戦わない魔法少女の魔法も組み合わせや使い方次第では戦う魔法少女の魔法と遜色ないものになるのかもしれない。
異世界生活百四十八日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領キムラヌート
(〝付与は新たな境地に到達した。環境を変え、気候を変える力は最早付与術にあらず〟――〝高位付加術〟)
溶岩への付与を解き、結界の外から投げて渡された黒刀二本に〝高位付加術〟を掛ける。
途端、ただの黒刀が金髪ツインテール(ドリルにあらず)の魔法剣士風少女と黒髪くノ一風少女に姿を変えた。
「なるほど……突然武器を作って欲しいというから何をするのかと思いましたが……ジュ●エットとハ●ネと同じ付与による人格付与ですか」
流石はレーゲン、「一体お前は何をやったんだ!?」的な視線を向けてきている白崎達より一歩先を行っているな。
「とりあえず、金髪ツインテールはクラリッサ=ソレィユ、黒髪くノ一風はアーリーン=リュンヌと名付けた。んじゃ、二人とも頑張ってー!」
「頑張っていこー♡」
「仰せのままに」
クラリッサの大剣に猛烈な魔力が宿る……あっ、早速あれをやるつもりだね。
「――爆裂魔法っ、展開完了ぉ。いくよぉ♡」
【爆裂魔法】を魔法として発動するのではなく、剣に宿す。詠唱せずに魔力を剣に込めることで発動する魔法剣の応用版だ。
「ネバネバシュートぉ! ネバネバしちゃえ!!」
大剣を右手だけで握り、開いた手で鳥黐のような粘液を飛ばす――粘着伸縮の粘性成物を参考にした能力を付与した厄介な技だ。
「捕まえたよー♡ じゃあ、喰らって死んじゃえ! 〝爆裂魔法〟」
『――華麗に脱皮!!』
あっ……大剣を振り下ろした瞬間に脱皮して逃げやがった。
いや、ヤルダバオートの能力って本当に便利だな……胡散臭いけど。
「《悪魔乃外観:鋭利な鉤爪》、《悪魔乃外観:万力の豪腕》、《悪魔乃外観:疾風の豪脚》、《悪魔乃外観:堕ちたる翼》、《悪魔乃外観:紅蓮の緋衣》』
一気に筋肉が盛り上がった腕と脚、鋭く伸びた鉤爪、背中から生えた漆黒の翼、そして凍てつく真紅の衣。
「――隙あり!」
影の中を移動してヤルダバオートの背後に回ったアーリーンの投げた苦無が黒雷を帯びて投擲される。
『――華麗に脱皮!!』
「……させないよ」
地面から生えたリボンがヤルダバオートを縛り、脱皮を妨害した……あっ、これいけるんじゃね?
更にそこに黒雷の追い討ちが……エグ!?
『小娘よ、それで我輩を止めたつもりか!? 笑止――』
あっ、リボンを引きちぎってそのまま脱皮しやがった……でも、ダメージは着々と蓄積しているし。
「〝爆裂魔法〟♡」
「手裏剣影分身・黒稲妻」
『《悪魔乃外観:紅蓮の緋衣》の奥の手を見せてやろう――無限氷結地獄』
……おいおい、手裏剣諸共黒雷と爆裂魔法を凍結させるってどんな鬼畜技だよ!
『《悪魔乃外観:煉獄の緋衣》――地獄の業火』
あっ、今度は燃やした。プラマイゼロで黒稲妻が消え、手裏剣が地に落ち、爆裂魔法が消滅した……あれ? プラマイゼロになっていないだと!?
