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リクエスト企画。【ピックアップキャラクター:白鷺織姫編】闇を征く者〜織姫忍法帖〜 後篇

【三人称視点】


 贅を尽くした屋敷――もし、織姫が見れば「同じお金持ちでも冒険者ギルド総帥(ワールドマスター)とは違ってとても趣味のいい高級感ではないわね」という感想を呟きそうである――の再奥のこれでもかと金を使った悪趣味な部屋で、二人の男が対峙していた。


「お主も悪よのう」


「いえいえ、お代官様ほどでは」


 差し出される山吹色のお菓子(袖の下)……ではなく、仕掛け箱で二段目に金貨を詰めたものを受け取りニヤリと笑う。


 菓子箱を渡された男の方はカーン=アークダイン。超帝国マハーシュバラに統合された旧ファルディス王国のクリュベの街の代官であり、超帝国マハーシュバラに統合された後も統治権を以前と変わらず保有していた。

 出世の為に超帝国マハーシュバラの天下の大将軍に賄賂を送るなど、政治家らしい政治家だが、賄賂による出世が通用しない超帝国マハーシュバラでは恐らくこれ以上の出世は無理だろう。


 菓子箱を渡した方はソーエモン=エチゴーヤ。カーンとズブズブの関係にある悪徳商人。野良の悪徳商人で裏商人ギルド会議には所属していない。

 どこぞの大商人で優秀な差配人の久●衛を従える湊屋宗●衛門と同じ音のソーエモンの名を持っているが、こちらは裏商人ギルド会議に参加できるほどの財力を有していない、明らかな小物であった。


 もし、シャリス辺りが見れば鼻で笑いながら“十罪の王”辺りを差し向けそうだが、残念ながらこの地は小物でも我が世の春を謳歌できるほど猛者が存在しない世界……低レベルな者達が低レベルの金でウハウハできる世界なのである。

 ……まあ、そのお金も領民達の血と汗と涙の結晶であり、本来このような下衆どもの手に渡るべきではないものなのだが……。


「それで、女子衆の方は?」


「ああ、すっかりと調教してある。特上を手放すつもりはないが、上物までなら売ろうではないか。好きなだけマーケットに流すが良い」


 カーンとソーエモンは下卑た笑みを浮かべた。

 カーンが手を叩くと扉が開き、性奴隷として調教された町娘達が現れる。


 カーンとソーエモンはこうして会う度に味見と称して調教した町娘達を弄んでいた。

 違法な薬などを使って強制的に感度を上げるなどの手法を取り、中には精神が壊れてしまったものもいる。

 薬は魔法で抜けたとしても、壊れた精神まではファンタジーの技術を持ってしても直すことはできない。


「ところで、この屋敷は本当に安全なのでございましょうか? 確かカーン様の部下のセカーマという男が旅人の娘にやられたという話を聞きまして……」


「耳聡いな。その小娘はいい体つきをしていたようだ。奴隷に落とせたら嘸かし素晴らしいだろう。ああ、安心するが良い。この屋敷には最強の用心棒を筆頭に、大勢の部下がいる」


 ウェスタンハットを被った銀髪のロン毛の、マフラーで顔を隠した()の姿を脳裏に浮かべるソーエモン。


「それでは、我らも安泰でございますね」


「そうだろう? 用心棒ロッドン=シケコカメが負けることなどあり得ないからな。ハハハハハ」


 酒を煽り、女を抱くカーンとソーエモン。その姿をロッドンは苦虫を噛み潰したような表情で見つめていた。



【白鷺織姫視点】


 深夜――忍装束に着替え、計画通り宿を抜け出し、夜の街を走る。

 鉤縄を使って塀を登り、屋敷の中に潜入……計画通りね。


 まずは運良くあった茂みに隠れて巡回を確認する。

 三十分に一回程度、ランタンを持った二、三人が見回りをするくらいだから、これくらいは簡単に抜けられそうね。


 巡回の隙を突き、庭の中を駆け抜ける。屋敷はかなりの広さがあるらしく、母屋、離れ合わせて三つ建物があるみたいだけど、明らかに真ん中の一番大きな屋敷にカーンがいる……本当はそこに乗り込むべきなのだけど、私が向かうのは離れの一つ。

