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軍社大戦 -マハーシュバラ帝都三陣営激突- Ⅸ

 異世界生活百六十三日目 場所超帝国マハーシュバラ


 中央都市ブラフマー、中央都市シヴァ、中央都市ヴィシュヌに侵攻したヴァパリア黎明結社の部門長の討伐は白崎達、ロゼッタ達、レーゲン達の活躍で無事に達成された。


 三つ巴が崩れた現在、聖達、リーファ達、白崎達は三都市で神滅分隊(マハカーラ)と対峙する構図になっている。

 だが、この状況は俺達の望んでいるものではない。


「織田君、葦屋浦さん、瀧野瀬さん、避難誘導は完了したか?」


『こっちは大丈夫! 聖さん達が頑張ってくれている間に終わらせたよ』


『こっちも大丈夫だ。……かなりヒヤヒヤした……巻き込まれ事故で死ななくて良かった』


『こっちも大丈夫よ! それで避難は完了したけど私達はどうすればいいの? 超越者(デスペラード)を相手にして勝てる訳がないし』


「了解……んじゃ、全員でゲートミラー使って屋敷に撤退してくれ! 神滅分隊(マハカーラ)の連中と戦う必要はないからな。ここまでお膳立てしてもらったんだ。後は俺一人で十分だ」


『草子君なら最初から最後まで一人で解決できそうだけど……。最後まで手伝わせてもらえないってことは、私達の実力がまだ認められていないってことかな?』


「何言ってんですか? “熾天大天使地母神”様。俺より確実に強いのに……後は超皇帝一人と勝負して勝利した実績ってのを作るだけだし、モブキャラにもできる簡単なお仕事。それに、後は口を使った交渉になる。……まあ、モブキャラだけど多少口が回るから大丈夫さ」


『どう考えても草子君はモブキャラじゃないし、私より明らかに強いんだけどな……。分かった、屋敷で待っているよ』


「ああ、そうしてくれ。お茶でも飲んでゆっくり寛いでいてくれ。……正直いくら主人公パーティ(白崎勇者パーティ)と雖もぶっつけ本番で超越者(デスペラード)に勝てるとは思わなかった。やっぱり白崎さん達は凄いな……ちょっと興味あるから白崎さんの超越技、後で調べさせてもらいたいな。聖さん、リーファさん、レーゲン君、ジューリアさん、アイリスさんも流石だ。なかなか強力で厄介な超越技ばかり……こんなモブキャラに褒められても嬉しくないと思うけど。……よく頑張りました」


『えへへ、草子君に褒められたよ!』


『草子さんに褒められることなんてなかなかありませんから、今日は記念日ですね!!』


「いや、俺も褒める時は褒めるよ? まあ、こんなモブキャラに褒められても嬉しくないだろうとは思うけどさ。……まあ、リーファさんの場合は趣味に走り過ぎていると思うけど。まあ、いいんじゃないかな? “精霊王”の在り方を契約者の一存で変えちゃっても。趣味に走っているのは俺も一緒だし。……レーゲン君は、本当に積み重ねの成果だ、って超越技だな。地味に思えるかもしれないけど、俺は正直相当厄介な力だと思う」


『ありがとうございます。……正直地味だな……って思っていましたが、草子さんに褒められるのは嬉しいですね』


「ジューリアさんのも大方の予想通りだが……うん、一気に攻め辛くなったって印象」


『……めでられたりやめでられたらずやよく分からねど、嬉し』


「アイリスさんの超越技はかなりスケールが大きかったな。【時空耐性】持ち以外は辛い戦いを強いられそうだ……というか、勝てるのか?」


「ありがとうございます! やったね、褒められたよ、クリプ!!」


『良かったリプね、アイリス』


 ……いや、モブキャラに若干上から目線で褒められるって明らかに主人公とその仲間達としてはアウトだと思うんだが……うん、意味不明だ。


 白崎達はゲートミラーを使って無事に屋敷に戻った。佐伯みたいな不穏分子を抱える形だが、【即死】を封じられた上に〝死者蘇生(リザレクション)〟を使える白崎がいる現状では万一のことも起こらない筈だ。


