない。
だが私は堕落を極めた人間ではあるが、変人狂人に類する人間ではない。
かういう私にレビューを期待する人間こそが変人である。
あゝ、何処かにさのような変人が居ないだらうか。