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地下大迷宮millefeuilleに挑戦する者達④

【三人称視点】


 異世界生活百六十四日目 場所コンラッセン大平原? 地下大迷宮millefeuille、第七十五階層


 武器を捨てた単眼ノ百手巨人(ヘカトンサイクロプス)が百の手を構え、白崎達に肉薄した。

 その速度は単眼ノ百手巨人(ヘカトンサイクロプス)が巨体の魔獣であることを感じさせないほど早い。


「確率操作――確定斬撃・九烈斬閃」


 だが、所詮はそれだけだ。能因草子とインフィニット――人間の領域を逸脱した剣士同士の死闘を辛うじて認識できるほどの人間離れした動体視力を持つ白崎に及ばないが、ここにいるメンバーは単眼ノ百手巨人(ヘカトンサイクロプス)の動きが止まって見えるほどの動体視力を持ち合わせている。

 朝倉の斬撃が単眼ノ百手巨人(ヘカトンサイクロプス)の腕一つを切り倒した。


「〝万象を滅却する波動よ! 相反する相剋の力によりて顕現し、その力を思う存分揮い給え! 灰は灰に塵は塵に戻りて万物須らく円環の輪へと還る。今こそその輪を外れ、滅びの道を進み給え〟――〝破滅の波動(フィーニス・ウンダ)〟」


「〝付与は新たな境地に到達した。環境を変え、気候を変える力は最早付与術にあらず〟――〝高位付加術(ハイ・エンチャート)〟」


「熾烈鉤爪!」


「〝紅煉の世界の灼熱よ! その熱で全てを焼き尽くせ! 一切合切を焼き尽くして浄化せよ〟――〝灼熱世界(ムスペルスヘイム)〟」


「『赤熱地獄爆炎陣(シルクローデフェゴ)』」


「「「「収束して迸れ、魔を滅する聖剣技――《夜明けを切り開く明星(ルシフェル)》」」」」


 それを皮切りに、ミュラの相克エネルギー、コンスタンスの大気の鉄槌(ヘビー・エアリアル)、平城山の平城山拳法の剛法、山田の火属性上級魔法、姫川の斬撃と氷岡の突き、最凶の回転式拳銃プファイファー・ツェリスカ究極大戦装備アルティメットラグナロクに持ち替えた相沢と、エリーゼの二丁拳銃による狙撃、リーファの【精霊鬭術】、白崎達の勇者固有技が全て単眼ノ百手巨人(ヘカトンサイクロプス)に命中し、そのHPをゴリゴリ削っていく。

 怒涛の連続攻撃の前に単眼ノ百手巨人(ヘカトンサイクロプス)は為す術なく撃破され、後には巨大な死体だけが残った。


 奥の扉が開き、下層へ続く階段が現れる。白崎は単眼ノ百手巨人(ヘカトンサイクロプス)の死体を回収すると、リーファ達と共に七十六層へ続く階段を降りていった。



 異世界生活百六十四日目 場所コンラッセン大平原? 地下大迷宮millefeuille、第三十階層


「一ノ瀬さん! 鼻の下を伸ばしていないで戦ってください!! 多少の浮気は全員に誠実にしてくれるのでしたら許すつもりでいますけど、ソイツらは女じゃなくて魔獣です!!」


 ジュリアナは敵の前に棒立ちになったまま、どんと来いと言わんばかりに待ち構えている一ノ瀬(色欲の塊)にツッコミを入れた。

 まあ、一ノ瀬の気持ちも理解できない訳ではない……かくいうジュリアナも一ノ瀬と同じ百合信者で、「女の子はみんな女の子と、更に言えばみんな一ノ瀬さんと付き合えばいいんだよ!」と、とんでも無いことを考えるようになっていた。


 もし、白崎達にそれを強要し、再び草子をパーティから追い出そうとすれば、確実に白崎達から塵一つ残さずこの世から抹消されるだろう。

 ジュリアナもそれが分かっているから強制的に白崎達を一ノ瀬のハーレムに加えようと行動はしていなかったが、内心では今も一ノ瀬を選ばない白崎達を「可哀想だな」と大真面目に考えていた。勿論、余計なお世話である。


(そもそもの原因はアイツよ! あの男さえいなければ確実に白崎さん達は一ノ瀬さんの優しさの虜になっていたし……あの男が来てからゼラニウムさんも、メーアさんも、コンスタンスさんもみんな変わってしまった……全て、全てアイツのせいよ。……おまけにカタリナとして一ノ瀬さんを誘惑して……アイツは一体何をしたいの!? なんで私達の関係を壊そうとしているの!!)