「さて、それじゃあお先に」


「ちっ…………ケリー」


『了解したぜ、隊長さん!』


 ケリーだったか? 前世アメリカ人で魔族に転生した神滅分隊(マハカーラ)の副隊長だったか? そのケリーが俺ではなくインフィニットの方に飛んでいって渡したのは番外の特殊武装――復活の石版(レストア・リトグラフ)……あっ、地味に不味い。インフィニットの〈装甲祥瑞エクイプメント・ファンタズマル・テューポーン〉が復活しちゃうじゃん……。


「壬さんのところへは行かせません! 先に進むのならこの私を殺して行きなさい!!」


「悪いがこっから先には行かせねえぜ。俺達にも守らなければならない奴がいるんでな」


「流石に貴方もそれだけの数を相手にすれば苦戦する筈……時間を稼げれば今度こそヨミ隊長が貴方を倒してくださいます」


「私、こういう時間稼ぎみたいなものは嫌いなのだけど……でも、これ以外に手がないなら致し方ない。……逃げないよね? そんな恥ずかしい真似、する訳がないわよね?」


「貴方は確かに強いかもしれない。でも、神滅分隊(マハカーラ)全員を相手に本当に勝ちをもぎ取れるのかしら?」


「……では、いざ勝負でございます」


 魔法少女の契約そのものを【流轉の理】で無効化し、【色慾ト淫魔之魔神】で翼を広げて飛翔しようとしたのだが、佳奈、ケリー、エドワード、リュドミラ、シュゼット、(リィゥ)が〈装甲祥瑞エクイプメント・ファンタズマル〉を纏ったまま仕掛けてきた。

 なるほど、作戦としては上々……敵の全員撤退という予想外の状況を呑み込んで、よくこの状況で攻めて来られるものだ。


 ……やはり、流石は本物の軍人。地球で平和な世界で文学少年をやっていた俺や、ただの引きこもりや学生だった連中とは違う。

 そういう連中でも特別になれる……そういう世界が異世界という場所ならば、平和ボケした世界ではない場所から転生や転移をした存在はどうなるのか?


 インフィニットが俺達平和ボケした地球から転生や転移をしてきた存在を小馬鹿にし、見下す理由も分かるよ。少なくともお前達にはその権利がある。それだけの人生を、お前達はかつて歩んだのだから。


「【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】!!」


『なっ……貴様。――能因草子!!』


「やっと名前を呼んでくれたな、将軍サマ……いや、逢坂(インフィニット・)(ショットシェル)大将軍閣下。……第三次世界大戦、そして異世界カオスで自分達の正義を掲げて戦う貴方達にこんなモブキャラの俺が敵として認めてもらえたこと、とても嬉しく光栄に思うよ。……そんな貴方達にとって、俺の願いは酷く身勝手なものに映るかもしれない。でも、俺だって今まで何もして来なかった訳じゃない。ただ、老害に踊らされてきた訳じゃないんだよ。……俺には俺のエゴがある、掲げる理想がある! そのために、俺は人と人との繋がりを結んできた。……貴方達は凄いよ、ずっと自分達だけで戦ってきたんだから。誰も巻き込まず、自分達だけで完結させようとしてきたんだから。……俺達の目的は結局一緒……ヴァパリア黎明結社を倒すためだろ? そして、お前達のやり方では不十分……この世界にカオスが存在するということはヴァパリア黎明結社だけじゃない、その裏にあるこの世界の悪たる意志……いや、もう濁すのはやめるよ。この異世界カオスそのもの――始まりの一族オリジン・オブ・ケイオスに力を与えることとイコールということになる。ヴァパリア黎明結社が何故敵対するお前達を見逃してきたのか……そして、今排除に動くのか。……別に俺達と一緒に来いとは言っていない。だが、大黒壬に勝ったという実績と国家同盟に所属するっていう結果が欲しいだけだ。別に大黒壬(シヴァ=プリーモ)の命を奪いたい訳じゃない。……それでもまだ自分達の正義を貫くというのなら、あくまで超帝国マハーシュバラ一国としてヴァパリア黎明結社と戦うってのなら、議論は平行線だ。それがお前達のエゴなら、俺も自らのエゴ――理想でもって潰してやる。まあ、要するに強行突破って話だな。俺を止めたきゃ止めてみろ、ですぅ」


