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4.何故か支部に行くことになりまして。

 異世界ガイア生活一日目 場所ブルックの町 自由組合(冒険者ギルド)


 ブルックの町の自由組合(冒険者ギルド)は割と清潔感の保たれた場所だった。

 入口正面には五つほどの用途に分かれたカウンターがあり、右手は飲食店になっているようだ。小さな舞台もあり、小さな演奏会くらいならできそうだ。


 机と椅子が置かれた場所には何人かの男女がいて、それぞれ雑談している……が、流石は冒険者。会話の内容は、全て魔獣の出現状況や装備の質がいい店、回復薬の安売りなど冒険者生命に重要なものばかりだ。


 俺達が入る俺達に冒険者達の視線が集まる。当然、嫉妬や羨望の視線に晒されるのはウコン、舐め回すような視線や好奇の視線に晒されるのはジューリア達であって、俺に向けられる視線はゼロ。ホント、ありがとうごぜえます。


 五つのカウンターのうち、俺達が並んだのは冒険者の登録のためのカウンターだ。

 そのカウンターに座るのは大変恰幅の良いオバちゃん。そう、スーパーなどで仕事の早さに定評があるベテランさんである。冒険者業界でも、ベテランさんの実力はそこまで変わらないだろう。

 ぶっちゃけ、俺って美人だけど仕事はできない人と美人じゃないけど仕事ができる人なら仕事ができる人と組みたいからね。まあ、みんな思っている? いや、どうなんだろう? 結局みんな美男美女に流されるのか?


「両手に華を持っているのに、まだ足りないのかい? 悪かったね、お隣の美人の受付じゃなくて」


「いやですよ、キャスリンさん。私は美人じゃありませんよ〜♪」


 と言いながら満更ではない隣の美人受付嬢。そして、二人揃って俺のことがアウトオブ眼中のようだ……スマホ出して読書始めていい?


 ≪おいおい、今回もかよ。なんで、人間ってのはどいつもこいつもメインが誰ぞを察せねえのか。なんぼなんでも一番最初に声を掛けるべきはわいやのうて草子やろ≫


「いや、別に俺に振らなくていいよ? もうウコン様が勝手に話進めちゃっていいんじゃないかな?」


 ≪って言ってもな。わい、こないな話はさっぱりなんや。ここは、頭脳(ブレイン)の草子に任せるのが一番やろ≫


「はいはい、脳筋に交渉ごとは無理ですよねー。というか頭脳のとか言われると脳の魔王を思い出すな。【魔術反射】は使えないけど。はい、イケメン様から代わりまして、見た目の冴えない中身も冴えないモブ・オブ・モブの能因草子が担当します。なんでお前みたいなモブが出てくるんだっていう目で見られても困るんで、文句があるならそこの色黒イケメンに言ってください」


「……文句はないんだけどね。ただ、オバちゃん少し驚いただけよ。あんまり強そうじゃないから」


 強そうじゃなくて悪かったな。というか、俺は文系だし、スポーツ万能そうな体育会系の色黒イケメンには絶対に勝てる訳ないんだよ。


「キャスリンさん! その人だけは本当に敵に回しちゃマズイ!! 対応次第ではここにいる冒険者を一撃で抹殺されちまう!! 草子様、でしたね。どうか怒りをお鎮めください」


「……チンピラ君、いい加減に気づこう。その言葉が俺の怒りに火をつけるって可能性に。……いや、別にそんなことでは起こらないよ。俺って心の広さには定評があるし」


「それは誰の評価なのですか?」


「ヱンジュさん、そういう質問はナンセンスっすよ」


 誰だっていいじゃないか。どんな人でも他人から認められたいと思うのだよ? 例え評価を捏造したとしても、誰かから認められているんだと言いたいものなのだよ。


「……本当にすまないねえ。オバちゃん、これでも人を見る目はあると思ったんだけど」


「流石にその目も神様相手には通用しないってことですね。まあ、この異世界の神様は見た目こそイケメンだけど中身空っぽだし、戦いと壊すこと以外は全く何もできないし、色々とアウトだと思うんだけど」


