リアクドラック・オルガノン
異世界生活百四十二日目 場所コンラッセン大平原、能因草子の隠れ家(旧古びた洋館)
「……つまり、《大罪の九獣》を討伐したり、魔法少女を討伐したり、即位直後の〝龍王〟を討伐したり、魔族と人間の関係を構築したり、異世界ガイアって世界に行って神を倒したりしていたのね。……全く意味が分からないわ」
何故、聖達にジト目を向けられなければいけないのだろう? 料理は全部俺が用意したし、絶品にした筈なんだよ。料理が不味かったから怒られているって訳ではない筈だ。
というか、なんで一ノ瀬やジュリアナからまでジト目を向けられなければいけないのだろうか?
向けていないのが無関心なイセルガと脳筋三人衆って、うん全く嬉しくない。
「ヱンジュさんって異世界ガイアから飛ばされてきた方を偶然助けてね。で、“闇の精霊王”ユエ様と、後は雷神ウコンと一緒に魔導文明サドォリュムのHNI社元課長フェアボーテネ・エヒト・フリュヒテを倒しに行ったら色々とあって神を憎む神殺しのお姉さんと戦うことになってね。で、最後は宇宙での戦闘で超越者に至ったミュレニムに勝利して帰ってきたって感じかな。で、水晶みたいな素材をそこのお土産。神威はその世界の精霊が持つ特別な力ってところかな」
「……草子さんは“闇の精霊王”に会ったことがあるんですね」
「まあ、ね。ユエさん五大精霊王を嫌っているみたいだったから会うのはオススメしないな」
詳しい理由は不明だが、五大精霊王はユエにとって我が子のような精霊達――闇精霊、魔精霊、邪精霊をユエと共に精霊の森から放逐した。
そこからユエと五大精霊王の関係は険悪だ。
少なくともユエが五大精霊王に会えば敵対を免れないだろうし、五大精霊王側がユエをどう思っているかによってはどちらも敵意を抱いた状態で戦いに発展する可能性もある。
俺はユエを共に異世界ガイアを旅した仲間だと思っている。今はヱンジュという友人にも恵まれ、新たな関係を構築している筈だ。
そんなユエの日常に平穏をぶち壊す要素を持ち込みたくはない。
「……そっか。草子君とジューリアさんは私達の居ない間に濃厚な旅をしていたんだね」
白崎の背後にゴゴゴゴゴという文字が。というか、目からハイライトが消えているが、何故だろうか? 刺されるのだろうか? ……誰が?
「草子との旅はやむごとなし。食ひ放題なりき」
「……ソ、ソレハ良カッタネ」
花より団子、色気より食い気、胃袋ブラックホールなジューリアの発言でゴゴゴゴゴの文字は引っ込んだようだ。……でも、カタコトになっているよ? “天使様”。
「さて、そろそろ今後の旅の予定を説明するよ。まず、ハンスィス様の依頼の報告が必要だから魔王領アディシェスに戻る。それと、俺に合流するためって理由で借りたみたいだし、達成した今、角獣車を借りている理由はないよな。返却した方がいいだろう」
「でも、草子君。角獣車って快適だよ」
「まあ、確かに面倒ごとを避けるために村や町には寄ってないし、移動手段を確保しておいた方がいいか……角獣車よりも快適な移動手段を作るとしよう」
「流石は草子君!!」
うん、聖の掌の上で弄ばれている気がする。美少女には勝てんな……まあ、モブキャラがヒロイン格の美少女に勝とうなんて無理な話だけど。せめてカタリナクラスは召喚しないとな……。
「ヴァルルス様やスフィリア様にもお礼を言ってきた方がいいだろう……明日は少々忙しくなりそうだな」
「草子さんの場合、【空間魔法】のおかげで距離は関係ないですけどね」
リーファよ。俺程度で使えるんだから本来ならお前達だって十全に【空間魔法】を使える筈なんだぞ? 主人公はどう考えてもお前達なんだから。
