表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は王様  作者: 網野雅也
18/31

グルフ・トライスキーの場合 その1

ふとシリアスなの書いてみたくなりました。短く纏めれればと思いますが、どうなるやら。

時間が空いたら、ゆっくり書いていこうと思います。



久しぶり〜


またかる〜く臣下のものども苛めてみるか


誰にする?


グルフ・トライスキー

カウボーイの格好をした美形のおにーさん、魔法と長剣を使い、武術にも精通している。

無法者20代、殺しもする。

20代の美形彼女あり、彼女思い。腕に自信あり、心臓がたまにドキドキする(精神的なもの)。薬常備。

強気、動物には優しい。 多少甘いとこあり。



なにをさせる?


この世のどこかにある天空城にのりこみ、そこにあるエメラルドの王様を盗んでくる。

期限はなし、彼女人質にとってを命令聞かせる。


こんなもんかー、言ってみよう!





「王宮の奴等め……」


 グルフはバーボンを食らいながら、薄暗い石壁が覆う自室で愚痴を零していた。

 四角い窓から見える三日月がグルフを嘲笑うかのように、天空から一際明るい光を放ちグルフを見下ろしていた。


「レソシア……」



〜〜〜


 グルフの最愛の女性レソシア。

 燃えるような赤い髪が肩まで伸びた、快活で美形の女性。

 グルフは彼女を何よりも大事にしていた。町の真ん中で心臓が苦しくなり倒れていたグルフに、優しく慈悲深い表情を向けて、親身に介抱をしてくれた女。

 グルフの容貌はとても近寄り難く、町の者は彼が倒れていても、見てみぬ振りをして通り過ぎていくだけなのに、彼女はグルフに声を掛け、肩を貸し、自宅にまで連れて行ってベッドを貸し与えた。

 

 そんな彼女といつしか、恋に堕ち、同棲生活まで始めた矢先の事件。

 突然、王宮の宮廷魔道師数人が家に踏み入ってきた。

 グルフは最初に幾多の魔法を浴びせられ、地に伏す。

 その間にも連れて行かれる彼女。

 悲鳴にも近い自分を呼ぶ声と彼女の後姿が、最後に目に焼きついていた。

 魔道師達はそんなグルフを魔法で押さえつけながら、彼にこう言った。


「彼女を助けたければ、この世界のどこかにある、天空城に眠るエメラルドの王様、『エンジェルキラー』を奪って王宮にもってこい、そうすれば彼女は返してやろう。しかし王宮に牙を向いたり、その役目を果たさない場合、彼女は死ぬ事になる、よく覚えておくんだな」


