壁を越えて
「はいどーも!」パチパチパチ!
「いやぁ!遂に始まったな!ワールドカップ!」
「わーるどかっぷ?ケントさん、なんですか?それ?」
「ええっ!カレン、W杯知らないのかよ!」
「知りませんよ、ちなみに私はFカップですけど」
「え、エフカップ!!!ごくり・・・」
「Wカップってことは・・・A、B、C、D・・・どんだけデカいんですか!」
「そっちのカップちゃうわ~!」
「なんか関西弁になってますよ、ケントさん」
「サッカーだよ!サッカーのW杯!」
「W?W・・・ああ!ネットスラングの大会ですね!WWW杯」
「違わ~い!」
「また、関西弁・・・www・・・わかった!お笑いの祭典ですね!『(笑)杯』」
「違~う!Wカップだ!わ・あ・る・ど・か・つ・ぷ!」
「だから、私はGカップですけど、なにか?」
「さっきより大きくなってるし!」
「人は常に成長してゆくものですよ、ケントさん」
「お前天使だし、全く成長してねーし!」
「もう、いくら私が可愛いからって、『マジ天使だし!』とか叫ばれても~(照)杯」
「(照)杯じゃねーよ!サッカー!サッカーの大会なの」
「さっかー?なんですか?それ?」
「知らんのか?球を蹴るスポーツだよ」
「ええ!タマを蹴るんですか!痛くないんですか?ケントさん」
「そっちのタマじゃねー!もっと大きいボールだよ!」
「このくらいの大きさですか?」
「そうそう、カレンの胸ぐらいの大きさのボールをみんなで揉んで・・・って違うわ!」
「いや~ん!ケントさんのエッチ!あ、私の胸はHカップですけど」
「また、デカくなったんか~い!」
「あの、ケントさん?」
「なんだよ!」
「この件、Wまで続けるつもりですか?私の胸もそろそろ限界なんですが・・・」
「続けねーよ!」
「良かった!じゃあ、とっとと終わらせて、帰って『ウイイレ』やろうっと」
「そのゲーム・・・」
「ええ、私大好きなんですよ『ウイイレ』とか『サカつく』が」
「だから、そのゲームは・・・」
「ええ、『フットボール』のゲームですけど、なにか?」
「カレン、『サカつく』だよな!『フトつく』じゃないですよね!」
「もう、『太いので突く』なんて下ネタ・・・そもそもケントさんのは、太くないじゃないですか、見栄っ張りさんですね~」
「ああ、つくづく愛の足りない天使だな・・・お前」
「そう、私の胸はIカップ・・・って、そんなデカくなるか~い!」
「もういいわ!」
「さすがケントさん、つぎの『Jカップ』を秋にとっておくなんて」
「いや、俺未成年だし、競馬とかしらねーし・・・」
「それにしても、さっきの試合凄かったですね」
「さっきの試合?」
「スペインvsポルトガルですよ!Cロナがハットトリックした・・・」
「だから、それがW杯!」
「ケントさん、いつまでもグダグダやってると次の試合始まっちゃいますよ!」
「だな、とっとと帰ってW杯見よ!」
皆様に於かれましては、『なんだよ!2(仮)』第51部をお楽しみくださいませ。
『あ~ん!騎士様!そこ!いい!そこぉぉぉ!』
俺もカレンも偽マダムも、息を呑んで暫し沈黙・・・
そして、また壁の向こうから・・・
『ああ!そこも!すごい!騎士様ぁ!』
「・・・」
「・・・」
「・・・」
今度は三人で息を潜めて壁に耳を近付ける・・・
『ああ・・・もう・・・私・・・』
『君の滑らかな白い肌が・・・素晴らしい・・・もう、こんなに・・・』
壁に近づくと、小さな声も幽かに聞こえてきた・・・
無言のままカレンがオッチャンにアイコンタクト。
すると、オッチャンはコップを三個持ってきた。
なんだよ!その連携プレーは!
