四陣営戦争③
ミンティス歴2030年 9月12日(異世界生活百二十八日目) 場所聖都、神殿宮
「進軍せよ、歩兵、騎士。僧正、〝極聖光爆〟を放て! 城と王妃は〝五素顕現〟を放て!!」
うわ、魔法の応酬じゃねえか! しかも威力高えのばっかり。
【瞬間移動】で射程を逃れ、そのまま歩兵、歩兵、騎士と続けざまに斬撃を浴びせ、そのまま王目指してひた走る。
「王の意向を世に知らしめせ! 大王の威圧」
瞬間、俺に物凄い圧力が押し寄せる……たく、王は固有スキル持ちとか、なんちゅう絶望感。
「王の采配は天下において絶対である! 大王の御心」
うわ、駒の瞬間移動も駒の入れ替えも自由自在かよ。入れ替えられないのは俺だけって当たり前か。
正直、かつてないほどこのダニッシュっていう人は強い。ステータスがぶっ壊れだから強いとかそういうのじゃなくて、人間的に強いというか、護るべきものがある人の強さというか、そんなものを感じさせる。
ただ、物凄くイケメンなのはマジでムカつくけど。なんで、天はこういう人に限って二物を与えちゃうかな?
「イケメン死すべし」
「……いや、それお前にだけは言われたくないんだけど。何あの美女、普通【女体化】してもあんな女神みたいな美女にはなんねえよ。……というか、お前にこそ言いたいわ。才能の塊死すべしってね。剣士としても魔法使いとしても一流ってなんなの!? しかも、美人の嫁さんがいるんだろう? しかも四人も、いやもっとか?」
「どこで聞いた話か分からないけど、デマだから信じない方がいいよ。後、仲間? だった奴のパーティは抜けてきたんで」
「……なるほど、ヴァパリア黎明結社との戦いに巻き込むのは危険だと判断したってことか。大丈夫、ヴァパリア黎明結社は敵対する者のみを殺す。彼女達に指一本触れることはないだろう……まあ、向こうがこちらに攻撃してくるのであれば、また別の話だが」
「あんたら随分と余裕だな」
「ああ、強者の余裕って奴だ。報復なんてあり得ないからな。この世界で絶対支配者はただ一組織――ヴァパリア黎明結社だけだ。他は皆俺達の隠れ蓑に過ぎない」
「まあ、それももうすぐ終わりだけどな。俺が元の世界に帰るためには、ヴァパリア黎明結社も含めて全てのカオスを払わなければならないんでな」
「……それは、ヴァパリア黎明結社の首魁を、あの方の子を殺すということか。……能因草子、お前だけは絶対に生かしておけないな」
ダニッシュの目が変わった。本気になったか。
しかし、それにしても「あの方の子」って……ダニッシュは普通の幹部ではなくて、何か特別な立場にいるのか?
本当は生かして話を聞きたいけど、ダニッシュは半殺しで止められるほど雑魚じゃないからな。こっちも全力で殺しにいかないとこっちが死ぬ。
「城、【キャスリング】せよ!」
王を結界が包む。城を倒さない限り王は倒せないってことかよ。
(〝時を止めよ〟――〝時空停止〟)
ダニッシュには効かないけど、【ギャンビット】で召喚された駒は停止できる。
「〝世界を構成する有象無象よ、元素となって、新たな世界を作る糧となれ〟――〝エレメント・スキャター〟」
次々と駒に向かって〝エレメント・スキャター〟を発動し、元素へと分解する。
そして、気がついた。時を止めているから城の【キャスリング】が貼られたままで結局攻撃できないってことに。
「【ギャンビット】!! 城、【キャスリング】せよ! 流石にお前でもこのコンボは止められねえよな?」
【時空魔法】で瞬殺ルートは無くなった。やっぱり地道に倒していくしかねえか。
「Envelopper avec les ténèbres/Croissant de lune envoyé」
【飛斬撃】で斬撃を飛ばし、城を狙うも歩兵と騎士に阻まれた。
大王の御心、恐るべし。
まあ、こっちにも【瞬間移動】があるからあんまり卑怯だって言えないけど。
とりあえず、城の背後に飛び、一閃。
「【ギャンビット】!! 王妃、〝爆裂魔法〟を発動せよ!!」
やっべ、また喰らっちまった。また【自己修復】で修復すれば問題ないけど。
〝爆裂魔法〟は発動までが一瞬だからなかなか避けられないんだよな。しかも威力は厨二病大魔導師のよりも遥かに高いし。
「畳み掛けろ! 王妃、城、〝爆裂魔法〟を発動せよ!! 僧正、〝極聖光爆〟を放て!」
間髪入れずに攻撃を仕掛けてくるな。まあ、【叡慧ヲ窮メシ者】を使って攻撃位置の演算を始めたからもう当たることはないと思うけど。……えっ? もっと早くやれって? さーせん、全くですね。返す言葉もございません。
「王の意向を世に知らしめせ! 大王の威圧」
またか! コイツだけは円形の広範囲攻撃だから回避できないんだよ。
範囲外に逃れれば問題ないんだけどさ。それだと物理攻撃はできなくなるし……まあ、【瞬間移動】で距離を詰めれば問題ないんだけどさ。
「歩兵、昇格せよ!! 王妃となれ!!」
……普通は敵陣の最終行に到達した場合に王妃、城、僧正、騎士になることを昇格って言うんだけどな。……全く関係なく全部の歩兵が王妃になりました!?
