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パシリと魔法使い

 魔法使いの才能を信じてくれて田舎から王都の魔法学院に送ってくれたお父さん、お母さん、ごめんなさい。

 16才を前にして私は今、学院で落ちこぼれて、ぼっちな上に、絶賛パシリになっています。


「ねぇ、レンカ。東ロンメル通りに新しいクレープ屋が出来たんだってさ」


 馴れ馴れしく私の名前を口にして、金髪ロールの少女ローズマリーは私の机の上にクレープ屋の地図を置いた。


「ねえ、私たち友達でしょ? 今日のおやつに欲しいから今すぐ買って来てよ」


 もちろん、こんなローズマリーとその取り巻きは友達なんかじゃない。私は体の良いパシリでしかないなんて分かっている。

 けれど、逆らったらもっと酷い目に会うのも分かっているから、私は嫌だと言う言葉をギリギリで胸の奥にしまい込んだ。


「で、でも、東ロンメル通りって遠いよ? 歩いて行ったら片道一時間くらいかかるよ」

「なに? うちらの言うことが聞けないの? みんなが貧乏なレンカのこと無視しても、こうやって友達でいてあげてる私たちのお願いが聞けないの? 貧乏なレンカの分だってめぐんでやるって言ってるのに?」


 その言葉で他のクラスメイトが視線を私から反らす。

 誰かに助けを求めようとしても誰も私を助けてくれはしない。私を助けてくれる王子様なんて現れる訳もない。王子様はちんちくりんな私を好きになってくれないし、そもそも女子校だし。

 それに何より、私がこのいじめっ子たちの生け贄になっている間は絶対に安全なんだから、わざわざ私を助けて次の生け贄になろうなんて思わないだろうしなぁ。


「何その目? まさかあんたみたいな弱っちい魔力でうちに喧嘩売ろうっていうの? 全国で16番目に強いこのうちに?」

「そんなことしないよ……。分かった。買ってくるよ」


 私は落ちこぼれの魔法使いで、相手の子は全国魔法闘技大会の魔法少女部門でベスト16に入るほどの手練れ、天地がひっくり返ったって正面から喧嘩して勝てる相手じゃない。

 私は諦めて席を立つとロッカーにしまった箒を取り出して、窓を開けた。

 そして、箒にまたがってから窓辺を蹴って空へと飛び上がる。


「はぁー……全速力で飛んで何とか時間内に戻ろう」


 学院から離れて街中へと飛んだ私は時計を見ながらため息をついた。

 もし、時間内に戻れなかったら、ずぶ濡れにされたり燃やされたりと言った魔法の的にされる罰が待っているし早く帰らないと。


「はぁー……嫌だなぁ……」


 我ながら後ろ向きな理由にため息が出るなぁ。

 私にもっと魔法の才能があれば、自分の意見が言えるかもしれないのに。

 うぅ、人としても魔法使いとしても強くなりたいなぁ。


「はぁー……」


 建物の上くらいを飛びながら、何度ついたか分からない深いため息を吐いた――その時だった。


「泥棒よ! そこの小さな魔女さん! そいつを捕まえておくれ!」


 私の下から大声で叫ぶお婆ちゃんの声がした。

 お婆ちゃんは必死に走りながら私の方を指さしている。

 その指先へと視線を上げると、杖の上に立って乗る男の魔法使いがいた。

 男の手の中にはお婆ちゃんから奪ったバッグが握られている。

 多分、この魔法使いの男は空中から一気にお婆ちゃん目がけて急降下して、バッグを奪った瞬間に空に向かって飛び上がったんだ。


 箒に乗る魔法使いが盗みをする時によくやる動きで、トンビみたいな動きからトンビ盗りと言われている。そのまんまの名称だ。


 出来れば無視したい。ここで泥棒を追いかけたら絶対に昼放課中に学校には戻れない。

 昼放課の内に戻らなかったら、次はもっと酷い虐めにあう。


 それに泥棒の魔法使いを捕まえようとすれば、魔法で絶対に反撃される。学校の授業で使うような護身用の魔法じゃなくて、人を殺すための魔法を使われるかもしれない。

 そんな相手に挑むほど、私は全然強くないし、捕まえられる自信もない。

 ごめんなさい! ダメな魔法使いで!


