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(ヴァルルスが)エリクシル頼みで生き延びます!

 異世界生活百三十四日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領エーイーリー


 翌朝、俺は鵠のベッドから脱出し、【性換者】を解いた。

 いつものカッターシャツ、黒ズボンに早着替えした俺は雲雀の部屋に移動。


「おはよう。約束通り元に戻しに来たよ」


「お願いします」


 雲雀に二度【性換者】を使い、元の雲雀に戻した。

 さて、飯の時間までまだ時間がありそうだな。ちなみに、何故か俺とジューリアはヴァルルス城内の食堂で朝餉を召し上がることになっている……敵対する人間に飯を奢るって、敵に塩を送るに等しい行為だと思うけど気づいているのだろうか? というか、敵に塩を送ったせいで下手すると城の経営が傾くんだけど。


 まあ、暇だし食堂に行って手伝うか。


「今から俺は食堂に行くんだけど、雲雀さんはどうする?」


「雲雀も行きます。暇ですので」


 ということで、雲雀と一緒に食堂に向かった。

 厨房では既に朝食の準備が進められていた。


「おはようございます、雲雀様、草子様」


「おはようございます。グリンダ総料理長」


 グリンダ=ファトベーゼェ――ヴァルルス城の全ての料理人を指揮・監督する権限を持つ総料理長。種族は災禍の豚頭皇(オークディザスター)――その名の通りオークディザスターが知恵を得た存在らしい。


「……しかし、お客人と五箇伝の雲雀様がどうして厨房へ? 料理は私どもが出しますので、暫しお待ちになってください」


「いや、暇でね。手伝えることはないかと思って……一応、これでも【家事技理】を持っているから調理の腕には多少自信があるんだよね」


「左様でございますか。……実はジューリア様が健啖家だとお聞きしまして、流石に私どもでは無理があると思っていたところです。お客人にご協力いただくのは心苦しいですが、今は手段を選んでいる場合ではございません。ご協力お願い致します」


 ってことで早速調理開始だ……と、その前に。


「そういえば、雲雀さんって料理できるの?」


「料理はできますが……味が全て塩辛くなってしまいます。雲雀は甘いお菓子が好きなのに、お菓子まで塩辛くなってしまうので苦手です」


 以外なところで塩キャラ発揮。ちなみに、鳰は作る料理が全面的に甘くなるらしい……両極端やな。


「んじゃ、早速始めるか。〝距離に隔てられし世界を繋ぎたまえ〟――〝移動門(ゲート)〟」


 異空間と〝移動門(ゲート)〟を繋ぎ、中から加工した魔獣肉をいくつか取り出す。


「…………この毒々しい肉はまさか!?」


「ああ、魔獣肉だよ。めちゃ不味な上に食べたら苦しみ悶えながら死ぬっていう伝説の食材さ。……俺みたいなスキル持ちじゃなければ絶対に食べちゃいけない食材だ」


「……あの、流石に魔獣肉を調理に使うのは。例え魔族であっても死んでしまいますよ」


「知ってる知ってる。俺が特殊な調理をすれば問題ないよ!」


 調理といっても【お料理の堕魔の呪法】を使うんだけど。


 【お料理の堕魔の呪法】の効果は呪力を消費して触れた食材を料理に改変するというものだった。まあ、確実に【料理聖女】の下位互換だな。

 ただし、食材を使ってさえいれば、全く関係のない料理すら作れてしまう。そう、魔族の肉を使っても魔族の肉を使っていない魚料理を作ることができるのです!! ……意味が分かんないよね。


「よし、完成。白身魚のポアレです、召し上がれ」


「…………本当に白身魚だ。……でも、魔獣肉ですよね」


「雲雀は心配です……草子さんを信用していない訳ではありませんが……」


「大丈夫大丈夫。死んでも〝死者蘇生(リザレクション)〟ですぐに生き返らせてあげるからさ」


「それ、殺すの前提で話してますよね!?」


「……雲雀はまだ死にたくないです。例え死ぬとしても苦しみながら死にたくないです」


 ……全く信用ないな。俺が毒味するっていってもそもそも魔獣肉を食べられる俺では説得力が無いし。

 二人を説得してまずは食べてもらう。問題はそれからだね。


「……美味しい、美味しいぞ!」


「これが魔獣肉だとは雲雀には思えません」


 結果は大成功だった。本当に百聞は一見にしかずですなぁ。


「まあ、この料理には弱点があるんだけどね。この料理はただの(・・・)美味しい料理だ」


「……ただの美味しい料理の何がいけないのか、雲雀は疑問です」


「まず、魔獣が持つスキルを会得することはできない。それと、食材にEXPが含まれていないから経験値は入らない。食事でレベルアップは無理ってことだな」


 まあ、経験値問題なら紫キャベツを使用した経験値凝縮薬(EXPポーション)をガブ飲みするという手もあるが……キャベツ味のポーションってきのこ味のポーションとどっこいどっこいな気がする。