◆
異世界生活百四十三日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領アディシェス
「依頼された遺跡には大量のスライムがいました。製作者は落ちていた日記から伊藤元宣という異世界人の魂の入ったノーディンス=レイドという魔族だと思われます」
「…………これは、信じ難い話だね」
日記と写真の複製を受け取ったハンスィスは苦笑いだ。
「草子君って本当に引きがいいよね。やっぱり幸運値が高いからかな」
「確かに、俺は面倒なことを引き受けさせたと思っていたが……まさか、草子殿が欲していた情報を得るとはな。……しかし、本当に信じ難いよ。いや、信じたくないと言った方がいいかもしれないな」
元宣の日記――そこには、俺が求めていた人物の名が書かれていたのだろう。
つまり、魔王軍四天王の中にいる裏切り者の名だ。
「しかし、信じられないな。██████様は四天王の中でも最弱……とても、ヴァパリア黎明結社のメンバーだとは思えない。まあ、我々魔王軍幹部よりは強いだろうが」
「四天王最弱……まあ、当然ですよね。能ある鷹は爪を隠す……強いなら真の強さは隠す筈です。潜入先で目立っても仕方ありませんから」
「草子君……でも、██████の中の人は橋姫紅葉という日本人なんだよな。そもそも、地球人が異世界人と魂を交換するなんて本当に可能なのか?」
「朝倉さん……まず、大倭豊秋津島帝國連邦ということで俺達の世界線とは明らかに離れた地点にあるということが分かるだろう? 魔術が使える地球があっても別に不思議じゃない。それに、俺達のいる地球にも魔術がある可能性は十分にある。黄金の夜明け団のような西洋オカルト組織も存在する訳だからな……まあ、彼らがどこまで到達していたのかは不明だが。妖怪や鬼だって伝承が残っている以上、ごく少数ながら存在している可能性もある。……ただ、得難い技術だというだけだ。だからこそ、神界はパワーバランスや法則が崩れるからという理由で類似した世界以外への移動を禁じている。……考えても見てくれ。自在に火を操り、空間や時間を移動し、隕石を落とし、即死させる……そんな直接的な破壊をもたらす力が存在していたら世界は滅ぶだろう? 何故かカオスは壊れないが、地球で同じことをやれば間違いなく滅ぶ。俺達が手に入れた魔法と地球に存在しているかもしれない魔術などは全く次元が違うんだ。それに、この世界には魔力すら消費せずに万象を操作することが可能なスキルという概念も存在する。……少々話が逸れたが、俺達の知らない魔術的な技術が別の世界線の地球にあっても何ら不思議ではない。そして、瀬島奈留美率いる元オカルトサークルの連中はこの世界の技術を手に入れるために二人の人間を送り込んだ」
しかし、なんらかの都合で二人の並行世界地球人の魂は元の世界に戻れなくなった。
元宣は死に、紅葉の魂を持つものはヴァパリア黎明結社に所属した……このオカルトサークル、割とぶっ壊れた連中で組織されていたみたいだからな……日記に過去を忘れないためか、五人の詳細が書かれていた。
うん、紅葉は開発部門に相応しいマッドサイエンティストだったよ? 相当な美人だが目の下にクマを作って髪はボサボサ、白衣も皺だらけと折角の美貌を台無しにしていたらしい。
「それで……草子殿は魔王領アクゼリュスを目指すのだな」
「その前にヘズティス様、ヴァルルス様、スフィリア様にもご迷惑をおかけしたようなのでお礼を伝えに参りますが。……ハンスィス様、俺の仲間達に力を貸してくれて本当にありがとうございます」