「お願い! 孫の薬を買わないといけないの!」

「――っ! うううう! あぁっ、もう! 待てえ!」


 謝って逃げようとしたのに、私は真っ直ぐ泥棒の魔法使いを追いかけた。

 見捨てられる訳ないじゃん!

 誰も私を助けてくれないからって、私も困っている人を見捨てたら、他のみんなと同じになっちゃう。それは何か嫌だから!


「お婆ちゃんのお金を返して!」

「ちっ、魔女が近くにいたか! って、ハハッ! 何だよ驚かせやがって。お前が跨がってるやつ、ただの箒じゃねぇか」

「箒の何が悪いの!? 魔法使いが空を飛ぶなら箒でしょ!?」

「ハハッ、なるほど。空を飛ぶ専用の杖があるってことを知らねぇんだな! 俺の飛行杖は飛行の術式を何重にも刻み込んだ最速の飛行魔導具だ! 言うなれば馬とカタツムリくらいの差があるって訳だな! あばよ!」


 男がそういうと、男の乗っている杖が輝きを放ち、まるで弾丸のように加速して飛んで行く。


「なにそれズルッ!?」


 そんな杖があるなんて聞いたことがない。それにこの箒はお母さんからのお下がりで確かにおんぼろで、ださくて、かわいげがない。空を飛べるだけの何の変哲もない箒だ。

 でも、だからって諦める訳にはいかない。

 箒を強く握って、姿勢を低くして抵抗を減らして、魔力を全力で込めるんだ。自分が弾丸になるイメージを込めて!


「待てええ!」

「へへっ、箒に乗ったガキがこの飛行杖に追いつける訳がねぇ。ってええええ!? 追いついてる!? ただの箒で!? 飛行杖に!? マジで!?」


「お婆ちゃんのお金を返して!」

「くそっ!? 振り切れねえ! なんなんだこのガキ!? 箒でこの速さとか化け物か!?」


 飛行杖は確かにメチャクチャ速いけど何とか追いついた! 後ちょっとで手が届きそう!

 これさえ取り返せば後は逃げるだけ。戦う必要なんてないんだから。

 泥棒を捕まえようなんて考えてない。ただお金を取り返すだけで良いから、後少し手を伸ばせば!


「ちっ、てめえが悪いんだからな? てめえが追いかけて来るから怪我することになるんだよ!」

「あっ!」


 泥棒の魔法使いの手の中に氷の槍が握られていた。

 あぁ、しまった。追いかけて取り返すだけで済む訳が無かったんだ。

 だって、相手は魔法使いなんだよ。魔法を使って攻撃してくるのが当然だよ。何でそんなことを忘れてい手を伸ばしちゃったんだろう。


 このままじゃ殺されるかも!? そう思った時、別の女の子の声がした。


「今泥棒を追いかけてる子! 私が体勢を崩すからあなたはバッグに集中して!」


 すると、氷の槍を構えた魔法使いがいきなり炎に飲み込まれて、バッグを宙に放り投げたんだ。たまらず叫ぶほどすっごく熱かったみたい。


「ぐあっ!? あっつ!?」

「バッグを落とした!? っとと! どこの誰か分からないけどありがと! 私、お婆ちゃんに返してくるね!」


 私はすかさずバッグをキャッチすると、そのままお婆ちゃんの方へと一気に逃げ帰った。

 ありがとう! どこの誰か知らない人! おかげで助かりました!

