地下大迷宮millefeuilleに挑戦する者達②
【三人称視点】
異世界生活百六十四日目 場所コンラッセン大平原? 地下大迷宮millefeuille、第二十五階層
焔の紋様が刻まれた赤い頭がガパッと口を開き、火炎放射を放った。
炎の壁というに相応しい規模の炎は無数に枝分かれし、畝る蛇の如く予測不能な動きで志島達に殺到した。
「【九尾妖術・狐の嫁入り】、【九尾妖術・瀝青の逃げ水】」
【九尾妖術・瀝青の逃げ水】の効果で志島達とそっくりの色と形と音と熱を持つ幻影が戦場に複数現れ、【九尾妖術・狐の嫁入り】の効果で降り出した豪雨が火炎放射を消し去る。
「志島さん! それじゃあ青い頭の【水掌握】で掌握されてしまうわよ!」
「大丈夫よ、眞由美さん! 【九尾妖術・狐の嫁入り】は限りなく本物の水に近い幻覚――つまりは有幻覚。水の性質を持ってはいるけど、水ではないわ。だから、【水掌握】では無効化できない」
豪雨の中をひた走る三人。紅玉の仕込み黒聖杖=究極大戦装備から刃を抜き払った志島が地を蹴り、回復効果を持つ白い頭を狙おうとしたところで。
「――面倒ねッ!! でも、作戦の範囲内よ!!」
志島と白い頭の間に割って入り、【無敵金剛】を発動した黄色い頭だが、防御無視の斬撃を防ぐ手立てはなく、そのまま両断される。
素早く〝極光之治癒〟を発動して黄色い頭を回復させる白い頭だが、背後に回り込んだ一の一切疾く貫け=究極大戦装備に刺し貫かれ、一撃でHPを吹き飛ばされた。
「まずは一体。回復役を潰せたのは大きいわね!」
紫色の頭の毒ガス攻撃を無視して眞由美が紅玉の仕込み黒聖杖=究極大戦装備の刃を抜き払って両断し、青い頭が放った水弾や緑の頭が放った風弾も当然のように危なげなく躱した志島と一がそれぞれ両断と貫通突きで青い頭と緑の頭を破壊した。
残るは、黄色、黒色、赤色の三体。かつて草子が若干苦戦したヨルムンガンドを七つ束ねた化け物が、今の志島達にとっては強敵にすらなり得なかったようだ。
「〝流星雨〟が来るわよ!」
黒い頭の周囲に紫の輝きが迸るのと同時に、何もない宙から無数の隕石が生まれ、志島達に向かって降り注いだ。
〝流星雨〟は強力な【時空魔法】だが、落下しなければダメージはないとばかりにバッタバッタと隕石を切り捨て、突きを放つ超越者三人には効果は無かった。嗚呼、強力な魔法というイメージは何処に。
そのまま黒い頭を目指してひた走る三人。しかし、黒い頭の攻撃はこれで終わった訳では無かった。
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・滑転連
→無属性魔法の一つだよ! 永続的なダメージを発生させながら相手の足元の摩擦係数を激減させて二重の意味で滑らせるよ! 相手につまらないギャグをさせて滑らせる効果はないよ!