そう言いながらも、俺はカレンやオッチャンと同じように壁へ押し当てたコップに耳を付ける。
『ああ、そこ・・・それ・・・』
そこがどこなのか?
それがどれなのか?
意味は分らんが、お姉さんのエロすぎる声がヤバい・・・
『はぁ、はぁ、おお・・・』
カイコさんと思しき声というか、息遣いがエロい!ヤバい・・・
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
カレンの息まで荒くなった。
意図した訳ではないのだが、俺の顔の前にカレンの胸があって・・・
ヤバい!
いろんな意味でヤバすぎる!
思春期男子には刺激が強すぎる!!
「もう!我慢できん!」
そう叫んだのは、俺ではなくカレンだ。
「ケントさん!私、ちょっと行ってきましゅぅ!」
よだれを腕で拭いながら、カレンは部屋を飛び出した。
「って、おい!」
隣の部屋へ突入するのか?
三人で百合バトルロイヤルの展開なのか?
俺も混ざりてぇ!
もう、声だけじゃ童貞の想像力には限界がある!
「せめて、覗きてぇ!」
あまりの切望に、ついつい想いが声に出てしまった・・・
「偉い!よう言うた!兄ちゃん、やっぱ男は自分の欲望に正直やないとアカン!」
「あ、いや、俺はその・・・」
「オッチャンに任せな、兄ちゃんの望み叶えたる!」
「叶えるって・・・どうやって?」
「この水晶や!これで隣の部屋の様子を映し出せるんや」
マジで!
でも、それってノゾキだよな・・・犯罪じゃね?・・・
「兄ちゃん、ここは異世界や。そないな法律も条令もあらしまへんがな」
「そ、そっかぁ、ならギリセーフかな?」
男としての欲望の前に、人としての常識を棚上げする俺だった。
「その水晶玉は、どんな場所でも覗け・・・じゃなかった、見る事ができるのか?」
「そんな都合のいい魔導具があるかいな、ほれ、そのベッド脇のお茶目な人形があるやろ、あれが各部屋に置いてあってな、あの人形の目からこの水晶に映し出すっちゅうカラクリや」
ふ~ん、あれ?もしかして、俺たちが泊まった時、覗かれてた?
やっぱこれ、犯罪じゃ・・・
「ほれ、映ったで・・・」
「ごくり・・・」
横たわったセクハラ被害者のお姉さんが、うっとりとした顔で映し出される・・・
その隣では、カレンがうつ伏せで瞳をウルウルさせて・・・
二人の美女に覆いかぶさるようにして息を荒げるカイコさん・・・
「こ、これは!」
「ほ、ほう、この騎士の姉ちゃんは、かなりのテクニシャンやなぁ」
『ああ!そこ!そこがすごくいい!』
水晶玉から音は聞こえて来ないが、また、薄い壁越しに女子の歓喜の声が・・・
『カイコさん、すごい!女の子のツボ、わかりすぎ!』
カレンも加わって声を出す・・・
『はぁ、はぁ、私も体は女だからな・・・どうだ?気持ち良いか?』
壁越しの声が、水晶に映し出されたドヤ顔のカイコさんとシンクロする・・・
『気持ちいい!』
『めっちゃ良いです!カイコさん!』
『そうだろ!私は自信があるんだ、【マッサージ】には』
「・・・」
やっぱりな・・・
そんなベタなオチだと思ったよ・・・
中々、一線を、壁を越えられない作者だった・・・
次話予告
人には転機がある。
何かをきっかけに、人生が変わる。
それは、見知らぬ他人がもたらすものかもしれない。
ふと手に取った文庫本、偶然アクセスした小説サイト、お気に入りの球団・・・
何が人生に影響を与え、どのような未来が待っているのか?
次回「1Q85阪神優勝」
まぁ、少なくとも、今ご覧いただいているwebページではない事は確かだ。