「神様……かい? この世界で神様ってのはフェアボーテネだけだよ。例えその人が異世界の神様であってもあんまり神様ってことを吹聴しない方がいいわよ」


「この世界の神様はフェアボーテネというのですね? もしかして、唯一神様を信仰する宗教があるのですか?」


「勿論あるよ? フェアボーテネ教と言ってね。総本山はピュェリーヒエ山にあるわ」


 フェアボーテネ教とピュェリーヒエ山か。とりあえず、次の目的地は決まりだな。


「あの、そろそろ冒険者登録をお願いしたいのですが……」


「ああ、そうよね。そのために来たものね。登録には二千ルピが必要だよ」


「いや……俺達つい先刻こっちの世界に来たばかりでね。このヱンジュってお姉さんとその隣にいるフツミさんはこっちの世界出身らしいんだけど事故に巻き込まれて俺達が居たカオスって世界に転移させられちまったんだ。えっと……確か、森神歴二万三千年だったっけ?」


「それは災難だったね。森神歴二万三千年というと、今から四百年くらい前だね……今はフェアボーテネ歴四百年だよ」


 ランダムテレポートは、四百年も先の異世界カオスにヱンジュ達を転送したのか?

 ……どんだけ精度が悪い魔法なんだよ。


「近くに両替屋はいないか? ルピで払う必要があるなら換金してから戻ってくるけど」


「その必要はないよ。二千ルピ分別のもので払ってくれるのならね」


 ということで、前回と同じく金で解決……カネで解決ではなく、キンで解決である。次はちゃんとルピを手に入れよ。


「ステータスプレートの使い方は分かる?」


「一滴程度血を垂らすとか? 勘だけど」


「その勘が的中するのは凄いわね。その通りよ、オバちゃんびっくり」


 【利己主義的な創造主】でミスリルの極細針を作成――精霊も血があるのかって問いを無視して全員がブスリと指先に刺した……傍目から見るとシュールやな、これ。


 で、その結果。


「一体何が起きたの!?」


 激しい光と共にカウンターが半壊、ジューリア達のステータスプレートは無事だが、俺のは無事じゃない……跡形もなく消えちまった。


「何? もしかして、お前は一生冒険者になるなっていう神の思し召し? そんな神様は殺してしまえ」


 ≪そんな理不尽な理由で殺されるとか、神様が可哀想すぎんで。っちゅうか、そりゃめげるやろ。そんなガラクタ如きでオノレの力を測れる筈があれへん≫


 ウコンにジト目を向けられた……いや、これ多分凄いアーティファクトだよ……だよな。


 ≪ちなみに、草子。ワレには自分のステータスはどう見えとるんや≫


「えっ? 聞いちゃう? 黒歴史っぽいからツッコミを入れずに永久に封印しちゃおうと思ったんだけど」


「草子、だっけ? アンタ、本当にステータスを調べてきたんかい?」


「いや、そもそもステータスをプレート化するとか、秘密保護の観点で見ればアウトじゃん。まあ、郷に従えだからステータスプレートを作りにきたんだけど。てゆーか、別にステータスプレートを作らなくても登録できるなら、それが一番だけどな。……あっ、壊れたカウンターは元に戻しますね。〝時よ巻き戻れ〟――〝時間巻戻(タイム・リバース)〟」


 カウンターに【時間魔法】を掛けて元に戻す。何故か、ジューリア達以外は唖然とした表情のまま固まっていた。


「いや、別にこれくらい普通だよね? モブにできるんだから、モブキャラの俺をスルーした皆様方なら余裕でできますよね?」


「「「「「「「「できる訳ないでしょ!!」」」」」」」」


 キレ気味のツッコミだ。なんでキレられているのかさっぱりだ。

 いや、だって俺を居ない扱いしたのは冒険者達だし、そんな居ないも同義な俺如きに劣るとか映す価値無し以下ってことだよ?


