あくまのはどう
「淋しかったんだね・・・リリスちゃん」
俺は闇の中でリリスちゃんを抱きしめた。
「お兄ちゃん・・・」
だが、その小さな体は闇に呑まれ消えた。
「リリスちゃん!」
俺の声が闇の中に響くと、霧が晴れるように漆黒が薄れてゆく・・・
黒い煙を吸い込むように、巨身の悪魔は闇を吸収する。
そして、さらに巨大化していった。
屋根を突き破り、雄たけびを上げる悪魔。
その声に、俺も、動けなかった三人も吹き飛ばされた。
「あいててて・・・」
「あら、大丈夫?」
俺はイケメン白騎士と重なり合うように倒れていた。
「ああ、でも、今のなんだよ?」
「悪魔の波動よ」
「悪魔の波動?」
「ええ、武器も鎧も、魔法だって吹き飛ばす恐ろしい波動なの」
「そうなのか・・・」
「ほら、だから、あたしもスッポンポン!」
イケメンは裸だった。
思わずヤツから離れる俺・・・
待てよ・・・ってことは・・・
「カレン!それから黒鎧のお姉さん!どこですか!」
辺りを見回す俺。
「もう!こんな時に!なにエロいこと考えているんですか!ケントさん!」
茂みから首だけ出したカレンが言った。
「い、いやぁ、俺はお前らが心配なだけで・・・えへっ」
「めちゃめちゃ、顔がニヤけてますけど!」
「見ろ!遂にリリスが覚醒するぞ!」
茂みから立ち上がる騎士のお姉さん。
うわっ!さっきは兜でよく見えなかったけど、スゲー美人!
しかも、燃えている宿屋の炎に照らされた裸体が・・・
「ありがとうございます!」
ガン見のまま思わず両手を合わせて拝む俺。
キシャァアァァァ!!!
悪魔がまた咆哮と共に波動を響かせる。
「うわっ!」
また、飛ばされそうになりながらも、なんとか踏ん張る俺たち。
どんな偶然か、誰の嫌がらせか知らないが
葉っぱが飛んできて美人騎士の胸と股間に張り付く・・・
あらら・・・
「ん?リリスの動きが・・・」
「止まったみたいね」
二人の騎士は悪魔の動きを気にしていたが
俺は女騎士に張り付いた葉っぱが気になって仕方なかった。
「あれは、きっと蛹動です」
「蛹動?」
「ええ、悪魔リリスは幼女の姿に封じ込まれていたのですから、
完全に覚醒するまで何回も蛹みたいな状態で動けないはずです!」
極めて珍しく、話の進行を助けるカレン・・・
ああ、もうちょっと身を乗り出せば乳が・・・
「こらー!そこのド変態!人が真面目にやってんのに
エロいことばっか考えないでください!」
べ、別にお前の裸なんか・・・
だが、確かにこの状況・・・マジでヤバいかも・・・
「ケントさん!早く伝説の勇者の鎧を着てください!」
いや、アレを着ても、重いだけでまともに動けんぞ!
てか、この状況を俺にどうにかしろと?
「何!伝説の勇者の鎧だと!」
「ああ、さっきの居酒屋に飾ってあったんですけど
もう、燃えちゃったか、どこかに吹き飛んで・・・」
って、あれ!?あそこに立ってる!丸太に装着されたまま立ってる!
「何故、あの鎧が・・・まさか、少年!君は・・・」
「ええ、私が伝説の勇者、ケントです」
「き、君が・・・」
「はい、握手でもハグでも、ご希望ならそれ以上の事でも・・・」
「すっご~い!これで勝機も見えて来たじゃな~い!」
うわっ!男に裸で抱きつかれた!
「少年!すぐにあの鎧を装着するんだ!」
「いや、でも、あれは重いだけで・・・」
「何を言っている!あれは鎧という名の最終兵器だろ!」
「へ?最終兵器?」
それにしても、お姉さんのその葉っぱ、頑固にくっついてますね・・・
次話予告
シリーズ物の映画も三作目辺りから
『最後の』や『集大成』という言葉が、やたら目に付くようになる・・・
「これで終わりか?」と思わせながら
すでに次回作の撮影が始まっているものだ。
本作も第一章が、なかなか終わらないが
決して、【オワルオワル詐欺】ではないという事をご理解いただきたい。
次回「再起動!伝説の鎧」
まぁ、作者の腕足らずってトコですかね・・・