「ああ、キョーリャイキャロートを使ってレベルアップ!! みたいなことは無理だということだな」


「…………何それ」


 キョーリャイキャロート……高麗人蔘的な奴か? 元祖人蔘だけど、後に入ってきたセリ科の根菜胡蘿蔔(こらふ)に人蔘という名称を奪われ、高麗っていう形容詞をつけられるようになった、生薬か。

 ……そういえば、薬系はノータッチだったな。もしかしなくても生態系が違うから全く別種の薬草も見つかるだろう……今日、調べてみよう。丁度図書館に行くことだし。


「元祖キャロットの水薬(ポーション)……不味そうだな。まだ紫キャベツ水薬(ポーション)の方がマシな気がする」


「よく分かりませんが、キョーリャイキャロートは物凄い不味いですよ。これを上手く使って美味しい料理を作るのが一流の料理人なのです!!」


 ……うん、俺には無理だな。

 その後、【堕魔ノ王】を発動してグリンダの補助に徹した。

 サポートな筈の俺の料理の方が好評だったみたいだが……まあ、呪力を消費して美味しい料理を作るのが【お料理の堕魔の呪法】ですからね。

 だから、グリンダ達が落ち込む必要は無いと思う……恨むなら俺ではなく【お料理の堕魔の呪法】にしてくれ。



 異世界生活百三十四日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領エーイーリー、魔界中央図書館


 ヒャッハー、魔界中央図書館だ!

 ヴァルルス曰く、魔族の叡智の結晶――公開されている書物の最大数は魔界随一で、それ以外の本となると個人所有のものに限られるらしい。


「お待ちしておりました、草子様。私、魔界中央図書館の館長を務めております、大天狗の風見(かざみ)八手(やつで)でございます」


「しばらく厄介になります。それでは、早速始めさせてもらってもよろしいでしょうか?」


「はい、勿論でございます。お好きなだけ本をご堪能ください。何かありましたら私に声をお掛けください」


 さて、早速開始だ。

 とにかく今回は本の量が尋常じゃなく多い。ということで、【複製魔法】を開発して本を完璧に複製してから食べることにした。書写とかしてたらキリがないからね。


「……本当に本を食べるんだな」


 事情を知らない魔族が絶句し、ヴァルルスが溜息を吐いているがそんなことは御構い無しに食べ続ける。

 なんたって後十五フロアと禁書区画が二フロアいるのだ。まあ、【時間魔法】を使って一秒を二十分に引き伸ばしているんだけど……流石に一千万年に一秒とか気が狂うしね。


「そういえば、魔王領エーイーリーに土地は用意できました?」


「ああ、言われた通り、この近くに用意した……しかし、更地でいいのか? 先に建物の建設を始めた方がいい気がするが」


「どんだけの量になるのか概算していないんで、計算してから俺が作るんで大丈夫ですよ。俺、建築の方もできるんで」


「ああ、知っている。……あの屋敷のほとんどは草子殿、お前が増築したのだろう?」


「まあ、俺が欲しいから建てたんですけどね。ちなみに一番大きな建築はミント正教会の新神殿宮です」


「…………本当に化け物だな。草子殿は」


 またも過大評価だ。俺が凄いんじゃなくてバグった俺のスキルがおかしいだけなんだけどな……。



 異世界生活百三十五日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領エーイーリー、魔界中央図書館


 七区画制覇! しかし、まだ終わらない。

 昨日から泊まり込みで本を食べまくっているので、ヘズティスも流石に疲れてきたみたいだ。

 なお、夜は館長と交代制で俺の動向を監視していた筈なので、ちゃんと睡眠はとっている筈……というか、そもそもアンデッドって寝るのか?


「アンデッドって寝るんですね」


「そりゃ、アンデッドにも睡眠は必要だ。ところで、草子殿に睡眠は必要ないのか?」


「バグったステータスになってからほとんど休み無しで動き続けられるようになりまして。一応、人間らしさを感じるために徹夜は八日までと決めてます」


「…………我の価値観では、既にそれは人間ではないのだが」


 って言われても働けるなら働いた方がそれだけ成果あげられるし……これって日本人に染み込んだ社畜根性なのだろうか? あれ? でも俺まだ生徒の筈だが……或いは学生?



