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性悪聖女は自分の為に生きたい  作者: ナナイロ
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転生者、アリア・ベルナールド



アリア・ベルナールド公爵令嬢は、『転生者』であった。

前世の記憶を持つ人の事であり、目が覚めると小さなな身体になっていた事に驚愕した。

生まれたばかりの頃は、視覚・聴覚・身体機能の全てが未発達でありまともに喋る事も身体動かす事も出来ずストレスが溜まる日々だったが身体が成長すると共にそれは解決した。


生まれ変わったと言うことは案外すんなりと理解できた。前世でも、生まれ変わるという概念はあったからだ。胡散臭い宗教団体が言っていた為、当時は全く信用していなかったが実際に体験すれば信用せざるを得ない。


前世の記憶が全てある訳ではなく、曖昧な部分や何故前世の自分が死んだのかなどは全く覚えてはいなかった。追求しようなど全く思わなかった。かつての自分が生きていた時代から五百年程時がたっており、色々な文化が発展していた為、過去の事などより今の方が好奇心が擽られる。

『転生者』は、アリア以外にも存在するらしくアリアが変に調べて前世の事がばれてしまうと要らぬ争いの種をうむかもしれない。


欲を言えば、公爵家よりも平民に生まれたかった。まだ、貴族制度など厄介なものが存在したのかと悪態をついたが昔よりは緩くなっているので良しとしていた。

王族に生まれなかったというだけで、満足である。転生してまで王族などに生まれて国の為に生きるなど御免被りたいのだ。


今回の人生は、自分の為に生きたい。公爵家に生まれている為、政略結婚は決まっているだろうが恋愛などに興味はなく王族に嫁ぐ羽目にならなければそれでいい。


しかし、人生はそんなに甘くなかったのだ。

アリアが六歳の頃に雷で撃たれた様な衝撃的な出来事が起こった。平和だった一日の終わり。乳母のマーサが寝かしつける為の本を読んだ事から始まった。




「むかしむかしのお話です。ーーーー」


ありきたりな冒頭から始まる物語をマーサが優しい口調で読み始めた。いつもならうとうとと眠くなる音色がマーサが読み進めるにつれ、どんどん目が冴えていく。物語の内容に引き込まれたと言えば聞こえはいい。感動して、面白いからなどの好感がいい内容ではないのは間違いはない。現に布団の中のアリアの腕は鳥肌が立っている。


『カルディアの聖女』を「今日はこれ」と差し出された本の中から選んだが、今は亡き国であり、かつての自分がいた国の名前に惹かれたのはちょっとした興味本位であった。

選んだ事を後悔する程、内容がいただけない。

お姫様を褒めちぎった内容の本で慈愛に満ち、慈しみの心を持った優しい優しいお姫様の物語。


「ーーーお姫様の名前はエリザベス・カルディア。

カルディア国を救い。アルメニア国を導いた『カルディアの聖女』は今も慈悲の象徴として人々に語り継がれているのです。

あら、お嬢様。最後まで起きていてるなんて珍しいですね。」


ポカーンと口を開けて目を見開いている私を見てマーサは何を勘違いしたのかうふふと笑いながら「この本が気にいったのですね」なんて言っている。


アリアにとって『カルディアの聖女』はなんとも突っ込みどころ満載で心の中で何度も突っ込んだせいでぐったりとしていた。

子供向けの本ならば創作か実際にあった出来事を美化している事は不思議な事ではない。しかし、アリアはこの本の内容を受け入れる事はできなかった。

ーーーこの本でカルディアの聖女と書かれているエリザベス・カルディアはアリアの前世の名前だ。


(き、きっと何かの間違いよ)


エリザベスが笑っていると「悪い事でも思いついたのですか?」と侍女に不審な顔をされ、護衛には「貴女は魔女…いや、悪魔だ」と言われた事もある。鬼、獲物を食い尽くす魔物、薬中毒者や犯罪者予備軍などなど……。


(今おもえばあの侍女と護衛酷い言い様ね)


自覚はあった為褒め言葉としてありがたくうけとっていた。むしろ、自分で言っていた。



「貴女に目を付けられた時点で処刑は確実ですね」とも言われた事があるくらいだ。何人も死刑台に送ったし、エリザベスを恨んで死んだ者は沢山いるだろう。


どこから聖女だなんて話がでたのか分からない。

魔女、悪魔、死神といわれる方がしっくりくる。


「このお話は、昔本当にいたお姫様のお話なのですよ」


「そ、うなの?」


『カルディアの聖女』に興味を持ったとマーサは思っている為、聖女様の話を話し始めた。


「はい。聖女様が亡き後、聖女の使いがこの国に現れこの国の王の側近になったのです。王に知恵と力を与え、この国が豊かになったのだといわれております。

このお話は、聖女様に感謝した王が聖女様への感謝を人々が忘れぬ様に書かれたお話なのです」


「聖女様、なんで死んじゃったの?」


「分かりません。しかし、お亡くなりになった後女神へ生まれ変わったとされています。もしかすると、人へ転生しているかもしれませんね」


「へ、ぇ」


「今はお妃様が代々聖女様とされているのですよ。お妃様は『カルディアの聖女』の様に心優しい方で教会から認められた聖女様の称号を持つモノしかなれませんから」


「さあ、そろそろお休み下さいませ」とマーサは布団を掛けなおし、アリアは布団の中に顔を埋めた。


(もしかして私がエリザベス・カルディアの『転生者』だとバレたら大変な事になるのではないかしら…?)


アリアの顔は青ざめた。マーサの口ぶりからこの国の人間は『カルディアの聖女』に心酔している。教会など洗脳集団だ。もしも、バレればアリアの意思は関係なく妃にされてしまう。


(とりあえず、明日から対策を練りましょう)


その晩、アリアが悪夢に魘された。



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