「……面と向かってお礼を言われるとなんだか恥ずかしいな。……あっ、そういえば……少しいいかな? レーゲン殿、貴方元スライムなんだっけ?」
「確かに僕の素体となったのはスライムだと聞いていますが……ですが、あくまで元になったというだけで最早別物といっても差し支えないものに肉体は変化していますよ」
レーゲンは、レーゲンという固有の魔獣だ。素材としてスライムを使用しているが、その名残として【スライム化】を持っている。
身体の構造は魔核が心臓部にあり、骨格や皮膚などは魔力を変質させて似せているんだっけ? ……まあ、スライムじゃないよな、無性だけど。
「そうか……いや、人型に擬態できるスライムというのは本当に珍しいから、同族かと期待したのだが……違ったようだな」
ハンスィスしょんぼり。身体がポヨンと弾み、青色のスライムに変化した。
……うん、転生したらスライムだった異世界ものの主人公のスライム姿に似ている。
……そういえば、レーゲンって魔獣だったっけ? いや、覚えてはいたんだけどね。魔獣に相応しい強化方法があることをすっかり忘れていたんだよ。後でレーゲンに提案してみよう。
「では、そろそろ俺達は――」
「そうだったな。草子殿とそのお仲間達が信用に足ることを証明する書状を書いたから持っていくといい。三人より四人だろう?」
「ありがとうございます」
ハンスィスに礼を言い、城の外で預けていた角獣車を【空間魔法】で回収――〝移動門〟を開いて魔王領バチカルに向かった。
◆
異世界生活百四十三日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領バチカル
「……まさか、本当に草子殿を説得してしまうとはな」
ヘズティスは幽霊でも見るような目で俺を見ていた……いや、ただのモブキャラなんだから主人公格やヒロイン格の一声で普通に連れ戻せると思うんだけど。
「久しぶりですね、ヘズティス様」
「……あれから色々とあったようだな。以前も大概だったが、更に強くなっている……停滞なく日々成長する化け物……それが草子殿ということか」
ヘズティスから化け物扱いされるモブキャラ……うん、辺境の村にいる村人A程度の存在でしかない俺ってそもそも魔王軍幹部と顔を合わせることすら不可能な筈なんだけど、何故か謁見できているし、挙句化け物扱いされるし、本当にこの世界はよく分からない。強さの基準がおかしいのだろうか? 最近インフレ激しいし……えっ、半分以上お前のせいだって? いや、神嫌いな神殺しとかは俺のせいじゃないよ……一部は俺にも責任があるかもしれないけど。
「本日は角獣車の返却に参りました」
「……そのまま草子殿が持っていってもいいと思うんだが」
「俺を捕まえるために貸したもののようですし、貸してもらったものは返すのは当然のことですよ。……まあ、ヘズティス様のおかげで角獣車の快適さに目覚めてしまった方もいて徒歩での旅にはあまり賛成できないそうですので、仕方なく移動手段を作ることにしました。ですので、角獣車がなくても問題ありません」
「……嫌味だな、今の。しかし、気になるな……その移動手段というのは。人間が持っている技術なのか?」
「いえ、この技術を理解できるのはこの世界では超帝国マハーシュバラをおいて他はないでしょう。インフィニット大将軍様に鼻で笑われそうなおもちゃですが、別に【空間移動】で屋敷に移動する訳で乗る時間は短いですし、きっと勇者一行の皆様もご納得なさると思います」
「……草子君、私達勇者じゃ……あれ、否定できない!!」
“天使様”、貴女が勇者であることは職業が肯定してくれているのですよ!!