 やはりこっちの警備は手薄だったわ。というより、誰もいなかった。全く無用心ね。


 この屋敷に捕らえられている町娘達は、普段はメイドとして扱われている。扱いは専ら性奴隷、実際の屋敷の仕事は全て男性使用人が回しているという噂を宿屋で聞いた。

 ローラさんは本気で屋敷に侵入して親友のノエラさんを救出するつもりで情報を集めていたそうだ……凄いな、勇気あるな。


 離れに入り、そのまま部屋の一室に飛び込む。

 予想通りメイドの部屋だったようだ……奴隷というから最悪の扱いを受けているかと思っていたけど、案外綺麗にされているわね。


「お借りします」


 今はいないこの部屋の主さんに断り、箪笥を漁ってメイド服を手に入れると忍装束から着替え、忍具をメイド服の中に隠し持つ。

 忍装束でいると暗闇の中では目立たないけど、屋敷の中ではかえって目立ってしまうからね。やっぱり服は現地調達しないと。


 離れを脱出して今度は母屋に移動する。こちらは厳戒態勢だけど……。


「まだ残りがいたか。とっとと急げ、カーン様とソーエモン様に目一杯奉仕してくるんだな」


 見事に私を性奴隷と勘違いして呆気なく屋敷の中に通したセカーマ=モコーノ。流石は小物……チョロ過ぎるわ。


 外で警戒しているからか、廊下の巡回は数人だった。

 素早く天井裏に上り、そのままカーンとソーエモン? まあ悪徳商人辺りよね? のいる部屋を目指す。


「ここ、ね」


 部屋は淫らな空気に包まれていた。……これは媚薬を使った御香の匂いかしら? 面倒ね。

 超帝国マハーシュバラの防具で買ったガスマスク(本当にここって異世界なのよね? 何故か散弾銃とか戦車とか明らかに近代兵器な武器が普通に売っていたけど……)を装着し、飛び降りる。


「…………む、なん、だ? メイド……? ほら、そんな服着てないで裸にな……れ」


 ……二人とも酔っ払っているのかしら? 賊に侵入されるなんて体たらく……まあ、都合がいいのだけど。

 私は懐から苦無を取り出すと、カーンの背後に回って首に苦難を当て。


「……動くな」


「なっ、何奴!? 者共出会え出会え!!」


 あっ、これ動くだけじゃなくて喋る方も止めないといけなかったわね。しくじったわ。

 そして、今ので酔い覚めてしまったらしい……とりあえず、【氷遁】を仕組んだ苦無を投げて御香を凍結させておこう。


 さて、扉が開いて期せずして換気が完了した。媚薬の煙で戦えなくなることはないだろうけど、もう少しマスクはしておこうかしら?


「己何奴!?」


「はあ、首に苦無を近づけられてよくそんなに声を出せるわね。……私はべガ、ベガ=リュラ。ただの忍びよ!」


「そやつ、恐らくくノ一でございます! しかも服で隠れていても分かるほど相当豊満な熟した果実を持っています。それに、くノ一といえば仕事でエッチなことをすると聞いた覚えがあります。きっと基礎はあるので性奴隷として応用を効かせることもできるかと……」


 なんなの、この人達!? 首に苦無押し付けられて絶体絶命なのに、なんで取らぬ狸の皮算用で私を捕らえた後のことを考えているの!! なんなの、頭膿んでいるの!!

 というか、確かにくノ一は房中術を使うと言われているけど、この世界のくノ一は普通に潜伏系と暗殺系と【忍術】と呼ばれる特殊な技術体系を持つ武器攻撃職忍者(シノビ)の名称の一つで、基本性技系のスキルは持たないもの……誘惑の術を使うのは創作の中か地球人の持ち込んだ文化くらいだって偶然知り合ったくノ一の御子左優姫さんが言っていたわ! この人達、創作と現実の区別もつかないのかしら? もしくはあまりくノ一についての情報を持っていない?