〝滑転連〟
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「なんか嫌らしい魔法が来るわよ! というか、これどうすればいいの!?」
スマホ使いの神の眷属の得意技に「パラピレプー」という音がしそうな体内にいる細菌を猛スピードで培養させる魔法を組み合わせたような二重の意味でタチが悪い魔法に、流石の志島達も青褪める。ちなみに、この魔法の作成者は能因草子である……納得。
「……よく考えたら【魔法無効】で無効化されるのだから放置でいいんじゃないかしら?」
「「……あっ」」
眞由美の指摘に思わず顔を赤らめた志島と薫……前回の「岩は砕けばいいんじゃない」問題に続いて痛恨のミスである。
〝滑転連〟を無視して黒い頭、黄色の頭、赤の頭にそれぞれ攻撃を仕掛ける三人。
あっさり黒い頭を斬り伏せた志島と、【無敵金剛】を貫通されてあっさり貫かれた黄色の頭。
最後に残った赤の頭は炎を吐いて眞由美を狙うが……。
「【九尾妖術・狐の嫁入り】!!」
志島の【妖術】で再び降り出した雨が赤の頭の炎を消し飛ばした。
最後の抵抗とばかり体を畝らせ、渾身の噛みつきを放つ赤の頭だが、眞由美に呆気なく躱されて一刀両断される。
「ふう…………これで終わりかしら?」
「志島さん、それフラグよ!」
そう、まだ終わりでは無かった。吸血姫と錬成師がサムズアップをし合った直後に七つ目の銀色に輝く頭が現れた某ライトノベルの展開を再現するかのように、胴体部分の残骸から新たに二つの頭がせり上がった。
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NAME:七ツ首の蛇神・金首
HP:9999999/9999999
MP:9999999/9999999
STR:9999999
DEX:10000
INT:9999999
CON:9999999
APP:-1000000
POW:9999999
LUCK:9999999
SKILL
【尾理】LEVEL:MAX(限界突破)
→尾使いの真髄を極めるよ! 【尾術】の上位互換だよ!
【突撃】LEVEL:MAX(限界突破)
→突撃が上手くなるよ! 【突進】の上位互換だよ!
【捨て身】LEVEL:MAX(限界突破)
→捨て身攻撃が上手くなるよ!
【奇襲】LEVEL:MAX(限界突破)
→奇襲が上手くなるよ! 【不意打ち】の上位互換だよ!
【躱避】LEVEL:MAX(限界突破)
→攻撃を躱すのが上手くなるよ! 【回避】の上位互換だよ!
【噛み砕き】LEVEL:MAX(限界突破)
→噛み砕きが上手くなるよ! 【咬みつき】の上位互換だよ!
【頭突き】LEVEL:MAX(限界突破)
→頭突きが上手くなるよ!
【駿身】LEVEL:MAX(限界突破)
→駿速の領域まで速度を上げるよ! 【瞬速】の上位互換だよ!
【物理耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→物理に対する耐性を得るよ!
【魔法無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔法を無効にするよ! 【魔法耐性】の上位互換だよ!
【状態異常耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→状態異常に対する耐性を得るよ!
【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→気配察知が上手くなるよ!
【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔力察知が上手くなるよ!
【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→熱源察知が上手くなるよ!
【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→振動察知が上手くなるよ!
【掣肘】LEVEL:MAX(限界突破)
→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!
【覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)
→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!
【絶望の波動】LEVEL:MAX(限界突破)
→絶望の波動を放つよ! 【恐慌】の上位互換だよ!
【光掌握】LEVEL:MAX(限界突破)
→光を掌握が上手くなるよ! 【光操作】の上位互換だよ!
【ゴールドラッシュ】LEVEL:MAX(限界突破)
→金色の輝きが天より降り注ぐよ!
【エターナルカノン】LEVEL:MAX(限界突破)
→超強力な単体魔法攻撃だよ!
ITEM
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NAME:七ツ首の蛇神・銀首
HP:9999999/9999999
MP:9999999/9999999
STR:9999999
DEX:10000
INT:9999999
CON:9999999
APP:-1000000
POW:9999999
LUCK:9999999
SKILL
【尾理】LEVEL:MAX(限界突破)
→尾使いの真髄を極めるよ! 【尾術】の上位互換だよ!
【突撃】LEVEL:MAX(限界突破)
→突撃が上手くなるよ! 【突進】の上位互換だよ!
【捨て身】LEVEL:MAX(限界突破)
→捨て身攻撃が上手くなるよ!
【奇襲】LEVEL:MAX(限界突破)
→奇襲が上手くなるよ! 【不意打ち】の上位互換だよ!