 異世界生活百三十六日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領エーイーリー、魔界中央図書館


 六区画制覇! ついでに魔族から奇異な目を向けられることも減ったようだ。

 それに比例してヴァルルスと八手の疲労が溜まっていっているようだ。


「〝嗚呼、惨き戦場よ! 戦に身を投じ、生命を散らした殉教者達よ! 戦火に焼かれ焦土とかした大地よ! せめて、せめてこの私が祈りましょう! いつまでも、いつまでも、祈り続けましょう〟――〝極光之治癒(オーロラ・ヒール)〟」


 八手に上位の【神聖魔法】を掛けて回復させた。

 【回復魔法】には疲労を消し去る効果かもある。実はデスマッチとの相性はバッチリなのだ(ただし、精神は回復できないのでどんどん擦り切れていく)。


「……我に、我に癒しを」


「ヴァルルスさんに掛けたら浄化されますよ。……八手館長、アンデッドって回復薬は飲めましたっけ?」


 アンデッドってものによっては回復薬でダメージを受けるからな。後、リバースガスの人とか。


「回復薬は問題なく飲むことができます。アンデッドの弱点は【光魔法】や光、聖なるものであって、回復そのものではありませんから」


 どうやら、アンデッドだから回復できないということはないようだ。……問題はリバースだけか……ってなんでそもそもリバース使える人がいる前提で話しているのだろう?


「では、ヴァルルスさんにはこちらを。霊薬(エリクシル)です」


「「霊薬(エリクシル)!?」」


 いや、そんなに驚くことが? 確かにコスパは良いけど長所は消費期限がないことくらいで、それ以外は上位互換(聖薬(ネクタール))に劣るし。……まあ、上位互換の製法は俺とルルードとセリスティア学園議長(足すとどんな役職か分からなくなるな)の三人で秘匿しているから世間では霊薬(エリクシル)の地位が最高なんだろうけど。


霊薬(エリクシル)――ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国にも製法を知る者はいない最高級の秘薬。攻め込んでくる人間の勇者ですらほとんど持っていない伝説の薬を草子殿は普通に持っているのか?」


「まあ、それ相応の対価を支払って作り方を教えてもらいましたので……。あっ、絶対に教えませんよ。霊薬(エリクシル)なんて戦争の火種にしかなりませんし」


「そんな……後生ですから!!」


「では、そろそろ続きを始めましょうか。まだ沢山本がありますよ」


 霊薬(エリクシル)に興味を示す八手と、声に出してはいないものの明らかに興味を持ったヴァルルスを華麗にスルー。本を複製しては口に運ぶ。嗚呼、至福なり。


「……まだ続くのか。寝ても大量の本が出てきて我に襲い掛かる夢を見る……我は本好きだと思っていたのだが……これだとしばらく本は見たくないな」


 知らぬ間にヴァルルスのトラウマが製造されていたようだ。

 あっ、残り四区画の本はその日の内に捕食しました。ご馳走様でした。



 本を食べ終わったら、その足で八手とヴァルルスと共に隣の隣の空き地に移動。

 もし、土地が無いのなら浮かして空中都市か、図書館の地下を掘って螺旋型図書館インフェルノを作ろうと思っていたけど、その必要は無かったみたいだ。

 ちなみに、考えていた地下図書館の構造はサンドロ・ボッティチェッリの『地獄の見取り図』みたいな感じだよ。


「〝我が建造物を創り出せ〟――〝要塞創造-Fortification creation-〟」


 新神殿宮を作り出した時と同じように土属性と金属性、木属性の複合魔法を発動し、大理石メインの建造物にフローリングを張り、木で創った棚とカウンター等々を設置した。

 まあ、ぶっちゃけそれだけの魔法。なんの戦闘力もない。


「…………まさか、これほどの建物を作り出せる固有魔法(オリジン)があるとは。……〝我が建造物を創り出せ〟――〝要塞創造-Fortification creation-〟……うん? 何故、魔法が発動されない!?」


「俺のは自分のスキルで作り出したオリジナルな魔法であって、固有魔法(オリジン)じゃないからだよ。だから、俺以外には使えない。まあ、よくあることだよ」


 ってか、こんな魔法あっても土木工事が捗るだけだろ? そして、土木工事業者が仕事を失う。


「――んじゃ、早速始めるよ。とりあえず作った本はカウンターの上に置いていくんで」


「分かった。――では、バイト諸君!! これより仕事を始めてもらう。内容は、草子殿が作った本を棚に並べることだ!!!」


 あっ、棚に並べるのは日雇いバイト君達がやるそうです。結構力自慢が集まっているな……あっ、ジューリアに決勝で負けた茨木童子もいる。ちなみにグリーディーは芸名らしい……マジか。称号の上に芸名を被せるってありなの? というか、芸名って芸人なの!?