「さあ、ロッドン=シケコカメ! その小娘を捕らえろ!」


 ウェスタンハットを被った銀髪のロン毛の、マフラーで顔を隠した、いかにも西部劇に出てきそうなガンマン……しかもハーモニカ吹いて登場しているし……用心棒なのかしら? とても個性的な人ね。


 まあ、暴れられる方が好都合。謎の襲撃者によってカーン邸が襲撃されたとなれば、屋敷に当然捜査の手が入ることになる。

 そうなればおしまい……よね? まさか警察組織ともズブズブの関係とかないわよね? そうなったら本当に葵の印籠が必要になるわよ!!


「お前には恨みはないが、これも仕事なんでな」


 あら、声が高いのね。それに、服も少し大きめのサイズを選んでいるのか違和感がある……う〜ん、まさかサラシを巻いて胸を押さえつけている男装女性とか? そんなことないわよね?


「ファニング」


 シングルアクションのリボルバーで、両手を使って連射する方法……だったかしら?

 というか、撃つのね。とりあえず、カーンを肉壁にして防ごうかしら?


「う、撃つな!!」


 弾丸は二発とも逸れて壁に命中。やっぱり威嚇射撃だったみたいね。

 ……というか、依頼主諸共撃つとか意味が分からないわ。


「……貴女、雇われたのか何かは知らないけど、なんでこんな奴に与するのかしら?」


「五月蠅い!! 俺は金を稼がなければならない! 生きていくためには悪事まであっても手を貸さなければならない。貧困者の苦しみがお前に分かってたまるか!」


 弾倉から銃身あたりを持ってグリップを相手に突き出し、銃を渡すふりをしながら一瞬の隙をついて銃を回転させて相手を撃つ……ロード・エージェント・スピンかしら?


 このままゴミなオッサンを盾にしていても埒があかない。とりあえずゴミなカーン(オッサン)ソーエモン(オッサン)の方に蹴り飛ばして……このロッドンとかいう性別不詳(もうほとんど女で決定でいいと思うけど)の用心棒をどうにかしないといけないわね。


「お、おのれ! 選民の我らにこんな仕打ちを!! 必ずお前は後で徹底的に犯してやる!!」


「そ、そうだ!! その時になって泣き喚いても遅いんだぞ!!」


 ……なんなのよ、この負け犬と遠吠えは……例え勝ったとしてもそれは貴方達の手柄ではないのに。

 ホント、いい性格しているわよね。嫌になっちゃうわ。


「トリプル・ショット!!」


 ファニングの三発バージョンを躱しつつ、手裏剣を投げる……しかし、寸んでのところで避けられた。

 ついでに威嚇の意味を込めてカーンとソーエモンにも苦無と手裏剣を投げておく。よし、青褪めた。


 ところでトリガーガードに通した指を支点として、拳銃を回転させる魅せプレイ……ガンスピンをなんでこのタイミングで使ってくるのかしら?

 そして、そこからのファニング……あっ、奇襲攻撃だったのね。


「トリプル・ショット!!」


 弾丸を避けつつ苦無を投げる。


「も、者共!! や、やってしまえ!!」


 怯えながらも命令を下してロッドンとの一対一の戦闘に部下を乱入させるカーン。

 誰一人殺さずに罪を償わせたい――その方針をとっている私は胸元から煙玉ならぬ眠玉を取り出して襲い来るカーンの部下達の攻撃を往なし、弾丸を往なし、カーンの部下達に投げつける。

 睡眠効果のある煙玉の煙を至近距離で浴びてカーンの部下達は瞬く間に撃沈。起きたら刑務所(ムショ)の中かしら?


