とある執事の禁書目録
「ふむ、悪魔リリスの波動のせいで、城の一部が吹き飛んだのじゃな?」
「はい、左様でございます」
「城中の魔導具が不具合を起こしたのも、波動のせいなのじゃな?」
「はい」
「それと、王都のあちこちで魔法が無効化されてしまったのも・・・」
「はい、悪魔の波動の影響でございます」
王城=ツン・DE・レラの人目に付かない小さな部屋で、アルカンタ国王=オッペンハイマー十三世は諜報員ジェームスの報告書を読んでいた。
「ケガ人が一人も出なかったのは、不幸中の幸い・・・いや、奇跡じゃな」
「はい、仰る通りでございます」
「しかし、ジェームス、そなたが居ながら、何故じゃ・・・
けしからん、実に、けしからんぞぃ・・・」
「はい、申し訳ございません」
「・・・魔術師のカレンちゃんが裸で倒れておったなら、すぐに儂を呼ばぬか!」
「はは!ジェームス一生の不覚。【不徳の致すところ】でございます」
と言いながら、七三分けの諜報員は、王に【忖度】しながら【粛々と】話し始めた。
「え~、カレン様は現在、魔女っ娘という職業でございまして・・・」
「じゃから、なんじゃ?」
「魔女の呪いは健在でございます。よって、カレン様にエッチぃ事をなさいますと・・・」
「見るだけなら大丈夫じゃろ。いや、指でちょっと突くくらいなら・・・ひょっとすれば、指一本位なら・・・」
「王様、それ以上の表現は、呪いどころか、小説的にアウトでございます・・・」
「ふむ、まぁ、良い・・・で、リリスは教会が一時的に保護しておると?」
「はい、あくまで『一時的』に、でございます」
「大丈夫なのじゃな?また、彼奴が教会の保護下になるような事は・・・」
「ございません」
「確かか?」
「はい、その為のセバスチャンです」
七三分けの男は、白い手袋で眼鏡を押さえ、自信たっぷりの表情で静かに笑った。
「リリスは計画の要じゃ。二度と教会の手に渡してはならぬ」
「はい、補完計画は、王室究極の目的・・・」
「全ては、極秘裏に進めねばならぬのじゃ、勿論、勇者とて例外ではない」
「承知しております。勇者殿は、禁書の存在すら存じておられません」
「本当に大丈夫じゃろな?」
「はい、その為のセバスチャンです」
「で、今回の件、事の発端は『ブラジャ』とあるが?」
「はい、勇者殿が『ブラジャ』について、カレン様にお聞きしたい事があると・・・」
「いや、そもそも、その『ブラジャ』とは、なんぞや?」
「これは失礼致しました。王様に於かれましては、巷の流行をご存知ありませんでしたか?」
「ちまた?流行じゃと?」
「はい、『ブラジャ』とは、近頃、王都のご婦人の間で流行しております【乳当て】でございます」
「乳当てとな?」
「はい、こちらが、その『ブラジャ』でございます」
「ほう、これは、見事な谷間が・・・じゃが、何故、男のそなたがそれを着けておる?つーか、オッサンの胸の谷間とか見たくないしー!」
「これは、失礼致しました・・・ぽっ。」
「って、何を照れておる?」
「王様と私の間柄といえども、この姿を見られるのは・・・ぽっ。」
「誤解を招くようなゲンドウをするんじゃない!もう、【ぽっ。】禁止じゃ」
「しかし、なんじゃのう、乳の大きさや形というのは、女子によって違うじゃろうに・・・」
「さすがは、我が王!お目の付け所が違いますな。そのエロ目線にジェームスは感服致しました」
「何気に、ディすられてるように思えるのじゃが・・・」
「ディするなんて、とんでもございません!敬意の念を表しております」
「そうかのぉ・・・」
「いや、ホント、マジ、パねえ!アレク、超リスペクト!でございます」
言葉の浮き具合が、パねえ!ジジイとオッサンの会話だった・・・
「王様、『ブラジャ』には、【カップ】というものがございまして・・・」
「かっぷ?じゃと?」
「はい、A、B、C、D・・・と、胸の大きさにあわせて、『ブラジャ』の形状を変化させるのです」
「ほう、そうか、勇者殿はカレンちゃんが何カップか聞きに来たのじゃな」
「はい、その模様かと・・・ですが、私の調査によりますと・・・」
七三分けの男は、手帳をペラペラとめくると、鋭い眼光でニヤリと笑った。
「・・・カレン様は、『着けない派』だそうです」
「うむ、それはそれで・・・良いのぉ」
「ですが、【カップ】に換算いたしますと、『F』若しくは『G』。形状は『アダムスキーお椀型』であると・・・」
「A、B、C、D・・・」
指折り数えるスケベ王。(※1)
「・・・F、G!おおおっ!まるで、大きさが手に取るように分かるのぉ!」
「その為の【カップ】でございます」
白手で眼鏡を押さえる七三。
「おお、しかも、『アダムスキーお椀型』じゃと・・・カエルになっても良いから、一度揉んでみたいのぉ」
「正に、男の夢でございますなぁ」(※2)
「じゃが、やはり、形の違いは【ブラジャ問題】に於いては、解決しておかねばならぬ難題じゃのぉ・・・」
「はい、母船型、葉巻型、ドーナツ型など形状は多岐にわたります。ですが、その分類を得意とする権威のご婦人がおりまして・・・」
「乳の分類の権威?じゃと?」
「はい、此度の『ブラジャ』ブームの火付け役の一人でもあるのですが・・・」
七三眼鏡は、手帳をペラペラして、鋭い眼光で言った。
「マダム・ラ・ブーフォンというご婦人です」
【注釈】
(※1)異世界のこの国にアルファベットがあるかどうかは、ここではスルーして欲しい。(作者談)
(※2)あくまで、登場人物の意見であり、全ての男性がそのように考えているとは限りません。(作者談)
次話予告
王も執事も英雄も、この世の男は馬鹿ばっか(※3)
胸派も尻派もくびれ派も、頭ん中はアレばっか
バカだエロだと罵られ、それでも折れない探究心
体は大人、知能は子供、性の知識は中学生
次回「ブラジャーの父」
メアリー?ポリー?それともカレス?犯人は誰だ?(※4)
男にとって女性は永遠のミステリーです
【注釈】
(※3)あくまで本作での世界観です。
(※4)この意味不明の文が気になる方は、『カレス・クロスビー』で検索してみてください。




