異世界はそんなに甘くない
「さぁ、着きましたよ!ケントさん」
俺たち一行は、インチキパクリ不思議な道具で、極悶島B(仮)へと到着した。のだが・・・
「おい、カレン、ここはどこだ?」
「ここですか?島の北の森、通称『ノル・ウエノの森』ですよ」
またまた怒られそうなノーセンスのネーミングには一切触れないでおこう・・・
「なんで?森?」
「大きな声じゃ言えませんが、話数の関係で【特別に】魔王城の近くにテレポートしました。こんな都合のいい設定は今回だけですからね」
いやいやいや・・・
だったら、魔王城【直】でいいだろ!
このまま乗り込めば話早いだろ!
「もう、ケントさんたら、メンバー強力になって超強気になっちゃいましたか?」
いや、こんな便利なドアがあったら、フツーそうするだろ!
「そんな少年誌の連載打ち切り最終回じゃあるまいし、イッキに話終わらせてどうするんですか?」
「いいから『どこだってドア』を貸せ!」
えーと・・・今までの流れだと、おそらくドアノブを握って行きたい場所を念じて・・・ドアを開ければ・・・
「ん?」
風呂場だった・・・
湯煙の向こうに、湯舟に浸かる少女らしき影・・・
俺はゆっくりと、そして、そっとドアを閉めた。
「お約束ですね、あれはきっと、しず・・・」
「違ーう!もっと大きいリズ姫くらいの女の子だ!」
「リズ姫くらいというとBカップくらいですか?」
「胸の大きさじゃなくて、年齢だ!」
てか、なんで風呂場?
俺は魔王城に行きたいんだ!
よし、もう一度・・・
「とかなんとか言って、また美少女の入浴シーンを念じてますね、ケントさん」
ええい!気が散る!黙ってろアホ天使!
俺は、再びドアを開けた。
今度は数センチだけこっそりと開けて中を覗いた。
オッパイが八個・・・
全裸のナイスバディなお姉さんが四人・・・
物凄く怖い顔でこちらを睨んでいた。
俺は、また、そっとドアを閉めた。
「ちょっと!ケントさん、私はまだ見てないんですけど!」
目の保養というか、とても良いものを見せてもらったのだが・・・
なにか、もう開けてはいけない気がする・・・
「何を躊躇されているのですか、ご主人様」
ジェームス・・・
「我々には魔王討伐という大義があるのです、その過程で美女が入浴中の風呂場に誤って入ってしまったとしても、それは仕方のない事ではありませんか!」
こいつ、俺の後ろからこっそり覗いていやがったな・・・
諜報員のスキル恐るべし!
「美女が入浴中の風呂場だと!今すぐ開けぬか!勇者殿!」
カイコさん、興奮しすぎ!
確かに、さっきは良い眺めだったが、なんかこう、悪い予感がするというか・・・
「よし!ここはジェームスに任せよう!」
「ありがとうございます!ご主人様。諜報員生活二十五年のわたくしが綿密なる調査をしてまいります!」
ノリノリのエロ諜報員は、勢いよくドアを開けた。
バウバウ!ガルルル!!
『どこだってドア』からおびただしい数の獣が飛び出した。
「ギャー!!!」
鼻の下を伸ばした諜報員に襲いかかる獣たちの群れ。
なんだ?犬?狼?顔が二つあるんですけど!
「ケルベロス!だと!」
剣で獣を振り払いながらカイコさんが叫んだ。
「ケルベロスってなんだよ!」
「地獄の番犬、魔王城に棲む魔物の一種ですよ~、ケントさん」
クソ!このエセ天使め、自分だけ助かろうとまた天使の羽で飛んでやがる!
文字通り高みの見物かよ!最低なビッチだな・・・
「もう、汚いワンちゃん達は嫌いよ!」
アベオが光の剣で魔物たちを浄化。
「氷の刃!」
カイコさんも必殺技で応戦・・・しているのに、開けっ放しのドアからケルベロスが際限なく入って来る!!
「早くドア閉めた方が良いですよ~」
まるで他人事だな!カレン!
パンツ覗くぞ!この位置から透視すっぞ!コノヤロー!
「透視機能は只今メンテ中よ、ウフッ」
また、メンテかよ!この鎧はFG〇か!
そんな鎧に守られ俺は無傷ではあるのだが
まとわりつく魔物たちに阻まれ一歩も動けない・・・
なんか手はないのか?
【おすすめ機能の紹介】
ん?なんだ?ウインドウに表示が・・・
【おすすめ その1=ロケットパンツ】
そんなもん飛ばしてどうする!
【おすすめ その2=ロケットチン〇】
飛ばしちゃダメ!
【おすすめ その3=フルーツポンチ】
ロケットどこ行った?
【おすすめ その4=ポンチおさむ】
誰だよ!それ!
もう!全部いらねー!
「情けないのぉ、勇者ともあろう者がこんな雑魚共に苦戦しておるとは・・・」
リリスちゃん!来ちゃダメだ!こっちは危険だ!
「危険?ケルベロスが?なんの冗談じゃ・・・」
そう言って超メジャー悪魔が一睨みすると魔物たちは震えあがり、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
元いたドアの向こうに逃げた奴などは、ご丁寧にドアまで閉める逃げっぷりだった。
「ふう、助かった・・・あ!ジェームスは?」
俺は倒れている諜報員に駆け寄ったのだが・・・
なにこれ?モザイクかかってますけど・・・
「あまりに悲惨で壮絶な光景なので、グロすぎて描写できないんでしょう・・・」
こら、カレン、木の枝でツンツンするんじゃない!
それはウンコじゃなくて人間だぞ・・・
「死んじゃった?のか?」
「いや、まだ息はあるようだが、何故、こんな嬉しそうな顔をしている?」
たしかに、カイコさんの言う通りジェームスの顔が笑って見える・・・
なんで???
「おい、カレン、お前の回復魔法で助けてやってくれ」
「う~ん、ここまでボロボロだと、ちょっと無理っすね」
軽いな・・・
「アベオ、聖騎士のお前ならどうにかできないのか?」
「あー、ムリムリムリ!アタシ、そういうグロいのムリ~!」
やはり、軽いノリ・・・
「もう、これ以上苦しませずに逝かしてやろう」
カイコさんはそう言ってジェームスの眉間に剣を刺した!
ええっ!ちょっと、カイコさん!
まだ、生きてたのに!
「ケントさん、ここは弱肉強食の異世界です。甘ったるい事言ってないで、私たちも正統派ダークファンタジーの道を歩みましょう」
チャララ~チャララ~ 昭38・9・28 諜報員ジェームス死亡・・・
なにこれ?ダークファンタジーじゃなくて伝説の任侠映画じゃん!
【次話予告】
伝説の刑事ドラマは若手刑事の殉職シーンが数字を稼いだ。
仁義なき異世界モノでポイントとブクマを稼ぎたければ
今が旬のダークファンタジーに限る。
次回「木を植えちゃった男」
あれ?ちょっと前までは、『異世界+グルメ』じゃなかったっけ?




