付録①登場人物の本音が分かる!? 対談コーナー、第七回『桐壺の間』
◆登場人物
司会:桐壺未来
浅野ゼミに所属する大学四年生。研究範囲は『源氏物語』。以下、桐壺。
第七回ゲスト:逢魔時 夕
作者(私)。以下、逢魔時 夕。
第六回ゲスト:能因草子
本作の主人公。以下、能因。
※他にもスペシャルなゲストが出てくる予定です。
桐壺「お久しぶりです。浅野ゼミ所属の四年生、桐壺未来と申します。このコーナーでは、毎回『文学少年召喚』の登場人物を一人招き、物語の秘話に迫っていこうというものです。第七回のお客様は、作者の逢魔時 夕様と『文学少年召喚』の主人公である草子様です。どうぞよろしくお願いいたします」
逢魔時 夕「よろしくお願いします…………この組み合わせ、開始早々ぶっ殺されたりしませんよね!? 作中どころかこの世にある全ての作品の頂点に立つ戦闘力の草子の前に、魔法もスキルもない世界のただの人間に過ぎない作者を座らせるとか、サバンナに身一つで放り込むことと全く同じですよ!?」
能因「まあ、大丈夫なんじゃないの? お前自身が書き綴っているってことは五体満足でミニコーナーを終了するってことになるだろうし、物語を構成する一人に過ぎない俺に結局お前は殺せないだろうし。……もしくは、俺達の世界に降りてきた作者であるお前は俺にでも殺せるかもしれないけど、テクストの中にいる作者≠テクストの外にいる作者ということで現実にはダメージを与えられないというか、そういうことになるんだよな? まあ、分かりやすく言うとテクストの中に『作者:逢魔時 夕』というアカウントを使ってログインされているだけで、アカウントが殺されても現実にはダメージがないっていう感じか?」
逢魔時 夕「……はあ、やっぱりメタ視点からの考察は草子君の方が得意だよな。流石は天才文学少年」
能因「……ただのモブキャラです」
逢魔時 夕「へぇ……本編内のみんなってこう言う気持ちだったんだね(ポキポキ)」
能因「……体力も筋力も欠片もない、最近はほとんどダラダラと寝っ転がってスマホで小説を書いている作者サマには流石に負けねえよ」
逢魔時 夕「ですよねェ!! お前、よくも俺の恥ずかしい私生活をバラしやがって!! 大学始まったら二時間電車を乗り継ぐんだからな!! 寝っ転がってられなくなるんだからな!!」
桐壺「仲良いんですね」
逢魔時 夕・能因「良くねえよ!!」
桐壺「では、改めまして、逢魔時様にいくつか質問して行こうと思いますが……まず、この『文学少年召喚』の執筆動機……どうして書こうと思ったのか、どんな感じで書き始めたのか、などなど、『文学少年召喚』を書き始めた頃のお話をお願いします」
逢魔時 夕「そうですね……元々私は高校三年生の頃に比較的まともなネット小説をこのなろうで連載し始め(それ以前からなろうでは活動していました)、それと合わせて二本連載をしていたのですが、そのどちらもなかなか面白い展開が思いつかず、新作を書きたいな……と思っていたのです。そんな時に書店で偶然手にした感想欄でも度々目撃するとある作品を読んで、腹が捩れるほど笑って、これだっ!! って思ったんですよ。これが草子君に代表される、あの一人称語りに繋がったのは間違いないです」
逢魔時 夕「ただ、これがネタを多用した地の文の原型になった……かと聞かれると微妙です。こちらは大学で取った近世の講義のテーマだった近世文芸の大きな特徴である〈引用〉と、近代の講義で知ったインターテクスチュアリティ。そして、この世界にオリジナリティというものは恐らく存在しないという卒論でお世話になろうかと考えている准教授の講義内での言葉。これが、『文学少年召喚』の執筆に踏み切った動機です。勿論、最初はアカウントが消されるかと怯えてびびっていました。それだけ覚悟をして書き始めたのが、どこか某小説の目つきの悪い主人公に似た黒髪少年を主人公に据えた物語がスタートしたのです」
逢魔時 夕「しかし、今の草子君がどこか某小説の目つきの悪い主人公と同じかと聞かれると否と自信を持って答えられます。物語を書くにつれ、私と能因草子の線引きが曖昧になっていきました。挙げ句の果てに大学の友人から『お前ってまんま能因草子だよね(意訳)』とまで言われる始末。勿論、スペックは私の方が遥かに劣りますが、それでもこの私と同じ性格の捻くれたもう一人の自分に好感を持ったのは事実です」
能因「そんな可愛い可愛い主人公を異世界に飛ばすという暴挙に出る作者ェェ」
逢魔時 夕「仕方ないだろ、そうしないと始まらないんだから。それに、異世界カオスに行って良かったと心のどこかでは思っているでしょ?」
能因「ま…………まあな」
逢魔時 夕「しかも八章から大分優遇しましたからね。草子には三段階強化イベントがありました。一度目は一章の三魔獣戦、二度目はイヴとカンパネラと戦った超越者戦、そして三度目が八章のステータス統合が大量に行われた魔族・ガイア編です。特に三度目の強化に関してはやり過ぎた感がありました。後悔はしていません」
能因「いや、後悔しろよ」
逢魔時 夕「……お前の超越技が出た時点でなんでもありになるんだから、今更だろ? まあ、能因草子をここまで強力なキャラにしたのには理由があります。まあ、『文学少年召喚』のテーマに関わる話なので、『『文学少年召喚』を書き始めた頃のお話』についてはここまでにしておきましょう……色々と話し過ぎたとは思いますが」
能因「この人、適当に設定してから後はノリと勘で書いて、後で辻褄をきっちり合わせよう! ってタイプだからな。初期からそんな大それたことを考えていた訳ではなく、書くうちに未知と言う名の暗闇を照らして物語を形作っていたんだろう。書く前の、まだこの作者サマがイデアと呼んでいるものすらない時点からここまでのことを構想するなんてスペック的に絶対に無理だし」