「じゃあ、一応ステータスの写しを提示するか。――【利己主義的な創造主エゴイスティック・クリエイター】!!」


 紙にステータスを複写し、他のステータスプレートと共にキャスリンに提示した。


「……五人のステータスには大きな差があるけど、五人とも金ランクに匹敵する。……というより、冒険者の世界には金ランクまでしかなくてね、本当にごめんなさいって謝りたいよ。神の使徒と言われる異世界から来た勇者様ですら、いけて四桁、五桁と聞いている……それが普通に六桁、七桁、多いと一番多いステータスで十桁とは……いや、流石は神様を自称するだけのことはあるよ」


 冒険者は青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金という順に等級が上がっていくらしい……どっかで見たやつまんまだな。


「ここまではオバちゃんも頑張って認めるよ。問題はこの先――能因草子、貴方さ。なんだい、このめちゃくちゃなステータスは……まず、ね。天職は一人につき、一つなんだよ。ジューリアさんは二つで十分珍しいんだけどそれはそれとして……。で、なんで天職が十個もあるんだい? それからステータスがUnmeasurableって、計測不能ってそれは数字ですらないでしょ!! ……とにかく、ここまで来るとオバちゃんには無理だわ。金ランクの冒険者登録は支部か本部でしかできないわ」


「……キャスリンさんだっけ? 今から少し時間もらえますか? サクッと支部に行ってサクッと支部長に謁見させてもらって、サクッと金ランク登録すればそれで終了なんで。……キャスリンさんって元は中央出身とかそんな感じなんでしょ?」


「……なんで初対面の貴方がそんなことを知っているの? というか、ここから支部って相当距離があるわよ!!」


「そうだぜ! 馬車を飛ばしたって八時間くらいはかかる。そんなところまでサクッと行けるわけがねえだろ!!」


 野次が飛んでくるが真っ向無視だ。俺が聞きたいのはたった一つ。


「で、時間あるの? 無いの? 無いなら最悪俺達だけで乗り込むけど」


「……誰か、ここの受付変わってくれないかな? 大丈夫よ、時間ならあるわ」


「ってことで決まりだな。〝記憶覗き(リコール)〟」


 よし、自由組合(冒険者ギルド) カセドラ支部だっけ? の座標の獲得に成功した。


「〝距離に隔てられし世界を繋ぎたまえ〟――〝移動門(ゲート)〟」


「…………空間魔法かい? ステータスに書いていた神代魔法……本当に使えるとはね」


「なお、これは超非効率な神代魔法ではなく、異世界カオスという他の世界の【空間魔法】に分類される模様。まあ、ただのどこで●ドアーだし、アサル●ドアーの方が上だと思うけど」


 そういえば、9ディ●ンジョンは【即死耐性】でなんとかできるのだろうか? 敵一体を異次元に引きずり込んで戦闘不能にするんだから、【即死耐性】では防げないよな? ……なんの話だったっけ?



 異世界ガイア生活一日目 場所自由組合(冒険者ギルド) カセドラ支部


 カセドラ支部に到着。突然現れた俺達に冒険者達はビックリ。ギルドの職員は現れたキャスリンさんにビックリ。


「キャスリン先生、お久しぶりです。お元気でしたか?」


 ダッシュで走ってきた受付嬢。キャスリンのお弟子さんとかかな?

 しばらく昔話に花を咲かせていた。俺は暇だったのでステータスの統合をすることにした。なお、ジューリアは既に椅子に座ってどら焼きを食べ始めた模様。そんなジューリアをギルドにいた冒険者達が微笑ましそうに見つめている。やっぱり、可愛い子が美味しそうに食べている姿が一番可愛いよね……まあ、ジューリアの場合は大食いだから可愛いと思っていられるのは今のうちだけど。


 さて、スキル統合か。……とりあえず、似たような効果? を持っている【殺戮者】と【狂戦士の魂】を融合して……成功。


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【鏖狂ノ王】LEVEL:1

→殺戮が上手くなるよ! 破壊衝動に身を任せて感情を爆発させて理性と引き換えにステータスを上昇させるよ! 防御を捨てて攻撃力を上昇させるよ! 敵を殺してから五分以内に敵を殺すと全てのステータスが上昇するよ! 【殺戮者】と【狂戦士の盟約】の上位互換だよ!

