A:勝負します
お読みいただいている皆様、ありがとうございます
楽しんでいただいているのか不安です
よろしくお願いいたします
おはようございます。
異世界に来て二日目の朝を迎えました。なかなか清々しい目覚めです。
正座状態で足の上に大森さんがどこかから持ってきた大きな石を乗せられているので身動き出来ませんが・・・・・・。
天国の扉が開きかけたのに辿り着けなかった絶望を味わった筈なのに、一晩寝たらお腹がすいてきたよ。朝食はまだかな。 正座状態で足の上に大きな石を乗せられているので身動き出来ませんが・・・・・・。
そういえばまだ起きてからおしっこしてないな。やっぱり朝起きたらまずおしっこだよね。正座状態で足の上に大きな石を乗せられているので身動き出来ませんが・・・・・・。
・・・・・・。
すみません。誰か助けてください。全く身動きが出来ないのです。まさか大森さんが正座状態で足の上に大きな石を乗せたまま放置するなんて酷すぎます。これは完全無欠の拷問ですよね。まぁ、『スキン』の魔法のおかげで痛くは無いのですが動けないのです。どうしたら良いんだろう。
コンコン
「赤蝮様、朝食の準備が整いました」
「・・・・・・」
遠くから声が聞こえるね。きっとメイドさんだね。どうしよう。助けて欲しいけど、正座状態で足の上に大きな石を乗せられている姿を見せるのはちょっと気がひけるね。
何か昨日の朝も似たような感じだったよね。デジャビュ?
「赤蝮様 入ります。よろしいですか」
あまりよろしくはないです。できればそっとしといて欲しいところですがそうなると誰も助けに来てくれなくて粗相をしてしまうかもしれません。異世界に来て二日目で 粗相をしてはこれからのハーレム計画に支障が出てしまうかもしれません。変な勘違いをされない事を祈るしかないですね。
「赤蝮様 失れ・・・・・・い・・・・・・」
「・・・・・・」
ドアを開けたメイドさんは僕を見つめて驚愕の顔で固まってしまったね。この表情は昨日も見た気がするな。
異世界に来て二日目なのに、このハードプレイを見たら誰でも固まるよね。うん。よくわかるよ。だから僕のこともそっとしておいてほしいな。
それなのに、あぁ、それなのに。筋肉ムキムキメイドさんは驚いた表情から段々と蔑みの表情へと変わっていった。この表情も昨日見た気がするね。
正座で足の上に大きな石を乗せられている状態の僕を見てきっと変な事を想像したんだよね。でも違うんですよ。趣味や性癖でこんな事をしている訳ではないんですよ。だからそんな気持ちの悪い虫けらや汚物を見るような目で僕を見ないでください。二日連続で。
「赤蝮様 朝食の準備が整いました。」
「・・・・・・」
「・・・・・・石をどけてもよろしいでしょうか」
僕は出来るだけ表情を変えないように頑張りながら小さく頷いてみた。でも本当は泣きそうなんだよ。筋肉ムキムキで巨大で怖そうだけど金髪の長い髪がパーマ当たっているみたいにふわっとしてて、それがとても似合っている結構美人な人にこんな醜態を晒しているなんて純情な男の子の僕のハートはブレイクしてしまっているよ。しかも二日連続でだよ。×二だよ。もちろん表面的には何かおかしな事でもありました?これが僕の寝かたですが?的な堂々とした表情を作っときました。二日連続で。
はぁぁ。素直に助けてって言えない僕って人間が小さいよね。極小だよね。
明日こそはちゃんとしたいな。
石をどけてもらって自由を手に入れた僕はトイレを済まして着替えをして朝食に向かう事にしたよ。二日連続で。
「おぉ。優。異世界来て二日目で早くも部屋に女連れ込んだんだってな。手ぇ早ぇなぁ。おい」
神くん。とても嬉しそうなところ申し訳ないけど、それはとっても大変な誤解だよ。連れ込んで無いよ。入ってきたんだよ。
