【リーファ視点】固定概念に囚われずにスキルを駆使して抜け道を探して本当に見つけてしまう草子さんは凄いと思う。
異世界生活十一日目 場所フィージャ草原
「……おい、お前は現地民だから教えてもらう必要ないんじゃないのか?」
次ば順番的に私だから、胡桃さんが帰ってきたの入れ違いに来たんだけど、着いて早々草子さんにジト目を向けられた。
一人だけ仲間外れとか酷いわよ! 私だって草子さんに教えてもらいたいのに!!
「……まあ、約束した手前やらない訳にはいかないし、現地民のリーファさんに教えられるほどのことは無いと思うけど……じゃあ、とりあえず到達目標的なものを聞きたいけどいいかな? 後でこれについて教えて欲しかったとか言われると面倒だから。……教えられること無いと思うけど」
確かに私はこの世界で生まれてから十七年間この世界で生きてきたけど、だからといってこの世界のプロフェッショナルという訳じゃない。
他の世界から来たからこそ気づけることもあると思うし、草子さんからは時々私達現地民以上にこの世界を理解しているんじゃないかと感じる時も沢山あった。
それに、草子さんは誰も思いつかないような型破りな方法で物事を解決してしまったことだってある。
草子君なら、私を強くしてくれると思う。その力は、私が将来BLを広める旅に出る時に役に立つ筈だ。……もし、私の下心を知ったら草子さんは教えるのをやめると言い出すだろうな。
「ステータス」と小さく呟いてステータスを表示する。これも草子君に教えてもらって初めて知ったことだ。これまでは【鑑定】スキルを持っている人に鑑定してもらわないとレベルもHPやMPも分からないから不便だったけど、教えてもらってからは客観的に自分の強さを見ることができるようになった。
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NAME:リーファ=ティル・ナ・ノーグ AGE:17歳
LEVEL:18 NEXT:1200EXP
HP:369/369
MP:321/321
STR:321
DEX:640
INT:30
CON:210
APP:30
POW:210
LUCK:48
JOB:弓使い、魔法師、冒険者
SKILL
【弓術】LEVEL:4
【照準】LEVEL:4
【狙撃】LEVEL:4
【四大魔法】LEVEL:1
【氷魔法】LEVEL:1
【雷魔法】LEVEL:1
【木魔法】LEVEL:3
【金魔法】LEVEL:1
【エルフ語】LEVEL:60
【クライヴァルト語】LEVEL:5
【マハーシュバラ語】LEVEL:1
【マルドゥーク語】LEVEL:1
【気配察知】LEVEL:4
【魔力察知】LEVEL:3
【カップリング】LEVEL:62
ITEM
・グリーンウッドの弓
・突風の矢
・木の矢×99
・麻のワンピース
・着替えセット×2
・革の袋
・HP筍×15
・MP筍×15
・力筍×10
・敏捷筍×10
・守筍×10
・精神筍×10
・幸運筍×10
・薬草×60
・上薬草×20
・毒消草×50
・麻痺消草×50
・眠り草×50
・気つけ草×50
・熱傷消草×50
・銀貨×35
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後1600あります。
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私のJOBは弓使いと魔法師……前者は遠距離への攻撃には適しているものの近距離への攻撃には向かない。後者は弓矢よりは近距離戦でも使えそうだけど、詠唱の時間を考えると攻守入れ替わりの激しい近距離戦には向かない。
誰かと一緒に戦うのなら遠距離から援護するという本来の戦い方をすることができるけど、私一人で戦う場合接近されたらそこで終わりだ。
……私の到達目標は近距離で戦う手段を手に入れることかな?
「決まったか?」
「はい。近距離で戦える方法を教えて下さい」
すると、草子さんは難しい顔をしたまま固まった。……なんでここで固まるんだろう? 何か変なこと言ったかな?