 神滅分隊(マハカーラ)の包囲網を突破した状態で再び【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】を発動――視界に捉えた超皇帝宮殿キャッスル・マヘーシュバラに転移する。

 インフィニット達も必死で追いかけてきているようだが、空間移動による瞬間転移で作り出した差は大きい。


 扉を蹴破ることなく城内に入る余裕さを見せながら超皇帝宮殿キャッスル・マヘーシュバラに入ると同時にこちらを見て驚いているメイドや執事を真っ向無視して叡慧ト究慧(セーフェル=)之至高神(イェツィラー)を発動――超皇帝宮殿キャッスル・マヘーシュバラの構造情報と超皇帝シヴァの位置情報を入手する。


「【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】!!」


 二度目の【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】発動で玉座の間に転移する。

 城に潜入したら各個撃破でゆっくりと調査するべきだって? そんな悠長なこと言っていたらあの将軍サマともう一度バトる羽目になるぞ!!


「初めまして、能因草子と申します。本日はシヴァ=プリーモ……大黒壬様に二つご用件があり、お伺い致しました」


「――ッ!? まさか、逢坂隊長が!? ご、ゴホン。よくぞここまで辿りついた、国家同盟の議長よ。超帝国マハーシュバラの皇帝として汝の謁見を許そう」


-----------------------------------------------

NAME:シヴァ=プリーモ/大黒壬

LEVEL:20000(DESPERADO)

HP:5000000/5000000(+10000)

MP:4000000/4000000(+10000)

STR:6000000(+10000)

DEX:5000000(+10000)

INT:100(+10000)

CON:4000000(+10000)

APP:39(+10000)

POW:4000000(+10000)

LUCK:4900000(+10000)


JOB:超皇帝


TITLE:【不屈の超皇帝】、【ヴァパリア黎明結社と対峙する者】、【距離の支配者】、【ディストピアからの転生者】、【超越者(デスペラード)の領域に至りし者】


SKILL

【片手剣理】LEVEL:MAX(限界突破)

→片手剣の真髄を極めるよ! 【片手剣】の上位互換だよ!

【唐竹】LEVEL:MAX(限界突破)

→唐竹が上手くなるよ! 上から下に斬るよ!

【逆風】LEVEL:MAX(限界突破)

→逆風が上手くなるよ! 下から上に斬るよ!

【袈裟斬り】LEVEL:MAX(限界突破)

→袈裟斬りが上手くなるよ! 相手の左肩から右脇腹を斬るよ!

【逆袈裟斬り】LEVEL:MAX(限界突破)

→逆袈裟斬りが上手くなるよ! 相手の右肩から左脇腹を斬るよ!

【左斬り上げ】LEVEL:MAX(限界突破)

→左斬り上げが上手くなるよ! 袈裟斬りの逆に斬り上げるよ!

【右斬り上げ】LEVEL:MAX(限界突破)

→右斬り上げが上手くなるよ! 逆袈裟斬りの逆に斬り上げるよ!

【居合い】LEVEL:MAX(限界突破)

→居合が上手くなるよ!

【飛斬撃】LEVEL:MAX(限界突破)

→斬撃を飛ばすのが上手くなるよ!

【斬痕】LEVEL:MAX(限界突破)

→空中に斬撃の跡を残すことができるよ!

【無拍子】LEVEL:MAX(限界突破)

→無拍子が上手くなるよ!

【無念無想】LEVEL:MAX(限界突破)

→雑念を生じる心を捨てて無我の境地に至るよ!

【兜割り】LEVEL:MAX(限界突破)

→兜割りが上手くなるよ!

【刺突】LEVEL:MAX(限界突破)

→刺突が上手くなるよ!

【狙撃】LEVEL:MAX(限界突破)

→狙撃が上手くなるよ!

【狙撃必中】LEVEL:MAX(限界突破)

→狙撃が必中するよ! 【照準】の上位互換だよ!

【発砲時反動消滅】LEVEL:MAX(限界突破)

→発砲した時に反動が消滅するよ!