 勿論、一ノ瀬のハーレムは現在も存続している。ゼラニウムも、メーアも、ジュリアナも、コンスタンスも、変わらず一ノ瀬を愛している。

 だが、草子の登場で三人の気持ちに変化が出たのも事実だ。ゼラニウムは一ノ瀬のことを「困った人だから放っておけない」という感情を見せるようになり、メーアが草子と楽しそうに話す光景も見られるようになった。

 コンスタンスに関しては、勇者アズールの一件で草子との距離が縮まり、草子を師匠として尊敬すると共に草子に近づきたいと思っているのが誰の目から見ても明らかだ。


 一ノ瀬に会うまではコンスタンスは刺々していて、孤高の女冒険者というイメージだった。

 それが、一ノ瀬と関わることで軟化し、信頼した相手にしか見せない油断し切った優しい表情も見せるようになった。

 その表情をコンスタンスは一ノ瀬の他に草子にも見せるようになっている。コンスタンスは「私の一番はいつまでも一ノ瀬さんよ!」と言っているが、それがいつまで続くか分からない。


 そのコンスタンスに関しては一ノ瀬パーティを離れ、白崎達と行動を共にしている。

 一ノ瀬は白崎と一緒に迷宮を攻略したかったようだが、そのパーティに男がいたため同じパーティを組むことができなかった。

 コンスタンスは一ノ瀬ではなく白崎と行動を共にすることを選んだ。彼女曰く「今回はいけるところまで行ってみたいから、白崎さん達と一緒に行くわ」ということで、草子にコンスタンスを奪われた訳でも、一ノ瀬のことが嫌いになったからパーティを離れた訳でもなく、純粋に迷宮に本気で挑戦したいから白崎達と行動することを選んだようだが、ジュリアナにとっては、コンスタンスが一ノ瀬と行動することを選ばなくなった時点で少しずつ一ノ瀬のハーレムが崩壊に向かっているようで、背筋が凍った。


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 三十層のフロアボス――その正体は三人のくノ一だった。

 上着はノースリーブで、ふんどし風の前垂れ、網タイツが妖艶な雰囲気を感じさせる。


 一ノ瀬は目にハートを浮かべて戦力外と成り果てていた。くのいち三体は本気で命を奪いに来ているため、このままでは何もせずにただ殺られる可能性も十分に考えられる。


「…………あのくのいちって、リメイク版のF●Ⅲのくのいちっぽい見た目ですね。もしかして、倒したらマサムネを手に入れることができるのでしょうか?」


 一方、メーアはというと元ネタの脳内検索を終え、『青薔薇之姫(ミステール)・蒼雪』をセットしていた。

 一ノ瀬とは違い、くのいちを討伐して彼女達? が守っているマサムネを手に入れるつもりのようである……誰もマサムネを守っているとは一言も言っていないのだが。


「ということで、ゼラニウムさんはどれか一体を相手してください。僕の方も一人撃破次第、最後の一体を倒すつもりで戦うので、ゼラニウムさんも終わったらフリーなのをお願いします。なるべく離れて戦う予定ですが、完全に離しきれなかったら乱戦で」


「了解したわ。〝荒々しく吹け、砂塵の竜巻〟――〝砂塵瀑布-Easifat Ramalia-〟」


(〝真紅の炎よ、槍となって貫け〟――〝火炎槍(フレイムランス)〟)


 メーアと同じく、くのいち相手に戦意を喪失していなかったゼラニウムは、【魔法創作】で作り出した「砂嵐をターゲットの周囲に発生させて追尾する魔法」を発動し、くのいちを砂嵐で包み込んだ。

 そこに、ゼラニウムは容赦なく炎の槍を叩き込む。


 発生するのは粉塵爆発――轟音を響かせて発生した大規模な爆炎に呑まれ、流石のくのいちも死んだかと思われたが……。


「嘘でしょ!? 直撃なのに死んでない!!」


 予想外の展開に驚くゼラニウムだったが、そのまま迫り来るくのいちに為す術なくやられるほどゼラニウムは弱い訳ではない。


「〝土よ、突き刺せ〟――〝土針山アース・ランスフィクス〟」


「〝漆黒の影よ、裂き分たれて糸となり、汝を拘束せよ〟――〝影縛之拘束(シャドウ・バインド)〟」


 瞬時に〝土針山アース・ランスフィクス〟を展開し、くのいちを貫こうとするとゼラニウム。くのいちは、華麗に跳躍して〝土針山アース・ランスフィクス〟を躱しゼラニウムに迫るが、直後自身の影から伸びた影の触手に捕えられた。