「しゃあなし……ちょっとだけ本気出すか」
(〝付与は新たな境地に到達した。環境を変え、気候を変える力は最早付与術にあらず〟――〝高位付加術〟)
『フハハハハ! 何もしていないではないか! そんなハッタリ、我輩には…………なっ!?』
クックック……1Yg――1秭グラムという意味不明な重さと下向きのベクトルをヤルダバオートの頭上の大気に付与したのだよ。
漆黒の翼で飛行し、移動できるヤルダバオートも意味不明な重さを与えられた不可視の空気の塊が急加速して落下する攻撃を避けることはできない。
「大気の鉄槌……うん、なんか別のアプローチで四大精霊のシ●フィを超えちゃった気がするけど、きっと気のせいだな」
純粋な戦闘力の観点から言えば、〝高位付加術〟で十分に勝てる――そもそもチートと呼ばれる強さも物語や世界によって物差しが異なるものだ。
例えば、声に付与をすれば千マイルは余裕で届き、魔力であらゆる術を消し去ることもできる。
理論上、ほとんど全ての魔法を再現可能な〝高位付加術〟……まあ、アホみたいに魔力を喰うから、高レベルなものを使うのなら99,999,999くらいは一撃で吹っ飛ぶだろうけど……まあ、テラさんのメテオみたいなものだよ、うんうん。ステータスを上げきっておけば、命使わずに一発ぐらいは撃てるんじゃない? しかし、【無属性魔法】といい【高位付加魔法】といい、【無限の魔力】が前提の魔法が意外とあるよな……まあ、【魔法無効】が存在している時点で、魔法は非推奨なんだろうけど。
復活させた溶岩の中に「I'll be back」と言いそうな感じで落ちていくヤルダバオート(ただし、ほぼ一瞬なので【叡慧ト究慧之神】でわざとスローモーションに処理してもらったけど)……まあ、普通に帰ってくるけどね。死んでないし。
◆
『フハハハハ! 負けた負けた! 我輩の完敗である!! 優勝商品にこのちびちびデミえもん人形を進呈しよう。冒険者仲間に自慢できるぞ!!』
「――concasser」
ヤルダバオート、死亡。残機が一体減り、仮面に〝Ⅱ〟と書かれたヤルダバオートが現れた。
「……あの、一発で決着をつけられるのなら、わざわざ長期戦を演じる必要は無かったと……いえ、なんでもありません!!」
八重羽……その巨体で怯えられるとか意味が分からないんだが。というか、一発で決着をつけたらつまらないだろう? こんな騙し討ちみたいな方法じゃなくて、正々堂々? 策略を巡らせた鎬を削る戦いを演じたいのだよ。
『フハハハハ! 約束は約束だ。魔王城の結界は解除してやろう! 待っているがいい!!』
さて、ハイテンションな仮面の悪魔は消えていったし、そろそろ最後の魔法少女に対して手を打たないといけないかな?
「ところで、草子さんはこの後どのルートを辿って魔王城に行くのかしら?」
と、着々と謁見の間に向かってやってきている魔法少女に警戒していたら、メリーヌがそんなことを聞いてきた。
えっと……確か東西南北に一つずつ四天王領が配置されていて、そのいずれかを通らないといけないんだっけ?
「えっと、北の豪雪凍土の四天王領、東の窮山幽谷の四天王領、西の古都幽玄の四天王領、南の淫香大森の四天王領……だったっけ? ちなみにどこがおススメ?」
「もし、魔王軍四天王と戦うことになるのであれば、最弱の四天王と呼ばれる六条夜華様が支配する古都幽玄の四天王領ですね……って、草子様にこれを教えてしまっていいのか分かりませんが」
「……でも、もう決定しているよね? 行くなら██████の四天王領に」
「いや、██████の四天王領は選択肢にない。今、魔法少女がこっちに来ているみたいだが、コイツを倒した時に向こう側に全ての幹部を倒したことが伝わるだろう。相手が俺達が部門長の正体を掴んでいることに気づいているとは思えないが、このカオスな世界を裏から支配していると自称している異次元の組織だ――きっと分かりやすい証拠は残さないだろう。敵は全ての証拠を消し去って魔王城に向かう。魔王を倒した後という最も油断する状況で全精力を注いで来る筈だ。俺なら、二人の部門長を手に掛け、ダニッシュの死に間接的に関わった危険な相手を生かしてはおかないからな」
それに、折角敵がドラマチックな舞台を用意してくれているんだ。それに応じないなどという選択肢は存在しない。
しかし、目的のエパドゥン遺跡が真下にある魔王城が戦場になるとは……どうにか気取られずに戦闘を終わらせたいものだ。
「ということで、俺は魔法少女を倒してくるから、聖さん達は██████の四天王領以外で……できれば実際に四天王がいる四天王領を選んでおいてくれ。そっちの方が面白いし」
「普通は敵がいないところを選ぶと思うんだけどね……行ってらっしゃい」
謁見の間を出て、廊下を走る。――幸い、魔法少女はすぐに見つかった……というか、鏡をモチーフにしたのか全体的に光を反射する煌びやかな衣装で、きらきら輝き、透明フィルムみたいにつやつやで透けるってコスチュームの時点で一発で分かるよね。
「最後の魔法少女が平凡を自称する平凡じゃない魔法少女に酷似した魔法少女だとは思わなかったよ。きっと、変態さんならその髪を是が非でも手に入れようとしただろうね……あっ、アイリスじゃない方の。……しかし、改めて考えると意味不明なコスチュームだよな」