 グルフの髪の毛を引っ張り上げ、魔道師は自分の顔の辺りまで持ってきて、一方的に彼にそう告げた。

 彼はそれに唾を吐いて返した。


〜〜〜〜


「むぅ……」


 グルフは低く唸ると、バーボンの瓶を壁に投げつけた。

 粉々に飛び散る破片。

 それに驚いたネズミ達が壁の端に出来た、小さな穴から一斉に逃げていく。

 酔いどれ、ふらふらとした体を椅子から持ち上げると、グラフは立ち上がった。

 棚に置いてあるアーミーバッグに、手榴弾を詰め込み、右肩に皮のベルトで固定された鞘に、地面に無造作に転がっていた長剣を差し込んだ。

 腰に巻かれたベルトにも大きな銃の柄が覗いている。

 薄緑のチョッキの裏にテーブルに置かれていた小ナイフを次々と差していく。

 そこまでの作業を終えたグルフは、バッグを左肩に担ぎ、木の扉を開けて宵闇の中へと消えていく。





 一片の光も差さない荒野を、月明かりだけを頼りに馬で移動するグルフ。

 向かう先はこの辺では大きい方の部類に入る城下街、ソランシア。

 ここでグルフは天空城の情報を集めるつもりだ。

 順調に馬はそちらへ向っているはずだった。

 ――しかし……


「おい、そこのカウボーイの兄ちゃん、止まれ!」


 見ると、5つの黒い影が周りを取り囲んでいた。

 グルフはその影に視線を巡らせると、左右に首を振りながらため息をつく。

 この手の山賊どもには、嫌気がさしていた。

 散々グルフは似たようなのに襲われていて、返り討ちにしてきていた。

 この辺のそういう輩には、既にグルフの強さが伝わっていて、もう襲ってくる奴等はモグリか、流れ者の山賊くらいだ。

 取りあえず、暗がりのせいで、自分の事が見えてないのならと、


「俺の名はグルフ、この名を知るものあらば、一目散に逃げる事だな、今のうちなら追ってまで殺す事はしない」


 グルフが山賊達に大きな声で言い放つと、せせら笑う声とその場で足踏む音、鞘と剣が擦れる音が賑やかに奏でられる。


「グルフだかなんだか知らないが、さっさと置くもの置いて、平謝りするした方が身のためだぜ」


「ふん、やはり流れ者か、なら……死ぬしかないようだな」


 グルフの言葉を聞いた山賊どもが、笑いながらも殺気を漂わせる。

 円状に彼を囲むと、鞘から剣を一斉に抜いた。


「馬鹿な兄ちゃんだ」


 赤い眼帯を右目につけた男が言った。

 月の光に反射して赤く光るルビーが埋め込まれた眼帯を薄っすら捉える。

 しかし、僅かな光しか差さないこの場所で、闇で取り得た情報はそれだけだ。

 後は数人の黒い影と、金属音、男の汗臭い匂いのみ。

 砂を靴の硬い底が擦る音が聞こえてくる。

 次の瞬間――、四方から男達が襲ってきた。


「死ねや〜〜〜!」


 その粗暴な声が間近まで迫る前に、上空高く舞うグルフ。

 宙で体を捻らせ、下を見下ろすと影の配置を掴む。

 そして、チョッキに差されたナイフを重ねるようにして、右手に集めると上空で体を回転させた反動で、下にいる黒い影に投げつける。

 肉に鋭いものが刺さる音が、刹那の瞬間にほぼ同時に呻き声と共に聞こえてくる。

 この時、グルフは違和感を頭の中で覚える。

 

 ――おかしい……一人逃れたか?


 地に着地すると、長剣の鞘に手を掛け辺りに警戒した視線を流す。

 耳に神経を集中させるグルフ。

 しかし、布がはためく様な微かな音を捉えると、横っ飛びに地を蹴りその場を離脱する。

 彼がいた場所に上から、剣が突きたてられる。

 グルフはたたらを踏みながらも、そっちに体を向けると、赤い眼帯を間近に見る。


「終わりだ……」


 その声がしたのとほぼ同時に、鋭いものの先が腹に突き当てられる。

 

 ガキーーン!


 赤い眼帯の男が突き出した短剣は、確かにグラフに刺さるはずだった。

 だが、腕に伝わるはずだった肉を貫く感触は、硬い金属を擦る感覚が取って代わり、逆に、背中に鋭利なもので突き刺される痛みが走った。


「終わり? お前がな」


 呻きを上げながら、その場に崩れ落ちる赤い眼帯の男。

 右手に持つナイフが、雲が流れて月が顔を出すと、鈍い光を発している。

 その先に滑る赤い血。

 倒れこんだ男を見据えながら、周りを見渡すグルフ。

 他の山賊達は完全に息絶えているようだ。

 足元に倒れる赤い眼帯の男に視線を戻すと、まだ息があった。


「殺せ……」


 その男は体を震わせながら顔を上げると、そう呟いた。


「あぁ、殺せだと? 俺に命令するんじゃね」


 グルフがぶっきらぼうに男に言うと、


「ふ、分かった、このまま野垂れ死ぬよ……」


 眼帯の男はそう低く声を漏らし、頭を地につけ動かなくなった。

 グルフは剣をポケットから取り出した布で拭うと、一呼吸置いた。

 その男から金目のものを奪おうと、体を屈ませ、ズボンのポケットに手を入れると何か入っていたので、中からそれを取り出した。


「ふーん、いい財布持ってるじゃないか、山賊にはもったいねぇ、ん?」


 折りたたまれた財布の中身を覗いたグルフの目が留まる。

 金髪の女性の写真がビニールの子袋に入れられていた。

 その写真を目を細めて最初は眺めていたが、すぐに折りたたんでポケットにいれた。

 そして男に視線を降ろすと、その背中に右手の平を当てる。

 まだ心臓は動いているようだ。

 顔をしかめて、一度舌打ちをするグルフ。

 何を思ったか、男の傷口にある服の布をナイフで切り取り、傷口を顕にした。


「貸しだぜ」


 なにか怪しげな言葉を口ずさむ。

 すると、赤い炎が右手に宿ったかと思うと、ナイフの先をその炎で熱し、赤くなったその先を男の傷口に当てて焼いていく。

 小さく呻く赤い眼帯の男。

 一通り傷口を焼き終えると、男を馬に放り投げ自分も一緒に飛び乗った。

 馬はその突然の重さで嘶くと、グルフが馬の手綱を握り、舵を取り馬を走らせた。

 砂煙が漂う荒野を、蹄鉄が砂を叩く重い音が響き渡る。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