【躱避】LEVEL:MAX(限界突破)
→攻撃を躱すのが上手くなるよ! 【回避】の上位互換だよ!
【噛み砕き】LEVEL:MAX(限界突破)
→噛み砕きが上手くなるよ! 【咬みつき】の上位互換だよ!
【頭突き】LEVEL:MAX(限界突破)
→頭突きが上手くなるよ!
【駿身】LEVEL:MAX(限界突破)
→駿速の領域まで速度を上げるよ! 【瞬速】の上位互換だよ!
【物理耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→物理に対する耐性を得るよ!
【魔法無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔法を無効にするよ! 【魔法耐性】の上位互換だよ!
【状態異常耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→状態異常に対する耐性を得るよ!
【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→気配察知が上手くなるよ!
【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔力察知が上手くなるよ!
【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→熱源察知が上手くなるよ!
【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→振動察知が上手くなるよ!
【掣肘】LEVEL:MAX(限界突破)
→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!
【覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)
→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!
【絶望の波動】LEVEL:MAX(限界突破)
→絶望の波動を放つよ! 【恐慌】の上位互換だよ!
【闇掌握】LEVEL:MAX(限界突破)
→闇を掌握が上手くなるよ! 【闇操作】の上位互換だよ!
【シルバーラッシュ】LEVEL:MAX(限界突破)
→銀色の輝きが天より降り注ぐよ!
【ウルトラスパーク】LEVEL:MAX(限界突破)
→状態異常を誘発する稲妻を発生させる広範囲物理攻撃だよ!
ITEM
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「…………なんで、金の頭までいるのかしら? ……そもそも七ツ首の蛇神なのに頭九つって悪意を感じるわよね」
「まあ、草子君だからね……属性も聖属性は銀ではなく金の方にしているみたいだし、持っている技がどう見ても全てを超える裏ボスなんだけど……それに、カラーリングはF●Ⅳの金竜と銀竜よね……一体何を目指しているのかしら?」
金の頭の口に空間が歪むほどのエネルギーが凝縮され、銀の頭の周囲に現れたエネルギーの球が炸裂弾のように無差別に放たれる――【エターナルカノン】と【ウルトラスパーク】だ。
咄嗟に躱そうとした志島達だが、完全には躱し切れずに命中してしまう。
「…………あれ? ダメージがないわ」
「そうね……今ので負けたかと思ったのだけど」
だが、志島達は思ったほどのダメージが無かったことに驚いた。予想外の小ダメージという訳ではない、痛痒を感じないレベル――つまり、ノーダメージだ。
「そういえば、スキルのところに物理攻撃と魔法攻撃って書いてあるわよね? 【物理無効】と【魔法無効】でカットされたんじゃないかしら?」
「「あっ!?」……全く、草子君は何を考えているのかしら? こんなところまできっちり再現しなくてもいいのに」
強力な力を保有している敵ではある筈だが、何箇所か致命的な欠陥が存在している。
クォーターボスといえど、所詮は序盤の敵ということか、比較的攻略がしやすいように設定されているのだろう。
「世界最●の日やすべて●戦う者へみたいな強力な技もないし、思っていたほど苦戦を強いられずに倒せるかもしれないわね」
志島達はそう結論づけるや否や駆け出した。