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 まあ、あんまり使わないんだけどね。敵を殺してから五分以内に敵を殺すと全てのステータスが上昇する効果は使うか……って【殺戮者】だけでいいじゃないか!!


 次に……ん? そういえば、作成系のスキルっていくつかあったな。あれ混ぜたらどうなるんだろう?


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【主我主義的な創造主】LEVEL:1

→偽神の造物主を彷彿とさせるスキルだよ! あらゆるものを自分の思い通りに作り上げることができるよ! グレードの高いものを作りには素材が必要になるよ! 【利己主義的な創造主】、【爆弾創造】、【万能猛毒生成】、【強酸生成】、【糸生成】の上位互換だよ!

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 結論! デミえもんができた。もうコイツ一人でいいよね!? てレベルだな、これ!!

 というか、なんかおまけで新しいスキルを会得したんだが……。


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【操武】LEVEL:1

→武器を操作するスキルだよ! ユニークスキルだよ!

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 おまけスキルがまさかのレーゲンの【操剣】の上位互換!? いや、なんか、もう、モブキャラのくせにメインキャラの優位性を奪いまくってホントすんませんってレベルだよ!


 さあ、どんどんやって行こう! お次は【多重結界】さんと、宿屋 クルミ荘で会得してしまった最悪のスキル――【ひきこもり】を統合だ!!


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【宅警ノ王】LEVEL:1

→自宅警備員の成れの果てだよ! 住処が常時多種類結界で守られるよ! 物理攻撃に対する耐久力が高い結界、魔法に対する耐久力が高い結界、衝撃に対する耐久力が高い結界、電磁波や音波に対する耐久力が高い結界、熱や冷気の侵入を阻害する結界など最大十種類の結界を組み合わせて攻撃から身を守るよ! 結界一つ単位で破壊された結界を再生することもできるよ! 多重結界に使用されていた単純防御結界に絞り込んで常に一定の領域で移動し続ける防壁を高速で何十枚も敵に叩きつけることもできるよ! 結界を発動できる範囲は自身と自身の周囲三メートルまでだよ! 【多重結界】と【ひきこもり】の上位互換だよ!

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 スキル効果は凄いのに……凄いのに……名前が、名前が。

 宅警ノ王ってあれだよね! 自宅警備員の成れの果てて言っているから自宅警備の王って意味だよね!! ユニークスキル変●者並みのヤバさだよ!!


 効果は……まあ、ファ●ンクスみたいなものか。攻撃形態と防御形態のある障壁……できれば【多次元結界】が良かったよ。


 最後は……【叡慧ト究慧之神】と【究明ノ王】を統合してみるか。似たような効果だし、連携させたら更に効率が良くなりそうだからね。

 で、統合した結果 【叡慧ト究慧之神】になった。まあ、ただ吸収されただけってことっす……なんだか勿体無い気がする。


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至高なる思考演算パーフェクト・シンキング

→思考の飛躍、点思考、平面思考、直線思考

、立体思考、垂直思考、水平思考、並列思考、直列思考、思考加速の統合的効果。思考に関して最高の領域に達する。また、その思考を用いて演算、経理、値切り、目星、暗号解読、推理、比較検証、実験、無詠唱魔法、未来予知スキルと対象の心理の動きを演算によって予測する擬似読心を演算で補った高精度演算心理型未来視を行うことが可能となる。また知能を上昇させることで魔法の威力が上昇する。


盤上的戦略ストラテジー・オブ・ボード

→撤退、連携、指揮、編成、作戦、腹芸、奇襲、挑発などを組み合わせて戦略を構築する。戦術は実際に行わなくても制限を付与することができる。また、任意の人物、生物、物品にマーカーをつけることで、その位置を探査したマップ内にいる時のみリアルタイムに知ることもできる。【全マップ探査】と同じく周囲を探索し、特定の地点にピンを指すことも可能。探索した場所を自軍領とし、その地点に魔法を発動することも可能となる。