【全属性魔法】:MAX(限界突破)

→全属性の魔法を使えるようになるよ!

【複数魔法同時発動】LEVEL:MAX(限界突破)

→複数の魔法を同時に発動できるよ!

【複合魔法】LEVEL:MAX(限界突破)

→複数の属性の魔法を融合できるよ!

【森羅魔眼】LEVEL:MAX(限界突破)

→森羅万象を見通す魔眼を得るよ! 【看破】、【邪眼】、【魔眼】、【瞳術】、【透視】、【千里眼】の上位互換だよ!

【クライヴァルト語】LEVEL:100

→クライヴァルト語を習得するよ!

【ミンティス国】LEVEL:100

→ミンティス語を習得するよ!

【マハーシュバラ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→マハーシュバラ語を習得するよ!

【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:100

→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!

【エルフ語】LEVEL:100

→エルフ語を習得するよ!

【ドワーフ語】LEVEL:100

→ドワーフ語を習得するよ!

【獣人第一共通語】LEVEL:100

→獣人第一共通語を習得するよ!

【海棲語】LEVEL:100

→海棲語を習得するよ!

【掣肘】LEVEL:MAX(限界突破)

→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!

【覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)

→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!

【殺気圏域】LEVEL:MAX(限界突破)

→殺気を放って一定の領域に足を踏み入れなくするよ! 踏み入れると傷つくよ! 【殺気】の上位互換だよ!

【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→気配察知が上手くなるよ!

【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→魔力察知が上手くなるよ!

【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→熱源察知が上手くなるよ!

【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→振動察知が上手くなるよ!

【危機感知】LEVEL:MAX(限界突破)

→危機感知が上手くなるよ!

【全マップ探査】LEVEL:MAX(限界突破)

→今居るマップ情報を完璧な状態で得るよ! 【空間把握】の上位互換だよ!

【距離操作】LEVEL:MAX(限界突破)

→相手との距離をおかしくするよ!


ITEM

・〈装甲祥瑞エクイプメント・ファンタズマル摩醯(シヴァ=)首羅(マヘーシュヴァラ)

→超帝国が開発した兵器だよ! 四つの特殊武装と一つの番外特殊武装、祥瑞装を装備しているよ!

前世感応板(パスト・ウェポン)×10

→前世に愛用していた武器を顕現する板だよ! 超帝国の秘密兵器だよ!

・超帝国軍の軍服

→超帝国軍の軍服だよ!

九魂の腕輪ナインフォース・ブレスレット

→腕輪だよ! 九つ入れられるよ! 【即死無効・スキル】、【即死無効・魔法】、【因果無効】、【物理無効】、【属性魔法乱反射】、【状態異常乱反射】、【魔力回復】、【体力回復】、【電脳保存】が入っているよ!


NOTICE

-----------------------------------------------


「……あの、キャラ作らなくていいっすよ?」


「…………そうだね。フランクな方がお互いにとっていいなら、そっちの方がいいか。初めまして、シヴァ=プリーモと申します。一応皇帝やっていますが、前世はご承知の通り日本人の転生者(リンカーネーター)です」


 シヴァ=プリーモ――帝国マハーシュバラの初期時代から超帝国マハーシュバラ発足時代まではその姿を見せたが、それ以降はインフィニットに前線を任せたという不屈の逸話を持つ皇帝。

 でも、誰もが思い浮かべる権威を笠に着る皇帝や威厳溢れる皇帝ではない。


 【不屈の超皇帝】という異名からは想像もつかない筋骨隆々ながっしりとした大男とはかけ離れた姿。……軍人としては最低限鍛えられている、そんな容姿の彼の双肩にどれほどの重圧がのし掛かっていたのか、完全に理解することは不可能だろう。


 今は仲間がいるとはいえ、最初はインフィニットとシヴァだけだった。二人から始まった戦いだ。

 それでも世界を覆い尽くす悪意に立ち向かう決心をした……その強い心は本物。いや、このカオスな世界でも上位の高潔で強靭な心を持っていると言っても過言ではない。

 この人は世界を覆い尽くす悪意に二度も抗おうとした――並外れた存在なのだから。


「……ここに到達したということは、逢坂隊長達を殺してきたということか?」


「いいや? 説得は無理だから全員追い抜いてきた。誰も殺していないさ。……後でお前の彼女にちゃんと説教してやれよ。栗花落佳奈はお前を守るために命を捨てようとしていたんだからな」


