異世界転生して悪役令嬢になった場合は破滅ルート回避に必死でほとんど悪役していないから赤と青どっち切っても止まらないっていう鬼畜な時限爆弾を送る必要はない筈だ。
異世界生活十一日目 場所フィージャ草原
【高野聖視点】
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NAME:高野聖 AGE:13歳
LEVEL:60 NEXT:4100EXP
HP:0/0
MP:1500/1500
STR:1720
DEX:1595
INT:1800
CON:0
APP:60
POW:1650
LUCK:200
JOB:爆弾職人、幽霊、魔法師、冒険者
TITLE:【迷宮踏破者】、【爆発物取扱上級者】
SKILL
【驚かせる】LEVEL:35
【爆弾作成】LEVEL:25
【四大魔法】LEVEL:1
【氷魔法】LEVEL:1
【雷魔法】LEVEL:1
【木魔法】LEVEL:1
【金魔法】LEVEL:1
【精神魔法】LEVEL:1
【影魔法】LEVEL:4
【恐怖耐性】LEVEL:1
【マルドゥーク語】LEVEL:1
【クライヴァルト語】LEVEL:2
【マハーシュバラ語】LEVEL:1
【エルフ語】LEVEL:2
【窯焼】LEVEL:1
【焼物作り】LEVEL:1
【暗躍】LEVEL:31
【潜伏】LEVEL:31
【隠形】LEVEL:31
【忍び歩き】LEVEL:31
【変声】LEVEL:10
【暗視】LEVEL:35
【索敵】LEVEL:35
【望遠】LEVEL:35
【気配察知】LEVEL:35
【幽体離脱】LEVEL:1 使用不可
【ポルターガイスト】LEVEL:55
【鬼火】LEVEL:55
ITEM
・懐中時計×5
・時限爆弾
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後3000あります。
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順番的にはあたしの番なんだけど、ステータスを見た限りでは特に教えてもらうことも無いね。
でも、他のみんなは草子君に教えてもらったのにあたしだけ断るのは勿体ない。
…………あっ、そうだ。草子君にアレを渡して反応を見てみよう。そして、意見を聞いてみよう。
「なんか今更俺が先生面して聖さんに何かを教えるってのは違う気がするけど、まあリーファさんにまで教えて聖さんだけには何もしないってのは不公平な気がするからできる範囲で教えるけど……レベル六十にもなって今更教えてもらうことってある?」
『あたしは草子君と一緒にいる時間が長かったし、色々と教えてもらう機会も沢山あったから今回は必要ないわ。その代わりに草子君に渡したいものがあるの』
素材がなくても簡易な爆弾が作れる【爆弾作成】。もし、何か素材を使えばもっと高等な爆弾が作れるかもしれないって時計を素材にしたら本当にできちゃった。
「これは……またベタな時限爆弾だな」
赤と青の日本の線に繋がれた懐中時計と爆弾。――そう、映画ジャガーノートで用いられたのを最初に様々な作品で登場したベタ中のベタな時限爆弾! 赤と青、どっち切る? 時限爆弾なのです!!
「……あっ、これ動いているな。赤か青かと見せかけて、実はピンクだったとかそういうのは無いんだよな?」
『勿論、赤と青のコードしかないよ! 制限時間は十分、早くしないと爆発しちゃうよ!!』
「マジで爆発させる気かよ! てか、流石に間近で爆弾爆発したら流石にステータスがぶっ壊れてても死んじゃうよ!!」
と叫びながらも淡々とエルダーワンドをニッパーの形に変化させて、青と赤のコードを目を皿のようにして眺めている草子君……ふふふ、どっちを選ぶかな?
「こういう二択は作品によってどっちのコードを切ればいいか違うからな。じゃあ、青で」
ふふふ、青いコードは時計のカウントが高速になる奴だよ。一秒で針が十秒分進むっていう制限時間ゴリゴリ削る方だね。
「ちっ、カウントが早まりやがった! ということは消去法で赤いコードが正解だな!!」
残念でしたぁ! 赤いコードは切ると爆発までの残り時間が十秒になる奴でした!! 私は一言も赤と青のどちらか正解の方を切れば爆発が止まるとは一言も言ってないのです!!
「――なぁんてな! さっきの【看破】でこの爆弾がどっちを切っても不正解な時限爆弾であることは分かっていたよ!! 〝悪魔の王を封じる極寒の最下層より、摩訶鉢特摩の洗礼を与えよ〟――〝コーキュートス〟」
時限爆弾の爆焔ごと凍結させられ、結果時限爆弾は無効化されちゃった。
……まあ、こうなることは最初から分かっていたけどね。というか、多分至近距離で爆発しても草子君なら無傷だと思う。
というか、大気ごと凍結させてたけど、もしかして〝コーキュートス〟ってエターナルフォースブリザードなの!!
「で、この時限爆弾のどこに有用性があるんだ?」
流石の草子君も分からないか。そうだよね、寧ろこれを見ただけで一発で用途を当てれたらそれはそれで恐ろしいよ!