盤上仮想戦闘ヴァーチャル・シミュレーション

至高なる思考演算パーフェクト・シンキング盤上的戦略ストラテジー・オブ・ボードの派生効果。敵のデータを集積し、そのデータを元に仮想敵を創造し、実際に戦わせることで敵の取り得る攻撃パターンを予測する。


自動戦闘状態(オートバトルモード)

盤上仮想戦闘ヴァーチャル・シミュレーションの派生効果。オートで戦闘を行う。思考演算領域を分割すればスキルとスキル保有者で別々の行動を取ることもできる。


叡慧と究慧の宝庫コア・オブ・ウィズダム

→【考古学】、【生物学】、【地質学】、【天文学】、【博物学】、【物理学】、【薬学】、【心理学】、【法律】、【書誌学】、【魔術文化学概論】、【魔術学最終研究(火)】、【魔術学最終研究(水)】、【魔術学最終研究(風)】、【魔術学最終研究(土)】、【魔術学最終研究(氷)】、【魔術学最終研究(雷)】、【魔術学最終研究(木)】、【魔術学最終研究(金)】、【魔術学最終研究(聖)】、【魔術学最終研究(闇)】、【魔術学最終研究(精神)】、【魔術学最終研究(影)】、【魔術学最終研究(重力)】、【魔術学最終研究(天体)】、【魔術学最終研究(時空)】、【魔術学最終研究(破壊)】、【魔術学最終研究(契約)】、【相場】、言語スキルなどの自身の持つ学術関連スキルや知識の統合体。新たな学術関連スキルや知識スキルを会得すると統合、強化される。また、今いる世界の隠蔽されていない事象の全てを理解することができる森羅万象が可能になる。


魔導開拓者ウィザーズ・イノベーター

→【即死魔法】、【温度魔法】、【生活魔法】、【回復魔法】、【障壁魔法】、【結界魔法】、【召喚魔法】、【紙魔法】、【火薬魔法】、【加工魔法】、【保護魔法】、【程式魔法】、【魔王闇術】、【複数魔法同時発動】、【複合魔法】、【連続魔】、【魔導開墾】などの魔法スキルの集合体。新たな魔法関連スキルを会得すると統合、強化される。新たな魔法を生み出すことが可能。


万象観測オールワールド・オブザベーション

→認識によって事象を理解することが可能になる。観測を行うためには実際か間接的に対象を視ることが必要になる。詳細さは任意で選ぶことが可能。また、万象観測の効果により超越者(デスペラード)に至っていない者では全ての能力を、超越者(デスペラード)であっても魔法や体術系の実際に目視することができるスキルの本質を見抜くことができる。また万象の確率を変動させることも可能。


技能掌握パーフェクト・スティール

解析看破(ファゾム・アナライズ)の派生効果。敵を捕食せずに敵のスキルを会得することができる。【完全掌握】と同じく技術的ではないスキルは模倣できない。


技能統合分離作成スキル・パーフェクター

技能作成(スキル・メーカー)と【統合】と【分離】の統合効果。

一つ目はスキルを統合する効果。二つ目はスキルを分離する効果。三つ目はスキルを作成する効果。四つ目は既存スキルを複製保存する効果。これにより、スキルの組み合わせにより多様なスキルを作成することが可能になる。作成できるスキルには、所得しているスキルに関連しており、かつ同等か下位でなければならないという条件がこれにより回避可能になったことで、より強力な上位互換スキルを生み出すことが可能になった。なお、複数の同名スキルは同時に存在できないため、下位互換スキルと上位互換スキルとして分けて保存する必要がある。


情報物質生成データマテリアル・メイカー

→データマテリアルを生成することができる。データマテリアルの生成は無意味な記号の羅列と自身のデータの複製の二つに分けられる。

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 ただ、効果の方はしっかりと受け継がれている。もう、意味の分からないレベルで。

 これはもう俺の突っ込めるレベルを優に超えている。突っ込むのは諦めよう。


「能因草子様、ジューリア=コルゥシカ様、七曜ヱンジュ様、布都御霊姫様、ユエ=オプスクーリタース様、ウコン=ウコノエ様。自由組合(冒険者ギルド) カセドラ支部にようこそお越しくださいました。先生から皆様の規格外さをお伺いしております。上の者をお呼びいたしますので、少々お待ちください」


 そう言って受付嬢は中に消えていった。……結局、昔話に花を咲かせただけかよ!!