「あらあら……これは少し刺激が強過ぎるかもしれないわね、一ノ瀬さんに」


 鼻血を盛大に吹き出して倒れた愛する人(足手纏い)から視線を戻し、影の触手に縛り上げられたことでポディーラインが強調されたくのいちに一言。


「私の成長はまだ止まっていないの! だからそんな豊満な体を見せつけてマウントを取るな!!」


 ゼラニウム=レーラ十三歳。村で一人暮らしをしていたので思慮深さは大人並みに成長しているが、身体の方は同年代よりも成長が遅く、それがコンプレックスになっている。

 そのコンプレックスを暗に指摘されたゼラニウムはキレた。怒りに任せて魔力を練り上げ、強力な魔法を叩き込む。


「〝紅煉の世界の灼熱よ! その熱で全てを焼き尽くせ! 一切合切を焼き尽くして浄化せよ〟――〝灼熱世界(ムスペルスヘイム)〟」


「〝轟く雷鳴よ、輝く雷霆よ、降り注いで焼き払え〟――〝霹靂領域セレスティアル・サンダー〟」


「【複合魔法】――〝霹焔世界(プラズマヘイム)〟」


 ゼラニウムが杖を振りかざした瞬間、猛烈な電離気体がくのいちに襲い掛かった。

 影の触手から抜け出すのに手間取り、変わり身の術の発動することができずにくのいちは超高温の電離気体に溶かされ、見るも無残な燃え滓と成り果てた。


「幽薔薇の束縛――からの、青薔薇の斬嵐!!」


 一方、メーアの方もくのいちを捕縛し、『FANTASY CARDs』で実装されている範囲では最強の二百五十六連撃を叩き込んでいた。

 幽薔薇の束縛の方は引き千切ろうとすると猛烈な痛みとダメージに変換されることに加え、絶対に縄抜けができない仕様になっているため、くのいちが幽薔薇の束縛の荊を一本引き裂こうとしたところで大ダメージを負い、そこで発生した大きな隙を突かれたことで呆気なく沈んだ。


「魔獣の分際で一ノ瀬さんを誘惑するなんて……許せないわ、能因草子! どこまで一ノ瀬さんをおちょくれば気が済むのよ!! 死になさい、〝神聖なる輝きよ! 邪悪を貫く槍となれ〟――〝聖光収束極槍セイクリッド・ジャベリン〟、〝神聖なる輝きよ! 邪悪を貫く槍となれ〟――〝聖光収束極槍セイクリッド・ジャベリン〟、〝神聖なる輝きよ! 邪悪を貫く槍となれ〟――〝聖光収束極槍セイクリッド・ジャベリン〟、〝神聖にして大いなる光よ! 眩い光と共に世界を照らせ! その光で全ての諸悪を消し飛ばせ〟――〝極聖光爆(ホーリー・ノヴァ)〟」


 残るくのいちも「勝手に一ノ瀬が誘惑されただけにも拘らず、その全てを草子の責任だと草子からしてみれば理不尽とすら思えるほどの見当違いな恨み」により感情を爆発させたジュリアナの【神聖魔法】連続攻撃の前に為す術なくやられ、忍び装束をぼろぼろにされた無残な姿の死体と成り果てた。


「…………狙った訳ではないですが、くのいちの死体がエロい雰囲気になってしまいましたね。焼いちゃいましょうか? 能因草子、許すまじ」


「やめてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


 一ノ瀬が絶叫する中、ジュリアナに有無を言わさない視線を向けられたゼラニウムが、いかにも面倒そうな表情で〝灼熱世界(ムスペルスヘイム)〟を発動した。

 ちなみに、くのいちを設置した理由は一ノ瀬を誘惑しようというような目論見ではなく、後々に男性冒険者を油断させて撃退するフロアにしようというつもりで設置しただけである。つまり、完全にジューリアの勝手な思い込みであるのだが、ゼラニウムとメーアはジュリアナの怒りに巻き込まれたくなかったのでそのことを指摘しようとはしなかった。

 ちなみに、心が折れた一ノ瀬が駄々をこねたせいで、急遽二度目のくのいちへの挑戦が行われることになり、ゼラニウムとメーアからの好感度がまたしても低下して純粋な愛というよりは、「駄目な人だから私達が側にいてあげないといけない」という義務感に近いところで固定されてしまったのだが、一ノ瀬は勿論そのことに気づいてはいなかった。

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