 一体誰に助けられたのかは全然分からなかったけど、とりあえず心の中で全力感謝を繰り返す。

 その後、無事にバッグをお婆ちゃんに届けると、すごく喜んでくれたし、私も良いこと出来てすごく良い気分。


 えへへ、私、魔法使いとしてちゃんと人の役に立てるじゃん。学校での評価にこれが加点されたらなぁ。なんて……。


「……これで学校に戻らなくて良いのなら最高の気分なんだけどなぁ……」


 クレープは結局買えなかったし、クラスに戻った途端、私はいじめっこ達にまた虐められるんだろうなぁ。

 でも、戻らないと先生にもっと怒られるしなぁ。


「はぁー……、どこかの王子様が連れ出してくれないかなぁ」


 あーぁ、気が重いなぁ。これだから昼放課の時間は嫌いなのよね。

 そんな憂鬱な気分を抱えながら私は学校に戻ることになったのだ。



 昼放課が終わるギリギリに学校へ帰ったおかげで、ローズマリーたちに何かを言われることは、とりあえずなかった。

 先生がいる間は優等生で大人しい振りをしているから助かったとも思う反面、先生に本当のことを告げても信じて貰えないから、本当に厄介な相手だと思う。

 先生がいなくなる放課あたりに呼び出しとかされそうで嫌だなぁ。

 そんな憂鬱な想像通りにチャイムが鳴って、先生がいなくなった途端、私はローズマリー達に囲まれてしまった。


「何クレープ買わずに戻ってきてんの? 友情を裏切ったんだから罰が当たっても仕方ないよね? 今日の放課後逃げないでよ?」


 今度はどんな酷い目に会わされるんだろう。攻撃魔法の的にされて、いじめの証拠が残らないよう傷付いたら回復魔法で怪我を治されて、また傷つけられる。そんな繰り返し。

でも、助けてくれる人は誰もいないんだ――。


「レンカという子はここのクラスにいるかしら? 黒い髪の子らしいんだけど」


 ガタッと扉が重い音を立てて開き、私の名前を呼ぶ少女の声がした。

 ローズマリーを含めたクラスのみんながその声の主に目を向ける。

 そして、一瞬で目を奪われてしまった。

 キリッとした凛々しい目、白い百合の花のような汚れのない真っ白な短い髪とスラッとした身体付き。

 なんて綺麗な人なんだろう。女の子なのに、まるで物語の中に出てくる王子様みたい。

 って、見とれている場合じゃないや。私を探しているんだよね?


「あ、レンカは……私です」


 私はあんまりジッと顔を見るのも悪いと思って、顔を伏せて恐る恐る手をあげて応えた。


「そう。あなたがレンカね。フフ、小さくて何とも愛らしい姿ね。ほら、顔もよく見せて」


 そういって彼女は私の顎に人差し指をあて、私の目が彼女の目とあうように顔を上げさせられた。

 なっ!? 何なのこの人!? 女の子だよね!? 何でこんなことするの!?


「何よあんた? まさかこのちんちくりんに気でもあるの?」


 ローズマリーが嘲笑混じりにそんなことを言う。

 けれど、白い髪の彼女はそんな嘲笑にまったく動じていなかった。


「私の名はエール=ハルト。レンカに運命を感じて会いに来たの。一目惚れよ。私、乙女座だから」

「はにゃにゃにゃ!?」


 代わりに私がメチャクチャ動揺した。勝手に変な声が出たよ!

 ホントに何言ってるのこの人!? 運命!? 一目惚れ!?

 というか一目惚れに乙女座関係あるの!?