普通は王妃に昇格させるが、稀に引き分けを避けるためにアンダープロモーションする場合があるけど、今回の場合は無さそうだな。まあ、チェスであってチェスでないし、この勝負。
……というか、今気づいたけどこれってハーレムじゃね!? 王さん、奥さん多杉……じゃなくて、高杉……でもなくて高過ぎじゃなくて……なんの話だったっけ?
「今だ! 王妃、〝爆裂魔法〟!!」
王妃って誰だよ!? って思ったら全員だった!!?
いや、こんなに沢山の妃さんに熱視線を向けられるって……えっ? 熱は熱でも爆熱の方だって? まあまあいいじゃないですか、俺モテないモブキャラくんですから、こんな時くらい。
【瞬間移動】――からの。
「Envelopper avec les ténèbres/Croissant de lune envoyé」
城を二体撃破して【キャスリング】を無効化し、そのまま王を――。
「王の采配は天下において絶対である! 大王の御心」
ちっ、王妃と入れ替えたか。
これなら城の【キャスリング】発動よりも先に王に一撃浴びせられると思ったが……。
「【ギャンビット】!! 城、【キャスリング】せよ! ……ちっ、なかなか上手くいかないな。……こっちの魔法も当たらなくなったし、こりゃ本当に千日手になりそうだな……」
まあ、俺にはダニッシユを一撃で殺れる手札が二枚残っているが。
前者の〝死が確定する十三分-The god of death keeps ridicule of life for 13 minutes-〟は対フルゴル・エクエス戦に必要だろうし、後者の〝DIES IRÆ〟の方は保険として取っておきたい。
まあ、他にも手はあるが。んじゃ、やってみますか。
【粘糸】と【鋼糸】のスキルを統合し、【粘鋼撚糸】のスキルを作成。
「Le Théâtre du Grand-Guignol」
張り巡らせた極細の糸を一斉に動かす。本家の〈Le Théâtre du Grand-Guignol〉は【殺戮人形劇】はスキル効果で出した糸を使えたけど、俺の場合はセルフで作らないといけないのが難点だな。
まあ、その分糸の強度が高い上に、粘着力もあるって付随効果があるけど……というか今気づいたけど粘着力と切断力って共存できなくね!?
城を含め、王以外全部の駒をぶっ壊しつつ、ダニッシュの命を狙うが――。
「王よ! 【殺気圏域】で斬り捨てよ!!」
ちっ、俺と同じ方法で〈Le Théâtre du Grand-Guignol〉を防ぎよったか。
「まさか、グラン=ギ・ニョールの技を奪っているとはな。……対策を立てておいて良かったぜ」
「……仲間なのに対策立ててたのか?」
「いや、アイツおっかねえじゃん。実際、身内狩りまくってたんだろ? というか、いつ寝首を掻かれるか分かんねえし、結社内の奴でも一応対策は立てるもんだぞ」
バトル趣味レーション的なものなのか、それとも切実に仲間から狙われる職場なのか……後者ならブラックだな。そんなところにレーゲンを勧誘するとか、ブラック企業のスカウトマンか?
