お兄ちゃんは、ロリコンじゃないよぉ
え~、いよいよ本編です。
プロローグは忘れてください。
ここから、です。
笑えます。今度はきっと、笑えるはず・・・
俺の名は、ケント。
日本にいた頃は、榊原健人という名前の、ごくフツーの高校生だった。
それが、ひと月ほど前、気が付くと『この世界』にいた。
『転生』したらしい・・・
「転移じゃなくて『転生』ってことは、やっぱ、一度死んだってことじゃないですかね」
俺に惚れていた女の言葉だ。
魔術師の姿を借りた『天使』らしい。
今は、もう天界とやらに帰って、『この世界』にはいない。
まぁ、そこそこ可愛いかった。
俺に抱かれたがっていたが、俺はそんなに軽くない。
裸で俺に抱きついてきたが、軽くあしらってやったさ。
そう、俺は真の愛に生きる男。
目先のエッチに釣られるような・・・
「なにブツブツ言ってるの?ケントお兄ちゃん・・・
顔がいつも以上にキモイよ。頭の中に虫でも湧いたの?
ただでさえ少ない脳みそを食べられちゃったの?」
辛辣なツッコミを入れるあどけない声・・・
リリスちゃんという可愛い少女だ。
「お兄ちゃんは大丈夫だよぉ。虫も湧いてないしぃ、脳みそもあるよぉ」
「良かった。やっぱり、『変態さん』は強いんだね!『伝説の変態さん』は虫になんか負けないんだね」
「ははは、リリスちゃん、お兄ちゃんは『変態さん』じゃないよぉ。そろそろ、覚えようねぇ」
「うん、わかった。『元変態勇者』のケントお兄ちゃん!」
ああ、可愛い・・・
言っておくが、俺はロリコンではない。
十歳の少女に欲情を催すような変態ではない!
語尾にちっちゃい『ぉ』とか『ぇ』が付くのもキャラチェンジした訳ではなく、
リリスちゃんが可愛いからだ。
もう一度、言っておく、俺はロリコンじゃない。
俺は伝説の勇者だ。
ある日、突然この『異世界』に呼ばれ魔王討伐の命を受けた。
と思ったら、その日のうちにクエスト終了。
いや、俺じゃないです。
魔王倒したのは、『選抜騎士団』の皆さんです。
いえ、学ランに金髪リーゼントの人たちでもないです。
いい加減に、ノーベル文学賞を差し上げたいビッグネームの新作小説とも関係ありません。ラーラーラララ!
で、ミッション・インコンプリートの俺は、『元勇者』という肩書でこの地に暮らす事となった。
俺に残されたものは、伝説の勇者の鎧と聖剣、そして、『変態』という汚名だ。
王都の城で全裸になった事が『変態』と呼ばれるきっかけなのだが・・・
それを街中に広めた不届き者がいる・・・
わずかな持ち金も底を付き、途方に暮れている俺に声を掛けてくれたのが、この美少女。
リリスちゃんだ。
そう、あれは一週間ほど前・・・
――以下、主人公回想――
「お兄ちゃんは伝説の勇者なの?」
「う、うん、まぁそう呼ばれていた事も、あるような・・・」
「じゃぁ、強いんだね」
「いやぁ、どうだろう・・・戦った事無いんだけど・・・」
「強くて、エロくて、頭空っぽの『変態さん』なんだね!」
ちょちょ、ちょっと待て。
ビッチ魔術師の雑言ならわかるが
こんなチビッ子から出る言葉じゃないだろう!
大丈夫か?異世界の教育事情!
「ははは、お兄ちゃんは『変態』じゃないよぉ。誰が言ってたのかなぁ?そんな事ぉ」
「ママ!それとお店のお客さん!」
この子のママなら、おそらくかなりの美人だろう。
だが、今、重要なのはそこじゃない・・・
「なんか、街中のみんながそう言ってるって」
「ま、街中!」
どうなっている?このひと月で俺の身に何があった?
「なんか、お城の人が手帳を読んでたってママが言ってた」
「手帳?」
「髪の毛がこんな人だって」
少女がツインテールの髪を七対三に分けて見せた。
「また、アイツか!あの、クソ給仕!」
「あのね、リリスね、『変態さん』のお兄ちゃんにお願いがあるの・・・」
だから、お兄ちゃんは変態じゃないよぉ。
てか、『変態』への願い事って、なんだ?
リリスちゃんの『お願い』とは、彼女の母親が営んでいる宿屋兼居酒屋の『用心棒』になって欲しいとの事だった。
聞けば、リリスちゃん一家は家族全員女なので、
「ママがね、いっつも心配してるの」だそうだ。
確かに、荒くれ者が闊歩するこの中世風異世界、女手一つで商売するのは大変だろう。
「誰かTUEEEE!男の人がいたらなって・・・」
その『TUEEEE!』は、こちらでは標準語なのか?
何にしても、所持金ゼロの俺にとっては渡りに船だ。
リリスちゃんのママが、俺を雇ってくれるかはわからないが、
どうせ行く当てもないホームレス勇者・・・
行ってみる価値はある。
「やったー!頭空っぽのお兄ちゃん大好き!」
いや、お兄ちゃんの頭は、夢詰め込めるほど空っぽじゃないゼット!
「早く、早く行こ!『ド変態ガエル』のお兄ちゃん!」
あの七三野郎!
あの手帳には、一体何が書いてある!
どこまで俺の悪評を広めてやがるんだ!
至近距離から、分け目にドドンパ!ぶち込んでやる!
リリスちゃんに手を引かれ、俺は宿屋へと向かった。
で、
俺は、今、リリスちゃんの家で、住み込みで働いている。
宿屋兼居酒屋の用心棒バーテンダー・・・まぁ、雑用係だ。
バイト経験もカクテルを作った事も無かったが、そこそこ上手くやっている。
給料は微々たるものだが、三食部屋付きで、俺は大満足だ。
そして、何より・・・
美人ママと美人四姉妹に囲まれた暮らし・・・
オッス!おら、ケント!異世界って、すげぇいいぞ!
「えっと、『お兄ちゃんは、また、ブツブツいいながらヨダレをたらして笑ってた』・・と」
「あれぇ?リリスちゃんはぁ、何を書いているのかなぁ?」
宿屋の末娘、美少女ツインテールが持つ手帳には、こう書かれていた・・・
『リリスの変態観察日記』
次話予告
住めば都と人は言う。
コンビニ、スマホ、電気もガスも何も無い・・・
エッチな雑誌もDVDも、ようつべエロも見れません
トイレは『ぼっとん』、服はコットン100%
こじゃれたTシャツ、おしゃれな服もありゃしない
・・・そんな世界。
ブラジャーのない世界。
いいじゃないか、ノーブラ異世界!
次回「異世界万歳!」
ご期待ください。
あ~、やな予感するわ~、予告ですでに、ドン引だもの~