「さて……まだやるのかしら? ガンマンのお姉さん?」


「……バレていたか」


 マフラーを外し、隠れていたつけ髭を外したガンマンは十六、十七歳くらいの美少女? 美女だった。

 でもその表情は良くも悪くも平和な世界に慣れ親しんだ私達とは違う。

 命のやり取りをしなければならない、危険と常に隣り合わせの世界で生き続けなければならなかった者が持つ冷たい双眸。


「女だから、手加減をしてやるとでも言いたいのか?」


「いいえ、違うわよ? 私も女だし、そんな理由で貴女を舐めて火傷をするつもりはないわ。……でも、貴女が悲しそうな顔をしているから、私は貴女と戦いたくないと思った」


「私は悪いことで生計を立ててきた。大勢の女達が弄ばれる姿を尻目に、男のフリをして金を稼いできた。そうしなければ私はきっと死んでいた。……悪いことだとは理解している。だが、私にとって仕事は絶対だ。一度金銭を受け取ったらどんな悪事の片棒だって担ぐ。闇の世界も信用が第一、それを失えば私に価値はなくなり、身売りをせざるを得なくなり、飽きられたらゴミのように捨てられる」


 まずいわね……このままだとこの人と戦ってしまうことになる。

 彼女は確かに悪い人かもしれない……でも、そうせざるを得ない環境にあった。

 私にそんなことを言う権利はないことは理解しているけど、もう一度やり直すチャンスはあってもいいと思う。


 何かないかと探り、手が硬いものに触れた。

 これなら、この状況を変えられる!! 私と彼女、どちらかが死ぬまで終わらない不毛な戦いを避けることができる。


「貴女、用心棒なのよね? それなら、今だけ私に雇われてくれないかしら? 報酬は今夜分だけだけど、金剛金貨一枚」


「金剛金貨一枚!?」


「そうよ。私に雇われるのなら、もうこんな仕事をする必要がないわよね?」


「ほ、本当にいいの? 金剛金貨一枚なんて大金を……」


 もしかしたら、あの手紙の差出人はここまで計算尽くだったのかもしれないわね。嗚呼、結局タダ働きになっちゃったわ。

 でも、悪い気はしない。私は金剛金貨一枚で失う必要のない命を一つ救えるのだから。


 最後にカーンとソーエモン、その他部下達を縛り上げて部屋に放置しておく。

 その後、騒ぎを聞きつけてノコノコやってきたセカーマに純粋なカプサイシンを封じ込めた煙玉ならぬ辛玉を投げ受けておいた。……宿屋では随分なことを言ってくれたし、あの舐め廻すような視線は本当に生理的嫌悪感を抱いたからね。


 私達はヴィヴィアンヌさんと共にカーン邸を脱出。途中でヴィヴィアンヌさんと別れて宿屋に戻り、次の朝に宿にやってきた客と宿屋に泊まっている客として偶然を装って再会した。



 用心棒ロッドン=シケコカメことヴィヴィアンヌ=シュレイジァさんは辺境の生まれなのだそうだ。

 元々は家族と共に農家を営んでいたそうだが、悪徳領主……ではなく、降って湧いた天変地異……要するに災害ね。で、父親と母親を亡くし、たった一人の妹と露頭に迷うことになった。


 最初は冒険者ギルドに所属して稼ぐつもりでいたけど、初心者冒険者のヴィヴィアンヌさんの微々たる稼ぎでは妹を養うことはできず、ヴィヴィアンヌさんは困り果てている中で偶然暗殺ギルドに所属する男と出会い、そこから裏の仕事をするようになったそうだ……うん、明らかに初心者で稼ぎの少ない訳あり冒険者に対するフォローをしない冒険者ギルド側の責任よね。まあ、あれだけ人数がいるのだから初心者一人一人にフォローを入れるのは難しいのだろうけど。


 ヴィヴィアンヌさんはその後、闇の世界との関係を断ち、冒険者になった。

 冒険者は犯罪歴があるとなれないルールなんだけど、まあ私の伝手を利用してね。知り合いに冒険者ギルドの最高責任者がいるっていうのは色々と都合がいいものね。


 初心者からのスタートには変わらないけど、稼げるようになるまでのお金はある。近々妹を中央都市ヴィシュヌの借家に呼ぶつもりだとヴィヴィアンヌさんは笑顔で話してくれた。やっぱり、女の子には笑顔が似合うと思う……偏見かな? でも、ヴィヴィアンヌさんは絶対に笑っていた方がいいと思うわ。


