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実力と見誤り




「か、会長?何を……」

「これによって宝井智会計の生徒会における全権限は一時凍結。一週間後生徒会長の権限において招集される生徒総会において正式に決定することになります。この一週間を準備期間とします。異議がある場合は生徒総会において発言してください。

 宝井智会計の罷免理由は、昨年度、一部部活動に対して生徒会長の許可なく予備費より予算の追加を行った越権行為です。」


そこまで流れるように発言すると、周りの状況を確認するように見渡す。

そして、僕の方をチラッと見ると、また口を開く。


「尚、生徒会則より権限が凍結している役員が招集した会議での決定も同時に凍結されますので、『美しい言葉を探そう部』の廃止決定は一時、もしくは無期限凍結となります。」

「っ!!?」


今、何て言った?

廃止の決定が凍結?つまり、部が存続するってこと……


何故か素直に喜べない自分がいた。








会議が終わっても、僕は先輩のところに行く気が起きなくて、屋上でぼんやりしていた。

ただ、悔しかった。

結局のところ僕は宝井にも、会長にも勝てなくて。その癖に会長のことを『敵じゃない』なんて、実力を見誤った。

僕は、馬鹿だ。


「古都さんのところに行かなくてもいいの?」

「……会長。」


振り返らなくても声でわかる。


「なんですか?僕に用事ですか?」

「荒れてるね。まあ、仕方ないか。勝てると思ってたら全部ばれてて、侮ってた相手に救われたんだからね。」

「会長は、何処までわかってたんですか?」

「君に話を持ち掛けた段階で、二通りのパターンを思いついてたかな?

 まず一つ目は、僕が渡した各部長たちの弱みを使うこと。こうなれば、僕は何もしなかった。」

「あれだけの材料で脅迫に応じるとは思えません。」

「いや、応じたさ。少なくとも、僕はそう確信してる。」

「そうですか。」

「で、二つ目のパターンは、君が僕の情報を信用しないで自分の力で脅迫材料を探すパターン。この場合だったらまず君は僕の情報を探る。だから僕はあらかじめ対策を立てておいて、情報が出回らないようにしておいた。で、僕が尾行に話しかければ君はきっと侮って尾行をやめると思ったから、君が僕の調査を諦めたタイミングで、行動に出ようと計画していた。っとまあこれくらいかな?」

「やっぱりそこまで読まれてましたか……」

「仕方ないよ。まだ高校一年生なんだし。」

「会長は一年生の頃僕みたいだったんですか?」


僕がそう尋ねると、先輩は笑って僕の方を見た。


「いや。一年生の頃の僕は君と違ったよ。」

「そうですか。やっぱり天才は違いますね。」

「僕が異常なだけだよ。」

「……僕は、馬鹿です。」

「そうだね。君は馬鹿だ。」

「勝手に相手を侮って、その癖簡単にあしらわれて、侮ってた相手に助けられて。ほんっと、馬鹿です。」


この一件で、得をしたのは会長だけだ。

そしてきっと、『美しい言葉を探そう部』が残ったのは会長にとっておまけみたいなもんだろう。


「いや、それに関しては仕方ないよ。僕が馬鹿だって言ってるのはそこじゃない。」

「わかってますよ。どうせ負けて拗ねて、反省もしないのが馬鹿だって言ってるんでしょう?」

「ちがうよ。まだ君は大人じゃない。負けを認められないのも仕方ないよ。」

「じゃあ、僕の何が馬鹿だって言うんですか?」


会長に八つ当たりしても仕方ないのに、喧嘩を売るような口調になってしまう。

そんな自分すら嫌いになる。


「今僕とのんきに話してるから、馬鹿って言ってるんだよ。」

「意味が分からないです。」

「そっか。じゃあわかりやすく言ってあげる。どうなったか不安な女の子一人放っていじけてる場合じゃないでしょ?」

「え?」

「何で好きな女の子を放っていじけてるの?何でそんなことができるの?意味が解らない。だから僕は『一年生の頃の僕は君と違った』って言ったんだ。」


思ってもいなかった言葉は、容赦なく僕の心に入り込んでくる。


「好きな女の子不安にさせたままで自分勝手とか、最低だね。もう諦めた方がいいんじゃない?どうせそんな君の事なんか好きになってくれないだろうしさ。」

「っ!そんなこと!やってみないと」

「いや、本当は君が一番わかってたんじゃないのかな?だから、必死だった。なのに、今は何のために必死だったのかすら忘れてる。」

「そんなわけっ!!」

「あるよね?そんなわけないんだったら、どうして今僕に反論してるの?そんな暇ないよね?」


なにも、言い返せない。

ただ、悔しいのに、何も言い返せない。

悔し涙だけが目から溢れる。

だけど、ここから逃げ出すことなんかできなくて。

どうしたらいいのかも、わからなかった。


「まあ、君が古都さんのこと好きじゃないなら行かなくてもいいんじゃない?」

「っ!!!」


その一言に何かが弾けて。

僕はその場所から逃げるように、屋上から逃げ出した。





まあ、零君にもプライドはありますからね。

古都の事を考えられないときもあるでしょう。

恋に悩む少年ですし。

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「絵が好きな君と絵を描かない僕」
面白いよ!(たぶん)

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