「まあ、確かに破廉恥なコスチュームよね。白の下着がスケスケコスチュームのせいで丸見えだし、覗かなくてもスカートの中身丸見えだし、本当に困っちゃうわ……でも、男子からしてみたら嬉しいんじゃない?」
「いえ、全然?」
「あっ、あらそう。確かに全く動じていないし……枯れているんじゃないかしら?」
「誰が草子ょく系男子だっ!? まあ、元からなのかカタリナとして一時期振舞っていたからなのか分からないけど、色気よりも読書だからね。というか、世間一般の男が浪漫? を感じるものもただの記号にしか見えないし、女の武器を使って誘惑している奴を見ても、これは意図的に魅せているものだなって分かるぐらいで、それがなんだとは思わないからね。俺を篭絡したいのなら色気で攻めるんじゃなくて図書館一つをプレゼントした方がよっぽど建設的だと思うよ? まあ、それがあったからといって忖度するかは別だけど、少なくとも好意的なfirst impressionは持つだろうね」
「それは……随分と誘惑し甲斐のない人のようね。でも、安心するといいわ。私は貴方を殺しにきたのであって誘惑しようという気は微塵もないから」
胸元につけられた鏡のように見える形の石――プリンセスジュエルが眩い輝きを放つ。
瞬間、俺達は悪堕ち魔法少女の結界に引きずり込まれた。
◆
異世界生活百四十八日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国? 悪堕ち魔法少女の結界内
反射に反射を重ね、眩い輝きを放つ黄金空間。
結界は一重らしく、その中心には黄金の太陽が浮んでいる。……それはそれは神々しく、目映く……ウザっ!?
【主我主義的な創造主】でサングラスを作ってかける。
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NAME:魔法少女プリズムミラー
LEVEL:999
HP:999999/999999
MP:999999/999999
STR:999999
DEX:999999
INT:999
CON:999999
APP:999
POW:999999
LUCK:999
JOB:魔法少女
SKILL
【鏡光聖女】LEVEL:9999
→鏡を使って敵と戦うよ!
【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:10
→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!
BATTLE SONG
→Ver.1.61.81.03.39。絶唱搭載。
ITEM
・コンパクト型ステッキ
→触れた相手の能力を一つだけコピーできるよ! 寿命を消費するよ! 一度魔法少女に触れてコンパクトのボタンを押すとその能力を得ることができるよ!
-----------------------------------------------
-----------------------------------------------
NAME:日輪の堕魔《roue solaire》
LEVEL:1000000
HP:1000000/1000000
ΣΑ:1000000/1000000
STR:1000000
DEX:1000000
INT:0
CON:1000000
APP:0
POW:1000000
LUCK:10000
SKILL
【日輪の堕魔の呪法】LEVEL:1000000
→日輪の堕魔の呪法だよ!
ITEM
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-----------------------------------------------
NAME:日輪の堕魔の使い魔
LEVEL:1000
HP:10000/10000
ΣΑ:3000000/3000000
STR:9000000
DEX:29979245
INT:0
CON:0
APP:0
POW:0
LUCK:0
SKILL
【光掌握】LEVEL:9999999
→光を掌握するよ! 【光操作】の上位互換だよ!
【光速移動】LEVEL:9999999
→光速移動が上手くなるよ! 身体を光に変えて光速で移動するよ!
ITEM
-----------------------------------------------
「みんな油断して負けていったみたいだし、私は最初から飛ばしていくわ! 〝テクニカル・マジック・マイ・コンパクト! ラミパス! ラミパス! 私のコンパクト――コピーした能力を私に与えて!〟」
確かに魔法少女系だけど、戦わない魔法少女の魔法が元ネタの能力か。
だが、コピーするのは他人の姿を得るのではなく、他人の能力一つをコピーするというもの……ガッチガチの戦闘系だね。
コンパクト型ステッキが輝き、魔法少女プリズムミラーを包み込む。
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NAME:魔法少女プリズムミラー
LEVEL:999
HP:999999/999999
MP:999999/999999
STR:999999
DEX:999999
INT:999
CON:999999
APP:999
POW:999999
LUCK:999
JOB:魔法少女
SKILL
【鏡光聖女】LEVEL:9999
→鏡を使って敵と戦うよ!