 そうそう、事件の顛末を話さないといけないわね。

 あの後、私達はカーンの邸を後にした。そして翌日、まるで示し合わせたかのように超皇帝宮殿キャッスル・マヘーシュバラから国防陸軍――この世界では警察の意味を兼ねている軍事組織の捜査員達が派遣され、事件の調査ということで邸を捜索し、これまでのカーン達の悪事が白日の下に晒されることになった。

 勿論、全員お縄になったわ。……何故か、野次馬の中に紛れ込んでいた私とヴィヴィアンヌさんに捜査員を取り仕切っていた佳奈さんっていう女性軍人さんがウィンクをしていたけど……もしかして、あの依頼書を送ったのって……しかし、凄い魅力的だったわね。仕事のできる女の人って感じで……しかも、物凄い美人さんだったし。


 囚われていた女性達は治癒師の【回復魔法】や魔法薬を使って違法な薬は抜いたそうだけど、完全に回復することは不可能だった。軽度の人はPTSDを発症してしまった人がほとんどで、重度の人は精神が崩壊して二度と普通の生活には戻れない者も多いそうだ。

 そして、ノエラは重度の方だった。ただ快楽を求めて生きることしかできない……そこまで壊れてしまった少女に私達がしてあげられることはない。


 ローラさんは他の囚われていた人達と同じように責任を持って全員の面倒を見ると言ってくれた佳奈さんの誘いを断り、友達の名前や顔すらも忘れてしまったノエラさんを、ローラさんは辛抱強く世話している。……いつか、ノエラさんが元に戻ってくれる日を祈って……途轍もない奇跡が起こらなければ無理だろうけど、それでノエラさんを捨てられるほどローラさんとノエラさんの関係は深い。


 いつか、ノエラさんとローラさんが元の関係に戻って、再び友達として普通の少女らしい日常を送れる日が来てくれたらいいな、と思うわ。



「織姫さん……どうしたの、ボーっとして」


「ごめんなさい、白崎さん。昔のことを思い出していまして……」


 私はクラスメイトと合流して、裏商人ギルド会議本部に潜入した。

 私が苦労してようやく倒した悪代官と悪徳商人……あの二人が小物に見えるほどの強大な組織――この世界の闇の世界そのものを相手取りながら、顔色ひとつ変えない草子君は本当に凄いわよね。


 この世界にはノエラさんのような境遇の人達がいっぱいいる。もし、この戦いで私達が勝利できれば、ノエラさんみたいな人達が今後生まれないようにできるかもしれない。

 あの時とは違う。今回は完全に草子君に頼りっきり……でも、草子君ならきっと私よりも上手く……いえ、完璧にやってくれるわ。


 白崎さん達が草子君に想いを寄せるのも納得がいく……確かにここまで実力があって、計算高くて、面倒くさいといいながらもなんだかんだで私達の想いを汲んでくれるやさしさがあるひとなんて、そうそういないわよ。


 その後、私達は思いもよらない展開を経て裏商人ギルド会議本部を壊滅させることになる。

 組織のトップとナンバーツーは倒せなかった。でも、結果的にそれで良かったのだと思うわ。


 ヴィヴィアンヌさんのように悪に堕ちざるを得なかった人がいるように、悪の世界にも色々な人がいる。

 シャリスさんもアルフレートさんも、カーンのような外道では無かった。広い視野で行動した結果、裏商人ギルド会議という組織を作り上げ、寧ろ闇の世界の暴走を食い止めていた……そういう人達だった。


 草子君はいずれ、アルフレートさんと戦う。

 互いのエゴを掛けてぶつかり合う……互いに互いを気に入っていながら、友達の関係にありながらも対立をしないといけないというのは、きっとお互い辛い筈よね。


 その戦いはきっと壮絶で、悲しいものになる。

 でも、私はその戦いから目を逸らさずに見なければならない。


 私が依頼を通して関わりを持った裏の世界との因縁――草子君とアルフレートさんの戦いは、きっとその終着地点になる筈だから。

 ノエラさんとローラさんのためにも、その結末を見届けないといけないわ。

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