 意味が分からず口をパクパクさせていると、いじめっ子がおかしくてしかたなかったのか、思いっきり噴き出した。


「っぷは! マジか! あはは! 何いってんのこの人! 超受けるんですけど! 面白い冗談言うわね!」

「至って本気よ? レンカ、今日の放課後あなたと一緒にいたいのだけれど、時間あるかしら?」

「あら、悪いわね? レンカはうちらも用事があんの。魔法の特訓に付き合ってもらうんだから」

「無駄なことは止めておくのね。レンカはあなたの手に余るわ」

「へぇ? 全国魔法闘技大会ベスト16のうちの手に、このちんちくりんが余るって?」

「あなたがベスト16だろうが、No1だろうが、関係無い。もし、あなたが私に指一本でも触れることが出来たら、レンカを譲るわ」

「言ったな!? 後悔しなよ!」


 ローズマリーはそういうと杖を構えてエールさんに向けて、火の玉を放った。

 って、ええ!? 何この展開!? もしかして、私、物語のお姫様みたいに取り合われてるの!?

 あっれえ!? 思ったよりロマンチックじゃないんだけど!?

 というか、エールさんも何言ってるの!? 私がローズマリーに勝てる訳ないじゃん!


 それに、エールさんの強さは分からないけど、ローズマリーに勝てる訳がない! だって、ローズマリーは全国ベスト16位の魔法少女で、一年生なのに並み居る先輩押しのけて、この学校で一番強い魔法使いだって言われているんだよ!?


「エールさん危ない!」

「弾けて混ざれ! フレアボム!」


 危ないと思って声をかけた時にはもう遅かった。

 ローズマリーの放った火の玉がエールさんにぶつかる――そう思ったのに。


「ふわー、あくびが出るわね。やっぱり遅いわ。止まって見えるもの」

「なっ!? 今のを避けた!? この距離で!? いや、まぐれだ!」


 エールさんはさも当然かのようにローズマリーの炎を避けた。

 何発も何十発もローズマリーの放つ炎がエールさんの服の端をチリッチリッとかすめるも、エールさんの身体には全く当たらない。


「君が何のベスト16か分からないけど、私はマジシャンズ・バトルロイヤル・レース・グランプリ、去年のMBRG魔法少女部門のベスト3よ。あなたよりもっと速い魔法、もっと速い魔法使いをいっぱい知ってる」

「はぁっ!? あの殺し合いレースとか言われるとんでも競技の!?」


 MBRGは私も聞いた事がある。

 魔法使いが杖に乗って、コースを飛び抜ける速度を競う競技なんだけど、レース中は攻撃・妨害なんでもありの荒々しい競技だ。

 音と同じくらいの速度で飛ぶから、ちょっとの接触できりもみ回転しながら吹き飛ばされたり、魔法の爆発で天高く吹き飛ばされたり、地面や建物に叩きつけられて大怪我することだってある。最悪死ぬ。

 だから、MBRGの選手はスピード、判断力、魔法攻撃力、魔法防御力、魔法使いに必要な全ての技能を高いレベルで持っていないといけないんだ。


 それ故に、MBRGは今世界で一番危険な魔法競技と言われると同時に、MBRGを制した魔法使いこそ最も優れた魔法使いだって言われている。


「ってか、MBRGのベスト3が何だってこのちんちくりんに用があるのよ!? こいつ鈍くさいし、魔法の威力だって弱いのよ!?」


 悔しいけどローズマリーの言う通りだ。私は攻撃の魔法があまり得意じゃない。

 唯一普通に出来るのは箒に乗って空を飛ぶぐらいなんだ。

 そんな私に、エールさんみたいに凄い人が一体何の用があるんだろう?


「どんなに強い魔法でも、どんなに速い魔法でも、相手に当たらなければただ世界を彩るイルミネーションに過ぎない。今の君の攻撃のように。だが、レンカにはその速度がある。誰も捕まえられない光になれる。私の光になれるのよ」

「で、でも、エールさん。私、どんくさいし、ちんちくりんだし、そんなに速く飛べないよ!?」

「フフ、実力を隠す演技ならもう必要ないわ。私はさっきレンカがバッグを取り返す所を見た。レンカには特別な才能がある!」

「もしかして、あの時、魔法使いの人を撃ち落とした炎を撃ったのはエールさん!?」

「そうよ。私はあの時のレンカの姿にこの胸を撃ち抜かれたの。まさか隣のクラスだったなんて。まさに運命ね。乙女座に産まれたことに感謝よ」

「何でそんなことにまで運命感じてるのさ!? というか乙女座関係ないよね!?」


 どうしよう!? 何かすごく変な人に目をつけられた気がするよ!?