逢魔時 夕「酷くね!? いや、事実だけどさ。だから三流ですらない、書籍化もできないネットの海を住処にする駄文製造機なんですよ。……まあ、こじつけ……というより、後から自分のやってきたことにしっくりと来る言葉が見つかるという感じですね。勿論、想定して貼った伏線も沢山ありますが、それも当初からあった訳ではないので、大まかなものを書く中でどうするか再検討していき、そうしてなんとか完結にこぎつけたという感じです」
能因「まさに自転車操業……」
桐壺「ありがとうございます。では、続いて逢魔時様のお話にもありました『文学少年召喚』のテーマについてお話をお願いします」
逢魔時 夕「本作のテーマの一つは〈趣向〉です。様々なテクスト(主に異世界もの)を下敷きにしていますので、そのテクストを知っていれば流れの違いが笑いを生むこともあるかもしれないですが、知らなければチンプンカンプンで分からない。勿論、〈趣向〉について行けない方も楽しめるようなテクスト作りを目指しましたが、これまで読書体験が大きな意味を持つ、人によって全く受け取り方が違う物語というものを書くというのがテーマでした。もう一つは『実験型小説』……これは三好達治の『測量船』のキャッチコピーに近いものですが、まさに様々な実験的要素を加えた小説でした。感想から設定を膨らましてみたり、キリ番サービスを導入してみたり、キャラ募集をしてみたり、と私自身様々な企画をする中で作者としても成長していけたと思っています」
能因「ステータスの書き込みもその実験とやらの一つだよな」
逢魔時 夕「ええ、これもどこまできっちりステータスを書き込めるのか、視点人物の視点で見ているものを完全再現すべく、ステータスを表示するたびにその都度表示しています。まあ、それがくどいと言われる原因でもある訳ですが……まあ、あれを複数作るのに下手すると一日とか要する場合があるので正直読み飛ばさないで読んで頂ける方が嬉しいですが……まあ、厳しいですよね。もちろん、次作では今回の反省を生かしつつ、新たな物語を紡いでいこうと思います」
逢魔時 夕「後は……これが草子君が強くなった大きな理由ですが、チートキャラ、最強キャラというものが乱立し、本当の意味で強い主人公とは何かと私自身思うようになり、その答えを求め続けたのが『文学少年召喚』でした。しかし、私はこれをチートキャラな主人公の物語にしようとは思っていません。ゼドゥーとの最後の戦いで草子君の口から語らせたように、これは物語の外側にいる文学研究者という、物語を批評する違う世界の存在の視点から描いた物語――そのようなつもりで書きました。だから、能因草子の戦いは敵の批評であり、その能力を分析した上で最適解をぶつけている。異世界での生活も過去の判例――様々なテクストを踏まえた上で検討している。この物語そのものが能因草子の異世界カオスという世界の批評であり、同じ世界を生きながらも生まれた余裕は、このような立ち位置の関係に由来するものだったということになります。全ての物語において最強は――あえて言葉にするなら、文学研究者。それが、私の辿り着いた答えです」
桐壺「ありがとうございます。では、続いて……『文学少年召喚』の中でお気に入りのキャラやお気に入りの話はありますか?」
逢魔時 夕「お気に入りのキャラもお気に入りに話も多過ぎて困りますね。私の性癖を埋め込んだような登場人物が織りなす物語――それが『文学少年召喚』ですから、小さな掛け合いでもきっと読み返せば小さな感動を覚えると思います。逆に嫌いなキャラなら一発で言えます。『一ノ瀬梓と皇響夜』です」
桐壺・能因「デスヨネー」
能因「寧ろあの二人を好きな人っているのか?」
逢魔時 夕「一ノ瀬梓は感想欄でもかなりヘイトを溜めていますからね。ちなみに、感想欄で度々ネタにされるインなんとかさんは割と好きなキャラなので、そんなに言ってやるなと思っています」
能因「元ネタが逢魔時さんお気に入りのシン●レン・シェ●ブリットですからね」
桐壺「しかも、主人公よりも気に入っていると……逢魔時さんは基本的に主人公よりも魅力的? な敵キャラに惹かれるようですし、『文学少年召喚』の敵キャラがこれだけ充実したのも、逢魔時さんの性質が大きく関係しているかもしれませんね。では、最後に――次回作についてお話をお願いします」
逢魔時 夕「次回作は『文学少年召喚』とはまた別の切り口の、これまた癖の強い登場人物が織りなす物語を紡いでいこうと思います……が、『文学少年召喚』に登場した一部のキャラクターは続投することが決定しましたので、是非もう一度『文学少年召喚』を読み直してみてください。……そちらの方は『文学少年召喚』みたいにすぐに書き始められるタイプのテクストではないので。続投が決定しているキャラクターは全て七章以降に登場した人物・存在です」
能因「……まあ、世界観の一部は『文学少年召喚』で語られているし、やっぱりそっちを掘り進めるかって話になるだろうけど」
百合薗圓「ちなみに、世界観は『文学少年召喚』よりちょっと後ということになるねぇ。まあ、ある意味シェアワールドの物語といってもいいんじゃないかな?」
逢魔時 夕「……なんか、次作の主人公が出てきて思いっきりヒントぶち込んでいるよ。ということで、『文学少年召喚』、これまで応援ありがとうございました!!」
逢魔時 夕・桐壺・能因・圓「逢魔時 夕の次回作の異世界ものもよろしくお願い致します!!」