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天然タラシのせいでクールダウンする羽目になった……



「そう言えば先輩って、普通に会話するときと、僕に質問するとき、語尾の感じが違いますよね。」

「ああ、実はそれは癖みたいなものでな。何となくそうなってしまうんだよ。」


こればっかりは自分でもよく理由がわからないのだ。

まあ、あまり気にはしていないが。


「そうですか。まあ、それも含めて先輩は美しい人ですし、十分魅力的でかわいいと思うので、何の心配もいらないと思いますけどね。」


急に放り込まれた爆弾に、ボクは脳の処理能力をフルに使う羽目になる。

結果、フリーズした。

フリーズした直後に再起動した瞬間、ボクは自身の顔が真っ赤になるのを感じて、思わず両手で顔を覆う。


「キミは、また、そんなことをっ!!」

「え?なんか今変なこと言いました?」


零君は何事もないようにそう言って、こくんと首を傾げる。


「言った!確実に言った!う、美しいとか、か、か、かわいいとか、簡単に言う者じゃないぞ!!」

「そんな心配はしなくてもいいですよ。僕がこんなことを言う女性は、先輩ぐらいですから。」

「っ!!!!!この天然タラシっ!!!!」


もう耐えられない!!

ボクは一気に椅子から立ち上がると、赤くなった顔を見せないように、零君の顔を見てしまわないように注意しながら、自分でもありえないと思うほどの速度で廊下へと出る。


顔が熱い。

心臓が煩い。

胸が騒ぐ。

心が――


「はぁ、はぁ…………あぁ、恥ずかしくて逃げてきちゃったな……ボクらしくない。何やってんだろ……」


あの一言だけでこんなにも動揺して。

一人で馬鹿みたいに騒いで。


「ああもう!!あいつは!!」


ボクはそう言うと、蛇口を捻ってそれを顔にかける。

ああ、ダメだ。全然冷えてくれない。

まだ体中が熱いままだ。


ボクは視界の端にあった、ビニールに包まれたままのバケツをビニールから出すと、そこに水を溜める。

そして、躊躇なく頭から被る。


……もう一回。


……もう一回。



結局、三回水を被ったところで、頭が冷えた。


ボクは髪から滴る水滴を気にもせず、部室へと向かう。

思ったよりも距離はなく、何て言って部室に入るかすら、頭の中でまとまらない。

だからといって突っ立っている訳にもいかないので、色々諦めて部室の戸を開ける。


「あ、先ぱ……」


そこで、彼は言葉を止める。

いや、全ての動きが止まり、その視線はボクに釘付けになっていると言った方が正しい。


「先輩?」

「頭、冷やしてきた。」


再起動した零君が、どうしたのかという風にそう尋ねてきたので、とりあえずこうなった経緯を手短に答える。


「いや、頭どころか体までびしょびしょに……というか、何でそこまで濡れるんですか?」


そう言いながら、鞄から出したタオルをボクの方に投げてくる。


「ん。ありがとう。実はな、頭を冷やそうと思ってバケツの水を頭からかぶったんだ。」

「はぁ!?何してるんですか!?」


そこに含まれるのは、驚愕と心配。

ああ、そうか。バケツって結構汚れてるもんな。


「何の問題もない。新品のバケツを使ったから清潔だ。」

「そういうことじゃないですよ!」


どうやら、彼が心配していたのはそこでは無い様だ。

じゃあ、一体どこを心配してくれたのだろう……


「ああもう!僕は部屋を出るのでジャージにでも着替えておいてください!」


何故か少し怒ったように零君がそう言った瞬間、ボクはある一つの事実にたどり着いた。

それは、なぜ今の瞬間まで思いつかなかったのかというほど大事で、初歩的な問題。

ボクは教室を出ようとする零君の服を掴んで引き留める。


「なんですか?」


何て言おう……正直、自分がここまで馬鹿だと思っていなかった。

でも、言うしかない。


「実は……今日、ジャージないんだ……」

「はぁ……阿呆なんですね。」


案の定、零君に呆れたような声を出させてしまう事態になった。


「今回の件に関しては否定できないのがつらいところだ。」

「もういいです。はい。そのままだと風邪をひくので、僕のジャージを貸します。どうせもう今週は体育がないので。」

「本当にいいの?」


いくらなんでも、そこまでしてもらうのは悪い。

ただでさえタオルを貸してもらっているのに、これ以上は悪い。


「先輩に風邪ひかれた方が困りますしね。」


零君はそう言うと、鞄の中に手を入れて、綺麗にたたんであるジャージと、もう一枚のタオルを取り出す。

……タオルを二枚も入れてるとか、用意が良いな……


「はい。じゃあ机の上にジャージとタオルを置いておきましたから。廊下で待ってますので着替え終わったら呼んでください。」

「ああ。ありがとう。感謝するよ。このお礼はいつか……」

「気持ちだけで十分です。」


零君はそう言うと、ボクに背を向けるように歩いていき、教室から出る。


一人になった教室。


……濡れたままじゃ寒い。


ボクはジャージを貸してもらうことを少し申し訳なく思いながらも、ボタンを上から順に外していく。




あれ?もしかして、もう一つの連載でできていないイチャイチャを、この作品でやってる?

というか、制服濡らしたら乾かすのが大変そうだということに今思い至りました。

明日、彼女は学校に行けるのだろうか……

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「絵が好きな君と絵を描かない僕」
面白いよ!(たぶん)

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