しかし食堂に入ってすぐに、からかってくるのはよく無いよ。やっぱり最初はおはようの挨拶が必要だよね。そしてもう、みんなそろってるんだね。あっ、もう朝食、食べてるんだね。
で、この重要機密を漏らしたのは大森さんだね。大森さんを見てみると・・・・・・、怒ってるね。まだ完全に怒ってるね。横向いてツーンってしてるね。
「英雄、色を好むって本当だね。でも、優。あんまり女の子、泣かせちゃダメだよ」
まさか佐々宮くんから女の子の事で注意を受ける日が来るなんて。佐々宮くんは女の子泣かせる事は無いかもしれないけど・・・・・・。何か理不尽な感じだよ。後、何気に英雄にしないでね。きっと痛い目を見るからね。もちろん僕がだよ。その時はちゃんと助けてね。よろしくね。
「ゆ、優くん。ふ、不潔ですぅ。は、は、は、破廉恥ですぅ。高校生なのに女の人を連れ込むなんてぇ。む、む、胸が好きなんですよねぇ。なら、わ、わ、私は、お、大きいと思うんですぅ。知らない人を誘いより、わ、わ、わ、私をさ、さ、さ、誘うべきですよね、ね、ねぇ。
わ、私を毒牙にかける前の練習したんですよね、ね、ねぇ。そうでうよね、ね、ねぇ」
椿原さん。噛みすぎで何言ってるかよくわからないです。取り敢えず、落ち着いてください。あと、聞き取れた部分で私を毒牙にかけるとか言ってませんでした?毒牙にかけるなんて悪者のする事だと思いますが・・・・・・。うん。神様が許すなら、かけてみたいな。椿原さんを毒牙に。へへへ。
しかし、名前は忘れちゃったけど、昨日の貴族の娘さん、また来てくれないかな。肌も真っ白で、胸も大きくて、綺麗だったよな。待ってるよ。僕のハーレムは二四時間三六五日、会員募集中です。
「「「「本当に優 (たん)(くん)は最低だな(だよ)」」」」
うん。みんな仲良いね。羨ましいよ。何処かで隠れてセリフの練習とかしてるんじゃ無いのかな。次は僕も混ぜてね。
「すみません。ちょっと良いですかですわ」
来た〜〜。王女様。いつも僕が困ってる時に助けてくれるダルマ型王女、だるまえもん。今日も朝から助けてくれるんですね。ありがとうございます。
「なぜ、赤蝮様は、皆様から『ゆう』様と呼ばれているのですかですわ」
王女様、それは偽名だからですよ。赤蝮一郎座衛門ってありえませんから。
「あぁん。そりゃ、赤蝮一郎座衛門って巫山戯た名前が長すぎて、面倒くさいから略して優って呼んでんだよ」
神くん。ねぇ、神くん。短い返答なのに、ツッコミ所が多すぎるよ。しかも雑でいい加減だね。色々どういう事かな。
王女様も話題を変えるならもうちょっと僕に関係無い話題にしてください。お願いします。
「それに勇者の勇にもかけてるんですよ。ニコッ」
佐々宮くん。かなり無理矢理で大迷惑な事を継ぎ足さないでね。
「そうなんですねですわ。さすが青山様。素晴らしいセンスですわ。是非、私にも名前をつけていただきたいですわ」
うん。ダルマ王女様。朝からのぼせてますね。ご苦労様です。
まぁ、そんなみんなはほっといて、朝ご飯を食べよう。早く食べないと、昨日みたいに途中でかたずけられちゃうからね。
「皆様お揃いになられましたので、食事中ではございますが、本日の魔物討伐の説明をシグマよりさせていただきますわ」
おっ、イケメンなのに何となく三枚目な第一騎士団長さんですね。名前は覚えていませんが、顔は何となく覚えてますよ。
「では、ご説明させていただきます。本日の魔物討伐は王都の西方にある草原で行います。王都近辺にはあまり魔物は居ませんので、コケッコーを使って二時間程移動します」
「「「「コケッコー?」」」」
「コケッコーは大型の鳥です。性格が温和で、人に懐きやすいので、移動用の乗騎として使われています」
「鳥って事は飛ぶの?空、飛んでいくの?」
「いえ、桃谷様。コケッコーは走力と跳躍力に優れていますが、空は飛べません。飛べない鳥です」
「「「「???」」」」
それって鶏?ペンギン?ダチョウ?チョコ◯?
