ブラジャー事変(中編)
「カレンは、いるかぁ!」
俺は、部屋のドアを蹴破らんばかりに乱暴に開けて叫んだ。
「あら・・・」
そこに立っていたのは、ブラジャーを着けたリズ姫だった。
「あ・・・」
「これは勇者様、丁度良い所に・・・どうでしょう?巷で人気の『ブラジャ』というものを着てみたのですが、似合いますでしょうか?」
「は・・・はぁ・・・」
「あれ?ケントさん!どうしたんです?リアクション薄くないですか?」
「・・・カレン、俺にどうリアクションしろと?」
「美少女のブラ姿ですよ!あなたが毎晩オカズにしているリズ姫ですよ!」
「してねーわ!」
「もっと『わー!』とか『うひょー!』とか、その場でXXX始めだすとかしないんですか?」
「するか!・・・てか、なんで姫まで服の上にブラ着けてんだよ・・・」
「ですよねー・・・やっぱ、いくらケントさんでも、これじゃ欲情しませんか・・・」
「はい?」
人差し指をあごに当て、首を傾げる姫。
こんなベタな仕草も美少女がすると違和感なく良い!
「ですから、姫、それは下着なんです」
「はぁ・・・」
カレンの説明にもキョトンなリズ姫・・・
「服の下、素肌に直に着る肌着なんです。服の上に着けるものじゃありません」
「と申されましても・・・王都のご婦人たちも服の上に着けられているようですが・・・」
そうなんだ、俺も城に着くまで何人もそんなオカシナ女性を目撃してきた。
いや、そもそも、その原因がカレンにあると履んで、ここへ乗り込んで来たわけなのだが・・・
「いいですか、姫、これが正しいブラの着け方です」
カレンの指さす先に、見事な谷間を造ったブラジャーに覆われた胸が!
「いかがでしょう?姫」
それは、たわわな胸を両手で持ち上げるポーズをした
リズ姫の婆やだった・・・
オエーっ!(ゲロゲロゲロ)
「婆やのこの垂れきった胸も、三つ折りくらいにしてこの『ブラジャ』に収納すれば、ご覧の通り、五十年前殿方を魅了した巨乳が復活ですじゃ」
「ああ、なるほど!ですが、リズの胸は婆やほど垂れておりませんし、そんなに大きくもありませんが・・・」
「大丈夫です、姫。ブラジャーは着け方次第で、貧乳でも谷間作り放題ですから」
「谷間?ですか・・・」
「ええ、男の人は女性の胸の谷間に弱いんです。ほら、ケントさん、巨乳の谷間ですよぉ~」
カレンの声に、思わず胸の谷間を再び見てしまった俺・・・
婆やだったの忘れてた・・・
オエーっ!(ゲロゲロゲロ)
「あら、本当ですのね。屈強な伝説の勇者様が随分と弱ってらっしゃいますわ・・・」
「いや、弱いってそう言う意味じゃないんですけど・・・」
「あら、いやだ、こんなところに殿方がいたなんて!こんな姿を見られて恥ずかしい!ぽっ。・・・」
ぽっ。じゃねー!
なに頬を赤らめてんだこのババア!
「こんなズロース一枚の姿を見られたからには、責任を取ってもらわないと・・・ぽっ。」
ズロースってなんだよ!
てか、責任なんて取んねーよ!
「仕方ありません、姫、婆やは勇者殿に嫁ぎます。ぽっ。」
だから、ぽっ。ってゆーのヤメい!
それから、勝手に嫁ぐな!
「おお、ご主人様、ここにおられましたか、お城へ入る時にリリス様が・・・おおっ!なんと美しい胸の谷間でしょう!」
「あら、また殿方が・・・しかも、なんて素敵なシルバーグレイ・・・ぽっ。」
婆やとセバスチャン、運命の出逢いであった・・・
って、見つめ合ってんじゃねー!
ジェームス!胸に騙されるな!それ、リズ姫の婆やだぞ!
「ご主人様、ここでは、その名前は・・・私の正体がバレてしまいます。どうぞ、セバスチャンとお呼びください」
「いやいや、正体もクソも・・・みんな分かってんだろ・・・」
「あら、そちらが勇者様の執事さんなのですね。初めまして、リズと申します」
あれ?姫とジェームスは面識あったよな?
「そういえば、私も初対面ですね。魔女っ娘のカレンです、セバスチャンさん」
ニコッと微笑むカレン・・・おいおい!お前まで・・・なんのコントだ?
「セバスチャン様と仰るのですか・・・良きお名前だこと・・・ぽっ。」
婆やとセバスチャン、運命の出逢いであった・・・
その件も、ぽっ。も、もういいわ!
てか、婆や、いい加減服着ろ!
なんだこりゃ?
みんな七三給仕ジェームスの事忘れてんのか?
「やはり、私の完璧な変装を見破れるのは勇者殿だけですな」
俺に耳打ちするジェームス・・・
完璧な変装って・・・
「あ、それよりも、ご主人様、リリス様が!」
「ん?リリスちゃんがどうした?」
「はぁ、はぁ・・・お兄ちゃん・・・」
部屋の入口に、全身ボロボロの疲弊したリリスちゃんが立っていた・・・
次話予告
魔王降臨編と謳っておきながら、魔王が消えた第一話。
中編のくせに、話が全く進まない第二話・・・
果たして、第三話で事件は解決するのか?
じっちゃんの名に懸けて、犯人は判明するのだろうか?
ばっちゃんとセバスチャンの恋の行方は?
次回「ブラジャー事変(後編)」
え?じっちゃんも、ばっちゃんも、ブラもどうでもいいから早く魔王出せ?
いえいえ、この件は大事な伏線でして・・・(作者談 ※1)
注釈:※1 あくまでも作者本人の主張で、今後の物語に必ずしも反映されるものではありません。ご了承ください。