さて、次はどうしようと策を練っていたところで突然地面が揺れ始め……はっ? 謁見の間にヒビが入り始めたんだが。
というか、ここ三階だよ!? ここから落ちるとかマジでやめてください!! ……あっ、いや、別にここから落ちても無事だろうっていう確証はあるけど。【物理無効】と【衝撃無効】があるんでね。
「んじゃ、お先〜」
「きったねえぞ、能因草子!!」
【魔力纏】で翼を作り出して、そのまま壁を蹴ってぶっ壊して脱出。すぐに蹴りを入れて強度を確認するぶっ壊れメイド人造人間じゃねえからな! ロケットパンチはできません。
◆
【三人称視点】
超帝国マハーシュバラ・国防軍vsヴァパリア黎明結社召喚部門という異世界モノにおいて異世界カオスにおいても片手で数えられるほどの大規模戦争が開始されたのは、マジェルダが飛空戦艦エンリルを復活させる五分前であった。
空飛ぶ船――超帝国マハーシュバラの国防空軍が保有する魔導船の戦闘専用艦――魔導戦艦が八隻、ミンティス教国の上空に鎮座し――。
「これから情報の真偽を確かめる。ケリー、お前は部下を何人か連れて邪魔者が来ぬように見張っておけ。いいか、何人たりともこの聖都に入れるな」
「分かってますぜ、隊長さん。……ところで、俺達の忠告を無視して中に入って来ようとしたらどうするんだ?」
「構わん、斬り捨てろ」
「Oh! 怖い怖い。隊長さん、容赦ねえからな。……まあ、上官の命令は絶対だからな。大口径のアメリカの力、異世界カオスの連中に見せつけてやるぜ」
ケリーは何人か部下を選ぶと、〈装甲祥瑞〉を展開し、部下と共に地上に降り立った。
「……そろそろ俺も行くか。全知全能を殺すべく、天をも内包した大地の果てより顕現せよ。星々を砕く百の首で理不尽を殺せ――〈装甲祥瑞・テューポーン〉」
汎用型と化したジズのデータを基に作り出した〈装甲祥瑞〉を展開し、インフィニットは地上に降り立つ。
「「「「「「〝世界を滅ぼす最強のホムンクルスよ! 今、全ての異世界を滅ぼすべく現れよ〟――〝大召喚・フルゴルエクエス・ジェニュイン!!」」」」」」
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NAME:フルゴルエクエス・ジェニュイン AGE:-歳
LEVEL:99999 NEXT:-EXP
HP:99999999/99999999
MP:∞
STR:99999999
DEX:99999999
INT:99999999
CON:9999999
APP:99999999
POW:9999999
LUCK:99999999
JOB:ホムンクルス
TITLE:【破滅を呼ぶ使徒】、【スリーマンセルの暴力】、【無限の魔力を有する者】、【量産型最終兵器】、【鉄壁の無効スキル使い】、【異世界を滅ぼす存在】
SKILL
【二刀流理】LEVEL:MAX(限界突破)
→二刀流の真髄を極めるよ! 【二刀流】の上位互換だよ!
【魔法剣理】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔法剣の真髄を極めるよ! 【魔法剣】の上位互換だよ!
【全属性魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→全属性の魔法を使えるようになるよ!
【回復魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→回復魔法を使えるようになるよ!
【物理無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→物理を無効にするよ! 【物理耐性】の上位互換だよ!
【衝撃無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→衝撃を無効にするよ! 【衝撃耐性】の上位互換だよ!
【魔法無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔法を無効にするよ! 【魔法耐性】の上位互換だよ!
【状態異常無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→全ての状態異常を無効にするよ! 【状態異常耐性】の上位互換だよ!
【即死無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→即死を無効にするよ! 【即死耐性】の上位互換だよ!
【因果無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→因果干渉を無効にするよ! 【因果耐性】の上位互換だよ!
【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→気配察知が上手くなるよ!
【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔力察知が上手くなるよ!
【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→熱源察知が上手くなるよ!
【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→振動察知が上手くなるよ!
【無限の魔力】LEVEL:MAX(限界突破)
→無限の魔力を得るよ!
【分解のオーラ】LEVEL:MAX(限界突破)
→オーラに触れたものを分解するよ!
【瞬間移動】LEVEL:MAX(限界突破)
→瞬間移動が上手くなるよ!
【擬似限界突破】LEVEL:MAX(限界突破)
→擬似的に限界突破するよ!
ITEM
・決戦兵装ワールドブレイク
→異世界破壊のために創られた決戦用の双剣だよ! 異世界カオスには存在しない最硬の金属で作られているよ!
・精鋭部隊の服
→三位一体の精鋭部隊の服だよ! 軍服に似た衣装だよ!
・マスカレードマスク
→仮面舞踏会でつけるような仮面だよ!
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これまでのフルゴル・エクエスとは完全に別物となったフルゴル・エクエスの改良版達が、超越者インフィニットとその部下達に牙を剥いた。