ブラジャーの父
「やっぱりな・・・」
俺は、以前訪れたことのある宿屋の前に立っていた。
「名前からして、ここだとは思っていたが・・・」
――ブラジャーの母 マダム・ラ・ブーフォンの店――
看板が変わっていた・・・
ブラジャーの母ってなんだよ!
やはり、きっと、あの薄毛オールバックのオッサンが絡んでるに違いない・・・
「ですよねー、あんなモブキャラが登場人物紹介されるのは、おかしいと思っていたんですよ」(カレン談)
「しかし、すごい人だかりだな。少年」
で、カレンの他に、なぜか、カイコさんも同行しているのだが・・・
心は漢・体は乙女、いやいや、ナイスバディの美人騎士も、やはりブラジャーに興味があるのか?
何カップなのかな?カイコさん・・・
今日は、ベ〇ばらのオス〇ルみたいな服装だが・・・うん、大きさと形の良さは隠せません!
「看板に『ブラジャーの母』とあるが・・・なんだ?ブラジャーとは?知っているか?少年」
知らないで、ついて来たのかよ!
でも、試着するのでしたら、お手伝いしますよ、カイコさん!
「ああ、ブラジャーというのはですね、女性が着ける下着の事ですよ、カイコさん」
「下着?ふんどしみたいなものか?」
カイコさんのふんどし姿・・・それは、それで、アリかも・・・
「いえいえ、胸に当てる下着です。えっと、胸の部分だけのコルセットみたいな・・・」
「カレン殿、そなたもしておるのか?そのブラジャーとやらを」
「いいえ、着けてませんよ」
「そうか、着けているのなら、見せて貰おうと思ったのだが・・・」
うん、俺も見たい。
「ブラジャーって、胸をキレイに見せる矯正下着ですから、元々キレイな胸の私やカイコさんには必要ありませんよ」
「はぁ~?」「あん?」「今、なんか言った?」
カレンの一言に、周囲の女性たちがオラつき顔で一斉にこちらを見た・・・
「あれ?なんですか?この空気・・・ケントさん、この人たちのシリでも触っちゃいました?」
触るか!
お前の無神経な一言に・・・
いや、なんだ?この殺気立った雰囲気は・・・
みんな、こめかみや頭にプンプンマークが浮き上がっている!
「建物の中には、いないわ」
「クソっ、逃げたわね、あのエロオヤジ!」
ん?なんだ?宿屋から何人か出て来たぞ・・・
「もう、頭来たから火付けちゃいましょ!」
「そうね、こんな所、燃やしちゃいましょう!」
なんだ、なんだ?物騒だな・・・
「待て待て、お嬢さん方、『火を付ける』などと聞き捨てならんな・・・何がどうしたと言うのだ?」
「あ、これは騎士様。どうもこうもないんです!」
「うむ・・・」
「マダム・ラ・ブーフォンは男だったんですよ!」
「マダム?誰だ?」
ブラジャーすら知らずにここにいるカイコさんはポカーンな様子だが、賢明な読者の皆さまは、もうお気付きだろう・・・
俺も大体の事は察した・・・
「マダム・ラ・ブーフォンというのは、胸にぴったりの『ブラジャ』を作ってくれると評判のブラジャ・スタイリストだったんです」
「ほう・・・」
「独自の採寸方法で作られたジャストフィットの『ブラジャ』は、口コミで広がって、王都で大人気でした」
「・・・で、その『マダム』とやらが男だったのが問題なのか?」
カイコさん・・・この人、相当鈍いな・・・
あ、被害者友の会のお姉さんたち、状況説明ありがとうございます。
「問題なのは、採寸方法なんです!正確な値を知りたいとかなんとか云って、裸にさせられて・・・」
「メジャーで測るだけじゃ飽き足らず、『形や柔らかさも把握する必要がある』なんて言って、胸を揉むんです!」
「女同士だからとか、どうしても必要な行為だとか言って・・・」
「十代の少女から八十過ぎのお婆ちゃんまで、千人以上の女性の胸を揉んだんです!」
なにぃ!あのオールバックハゲめ!
てか、守備範囲広すぎ・・・
「な、なんだとぉ!・・・」
さすがのカイコさんも状況を把握したようで・・・
「千人以上の女性の胸を・・・しかも、ナマで・・・」
お怒りはごもっともですが、カイコさん・・・ナマって・・・
「なんて、羨ましい!」
おいおい・・・
「ケントさんって、サイテーですね・・・」(カレン談)
「いやいや!『うらやましい』って言ったのカイコさんだし!」
あれっ?被害者連絡会の女子たちが、冷ややかな顔で俺を見てる・・・
だから、俺は、羨ましくなんか・・・
『ない』と言い切れない悲しい思春期・・・
次話予告
酔った振りしながら キッスのチャンスを~
往年の名曲も取り扱いが難しくなる昨今の性犯罪事情・・・
セクハラ、わいせつ、R15・・・
デリケートな問題は、ひとまず棚上げして
そう、これは異世界のお話、コメディは笑い飛ばすのが大人の法則です!
次回「私も!」
いやいやいや、タイトルも特に他意はありません!