【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:10
→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!
SKILL(COPY)
【月光聖女】LEVEL:9999
→月光を使って敵と戦うよ!
BATTLE SONG
→Ver.1.61.81.03.39。絶唱搭載。
ITEM
・コンパクト型ステッキ
→触れた相手の能力を一つだけコピーできるよ! 寿命を消費するよ! 一度魔法少女に触れてコンパクトのボタンを押すとその能力を得ることができるよ!
・魔法少女ルナムーンの聖短杖
→銀水晶と呼ばれる月の光を増幅する特別な鉱石が埋め込まれた短杖だよ!
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おっ、マジ。お次はセーラー戦士? いや、どんだけ詰め込んできたの!? お前一体で一体何個の魔法少女モノを取り込んでいるんだよ!?
「ルナティックムーン・トワイライト・インフレーション」
いきなり魔法少女ルナムーンの聖短杖とやらから月光を拡散ビームのようにして放ってきたんだが……ってか、それどこから出した。
しかも、鏡で拡散だと? おまけに日輪の堕魔《roue solaire》の効果で光に干渉できないだと!? 舐めとんのかァ! 普通なら詰みじゃねえか!!
「自分の独壇場だからって勝てると思ったら大間違いだ! 絶対零度の劫火を浴びて、凍りつけ――凍焔極寒煉獄」
エルダーワンドに炎を凍らせる焔を纏わせて一振り――その瞬間、俺に迫る全ての光は凍結する。
「……まずは、その面倒そうな悪堕ち魔法少女から潰すとするか」
日輪の堕魔――その姿は球体。絶えず光を発し、光に実体を与えて解き放つ。
その光に実体があるのかないのか……まあHPという概念がある以上、死ぬこともあるみたいだし、炎を凍らせる焔は実体のないものも凍りつかせることができるけど。
「【魔法剣・闇纏】」
「Envelopper avec les ténèbres/Croissant de lune envoyé」
日輪の堕魔の使い魔――光速で移動し、光の速度で攻撃する最速の光の騎士を無視して【空間之神】を発動して日輪の堕魔《roue solaire》の付近に移動――そこから、闇の飛斬撃を連続で放つ。
日輪の堕魔《roue solaire》、撃破。光は確かに闇を消し去る力を持ち合わせているかもしれないが、それは闇も同じ。
丁度漆黒の宇宙を太陽が照らすように、光は闇を侵食し、光源となるが、その光が宇宙全域を照らすことはない。
要はどちらの力がより強大かという単純な力量の問題だ。そして、今回は俺の収束した闇が日輪の堕魔《roue solaire》を上回ったという、ただそれだけ。
【貪食ト支配之神】で日輪の堕魔《roue solaire》を捕食したことで、魔法少女プリズムミラーと日輪の堕魔の使い魔の「光干渉無効効果」が完全に消え失せた。
身体を光に変え、光速で俺に迫る日輪の堕魔の使い魔達――まさに飛んで火に入る夏の虫だ。
完全に身体を光に変えた瞬間に【法則ト靈氣之神】で四散させる。
さて残りは魔法少女プリズムミラー、ただ一人。
悪堕ち魔法少女の結界内も眩しい奴らが消えたからか、心なしか暗くなった……そろそろサングラスを外してもいいかな?
「これは……かなりマズイですね。ですが、私にはまだこの力があります。《絶唱》――〈罪装・魔鏡少女〉」
プリンセスジュエルから現れた漆黒の嵐が魔法少女ブレイド・ブレイクゥを飲み込み、その衣装を黒へと染めゆく。
ところどころ布面積が減った代わりに、金属質の装備が追加されたようだ。
「不協和音」
はい、無効化終了。だから何度《絶唱》は効かないって言わせれば……えっ、魔法少女プリズムミラーは一回だって? ……そうだっけ?