炸裂する光弾と闇弾を慣れた動きで躱し、降り注ぐ【ゴールドラッシュ】と【シルバーラッシュ】を最小限のダメージで抜け、志島と眞由美の【袈裟斬り】で二つの首が落ちた。
「――やったか?」
志島は念のためにフラグを立ててみたが、新たな首は現れなかった。あの二体が不意打ちのような扱いの敵だったのだから、流石に三度目はないだろう。
奥の扉が開き、下層へ続く階段が現れる。志島が七ツ首の蛇神の亡骸を回収した後、三人は下層へ続く階段を降りていった。
◆
異世界生活百六十四日目 場所コンラッセン大平原? 地下大迷宮millefeuille、第七十五階層
地下大迷宮millefeuilleは草子パーティのメンバーに特別解放され、期間限定の訓練施設扱いであるが、後々は冒険者自由組合、通称冒険者ギルドに譲り渡し、冒険者達や騎士、軍人達向けの訓練施設として使われる予定になっている。
かつては魔王軍が人間の敵として存在し、冒険者達も非常時には勇者の旗の下に集い、共に魔王軍と戦うことになっていた。しかし、魔族が敵ではなくなった今、冒険者の目的は人間、魔族の双方に基本的には敵対する理性なき魔の獣――魔獣や遠く離れた地、異世界ガイアの魔物の討伐、その他雑用が主な仕事となっている。
確かに、各土地の守護者として緊急時に頼りになる戦力であるのは確かだが、危機的な状況が毎日のように起こることはない。大半の討伐についても騎士団だけで十分制圧できることがほとんどだ。それに、能因草子が設置した門の効果で非常時に国家同盟に加入している国家同士で戦力を供給し合うことが可能になった。戦力の総量が増えたのだから、尚更冒険者の需要は薄れていく。
そこで登場するのが地下大迷宮millefeuilleだ。狙いやシステムは某魔物の国の地下迷宮とほとんど同じだが、九百層を超えた辺りから宝箱から出現するアイテムはミンティス教国の神話に出てくる神器のスペックを普通に凌駕する鬼畜仕様である。まあ、今回はテストプレイと修行の意味が強いので、迷宮の宝箱は設置されていないのだが……。
今回、地下大迷宮millefeuilleには志島達以外にも複数のチームが迷宮攻略を目指して挑戦している。
中でも最大の人数を誇るのは白崎、朝倉、リーファと言った草子パーティの初期メンバーに、レーゲン、照次郎、孝徳というミンティス教国の勇者三人、ベテラン冒険者のミュラとコンスタンス、姫川、氷岡の元性別逆転カップル(現在は性転換を行って姫川が女、氷岡が男になっているため普通のカップルになっている)、不知火、度会の空気コンビ、平城山、山田、相沢達クラスメイトと相沢の彼女エリーゼから構成される攻略パーティで、到達地点は現在第七十五階層と早朝から攻略していたこともあり、志島達と比べてもかなり進んでいる。
そんな白崎達の前に立ちはだかったのは、クォーターボスの一体だ。既に七ツ首の蛇神の他にもう一体クォーターボスを討伐してきた白崎達だが、今回のクォーターボスもまた厄介な相手であった。
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NAME:単眼ノ百手巨人
LEVEL:99999
HP:9999999/9999999
MP:9999999/9999999
STR:9999999
DEX:10000
INT:10000
CON:9999999
APP:-1000000
POW:9999999
LUCK:9999999
SKILL
【片手棍理】LEVEL:MAX(限界突破)
→片手棍使いの真髄を極めるよ! 【片手棍】の上位互換だよ!
【両手棍理】LEVEL:MAX(限界突破)
→両手棍使いの真髄を極めるよ! 【両手棍】の上位互換だよ!
【鬼神鏖爆裂大鎚】LEVEL:MAX(限界突破)
→鬼神すら殺す灼熱の鎚を豪快に振り翳して殴るよ! 【爆裂打槌】の上位互換だよ!
【格闘真髄】LEVEL:MAX(限界突破)
→格闘術の真髄を極めるよ! 【マーシャルアーツ】、【拳理】、【蹴理】、【発勁】、【五行拳】、【化勁】の上位互換だよ!
【怒濤攻撃】LEVEL:MAX(限界突破)
→怒濤の攻撃が上手くなるよ! 【波状攻撃】の上位互換だよ!
【捨て身】LEVEL:MAX(限界突破)
→捨て身攻撃が上手くなるよ!
【奇襲】LEVEL:MAX(限界突破)
→奇襲が上手くなるよ! 【不意打ち】の上位互換だよ!