草子さんは剣術にも秀でている。教えることは容易な筈だ。それに、朝倉さんに弟子入りすれば剣術スキルを得ることだってできる。……どこにも問題は無いと思うけど。
「……まず、一つ質問なんだけど。リーファさんってエルフだよね? 俺の世界だとエルフって金属を嫌う性質があるってなっているんだけど、その辺りは大丈夫?」
確かに、私達エルフは卑金属に触れると被れる。酷い場合は発作を起こして絶命する。草子さんから後から聞いたことによれば、アレルギーに近い現象らしい。……アレルギーって言葉、初めて知った。
だけど、この性質には卑金属以外は関係ない。金製や銀製の武器を好んで使っているエルフもエルフの里には居た筈。……まあ、そういうエルフはエルフの中でも中級層以上だから貴金属の武器は高価でなかなか手が届かないものなんだけど。
「金や銀製の武器なら問題ないです。……ただ、鉄や鉛製の武器は触るとなんらかの症状が出るので使い続けるのは厳しいですね。銅は個人差があるので微妙です」
「……なるほど、卑金属アレルギーということか。なら、武器はミスリルやオリハルコンを使えば問題ないとして……問題はスキルの方だな。俺の勝手な偏見だけど、エルフに和風の武器は似合わないと思うんだよ。だから、俺のイメージを壊さないためにもリーファさんには西洋式の武器と剣を使ってもらいたいんだが……うちのパーティに騎士とか、銃士のJOB持ちも【西洋剣術】のスキル持ちもいないんだよな」
私としては和風でも西洋的でもどっちでもいい気がするけど、教えてくれる側の草子さんが乗り気じゃないのに無理に押し通すのは気がひける。
草子さんは何分か唸りながら考えていた様子だったけど、そのおかげか何か策を思いついたようだ。……思いつく前に「JUDGE MY STATUS!!」って叫んでいたから、多分ヒントはステータス関係にあったんだね。
「〝銀の輝きと鋼を凌ぐ強さを持つ魔法金属よ、我が魔力を喰らいて生まれ出でよ〟――〝メタルメイク・ミスリルダイト〟」
「〝アトランティスの底に眠る最硬の神金属よ、我が魔力を喰らいて生まれ出でよ〟――〝メタルメイク・オレイカルコス〟」
草子さんは、いきなり【金魔法】でミスリルとオリハルコンを生成した。……多分、宮廷魔法師もびっくりの超高難易度魔法なんだろうけど、普通に使っちゃうんだね。しかも、多分適当な詠唱で。
次に二つの貴金属(普通に購入しようとしたらミスリルは一欠片で白金貨3枚、オリハルコンは一欠片白金貨29枚は下らない)をどんなスキルを使ったのか融合させ、形を整えて一本の剣を作る。
細身で先端の鋭く尖った刀身。装飾を施した柄。手の甲を覆うように湾曲した細い金属板などが取り付けられている剣……エルフの里で見たことがある。レイピアと呼ばれる細剣だ。
「オレイミスリルの細剣ってところか? 我ながらいいできだ。――良き力だ。さて、使ってみますか」
細剣を構える――右手は軽く肘を曲げ、手の甲を上にし、剣の指鐶に指を通して、ポメルを手首の裏に当て、切っ先は敵が目の前にいるとすれば相手の喉くらいのところに狙いをつける。
左手は頬の前に垂直に立てて、手を左右に振って顔面の防御をする。
右足を前、左足を後ろにして、肩幅に開く。前足のつま先は相手に対してまっすぐに向け、後足はそれに対して45度から90度の間で開く。
「……えっと、まずはファントからファンデヴかな?」
身体を伸ばしながら素早く突きを放つ。前足で地面を蹴って身体を戻し、再度突き。そして、戻すの繰り返し。
「じゃあ、次はバンデロール?」
袈裟斬りに切りつけながら寸前に腕を内転させ、剣先を下に向ける。
細剣の両刃を生かした裏刃のテクニックなのかな? エルフの剣士が使っているところを一度見たことがある。……バンデロールって名前なのかは知らなかったけど。
一応納得がいったのか、次に払いの動きをして攻撃練習は終わったようだ。……ところでいつになったら教えてくれるんだろう? というか、これのどこが教えと結びつくんだろう? 見様見真似でやってみろってことなのかな?
