え?しあわせオーラ?モテ期フラグ?
ここは、異世界。
人と亜人と魔物の世界・・・
そんな世界の片隅で、一軒の居酒屋が賑わいを見せる。
王都の外れにある宿屋を兼ねたこの店【私のお部屋は空室よん】は、今日も大繁盛だ。
「あの、バーテン君・・・いや、ここの『若旦那殿』か?」
女勇者が俺に話しかける。
「わ、わ、『若旦那』?」
うん、確かに、姉妹の誰かと結婚して【マスオさん】化すれば、そう呼ばれるかも。
いや、スドさんと年の差婚も・・・そうなるとエムプさんたちに『パパ』って呼ばれて・・・
はっ!待てよ・・・この世界は、一夫一婦制なんだろうか?
一夫多妻OKなら・・・チクショウ!夢が広がるぜぇ!
「だからその・・・若旦那、いろいろとサービスしてくれるのは有難いが、
目の前でニヤニヤとよだれを垂らされていると、食事し難いのだが・・・」
「ああ、お構いなく。気にせずに料理を楽しんでください」
いいなぁ~女勇者。美人だし、エロいし。
隣のエルフちゃんとは、あれかな?百合的な関係なのかな?
たまには、俺も一緒に『川』の字で寝てくれないかなぁ・・・
『川』が乱れて、『河』とか『皮』みたいな形に・・・あいててて!
スクプちゃんがまた俺の耳を引っ張った。
「もう、ケントったら、美人のお客さんが来ると、すぐこれなんだから!」
「ああ、済まない、お嬢さん。私たちが『若旦那』を引き留めてしまったようだ」
「若旦那?ふ~ん、ケントは誰の旦那さんなのかなぁ?」
「あは、えっと・・・それは・・・」
「もう、そういう時は即答で『スクプ』の名前を言わなきゃでしょ!」
痛い!スクプちゃん、耳をねじらないで・・・
でも、いいなぁ~、ラブコメっぽくて・・・いいなぁ~
「ははは、仲が良くて羨ましいな」
「ホントね」
そう言いながら寄り添う百合カップル。
ほろ酔い加減のエルフちゃんが、女勇者に顔を近付けて・・・
何かを耳打ち?な、なんかエロい!
ああ、美女二人のひそひそ話。イイ!
ああ、客も従業員も美人だらけで最高!
嗚呼!異世界居酒屋最高!
「ああ、そうだ、この店には『伝説の勇者』の鎧があると聞いたのだが」
「ええ、あれがそうですけど」
スクプちゃんの指さす先、店の隅、トイレの横に俺の鎧が飾ってある。
丸太ん棒に変身ベルトを巻いて、剣を抜き差しして出来上がったこの店自慢のオブジェだ。
どうやら、この鎧は主を選ばないらしい・・・
「近くに行って見ても良いか?」
女勇者が興奮気味に立ち上がる。
「どうぞ!」
俺の言葉に、勇者は女子らしく小走りで鎧に駆け寄る。
「すごい!・・・触っても・・・良いか?」
美女が興奮した顔でそのセリフ。【ブックマーク】だ!(※1)
「ええ、モチロン」
なんなら中身の方もどうぞ!
鎧の中身、この俺の『聖剣』もスゴイ!ですよ。
「なんだと?これは『若旦那』の鎧だと?」
「ええ、まぁ・・・」
「と、という事は、あなたが『伝説の勇者』なのか?」
「ああ、一応・・・」
「復活しただけで魔王の魔力を弱め、騎士団たちの魔王討伐を助けたという、あの英雄なのか!」
え?
そんな話になってんの?
まぁ、悪い話じゃないし、乗っかとこ・・・
「そうです」
「す、すごい!握手して貰っても良いか?いや、して頂けないだろうか?」
いいですとも。
お望みなら、それ以上の事だって・・・
うん。なんかいいぞ!
完全に流れがキテる!
英雄伝説?いいじゃない。
あれ?スター?アイドル?俺、この世界でブレイクしちゃう?
キタかな?モテ期!
一夫多妻のハーレムワールド!
異世界最高!異世界万歳!
「へぇ、アンタが『伝説の勇者』かい・・・」
幻聴ではなく、俺の背後で男の声がした。
振り向くとそこには、金髪モヒカンの棘々アーマー野郎が立っていた。
まるで、世紀末英雄伝説の雑魚キャラじゃねえか!
「なぁ、俺と戦ってくんねぇかな?」
はい?
あ、雑魚キャラとか言ってスミマセン・・・
なんか、強そう・・・てか、目がアブナイ!
舌出して笑ってる?完璧イッちゃってますよね、アナタ!
なんかヤバいオーラ出てますよ!
戦う?俺と?いやいやいや・・・無理!
だって俺は魔王との戦いが終わったから
この世界で美人と結婚して・・・
はっ!
死亡フラグ?
えっ?俺はもう死んでいる?
ゆあ~しょっく!!!
※1 主人公のセリフ『【ブックマーク】だ!』は、【ブックマーク】を強要するものでも、【ブックマーク】を意図したステマでもありません。
次話予告
今、時代は、『異世界+グルメ』
その流れに、ちゃっかり便乗かと思えば
いきなりのバトル展開?
どうなる?ケント!
どうする?主人公!
遂に、チートな奥義が炸裂か?
次回「いくぜ!俺の必殺技!」
あれ?そういえば、今回、幻聴の【伏線】無かったなぁ
入れ忘れ?カレンが怒るぞ・・・え?ネタバレ?
あたたたたたたたた!