みんな、似たような想像をしたのか困惑気味だね。まぁ、見てみないとわからないけど、全く乗れる気がしないよね。馬すら乗った事が無いのに、鳥なんて無理だよね。やっぱり今日は欠席でお願いしたいな。
「西の草原に出現する魔物はランクGのゴブリン、ビックフロッグ。ランクFのグラスウルフ。そしてごく稀にランクE の一角突撃バッタが出ます。グラスウルフは動きが早く、攻撃を当てるのに苦労するでしょう。一角突撃バッタは大型のバッタで突進力が凄まじく多少の防具では角による攻撃で貫かれてしまいますが、角を折れば絶命する特性があります。また、ゴブリンやグラスウルフは群れで行動する事が多い魔物です。敵が多数の場合は敵のランクが一つ上がると考えます。ランクGのゴブリンが群れでいたら、ランクFの魔物に相当するとして対処します。」
「うわぁ。やっぱりゴブリンは最弱なんですねぇ。定番ですぅ」
「初戦から狼とかも出てくるんですか。楽しみでもありますが、怖くもありますね。ニコッ」
「青山様でしたらグラスウルフどころか、ドラゴンでも大丈夫ですわ」
「おいおい、狼よりバッタの方が強いのかよ。どんなバッタだ」
いや、ちょっと待って。
もしかしてこれはチャンスかもしれない。
魔物討伐と言えば、魔物に襲われてる可愛い女の子を助けて、ラブラブイチャイチャな関係になれる、テンプレイベントが発生するんじゃないかな。
あれ、どうしよう。やる気が出てきたかも。
きっとこの討伐イベントが僕の輝かしい未来への第一歩になるんじゃないかな。
「皆様は、たった一日の特訓で、この世界の人間では成しえないほどの驚異的なスピードで強くなられました。ランクで言えばFを超えてEに近づきつつあると思えます。下位のランクの魔物でしたら一対一で何とか戦えるでしょう。しかし同ランクの魔物なら五人組のパーティーと同等の強さがあります」
「という事は、ゴブリンやビッグフロッグなら単独でも戦えるけど、グラスウルフは無理ってことですね。ニコッ」
「そんな事ありませんわ。青山様は無敵の勇者様ですわ」
「天才美少女魔法使いの私なら余裕ですぅ。逆らう魔物も、逆らわない魔物も殲滅ですぅ」
「何事も気合いだろう。やってみりゃ、何とか何じゃねぇの」
そう、無理じゃない。大丈夫。
僕には防御魔法の『シェル』があるから守ってあげる事は出来るはず。魔物を倒すのは絶対無理だから、その役は大森さんか椿原さんにお願いしよう。佐々宮くんはダメだよ。何もしなくても惚れられちゃうのに、魔物を倒しちゃったら完全無欠にフォーリンラブしちゃうよ。僕のハーレムの為に、佐々宮くんには欠席をお願いします。
「えぇ。皆様でしたら何とかなるかもしれません。しかし、皆様には決定的に足りないものがあります。それは経験です。力や能力は獲得してきていますが、実戦は未経験です。今回が初戦です。魔物の動きも能力も体験していません。なので、危険を少しでも減らすため、今回はパーティーでの戦闘を提案します」
「確かにそのとうりですね。僕達はこの世界に来てまだ三日目でしたね。魔物どころか、ゴブリンすら見ていませんね。ニコッ」
「ゴブリンなんて、青山様の高貴な瞳に映る資格はございませんですわ」
「関係ないですぅ。目に映る魔物は私の超絶爆裂魔法で木っ端微塵ですぅ」