「ジューリアさん、なんか飯を用意しよっか?」


「草子さん、オバちゃんが奢ろうか? オバちゃん達が昔話に花を咲かせたせいで遅くなっちゃったんだし」


 一応、当事者に自覚はあるようだ。


「いや、組合(ギルド)本部での秘書室長にまで上り詰め、その後教育係にわざわざ志願。その後、結婚を機にブルックの町 自由組合(冒険者ギルド)に移動したキャスリン大先生に飯を奢ってもらうとか恐れ多いですよ。……まあ、材料はある……あったっけ? あったあった。コイツで料理を作るんで問題ないですよ」


 ゲテモノ肉(魔獣肉)を取り出し、【堕魔ノ王】で料理に変換。ジューリアに振る舞うついでにヱンジュ達にも振る舞った。


「こんな美味しい料理、食べたことありません」


『精霊は食事を必要としませんが……これなら、毎日食べてもいいかもしれません』


『こんな美味しい料理を食べられるのなら、け、契約してあげてもいいわよ!!』


 ≪草子、本当ワレはなんでもありやな……料理神より料理が美味いって≫


 ということで、高評価を頂きました。……ってか、ウコン。俺が料理神より料理が上手い訳がないだろ? 冗談は頭だけにしろよ。


「まだまだあるよ。素材はあまりに余った魔獣の保存肉だから。猛毒があってそのまま食べたら即死、どんなものでも食べられるスキルがあってなおメチャマズ判定されるけど、スキルで料理に変換しているから安心安全だよ」


 物欲しそうに眺めていた冒険者にも振舞ってみた。いや、なんか俺達だけ食べているのって狡いと思ってね。

 最終的にカセドラ支部で食堂をやっている女将さんにスカウトされたんだが……俺ってもしかして飯炊き係のモブキャラだと思われている!?


「初めまして、カセドラ支部で支部長の秘書室長をしておりますモットーと申します……えっと、ところでこの状況は」


 仕事ができそうな眼鏡秘書、モットーでも流石にこの状況を理解するのは無理だったようだ。


「お気になさらず、すぐに片付けますんで。初めまして、能因草子と申します。こんなモブキャラに代表をされるのはさぞ嫌な気分だと思われますが、うちのリーダー、ウコン様は交渉に向かないタイプでして」


「……受付嬢から話は聞いてますよ。影のリーダーにして真の実力者――もし、提出されたステータスが本物であれば、貴方の機嫌を損なった場合、自由組合(冒険者ギルド)の全金ランク冒険者を招集しなければ、勝てないでしょう」


 ≪アホか。仮に神界の全神・全天使を招集して挑んだところで勝率ゼロパーセントの相手に高が金ランクを集めたところで勝てる訳があれへんやろ。常識的に考えて≫


「……なあ、ウコンさんよ。俺って神界でどんな評価をされているんだ? ちょっぴり気になるなー」


 ≪“たたかってはいけないとくいてんのもの”……なんて呼んどる奴もいたな。触らぬ神に祟りなしって奴や。まあ、それを言っとるのは神なんやけどな≫


 “たたかってはならないよくしりょくたち”に似てるな……俺、魔王じゃないよ!?


「まあ、何かと過大評価をされやすいんですけど、実際はバグっただけのモブキャラなのでお気遣いなく。……ところで、モットー秘書室長様がいらっしゃったということは、面会の準備が整ったということですか?」


「ええ、その通りでございます。それでは、皆様……キャスリン先生もいらしてください」


 ちなみに、モットーとキャスリンから指導を受けた経験があるらしい……キャスリンが組合(ギルド)本部で秘書室長をしていた時代の秘書の一人だったようだ。

 面白い縁もあるものだと、つくづく思うよ。


 なお冒険者達は、冴えないモブキャラを丁重に扱うモットーに驚いていた模様。まあ、そりゃ見た目も中身もただのモブキャラだからね。あはは……。

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