方法/提案と『策略』
数分後。結局僕は会長の話を聞くために連れられた生徒会室に来ていた。
「じゃあ、改めて自己紹介を。生徒会長の深星夜空です。」
「一年、琴木零です。」
「じゃあ、ネタ晴らしするね。とはいっても簡単なことで、君の名札を見ただけなんだよ。」
思った以上に単純だった答えに、肩の力が抜けるのを感じる。
「で、僕から君への話っていうのは、『美しい言葉を探そう部』についてなんだ。」
「……どういうことですか?」
「簡潔に言うと、このままだと廃部になる。」
「……本当ですか?」
にわかには信じられない。
だって部活動の存続の条件は満たしているから。
「うん。今日の昼休みに、生徒会のメンバーからその為の会議を開く要請があってね。『部員が少なく、活動内容も曖昧だから、部活動として成り立っていない』ってね。廃部の条件って生徒会の会則に書いてあるけど、覚えてる?」
「部活動の代表生徒と生徒会のメンバーが参加する部活動会議において、過半数を超える賛成があった場合。でしたか?」
「正解。で、これは恐らく可決される。廃部になった部の部費は他の部活に回るわけだからね。」
「……何故それを僕に?どうしようもないじゃないですか。」
僕がそう訊くと、会長はくすっと笑い、面白そうにこちらを見る。
一体なにを考えているのかはわからないが、明らかに何かを狙っている。
「『策略の王子』って呼ばれてたらしいね。」
「っ!!?なぜそれを!?」
「味方につける為のには必要だったからね。調べたんだよ。」
「味方につける?」
会長に対しての警戒心を最大レベルまで引き上げる。
当然だ。どこから知られたのかわからないが、中学時代のことを知られているのだから。
「そう。実はその提案を出してきた生徒会のメンバーっていうのが、僕の嫌いなやつでね。辞めさせたいんだよ。で、そのために情報を集めて作戦を考えてきたから、協力してほしいんだよ。」
「何故僕なんですか?古都先輩のほうが適任かと思いますが。」
「色々理由はあるんだけどね。一番は、君が僕に似ていたからかな?」
「似ている?」
「そう。特に……」
そう言うと会長は面白そうな笑みを浮かべる。
「一つ上の先輩を好きになるところとかね。」
「え?」
「あ、自覚がないのか。そこまで僕とそっくりなのか……」
そこまで言うと会長はくすっと笑う。
しかし、それは僕の頭に入ってくることはない。
自分は先輩が好きなのだろうか。
だから朝からおかしくなってしまったのだろうか。
でも、あってからまだ数日なのに、そう簡単に恋に落ちるモノなのだろうか。
「後の事は妹経由で伝えるから、今日の話はこれで終わりにしようか。時間使っちゃってごめんね。」
会長はそう言うと、近づいてきて、肩をポンポンっと叩いてくる。
「気が付いたんなら、誤解を解いたらいいんじゃないかな?」
その言葉に僕ははっとすると同時に、背筋が寒くなる。
言ってることは納得できる。だけど、なぜ先輩が誤解していると思ったのか。
この人はどこまで見抜いているんだろう。
「会長は、今お付き合いされている方はいるんですか?」
「……いるって言ったら?」
「僕はどうすればいいと思いますか?」
そう訊くと、会長は唇に手を当てて考え込む動作をする。
「僕も恋愛事は得意じゃないんだけど、まずは自分の心がどうしたいのかを自分に問いかけてみて。理想に近づくためには、合理性だけじゃなくて勘に身を任せるのも大事だと思うよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「ん。応援してるよ。」
そう言う会長に「失礼します」と言って、生徒会室を出る。
自分はどうしたいか。
どうすればいいか。
それは分かり切っている。
「先輩を見つけないと。」
昨日は更新できませんでした。
これからは二日に一回。最悪三日に一回とかのペースでの更新になると思います。
ですが、最低限の更新はしようと思っているので、引き続き読んでいただければありがたいです。