「まぁ、最初くらい大人しく戦うのもしゃーねーか」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!」
うん。待たないよ。大森さん。
途中から、発言もしなくなって、何か大人しいからおかしいと思ってたんだ。きっと良くないことを考えてるよね。やめてください。
「シグマさんの言うことは最もだけど、あえて言わせてもらうね。『第一回猫耳杯魔物討伐ダービー』を開催します!」
あぁ、やっぱりそういう展開に持っていくんですね。そんな無茶なことしないで安全に魔物に襲われてる少女を探しに行こうよ。その方が僕のためになるよ。
「あぁん、なんだそりゃ。勝負するってことか」
「そのとうり!誰が一番魔物を倒せるか勝負だよ」
「うーん。大森さんシグマ氏の言うとうり、僕達は魔物と戦うのは初めてだからね。危険じゃないかな」
「そうだぜ。ゲームじゃないんだからよ。命かかってるってわかってんのか」
「さっき、男子だけで誰が一番魔物を倒せるか勝負するって話してたじゃない。えっ、もしかしてビビってるのかな。喧嘩上等の神くんがビビってるのかな〜」
うわ、なんだろう。このテンプレすぎる煽り方。まさか神くんこんな古典な煽りに乗らないよね。ここは男らしくビシッと断ってくれるよね。
「あぁぁぁん!上等だやってやんよ。かかってこいや!」
おい!びっくりだよ。ねぇ、神くん。君はバカなの、アホなの、脳筋なの。
佐々宮くん助けて。この流れを変えてください。
「椿原さんはどうなの。危ないと思うけど」
「大丈夫ですぅ。襲ってくる魔物も、襲ってこない魔物も全部私の究極殲滅魔法で木っ端微塵ですぅ。私が一番なのは確定ですぅ。」
「あぁん。テメェもか。テメェも俺に喧嘩売ってんだな!上等だ」
あぁ、椿原さん、君は清楚で恥ずかしがり屋の癒し系巨乳美少女だったよね。なのにどうしてそんなに好戦的なんですか。異世界に来てキャラが変わりすぎです。痛い系バトル巨乳にキャラ変したのですか。これでは椿原さんの豊穣なお胸を視姦したり妄想したりするのが命懸けになってしまいます。
「じゃあ、最下位の罰ゲームは一日猫耳語尾にゃんで」
「「「ネコミミゴビニャン?」」」
「そう。頭に猫耳つけて、喋る時語尾にニャンってつけるの」
「ちょっと待てぇぇ!そりゃぁ、男と女でダメージが違いすぎんだろ!」
「えぇ、ビビってるのかな。負けなきゃいいんじゃないのかな。なんなら女子はうさ耳語尾ピョンにする?」
「上等だ。じゃぁ、女はゴリラ顔真似語尾ウッホだ!」
「「ゴリラは嫌ぁぁぁぁ!」」
「あぁん、何だ。ビビってんのか。負けなきゃいいんだろ」
「いいわよ。殺ってやるわよ」
「私の大魔法に敗北はありえないですぅ」
「じゃぁ、勝負するってことでいいかな」
「「「「絶対勝つ!」」」」
白熱してる所申し訳ないけど 大丈夫だよ。最下位は攻撃魔法もなくて闘気も使えない、討伐数0予定の僕で確定だからね。
罰ゲームの語尾にゃんはどうせ喋らないから問題ないし、猫耳も神くんや佐々宮くんと違って存在感無いから僕が付けてても誰も気付かないんじゃ無いかな。
うん、問題無いね。じゃあ僕は魔物に襲われてる少女を助ける時以外は後ろの方で防御魔法『シェル』の中に引きこもってるよ。
みんな頑張ってね。