「後は防御か。確かレイピアでの戦闘は防御が一番重要だってどっかの本に書いていたな」
相手の剣を肘を押し当てるようにして防御し剣先は相手にむけた逆円錐状の防御空間を生み出す。……守りながら同時に攻撃もできるということだね。攻守一体の防御なんだ。
「という感じかな。ということで、やってみてくれ」
そう言って草子さんはオレイミスリルの細剣を私に渡した。……意外に重い。結構軽そうに扱っていたけど、多分朝倉さんが使っている剣とそう大差ない重さなんじゃないかな?
「一度見せられたところでできる筈がない」って叫びたかったけど、草子君だから無茶振りをしてもおかしくないと思って見ていたから一応動きは分かる。
草子さんの真似をして構える。
ファントからファンデヴへの流れを試し、バンデロールを試し、払い――パラードを試し、防御を試し終えた。……ふう、なんとかできたみたいだ。
「よし、ステータスを確認してみてくれ」
草子さんに言われた通りステータスを確認してみる。
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NAME:リーファ=ティル・ナ・ノーグ AGE:17歳
LEVEL:18 NEXT:1200EXP
HP:369/369
MP:321/321
STR:321
DEX:640
INT:30
CON:210
APP:30
POW:210
LUCK:48
JOB:弓使い、魔法師、冒険者
SKILL
【片手剣】LEVEL:1
【西洋剣術】LEVEL:1
【弓術】LEVEL:4
【袈裟斬り】LEVEL:1
【刺突】LEVEL:1
【払い】LEVEL:1
【照準】LEVEL:4
【狙撃】LEVEL:4
【四大魔法】LEVEL:1
【氷魔法】LEVEL:1
【雷魔法】LEVEL:1
【木魔法】LEVEL:3
【金魔法】LEVEL:1
【エルフ語】LEVEL:60
【クライヴァルト語】LEVEL:5
【マハーシュバラ語】LEVEL:1
【マルドゥーク語】LEVEL:1
【気配察知】LEVEL:4
【魔力察知】LEVEL:3
【カップリング】LEVEL:62
ITEM
・オレイミスリルの細剣
・グリーンウッドの弓
・突風の矢
・木の矢×99
・麻のワンピース
・着替えセット×2
・革の袋
・HP筍×15
・MP筍×15
・力筍×10
・敏捷筍×10
・守筍×10
・精神筍×10
・幸運筍×10
・薬草×60
・上薬草×20
・毒消草×50
・麻痺消草×50
・眠り草×50
・気つけ草×50
・熱傷消草×50
・銀貨×35
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後1600あります。
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……JOBには特に変化が無かったけど、【片手剣】、【西洋剣術】、【袈裟斬り】、【刺突】、【払い】のスキルを獲得していた。
でも、どうやってJOB無しでスキルを獲得することができたんだろう?
「どうして、JOBに無いスキルを得られたんですか?」
「……よく分からないけど、俺ってJOB無しでも一度経験したことならスキルを得られるみたいでね。それと、朝倉さん達に教える中で得られたらしい【指南】のスキルを組み合わせたら教えられるんじゃないかって思ったんだよ。この【指南】ってスキルは武術と芸術スキルのみらしいが、剣術スキルは武術スキルの一種だから教えられる範囲に含まれている。……って感じだな。できるかできないか半信半疑だったけど、案外できるもんだな。……このままオレイミスリルの細剣を使っていたら、いつか剣術関係のJOBを得られると思う。後はそれで剣術スキルを増やしていけばいい」
やっぱり、草子さんは凄いな。固定概念に囚われず、スキルを組み合わせて抜け道を探し、見つけてしまう。
後は本を好き過ぎる変態性さえなければ完璧なのにな……って、その台詞似たようなものをどこかで聞いたって?
私の最大の弱点である近距離戦を一応克服できたところで私の個人レッスンの時間は終了した。