 それに何かすごく盛大に勘違いされている気がする!

 私は別にそんなすごい才能なんてないただの落ちこぼれなのに――なのに、どうして?


「私の相棒になって欲しい」


 そんな期待してくれるような目で私を見つめてくれるの?


「世界中の誰よりも速く、強く、全てを越えて、この空を一緒に飛ぼう。レンカ」


 エールはそう言って私に手を差し伸べる。

 その言葉が具体的に何を意味しているのか、今の私にはさっぱり分からない。

 エールは女の子だし、虐められている私を助けに来てくれた王子様でもない。

 けど、きっとこの手を掴めば、私はこのどうしようもない毎日から抜け出せる。

 誰かに助けを無言で求める日々が終わる。


 この手を掴む理由はそれだけで十分だった。


「私を連れて行って! エールさん!」


 私が握り返した手をエールは私の身体ごとぐいっと引き寄せると、少し驚いたように目を見開いてから、ニッコリと笑った。


「えぇ、行きましょう。二人の空に」


 近くで見ると本当に王子様みたいな顔してるなぁ。

 うぅ、女の子相手だって分かってるのに、何でこんなドキドキしてるのさ私の心臓!


「何二人きりの世界に浸ってるんだよ! レンカァ! あんたはうちらの友達だろうがあ!」


 うわぁっ、ローズマリーのこと完全に忘れてた。

って、めっちゃ怒ってるし!?

 炎の玉がローズマリーの周りに二十個も浮いている。

 しかも、私に向かって飛んできた!

 ダメだ! 怖い! 助けてエールさん!


「レンカ、よく相手の魔法を見るの」


 相手の魔法を見るって言われても真っ暗だよ! 何も見えないよ!


「箒であんなに速く飛べるレンカの目なら、これぐらい止まって見えるはずだから」


 そんなこと言われてもどうしたら良いの!? 怖くて真っ暗で何も見えないんだよ!?


「勇気を出して目を開けて。空を飛ぶ時を思い出して」


 目を開ける!? え? あれ!? 私、目を瞑ってたの?

 空を飛ぶ時は周りにある建物や飛ぶ鳥にぶつからないよう目をちゃんと開いてるのに――。


「……見えた」


 目を開けた途端、火の玉がハッキリ見えた。

 火の玉がどこに飛んで来るのか、自分がどこへ行けば火の玉が避けられるか、ちゃんと見える!


「さぁ、飛ぶのよ。レンカ」


 トンっとエールが私の背中を手で押した。

 その勢いを貰った私は見えた道筋に飛び込んで、前に進む。

 炎が肩をかすめ、髪を踊らせ、頬に火花を飛ばす。けれど、全ての火の玉を躱してローズマリーの目の前に辿り着くまで、ちっとも当たる気がしなかった。今まで怖いと思っていたローズマリーの魔法が全然怖くなくて、ただ綺麗だと思えた。


「レンカがローズマリーの懐に飛び込んだ!?」


 クラスのみんながビックリしている。でも、私だって驚いたよ。

 まさか、目を開けるだけでこんなに見える世界が違うなんて思わなかったんだもん。

 あのローズマリーまでも私の眼を見て、怯えている顔をするなんて絶対に見られないと思っていたよ。


「ひっ!?」

「ローズマリー、ごめんね。私はエールさんと一緒に放課後を過ごすから。それを許せないなら、あなたとは絶交してもいいよ。もうあなたの施しもいらないから」


 今までずっと言えなかった言葉が口から自然と出てきた。

 こうして私の中で止まっていた時は、王子様ではなく、一人の魔法使いの少女に連れ出されて動き出したんだ。

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