『この爆弾は爆弾という概念を知らない異世界人にも効果的だけど、この爆弾が最も効果を発揮するのはこの赤青爆弾の概念を知っている転移者と転生者を相手にする時なのです!! 特に性格の悪い乙女ゲームの悪役令嬢とかに送りつければ効果覿面だよ!!』
「確かに最近、乙女ゲームを基にした異世界の悪役令嬢に転生するって異世界ものは溢れているけど、そもそもこの世界はカオスであって断じて乙女ゲームを基にした異世界じゃないから!! というか、大抵悪役令嬢の転生者って悪役してないからッ! 寧ろ破滅ルートを回避しようとしてるから、悪役的な振る舞いは全くなくなるから!!」
いい考えだと思ったんだけど草子君にダメ出しされちゃった。
でも、この爆弾って結構有用だと思うけどな。赤と青のコードを見せられたら絶対どっちかを切ろうってするじゃん。本当は爆弾置いてとっとと安全なところに逃げるべきなのに、爆弾処理をしたことのないのにちょっと知っているからってチャレンジして、徒らに制限時間を減らすって結構精神的にくると思うけど。
「まあ、送る相手は間違っているけどコンセプトは結構いいと思うぞ。対転生者、転移者最終兵器的な感じで。……まあ、俺は特に転生者や転移者とことを構えるつもりは更々無いから使わないと思うけどな」
でも、構想自体は悪くなかったみたい。初めて草子君に真面に褒められた気がするよ。
よし、この調子で新作爆弾ガンガン作っちゃうぞ!
◆
とりあえず全員に戦い方を教えたので、エルフの里に到着するまでは聖達に戦ってもらう。
うん、めちゃくちゃ楽だ。俯瞰で見たら女子に任せて楽するヒモ男に見えるかもしれないが、そもそも俺はこれまでの戦いのほとんどを引き受けてきたのだから、そろそろ一休みしてもいい筈だ。
それに、技術は実戦でこそ磨かれるものなので女子達も率先して戦ってくれているんだと思う。……じゃなかったらお前も戦えよって言うよね! 言われてないなら問題ないってことだよね!!
それぞれが教えた技術を試し、時には連携して襲い来るゴブズスタンピードを確実に各個撃破していく。……あっ、何匹か漏れてこっちに来た。じゃあ、【接触吸勢】で。
後衛の白崎は〝火炎槍〟を連続で放ち、ゴブリンを貫きながら焼き尽くしていく。
前衛の朝倉は水の構えからの【袈裟斬り】という得意なパターンを中心に確実にゴブリンを斬り捨てていく。
今回は後衛を選んだ北岡は【窃盗】を使ってゴブリン達の武器を奪って無力化しながら、〝氷弾〟で確実に急所を射抜いていく。
後衛から前衛もやれるようになったリーファはオレイミスリルの細剣で華麗にファントを決めていく。
中衛っぽい位置にいる聖は【鬼火】で着火したダイナミテーを【ポルターガイスト】で飛ばしていく……器用なことをするな。
あっ、二体撃ち漏らし。Let's 撲殺☆
後衛の白崎は〝氷槍〟を連続で放ち、ゴブリンを貫いていく。……槍系の魔法ばっかりだけど、彼女は槍サーに転職したのだろうか? もしかして、そのうち月光の下でダンスとか始めるの?
前衛の朝倉は火の構えからの【唐竹】を使ってゴブリンを真っ二つにしていく。きっちり基本に忠実に戦っているな。もう少し柔軟性を高めた方が……って余計なお世話か。
あらかたゴブリンを無力化した北岡は前衛に出てオレイミスリルの曲刀を振るい始めた。まあ、そっちの方が早いし魔力消費も抑えられるからな。
リーファは時々バンデロールや防御を組み合わせながら着実にゴブリンを倒していく。安定してるな。
中衛っぽい位置にいる聖は【鬼火】で着火したダイナミテーを【ポルターガイスト】で飛ばしていく。まあ、さっきと同じだ。
あっ、五体撃ち漏らし。「émincé!」
ってか、撃ち漏らし過ぎじゃない! 滅茶苦茶撃ち漏らしているじゃん。また八体……ってどんどん撃ち漏らす数増えているよ! 絶対わざとだよね!!
「Cent rendez-vous rapides!」
エルダーワンドをレイピアの形状に変化させ、高速突きを放つ。
撃ち漏らしたゴブリンは串刺しにされて次々と絶命していった。……俺、串刺し公爵とかじゃないよ! 串刺しにする趣味は無いし、爵位を賜ったこともないし、社交界とか御免被るし、種族ヴァンパイアでも無いよ! って、串刺し公爵の種族はヴァンパイアじゃなくて人間だったっけ。ちなみにドラキュラは種族名じゃない……作品によっては種族名にされている場合もあると思うけど。……ノーライフキングみたいに? あれ、元々は不死者じゃなくて1988年・第2回三島由紀夫賞候補作になったいとうせいこうの小説と作中に登場するディス・コン用ロール・プレイング・ゲーム「ライフキング」のクリアできないと呪われてしまうヴァージョンだから! 不死の王は転じてだから!!
「お前らもしかしてわざとやってないか?」
『えっ、なんのことかな? あたしは草子君が暇そうだから何体かそっちに流れるようにしてるだけだよ?』
やっぱり確信犯だったな。というか、犯人聖だったのか。今のでよく分かったよ。
……うん、悪い子には罰を与えないといけないな。
「よし、そんなに成仏したいなら今すぐこの世から成仏させてやるよ! 〝聖なる輝きよ、浄化せよ〟――〝ピ」『ごめんなさい! もうふざけたことはしないから!! だから浄化だけはやめてぇ!!』
聖が涙目になって叫んだ。白崎達は一斉に俺にジト目を向けてきた。――俺、悪くないよね!!
……まあ、振りだけで浄化しないけど。するならもっと早くしてる訳だし。
お灸を据えたから、これでしばらくは聖もふざけたことをしないだろう。……ほとぼりが冷めたらまたやるだろうけど。自称悪戯好きの女霊だし。
一刻も早くこいつをエルフの里に置き去りにしないとこっちの身が持ちそうに無いな。……特に精神面で。
というか、結局今のって聖の「お前も戦えよ」っていう無言の抗議だったってことだよね? 結局俺も戦わないといけないのか……まあ、ソロプレイを始めたら結局一人で戦わないといけないから、戦うことからは逃げられない訳だけど。