「ところで、草子殿。一つ頼まれてはくれないか? この情勢だ……魔王軍幹部と円滑に連絡を取り、物資の供給を行えるシステムが欲しい。まあ、要するに【空間魔法】――それを付与した門を魔王軍幹部が統治する魔王領の都市に配置してもらいたいのだ……希少な【空間魔法】を付与した装置を魔族の俺達に渡すなどいくら心の広い草子殿といえども譲り渡せないとは思う「いいですよ?」
ヘズティス、ポカーンと固まっている……大丈夫? 口乾かない? って兜の中だから見えないんだけど。
「別に【空間魔法】を付与した門を作るくらいのことはしますよ? ただし、それを利用して兵士をここ魔王領バチカルに集め、ミンティス教国に宣戦布告するようなことを始めたら過去、現在、未来、並行世界、分岐世界、因果律――その全てに同時攻撃して対象になっている全ての魔王軍幹部を殺しますので、そのつもりで」
「ハッタリ……ではないな。草子殿ならやりかねない」
俺は基本的にできることしか言わないよ? やると決めたら必ずやり遂げるまでやるタイプだし。そうじゃなければコツコツ積み上げる必要がある文学研究は絶対にできないのだよ。
「とりあえず、ヴァルルス様、スフィリア様、ハンスィス様から了承を頂いてからですね。勿論、ヘズティス様にもお手伝い頂きますよ」
◆
魔族達が固唾を飲み見守る中、俺は魔王領バチカルにある広場で【主我主義的な創造主】を発動した。
素材はオレイミスリル製、フランス・パリにあるArc de triomphe de l'Étoile――エトワール凱旋門をモチーフにした門が広場に出現する。
それが、魔王領エーイーリー、魔王領シェリダー、魔王領アディシェスにもそれぞれ一つずつ。
「…………これほどのものが、一瞬で」
魔族達は感嘆の声を上げたが、俺には特に何の感慨もなかった。別にこれくらいのものは量産できるし。
門には改札のようなものを設置し、レーンごとに異動先が異なるように設定しておいた。
レーンは九つ――つまり、将来的に全ての魔王領に移動できる設定である。
ちなみに、門を使用する際には使用料として銀貨五枚の支払いを求めるらしい。……元手ゼロで一人五百円……随分ぼったくってんな。
「草子殿、本当にありがとう。これからは円滑に連絡が取れるようになる」
「ヴァルルス様、俺は別に大したことはしていませんよ。元手ゼロですし」
ちなみに建築費も取っていない。消費したのは魔力くらいだし、作業も一瞬だったからね。
「今回は無償にしていただきましたが、本来ならどれくらい支払わなければならないのでしょうか?」
「えっと……虹金貨百二十枚程度ですかね? 相場は分かりませんが」
「……やっぱり総オレイミスリル製だとそれくらい掛かりますよね」
【空間魔法】に値段はつけられないし、とりあえず適当に見積もったけど、大凡1,200,000,000,000円? 要するに一兆円? どこの国家予算だよ!! 国家よりお金持ちな富豪の資産の三分の一くらい? まあ一応、俺は虹金貨999枚は持ち歩いているけど。
「じゃあ、用事も終わりましたし一旦屋敷に戻って移動手段の開発を――」
「草子っち、もう行っちゃうっすか? 大事な用事をすっかり忘れていると思うっすけど」
ん? 鳰(幼女)が上目遣いで聞いてくるんだが……何か忘れていることってあったっけ……あっ、そうか。
「ヴァルルス様、確か竜の山で素材が豊富に取れましたよね? もし、よろしければ俺の知っている商会と取引してみませんか? もし宜しければ、ブラックスミス様もご一緒に」
「もしかしなくても五大商会だな」
「もしかしなくても五大商会ですね」
ザナッシュとミモザは早速俺の真意を見抜いたようだ……まあ、二人とも五大商会の一角と繋がりを持っているから他の商会についても聞いて知っているとは思ったんだけど。
まあ、知っている二人はともかく他の魔族達は目が点な訳で。
「五大商会とは人間・亜人種側の大商会の総称で自由諸侯同盟ヴルヴォタットのクレエク商会、リシェル商会、フェニックス議国のクヴィチス商会、武装中立小国ドワゴフル帝国のコグエ商会、ミンティス教国のジュレアード商会の五つのことです」
説明しようと思ったんだが、先にミモザにされてしまった……出番なしー。
「今回はその中のコグエ商会との取引の斡旋ということになるな。……いい思い出がないけど、どこか一つだけ邪険に扱う訳にはいかないし」
最初に武装中立小国ドワゴフル帝国に行った時に追いかけてきたドワーフの中にコグエ商会の商会長――カンシン=コグエの姿もあった。
……また追いかけっこにならないといいんだが。
「まあ、職人気質でタチの悪い古狸や胡散臭い商人のようなタチの悪さはありませんし、きっといい取引ができると思いますよ」
「誰が胡散臭い商人だ!!」
睨んでくるザナッシュをさらっと無視して、ヴァルルスとブラックスミスに視線を向ける。
二人ともこの話に乗り気のようだ。
「では、そうと決まれば善は急げ。早速ドワゴフルに向かいましょう」
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異世界生活百四十三日目 場所武装中立小国ドワゴフル帝国
……どうしてこうなった?