「……それは…………俺もあまり彼女を責められないよ。俺も佳奈さんを失うくらいならこの命を投げ出すつもりだし」


「例え、超皇帝としての役割を果たせなくなるとしてもか?」


「本来、俺よりも超皇帝に相応しいのは逢坂隊長だ。あの人は本当の強者だよ……あの人が超皇帝としてヴァパリア黎明結社との戦いを引き継いでくれるのなら、俺は喜んで玉座を明け渡すつもりでいる」


「なら、明け渡す前で良かった。……俺の目的は二つ。一つは超皇帝陛下――貴方との戦いに勝利したという事実が欲しい。そして、もう一つは超帝国マハーシュバラの国家同盟への加盟。それが、俺達の目的――地球への帰還のためにどうしても必要なものなんだ。勿論、ヴァパリア黎明結社は倒す。そのために共闘するという話なら受けるつもりだし、別々に同じゴールを目指すということでも問題ないと思う。……この世界からカオスを消し去ること。それこそが、ヴァパリア黎明結社を表側に引きずり出すために必要な一手……それは分かっていますよね?」


「ああ、俺達もまたカオスを形成する要素の一つになっていることは理解していた。俺はそれを致しかたないものと考えていたが、どうやら君はそれすらも詰めの甘さと断じてしまうことができてしまう……アルドヴァンデ共和国、自由諸侯同盟ヴルヴォタット、ミンティス教国、ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国――君はこれまで国と国とも問題、種族と種族の垣根……そういったものを一つ一つ解決して国家同盟という一つの共同体に力を集約しようとした。カオスのない世界――国家同盟によって相互協力が成された世界という理想、それが君の願いなんだね。……君は本当に凄いよ。逢坂隊長からはただの転移者(トラベラー)だって聞いていたけど、とてもそうは見えない。君ほど支配者に相応しい人間が果たしてどれほどいるのだろうね?」


「……いや、世辞は結構ですよ。俺なんてただのモブキャラ――白崎さんの腰巾着に過ぎないですから。……ところで、どうしますか?」


「勿論、超皇帝の名の下に国家同盟に所属することを宣言するよ。そして、可能ならば俺達も君達と共に戦わせてもらいたい。……そのために、君を毛嫌いしている逢坂隊長のことは説得するよ」


 さて、言質は取った。将軍サマ、一歩遅かったようだね。


「ちっ。…………………………………………シヴァ様、貴方様がお望みとあらば、その無性に腹が立つ男と一時的に手を組むことを受け入れましょう」


 あれ? 明らかに態度が違うな。本当に上司と部下って感じだ。

 シヴァの方も悲しそうな表情をしているし……きっと昔みたいに部下と上司の関係に戻りたいのかもしれないな。だが、それは転生してしまった今では絶対に叶わない願い……インフィニット、不器用なまでに愚直な人なんだよ。変心する前もした後も、その真面目さは変わらない。


「では、もう一つの約束――一騎打ちの方も受けて頂けますか?」


「ああ……しかし、ここで死ぬ訳にはいかないからほどほどにしてくれよ」


「安心してください。ダメージを負っても大丈夫な特別な空間での勝負ですから。……はぁ、佳奈さん。貴女の気持ちも分からない訳ではありませんし……仕方ありませんね。ここにいる神滅分隊(マハカーラ)も含め、全員相手を致しましょう」


「…………ほほう。貴様、よっぽど打ちのめされたいようだな」


 インフィニット以外も俄然やる気だ。……うん、良かれと思ってが仇になったかな?


「んじゃ、エンリ。例の奴頼む」


【――システム起動。《神代空間魔法・夢世結界》の発動、完了しました。耐性及び無効スキルの無効化、超越者(デスペラード)の優位性無効化、HPゲージの表示完了しました】


 中空に画面が生まれ、エンリの姿が映し出される。

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