真夏の夜の夢
「あ~あ、なんか今日は疲れたなぁ~」
夜、風呂上がりの俺は、自分の部屋に向かいながらボヤいていた。
そりゃ、疲れますわ。
朝は朝で、股間をスケッチされたり、ラブコメ的イベント発生したり・・・
昼はあのバカ天使の再登場だし・・・
夜の居酒屋では、ムサい冒険者のオッサンが騒いでいたし・・・
なんでも、仲間が行方不明になったらしい。この店で一緒に飲んだのを最後に姿を消したんだと・・・
まぁ、こんな中世風異世界だ、驚くような話でもないのだろう・・・
俺は部屋のドアを開けると驚いて声を上げそうになった。
エムプさんが俺のベッドに座っていたのだ。
俺は、ドアノブを持ったままもう一度廊下に出て、部屋を間違えていないか確認した。
そんな俺の手を引っ張り、部屋の中へ引き込むエムプさん。
「あ、あの・・・」
言葉を発しようとする俺に抱きつくエムプさん。
「ごめんなさいケントさん。はしたないのは分かっているけど・・・」
俺の心臓が早鐘のごとく鼓動を刻む。
「私、もう我慢できないの!」
な、な、なんだ!こりゃー!来たか!俺バブル!!
「抜け駆けとは、いい度胸だな」
「そ、その声は!」
振り向くと入口に腕を組んでもたれかかるアルプさんがいた。
「あら、バレちゃった・・・ふふ・・・」
俺にまとわりつくように、エムプさんがテヘペロ的に言った。
「でも、あなた男の人はダメじゃなかったの?アルプちゃん」
「フッ、ボクが両刀だって知っているくせに・・・」
りょ、りょ、両刀なんですか!アルプさん!
「それに、伝説の勇者だったら、ボクも味わってみたいさ」
アルプさんが俺の耳をアマガミ・・・
なんだ!なんなんだこの展開!夢か?また夢なのか?
「もう、ケントの初めてはスクプが予約済みなんだからね!」
今度はスクプちゃんが俺の左耳を・・・引っ張らずにペロペロ・・・
そのまま四人で俺のベッドへなだれ込む。
ああ、これは夢に違いない・・・
きっと、また、良い所であのアホ天使が邪魔に・・・
「あらあら、夜のイベントは私が担当じゃなかったかしら?」
アホ天使ではなく、ママだった。
ヤバ、さすがに怒られるのか?この状況・・・
「あなたたち、そいつのを〈吸う〉のなら、いつも通り私がエッチ担当でしょ!」
そう言って、スドさんは着ていたネグリジェを脱ぎ捨てた。
うわっ!すげ~いいスタイル!アラフォーとは思えません!
「ったく、クソエロババアが・・・」
「年考えろ、色ボケババア!」
あれ・・・エムプさんも、スクプちゃんも何?その罵声?
キャラ崩壊してますけど・・・
「仕方ないさ、あの魔導士との契約だ・・・」
アルプさんは俺のシャツのボタンを外してゆく・・・
メイジって何ですか?スドさんまさかの明治生まれ?
美女三人にベッドで囲まれる俺。
そして、全裸で近づいてくる美女・・・
ああ、やっぱエッチな夢は超リアルだ!
「待てぇ~い!」
部屋の入口に新たな人影。
オーバーオールにアニメキャップ、グリグリ眼鏡にアニメ〇トの紙袋・・・
やっぱコイツが邪魔に入った・・・また、カレンだ・・・
「おうおうおうおう!そんなヘタレ童貞チャラ過ぎ小僧を
よってたかって喰い物にしやがって!
このスーパー魔女っ娘カレン様の目の黒いうちは
あ、黙って見過ごすわけには、行かね~ぜぇ!」
カレンは渦巻きメガネを投げ捨てて見得を切った。
だから、お前の目、青いよな・・・
「おい、カレン、お前また俺の夢を邪魔するのかよ・・・」
「ケントさん!これは夢じゃありません!」
「そう、現実よケントさん・・・」
「え、エムプさん・・・」
「そう、リアルなんだからね、ケント」
「スクプちゃん・・・ってことは・・・」
「ああ、マジでボクたちはケントの精気を吸おうとしてるのさ」
「せ、せ、せいきを!ですか!」
「ケントさん!そっちのセイキじゃありません!
ヤツらはアナタの生命力を吸おうとしているんです!」
「な、なんだそりゃ?」
「そいつらは、サキュバスなんです!」
「あ~あ、ばらしちゃった・・・」
「大丈夫、痛いのは最初だけだなんだから・・・」
「ああ、すぐに気持ちよくなるよ・・・」
三姉妹が口々に言いながら、俺の顔や首を舐め回す・・・
「あの・・・」
「なに?ケントさん?」
「どこか吸って欲しい場所でもあるのか?」
「ケントの望みなら、スクプ頑張っちゃう!」
「いや、その・・・」
「サキュバスって・・・何?」
次話予告
プロレスの真の凄さとは
相手が次にどんな技を放つかわかっていて
敢えてそれを受けるところにある。
たとえ、ネタバレしていても書き続ける勇気。
連載作家に求められるのは、そんなレスラー的サービス精神だ!
次回「サキュバスってなんだよ!」
まぁ、第一章のタイトルで、ほぼほぼ皆、気付いていたけどね・・・