フリダシニモドル
俺は、本来の目的を忘れて女神の姿をガン見していた。
本来の目的?
そうだ!小説の軌道修正だ!
「実は、神様、その・・・お願いがありまして・・・」
「うむ、皆まで言うな。わしは全能じゃからのぉ」
あれっ?爺さんの姿に戻った・・・
スミマセン、もう一回女神さまのお姿に戻っていただけませんか?
「おぬしの言いたいことは分かる。何せ、全能じゃからのぉ」
でしたら、是非、女神さまの姿に・・・
「ワシが転生させた勇者じゃ、特別に願いを聞いてやろう」
ですから、それなら、女神さまのお姿を今一度・・・
「では、ゆくぞ・・・ターイム!ショック!」
俺は、更なる眩い光に包まれた。
あ、だからもう一度女神さまを・・・
光が収まり、気が付くと俺は王都の広場の丘に立っていた。
「ああ、セックスしてぇ・・・」
俺の隣で、空虚な眼差しで呟く俺がいた。
な、なんだこれ?
「お、おい!」
俺は、もう一人の俺に声を掛けたが、まったく気づいていない様子だ。
「おいってば!」
奴の肩を掴もうとした手が体をすり抜ける。
なんだ、これっ!
「時間軸の違うケントさんに、ケントさんが干渉できるわけないじゃないですか」
か、カレン!
「な、なんでお前がここに?てか、お前には俺が見えるのか?」
「はい、こうやってケントさんに触れる事もできますよ」
そうやってカレンは俺の肩に手を置いた。
「ケントさんも私にオサワリできますよ」
オサワリって・・・あ、ちょっと試してみようかな・・・
「あ、でも、またカエルになっちゃうかも、だってここはケントさんの認識世界ですから」
「認識世界?」
「ええ、分かりやすく言うと、ケントさん自身がここに存在すると決めた世界です」
・・・よくわからん・・・
「なんてゆうか、VRMMOみたいな・・・ぶっちゃけケントさんの記憶の中ってことですよ」
・・・えっと・・・
「じゃ、じゃあ、この広場に立っている俺は?」
「言わば、投影された過去です」
とうえい?
「まんが祭りとかじゃなくて映し出す方の投影です」
何?その祭り?
「簡単に言っちゃえば、ホログラフィック理論ですよ」
何それ?
「あれ、中学の理科でやりませんでしたか?トホーフトとかカラビヤウ多様体とか」
悪いが、全く言っている意味が解りません・・・
「つまり、今、私たちが見ているのは、三次元のホログラム、立体映像のようなものなんです」
はぁ、立体映像ですか・・・
「だから、ほら、こっちのケントさんには私も触れる事ができないでしょ」
そう言ってカレンは、もう一人の俺の股間に手を突っ込んだ。こらこら・・・
「このケントさんも私を認識できないし・・・」
魔女っ娘コスのカレンはホログラムの俺に向かってスカートをめくり上げた。
「ね、何の反応もないでしょ」
スミマセン、もう一回、こっちに向かってそれやっていただけませんか?
「私が見えてたら・・・『ほ~らオレのジュニアもビンビンだぜ』みたいになってるでしょ」
こらこら、映像とはいえ俺の股間から腕を出すな!
で、つまりは・・・今見ているのは、俺の記憶、という事でいいのか・・・
「まぁ、そうですね、正解ではないですけど・・・めんどくさいから、そういう事にしておきましょう」
なんか、円周率を3.14じゃなくて、3にしちゃったようなノリだな・・・
そうか、この場面は、プロローグの俺か・・・
でも、この記憶をまた一からやり直すってことか?
「面倒なら、早送りすればいいんですよ」
カレンは手に持っていたリモコンを操作した・・・リモコンって・・・
俺の目の前の風景が、凄まじい速さで動いていった。
そして、また、通常速度に・・・
おい、この場面は・・・
「もう、ケントさん、ナニ土下座なんかしてんですか?ウケル~!」
ここは、俺が美人局被害にあった場面じゃないか!
クソ!リモコンよこせ!こんな場面は早送りだ!
普通のテレビのリモコンみたいなものを操作しながら、ふと、俺は考えた。
あのエロいシーンも再生できるんだよな・・・と
「なあ、カレン、これってスロー再生とかできる?」
次話予告
真直ぐ進む道があれば
回り道や寄り道もある
人生において、遠回りも道草も決して無駄ではない。
そんな言い訳を書きながら、本作も三十話を越えてしまったが・・・
次回より、いよいよ『第一章 完結編』に突入だ!
次回「総集変」
本文も意味不明だったが、『第一章 完結編』って何?