「《鏡界》」
あっ……地味にやっちまったかも。まさか変身解除の疲弊状態で新しい技は使ってこないだろうと油断しちまったぜ。
え〜、現在鏡の中にいます。そういえば、ミンティス教国にも似たような能力を持っていた奴がいたね……あっちはスキルだったけど、そもそも被っている時点でアウトだと思うよ!! ……いや、どっちがとは言わないけどさ。
「この世界に来た以上、もう貴方に勝ち目はないわ。私の持つ【鏡光聖女】の固有魔法は四つ――鏡の世界を作り出し、転移させる《鏡界》。鏡に映る映像を操作して任意の映像に変える《鏡映操作》。他人や動物など様々なモノに変身できる《変幻自在》。物理攻撃以外の攻撃を反射する《鏡反射》。……確かにこれだけでは戦う魔法少女には見えないわよね。でも、組み合わせによっては最強のコンボになるのよ!!」
《変幻自在》は魔法のコンパクトでお馴染みの戦わない魔法少女の魔法だろう。変身系は弱い能力だと思うなかれ……変身能力を持つ化粧品一つで数多くの暗殺を成功させたというとんでもない奴も創作の世界にいるのだ……ってか、説明的に地味に混ざっていそうな気がする。
鏡に映る映像を操作して任意の映像に変えるのは同じ「輝く曙光」の魔法だな……最も魔法少女プリズムミラーに近いといってもいい……まあ、魔法少女プリズムミラーは羊モチーフじゃないけど。
《鏡界》は「鏡写しの別世界に転移したりさせたりできるよ!」でお馴染み? の【鏡世界】の魔法少女バージョンだろう。ますます筆頭枢機卿の優位性が無くなってきているな。
《鏡反射》は……まあ、鏡は反射するものだしね。光以外を反射するのもよくあることだよ。物理的には絶対に無理だろうけど。
「ルナティックムーン・トワイライト・フラッシュ」
って、思ったらまさかの【月光聖女】だった!? ……おい、【鏡光聖女】使えよ。
「【法則ト靈「《鏡映操作》!!」
……なるほど。鏡に映ったものを変化させる能力。確かに現実世界では無意味な能力だが、この世界では確かに強力……いや、絶対的な効果だ。
ダイアモンドに変えられた「ルナティックムーン・トワイライト・フラッシュ」だった散弾が俺に向かって亜光速で迫る……【物理無効】が無かったら死んでたぜ。
「ルナティックムーン・トワイライト・フルバースト」
今度は極太レーザー。しかも、その材質を変化さっきのように変えられたら巨大な柱が完全……あっ、刺さるね、それ……【物理無効】が無かったら。
と思ってたら変化せずにそのまま俺の腹を貫通した。ちっ、【自己修復 極】を使わないといけないじゃないか!
「…………最早人間じゃないわね」
「お前達魔法少女には言われたくねえな。というか、お前はホムンクルスだから人間ですらないだろう?」
「まあ、そうなんだけどね。――いくら優位に立っても一撃で倒さないといけないというのは大変だわ。――ルナティックムーン・フォール」
月光により小型の月を作り出し、落下させる。……あれ? これって実は必殺技なんじゃない?
「【法則ト靈「《鏡映操作》!!」
あっ、材質をダイアモンドに変えて操作を無効化してきたか。――だが。
「【魔法剣・闇纏】」
「Envelopper avec les ténèbres/Croissant de lune envoyé」
我が魔法剣はダイアモンドすら砕く……うん、モブキャラの技じゃ絶対ないな!
たく、このカオスな世界はモブキャラまでカオスかよ! パワーバランス考えろや! と言ってみる。
まあ、俺はバグったモブキャラなんだけどね。
「優位性……確かにこの世界では、俺に魔法少女プリズムミラーを倒すことはできないかもな……だが」
境界を暈す月影の勾玉=神器を取り出し、その力を発動させる。
「境界を暈す月影の勾玉――《奥の手・虚実反転》」
例え強力なコンボでも《鏡界》が失われれば、そこでおしまい。
「ルナティックムーン・トワイライト・フラッシュ」
《奥の手・虚実反転》の弱点は敵本体と敵が自分の中から生み出したものに関しては操作できないということだが、そもそも敵の光属性の攻撃は【法則ト靈氣之神】で無力化できる。
《鏡界》が失われているから光を別のものに変化させることはできない。――これで、チェックメイト。
「《鏡反射》!!」
にはならないよな。【法則ト靈氣之神】で収束して返した光を更に《鏡反射》で反射したか……反射返し返しはしないよ? エンドレスになるから。
というか、今度こそこれでチェックメイトだし。
「Envelopper avec les ténèbres/Croissant de lune envoyé」
【空間之神】で背後に飛び、飛斬撃を浴びせる――これで、終。
「捕食せよ! 【貪食ト支配之神】!!」
ふう、ご馳走様でした。……んじゃ、帰るか。