なろうファンタジーTRPG
俺の名前はナロ・ヘイロー。どこにでもいる普通の選ばれし勇者だ。
なんか凄まじい冒険の結果、俺は魔王サー・クラウドの居城である魔王城まで辿り着いた。
「長く辛い道のりだった! しかし、それも今日で終わりだ!」
俺は魔王城に近づく。
「しまった! これじゃあ入れないぞ!」
魔王城の周りには深い堀があり、簡単には入る事ができないのだ。
俺は周りを見回し、使えそうな物がないかを探した。この辺りには人っ子一人住んでいないので、まともな道具が落ちている可能性は少ないだろう。判定値は厳しめに30点以下だ。
【道具が見つかるか】
30→62
失敗か!
門を確認してみよう。
上の方で繋がれている鎖を緩めると跳ね橋が降りる作りのようだ。あれを壊せれば門を通れるかもしれない。
流石に石は落ちてるだろう。判定値は80点以下だ。
【石が見つかるか】
80→54
成功。
手頃なサイズの石ころを見つけた。
これで鎖を破壊する事ができれば、橋が降りてくるんじゃないか?
石を思いっきり投げつける。弱い魔族なら即死するくらいの勢いで。
俺はコントロール良いし判定値は90といったところか。
【鎖を破壊できるか】
90→96
うっそだろオイ!?
手を滑らせてしまったため橋が粉々になって落ちた。もう二度と、魔王城と俺の間にある堀が繋がる事はない。
仕方ないからジャンプするか。
橋がなくなったおかげで飛び移れるようになったわけだしな。判定値は70。いや、ここなら好きなだけ助走をつけられるわけだし、80ってところだろう。
【飛び移れるか】
80→03
やったぜ。
超調子良くて二階部分まで跳んじまった。
……橋壊す必要なかったな。
「貴様、勇者だな! 覚悟しろ!」
しまった! 魔族だ!
戦闘フェーズに突入。不意打ち判定だから相手からの攻撃だ!
「くらえ勇者!」
魔族は鋭い槍を構える。
着地狩りをされた俺はバランスを崩している! 回避するには判定値20を下回らなくてはならない!
【魔族の攻撃】
50→100
確率どうなってんだよ! 運命の女神、オイ!
俺は特に何もしていないが、魔族は足を滑らせて階下に落っこちてった。あの下は堀だから助かるまい。
とりあえずはじめにする事は、周りの状況の確認だ。隠れられそうな物陰に潜んで、近くに他の魔族がいないが聞き耳をたてる。
ただ、俺は今までの戦いの中で右耳の聴力を失っている。ここの判定値は非常に厳しく20といったところか。
【聞き耳をたてる】
20→21
めっちゃ惜しい! おのれ妖怪!
◆
すっごい時間かかった。
道中で判定値80を四連続で失敗したせいで散々だった。魔王城に入ってからすでに十時間近く経過している。ダメ元で挑戦した判定値10に成功しなければまだ城の真ん中くらいだったろう。
「この扉の向こうに……魔王が……!」
扉の鍵は判定に失敗して壊した。力尽くで扉を開けるしかないようだ。俺は勇者なので、腕力には自信がある。巨大で頑丈そうな扉だが、判定値70は硬い。
【扉を開く】
70→23
結構いい数字出るな。この数字がもっと早く出ていればこんなに苦労しなかったんだがな。
「勇者よ、よくぞ来た」
でっかい魔族だ。ツノとか生えてめっちゃ強そう。
こいつこそが悪の権化魔王サー・クラウド。
この戦闘フェーズが、最後の戦いだ!
魔王と俺の速さは同じらしいので、イニシアチブを取る必要がある。相手よりも低い判定値を出せば俺の先制だ。
【どちらが先制か】
魔王→98
勇者→95
……やっべ。かなりダメな方の数字だわ。もっと早く出てたら危なかった。
ていうか魔王の数字やべえ。イニシアチブじゃなければファンブルじゃん。
ともかく先制攻撃はもらった!
「初手から全力で行く!」
使うのは最大火力であるなんかぶっとい斬撃が飛んでくやつ! 体力的に余裕があるうちに削れるだけ削らなくては勝ちはない!
【勇者の最大攻撃】
60→01
ここに来て最高の数字だ。クリティカル効果でダメージが倍になる! この攻撃は5〜13のダメージを与える。その二倍だ。
【ダメージ算出】
9×2=18
中々の数値だ。魔王の体力は50点なので、大ダメージだ。
しかし、それも魔王の回避が失敗した場合の話だ。
【魔王の回避】
50→100
足を滑らせた魔王は俺の斬撃に頭から突っ込み、顔面のど真ん中に俺の攻撃を受けながらぶっ飛ばされて背後の壁に衝突した。
それだけに留まらず、衝撃で崩れた壁や天井の装飾品が頭上に落ちて生き埋めとなる。
【追加ダメージ】
→5
すごくね? もう半分近く削った。
魔王弱いな。いや、なんていうか、運命に愛されてないな。
「ぬぅ〜、流石は勇者。こうでなくては面白くない」
瓦礫を軽々退かした魔王が偉そうにそう言う。もはや威厳もへったくれもないのにな。
◆
どこの世界にも、運がない奴っていうのは存在するよな。
そうじゃなかったとしても、運がない時っていうのは必ずある。
で、魔王はまさしくそういう類のようだった。
「よもや……よもや、このような事が……!」
三回ほど攻撃を行って、三回とも外した。魔王の判定値は80はあったので、結構な確率だ。
ちなみに三回のうちの一回はファンブルだった。
逆に俺の攻撃はことごとくクリティカルとなり、なんかその回避判定まで失敗していた。
「次で決めてやる!」
それがせめてもの情けだ。このままだとあまりにもかっこ悪すぎる。
【勇者の通常攻撃】
80→02
ここでクリティカルかぁ……まあいいけど。
「そう簡単に倒れてなるものか!」
悪い事いわないから倒れとけ。
【魔王の回避】
50→72
ほら、運命の女神も死ねと仰っている。
俺の攻撃は1〜6のダメージ。クリティカルでその倍だ。
【ダメージ算出】
6×2=12
「何ィ! 最大値だとォォオオオ!!」
お前の体力あと2しかねえんだから最大値とか関係ねえだろ。
「勇者! 見事……!」
嫌味にしか聞こえん。見事要素は一切ないぐだぐだ戦闘だった。
かくして、なんか平和は訪れた。
完全に運ゲの勝利だったが、ともかくとして世界は平和になった。
ただし、何故だかこの世界は定期的に魔王に襲われるため、決して安心はできない。
次なる魔王の出現に向けて、俺は運気を上げるために教会でお祈りとかするのだった。