【躱避】LEVEL:MAX(限界突破)
→攻撃を躱すのが上手くなるよ! 【回避】の上位互換だよ!
【頭突き】LEVEL:MAX(限界突破)
→頭突きが上手くなるよ!
【全身硬強化】LEVEL:MAX(限界突破)
→全身を赴くままに強化するよ! 【金剛】、【剛力】、【豪脚】、【豪腕】の上位互換だよ!
【閃身】LEVEL:MAX(限界突破)
→閃くような速度で移動するよ! 【閃駆】、【駿身】、【突進】の速度のみの上位互換だよ!
【振りかざし】LEVEL:MAX(限界突破)
→振りかざしの威力が上がるよ!
【物理耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→物理に対する耐性を得るよ!
【魔法耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔法に対する耐性を得るよ!
【状態異常無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→全ての状態異常を無効にするよ! 【状態異常耐性】の上位互換だよ!
【千里眼】LEVEL:MAX(限界突破)
→千里先を見通す目を得るよ! 【望遠】の上位互換だよ!
【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→気配察知が上手くなるよ!
【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔力察知が上手くなるよ!
【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→熱源察知が上手くなるよ!
【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→振動察知が上手くなるよ!
【掣肘】LEVEL:MAX(限界突破)
→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!
【覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)
→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!
【絶望の波動】LEVEL:MAX(限界突破)
→絶望の波動を放つよ! 【恐慌】の上位互換だよ!
ITEM
・エルダーハンマー×100
→神の加護が宿ったエルダーツリー(ニワトコ)を用いた槌だよ! 魔力を込めるとどんな武器にでも姿を変えるよ!
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もしこの場に聖がいれば、「単眼ノ百手巨人ってあの迷宮のサイクロプスの改良版みたいな奴よね」と言っただろうが、白崎達は当然初見……サイクロプスの攻略情報を足掛かりに単眼ノ百手巨人を討伐することはできない。
「……また難儀そうなのが出てきたな……今回は物理特化か? しかし、これだけ巨体だとわいの少林寺拳法は通じそうにないな」
百の手にエルダーハンマーを持った単眼ノ百手巨人に、思わず平城山が溜息を洩らす。
「物理も魔法も耐性だから突破できれば勝機がある! 武器攻撃なら私の超越技の効果で貫通できるから全員で総攻撃を仕掛けるのが手っ取り早いわ! 単眼ノ百手巨人の攻撃も単調だけど当たると痛い奴だから気をつけないといけないわ」
「華代、もう単眼ノ百手巨人の動きを掌握したのね……分かったわ」
真っ先に飛び出した朝倉が万物斬り伏せ=究極大戦装備を鞘から抜き払うと同時に地を蹴って加速した。
そのまま単眼ノ百手巨人に斬りかかる朝倉だが、そうは問屋が卸さないと単眼ノ百手巨人がエルダーハンマーの一つを巨大な防壁へと変えた。
防壁自体はスパッと切れるが、それでも一手間増えるのには変わりない。朝倉の頭上に燃え盛るエルダーハンマーが振り下ろされる……朝倉は反射的に遠ざかったことで回避に成功したが、このままそこにいれば直撃を食らっていただろう……まあ、単眼ノ百手巨人には物理貫通能力がないので、受けてもダメージがないことを逆手にとって単眼ノ百手巨人の攻撃を無視してそのまま脳死プレイで攻めるのも一手ではあるが、白崎達は志島達とは異なり、【物理無効】と【魔法無効】で属性攻撃さえどうにかすれば勝てることを自覚していたものの、それでは練習にならないと、全ての技を意識して避けることにしていた。
「……これは厄介だな」
朝倉の言葉に他のメンバーも首肯する。攻防一体の戦闘スタイル――物理特化であることが唯一の救いだが、厄介な敵であることには間違いない。
――グリィヒュャァァァン!
単眼ノ百手巨人が奇妙な奇声をあげながら、反撃とばかりに一斉にエルダーハンマーを振りかざす。