ブラジャー事変(後編The Second Raid)
セバスチャンことジェームスの計らいで、リズ姫と婆やはリリスちゃんの服選びのため部屋を出て行った。
「よし、これで変な気を遣わずに話ができるな・・・おい、カレン、いい加減そこから降りて来いよ」
「いやいや、セバスチャンさんまでいなくなって、私の危険度は更にアップしてますけど・・・」
「なんで?貞操の危機とか言うなよ、俺がお前になんかするとでも思うか?」
「いいえ、ヘタレ童貞なんて怖れてませんよ・・・」
「じゃあ、何が危険なんだ?」
「そ、そいつですよ・・・どうして、そいつが、まだいるんですか!」
カレンが指差したのは、俺の足に寄り添って隠れるように魔女っ娘の様子を伺うリリスちゃんだった。
「だって、城中にお前の魔法トラップが仕掛けられているんだろ?」
リリスちゃんは、城の入口からこの部屋まで着く間に、何度もカレンの結界魔法に阻まれたらしい。
「仕方ないじゃないですか、か弱く可憐な天使がいるんですから」
「その場所が、全て判明しない限り、リリスちゃんを部屋からは出せん」
「そんな事、全部覚えている訳がないじゃないですか」
いやいや、覚えとけよ。
「ケントさんだって、夜のオカズにした女子の名前全部言えます?それと同じですよ」
「お兄ちゃん・・・リリス、あのお姉ちゃんこわい・・・」
「キー!この期に及んで、まだ幼女キャラを前面に・・・恐ろしい娘・・・」
まだ、その顔するか・・・
「幼女キャラって、カレン、リリスちゃんはホントに十歳の少女なんだ」
「はぁ?何言っちゃってんですか?ケントさん。そいつは超メジャーな悪魔じゃないですか!」
「いや、だから、それは封印されているんだ。今のリリスちゃんは、心も体も十歳の女の子なんだよ」
「でも、この間みたいに、いつ本性が顕れて覚醒するかわかんないじゃないですか」
「大丈夫だ。暗闇に体が覆われなければ、その片鱗も出てこないってシスター・ジルが言ってた」
「暗闇?ですか?」
「ああ、基本、日中は大丈夫だそうだ。日が落ちたら眠ってしまうように暗示もかけているらしいから、夜に悪魔の本性が顕れる事もないってさ」
「でも、この間の宿屋を燃やしちゃった事とか、サキュバス退治しちゃった事とか、根に持ってるんじゃ・・・」
「彼女にあの時の記憶は無いよ・・・悪魔リリスが封印された後の事しかリリスちゃんは知らないんだ・・・」
「なんか、悲しそうですね、ケントさん・・・」
ああ、悲しいさ・・・
あの一緒に過ごした日々・・・それを憶えてないなんて・・・
楽しかった時間、幸せな日々・・・
キレイなお姉さんたちに囲まれていた日々・・・
リリスちゃんの写実的な画力で、エムプさんたちの入浴シーンを再現する事ができないなんて!
「それじゃあ、その子からすれば、私とは初対面ってことですか?」
「まぁ、そういう事になるのかな」
「なるほど、こんなに美しい女性を見た事がないから、私を怖がっているんですね」
いや、お前の態度に怖がってんだろ・・・
「こんにちは、リリスちゃん。美少女魔女っ娘のカレンです」
カレンが近づくと、リリスちゃんは半分出していた顔を俺の陰に隠した。
「あら?照れちゃったのかしら?そんなに私ってキレイ過ぎる?」
「お兄ちゃん、リリス、こわい・・・」
「くっ・・・恐ろしい娘・・・」
「ああ、このお姉ちゃんの無駄にデカいオッパイが怖いんだねぇ」
「はぁ?ケントさん!なんですかそれ!」
「ほら、子供って意味も無く大きいモノとか怖がるじゃん」
「無駄とか、意味ないとか、失礼ですね」
「男が揉むことのできない乳など、いくらデカくても無駄以外の何物でもない」
「うわぁ・・・女性の胸を何だと思ってるんですか?やっぱ、ケントさんてサイテーなゲス野郎ですね・・・」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんは、仲良しなの?」
リリスちゃんが、そっと顔を半分出して聞いた。
「はぁ?」
カレンが、あの蔑み顔で答えた・・・
「ひゃっ・・・」
リリスちゃんは、ビビってまた顔を隠してしまった・・・
「おい、小さな女の子ビビらしてどうする?」
「ああ、スミマセン、あまりにもくだらない事聞くので、つい・・・ん?」
なんだ?カレン、なにか良からぬ事でも思いついたような表情だが・・・
「リリスが私にビビっている・・・うん、これは使えるかもしれませんね、超メジャー悪魔を調教して手なずければ・・・フフフ・・・」
なんの悪だくみか知らんが、そういうのはフツー声に出して言わないんじゃね?
「リリスちゃん、こわがらなくてもいいのよ」
カレンが満面の笑みでリリスちゃんの顔を覗き込む。
実に胡散臭い・・・ナントカ商法の勧誘みたいだ・・・
「リリスちゃんに、優しくて美人のお姉さんの秘密を教えてあげるね」
「ひみつ?・・・」
「そう、みんなには内緒だよ、私、スーパー美女のカレンお姉さんは、実は天使なの」
「天使だと!」
リリスちゃんが、低い声でカレンを睨みつけた。
「ひぃっ!」
ビビって後ずさりする魔女っ娘・・・
リリスちゃんの本能が『天使』というワードに反応してしまったのだろう。
「カレン、とりあえず、その手の言葉はNGってことで・・・」
「そ、そうですね・・・」
「あーウソウソ、超美しいカレンちゃんは、魔女っ娘ですよぉ~」
「まじょっこ?」
リリスちゃんの声が幼女に戻った。
「そう、魔法使いのスペシャルヴァージョンみたいなカンジ」
「まほうつかい?だから、そんな大きな帽子をかぶっているの?」
「そう、ステキな帽子でしょ。リリスちゃんも被ってみる?」
「・・・いいの?」
カレンの無駄にデカい帽子に興味あり気に、リリスちゃんがカレンに近づいた。
「はい、どうぞ」
カレンが帽子を手渡すと、嬉しそうにそれを受け取るリリスちゃん。
たどたどしく大きな黒い帽子を被ったんだが・・・
リリスちゃんの小さい頭は、すっぽりと顔まで入ってしまい、幅広のつばが上半身を覆った。
「ははは、大丈夫かい?リリスちゃん」
微笑ましく声を掛けた俺に、リリスちゃんは聞き覚えのある声で答えた。
「勇者か・・・また、妾を呼び覚ますつもりか?」
次話予告
魔王じゃなくって悪魔が降臨しちゃった?
てか、本当にブラジャーどこ行った?
さて・・・なんの事件だったっけか?
謎は謎を呼び、次回急展開必至?
次回「ブラジャー事変Q」
もはや、後編ですらないのかよ!