 ちなみに職業は運送業らしいです……イミガワカラナイヨ。


「あっ、ちょっと待って。八手さん、本はこのメモに従って並べてくれないかな?」


「ほうほう……なるほど、本を番号順に並べるのですか。これなら、本がどこにあるか分からなくなることを防げそうです」


 図書館を捕食した(正しくは図書館の本を複製して捕食しただが、似たようなもの)時に気づいたんだが、順番がめちゃくちゃだった。

 その対策として用意したのが、Nippon Decimal Classification……日本の図書館で広く使われている図書分類法を参考にしたものだ。


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0 総記

1 哲学・宗教

2 歴史・地理

3 社会科学・自然科学

4 魔法

5 技術

6 産業

7 芸術

8 言語

9 文学

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 まあ、参考にしたのであって、そのままではないが。魔法関連の書物は地球にはほとんどないしね。

 このバイト君プラス数人分だけ複製し、八手さんに渡した。


「んじゃ、とっとと始めるぞ。今日中に十分の三終わったら最高だな」


「「「「「「「「一日じゃ終わらないんですか!?」」」」」」」」


 どうやら連絡にミスがあったようです。あっ、バイトは時給制に変えました。雇い主は俺です…………うん、なんで俺が支払っているのか分からないけど、きちんと説明していなかった俺にも責任がありそうな雰囲気だったので。



 異世界生活百三十八日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領エーイーリー、魔界中央図書館


「お疲れ様」


「「「「「「「「お疲れ様でした」」」」」」」」


 聞いて驚くな。なんと、バイト君は一人も辞めなかった。これほどの重労働で離脱者が出なかったのはもはや奇跡と言っても過言ではない。

 途中から八手とヴァルルスは本を読み始めて仕事を放棄していたし、そんな上司を横目で見ながら必死で頑張っていたバイト君達は本当に素晴らしかった。


 三食きっちりつけて時給を倍にしたのが勝利の秘訣だな。……後半ほとんど働かずに飯だけ食べてた二人には一言物申したい。


『しかし、本当に草子さんの料理は美味しかったな。趣味のフードファイターで色々な店を回ったがあんなに美味しい料理を食べたことがない』


『美食の大魔人、茨木さんが言うなら間違いないっすね! 俺も、あんなに美味しい料理、食べたことが無かったっす。思わず涙が出て、気づいたら涙味になっていたっす』


 どうやら高収入よりも飯の方が効いたようだ……しかし、茨木の取り巻きAよ。涙味になっていたら意味がないのではないか?


「あっ、草子様、終わりましたか?」


「終わったよ……二人とも、飯だけ食べて後半働いてませんでしたよね? 俺はずっと複製し続けていたというのに」


「「す、すみませんでした!!」」


 大の大人が揃って土下座だ……ジャパニーズ最敬礼だ。……そのまま責任を取ってジャパニーズハラキリをしますか?


「弁解させてください! ……こんなに興味深い本を置かれたらそりゃ誰だって読みたくなりますよ!! 特に、草子さんが書いた教科書は大変素晴らしい。文学、魔法学、魔法薬学――そのどれにも秀でていることが本当によく分かる。……草子殿は素晴らしい教師だということがよく分かりました」


「煽てても何も出ないっすよ、八手館長」


「いや、煽てているのではない。我も草子殿の知識と、その知識を教える力に感服した。……我がいかに無駄に年を重ねたのかよく分かった。……この教科書を我に使わせてくれないか? 魔族の世界に教育機関は存在しない。だが、今回この教科書を読む中で教育の大切さを思い知った」


 なんか、知らぬ間にジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国に教育機関を立てる目論見が始まってしまったようだ。……この人、セリスティア学園議長と相性良さそうだな。


「教科書はご自由にどうぞ。この世界に著作権なんてものは無いし、俺はそれでなんらかの利益を出すつもりはないよ。……もし、魔族と人間が抗争をやめるのなら、もし、ヴァルルスさんが本気で教育機関設立を目指すのなら、俺の知る最も教育に力を入れている人――現国家同盟議長にヴァルルスさんを紹介するよ」


「……これまで続いてきた魔族と人間の抗争を止められたら、か。草子殿が認めるお方なら我も是非会ってみたい。これは、是が非でも魔族と人間を仲直りさせなければならないな」


 まあ、人間と魔族の関係修復は薩長同盟よりも遥かに難しいけど、その種は既に一つ植えられている。

 正直部外者の俺がこんなことをする必要はないし、批難されるのは承知の上だけど、それでもやっぱり争わずに仲良く互いを認め合うのが一番だと思うんだよね。


 俺が直接手を下すつもりはない。ただ、魔族も人間が仲直りした結果、異世界カオスからカオスが消えるのなら、それで一人の命を奪わずに済むなら、それが一番だと思うのだよ。


 老害に提示された魔王エルヴァダロット・ダル=ノーヴェを殺さない条件――魔族と人族の対立を止める。

 そのためには、一人のバグったモブキャラの力だけでは到底足りない。それぞれが変わりたいと思わなければ、変わることはできない。

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