向けられる期待の目。カンシンを始めとするドワーフ、ヴァルルスと護衛の鶫、ブラックスミス達、そして白崎達に視線を向けられる中、俺は【主我主義的な創造主】を発動した。
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・魔導式駆動四輪《Liacdlac Organum》
→キャデラック・ワンっぽい車だよ! 厚さ十三センチ以上のオレイミスリル製の装甲板、窓ガラスは【保護魔法】で強化されミスリルを混ぜた強化合わせガラス、化学兵器や状態異常魔法攻撃を想定し外気を完全に遮断する加圧、空気供給システムを搭載、ランフラットタイヤ採用、回転する刃、撒菱、波動砲、迷彩機能、超重力断層発生装置、分子分解砲、霊煌粒子射出装置、亜空還噴進砲、多種類結界発生装置などなど多数のギミックを搭載しているよ! 内部は【空間魔法】の効果で王宮の一室に匹敵する広さになるよ!
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「これが……新たな移動手段!!」
全く意味が分からない。屋敷に戻ってから作ろうと思っていた魔導式駆動四輪――つまりは車を何故か武装中立小国ドワゴフル帝国で作る羽目になった。
おまけにヴァエルドフまで見に来ている……いや、自国に魔族が入るってことで何かしないか監視する必要があるってのは理解しているけど……お前に関してはただ見たいから見に来ただけだろ? それこそ臣下を配置しておけば十分な訳だし、御身自らとかだと余計な護衛がつくことになるからね。
「魔導式駆動四輪《Liacdlac Organum》……Liacdlacは某国の大統領専用車両、通称キャデラック・ ワンが含まれるゼネラルモーターズが展開している高級車ブランド、Cadillacのアナグラム。Organumはギリシャ語で「道具」の意味。……一応、これより数段落ちるけど十分に使える車の設計図とレプリカ……後は二輪駆動の設計図とレプリカを置いていくよ」
まあ、要するにこの場に来た面々に馬車よりも優れている移動手段の作り方を提供する羽目になったという訳だ。
どうやらに技術力が高いドワーフが読んでもさっぱり意味が分からないらしい……【ドワーフ語】で書いたのにね。なんでだろー。
ちなみにこの魔導式駆動四輪《Liacdlac Organum》はBBクリームを求める鉄壁侍女様が主人公の異世界ものに出てくる王族専用馬車と錬成師が主人公の異世界ものに登場するハマーっぽい車が元になっている。まあ、レーゲン辺りなら一発分かるだろう。
「……が、頑張って完成にこぎつけてみせます! 草子工廠将」
そう決意の言葉を口にするカンシンは涙目だった。
うん……何故か武装中立小国ドワゴフル帝国で俺は工廠将の敬称で呼ばれているらしい。
武装中立小国ドワゴフル帝国は技術力が高いものが出世をする国――その中でもオーバーテクノロジーな技術を簡単に実現してしまう神のような存在であるということで敬われているようだ……工業の神様に申し訳が立たないな。
以前は俺に敵意を向けてきたヴァエルドフの臣下達も、俺の機嫌を損ねないよう必死らしい……その態度が腹が立つっていい加減に気づいてもらいたいものだ。
「では、改めて旅を再開しますか。……俺が仕切っていいのか分からないけど行きますよ、皆さん」
「勿論、草子君がリーダーなんだから仕切るべきよ。そこの百合ハーレム戦乙女よりも草子君の方が適任だわ」
「…………なっ」
一ノ瀬撃沈。まあ、どうでもいいし無視していこう。
「目的地は魔王領アクゼリュス! アクセラレーション!!」
「……バイクに乗りながらデュエルでもするのかな?」
加速して〝移動門〟に突っ込む魔導式駆動四輪《Liacdlac Organum》の車内で、レーゲンが静かにツッコミを入れた。