グルフ・トライスキーの場合 その1
ふとシリアスなの書いてみたくなりました。短く纏めれればと思いますが、どうなるやら。
時間が空いたら、ゆっくり書いていこうと思います。
久しぶり〜
またかる〜く臣下のものども苛めてみるか
誰にする?
グルフ・トライスキー
カウボーイの格好をした美形のおにーさん、魔法と長剣を使い、武術にも精通している。
無法者20代、殺しもする。
20代の美形彼女あり、彼女思い。腕に自信あり、心臓がたまにドキドキする(精神的なもの)。薬常備。
強気、動物には優しい。 多少甘いとこあり。
なにをさせる?
この世のどこかにある天空城にのりこみ、そこにあるエメラルドの王様を盗んでくる。
期限はなし、彼女人質にとってを命令聞かせる。
こんなもんかー、言ってみよう!
「王宮の奴等め……」
グルフはバーボンを食らいながら、薄暗い石壁が覆う自室で愚痴を零していた。
四角い窓から見える三日月がグルフを嘲笑うかのように、天空から一際明るい光を放ちグルフを見下ろしていた。
「レソシア……」
〜〜〜
グルフの最愛の女性レソシア。
燃えるような赤い髪が肩まで伸びた、快活で美形の女性。
グルフは彼女を何よりも大事にしていた。町の真ん中で心臓が苦しくなり倒れていたグルフに、優しく慈悲深い表情を向けて、親身に介抱をしてくれた女。
グルフの容貌はとても近寄り難く、町の者は彼が倒れていても、見てみぬ振りをして通り過ぎていくだけなのに、彼女はグルフに声を掛け、肩を貸し、自宅にまで連れて行ってベッドを貸し与えた。
そんな彼女といつしか、恋に堕ち、同棲生活まで始めた矢先の事件。
突然、王宮の宮廷魔道師数人が家に踏み入ってきた。
グルフは最初に幾多の魔法を浴びせられ、地に伏す。
その間にも連れて行かれる彼女。
悲鳴にも近い自分を呼ぶ声と彼女の後姿が、最後に目に焼きついていた。
魔道師達はそんなグルフを魔法で押さえつけながら、彼にこう言った。
「彼女を助けたければ、この世界のどこかにある、天空城に眠るエメラルドの王様、『エンジェルキラー』を奪って王宮にもってこい、そうすれば彼女は返してやろう。しかし王宮に牙を向いたり、その役目を果たさない場合、彼女は死ぬ事になる、よく覚えておくんだな」
グルフの髪の毛を引っ張り上げ、魔道師は自分の顔の辺りまで持ってきて、一方的に彼にそう告げた。
彼はそれに唾を吐いて返した。
〜〜〜〜
「むぅ……」
グルフは低く唸ると、バーボンの瓶を壁に投げつけた。
粉々に飛び散る破片。
それに驚いたネズミ達が壁の端に出来た、小さな穴から一斉に逃げていく。
酔いどれ、ふらふらとした体を椅子から持ち上げると、グラフは立ち上がった。
棚に置いてあるアーミーバッグに、手榴弾を詰め込み、右肩に皮のベルトで固定された鞘に、地面に無造作に転がっていた長剣を差し込んだ。
腰に巻かれたベルトにも大きな銃の柄が覗いている。
薄緑のチョッキの裏にテーブルに置かれていた小ナイフを次々と差していく。
そこまでの作業を終えたグルフは、バッグを左肩に担ぎ、木の扉を開けて宵闇の中へと消えていく。
#
一片の光も差さない荒野を、月明かりだけを頼りに馬で移動するグルフ。
向かう先はこの辺では大きい方の部類に入る城下街、ソランシア。
ここでグルフは天空城の情報を集めるつもりだ。
順調に馬はそちらへ向っているはずだった。
――しかし……
「おい、そこのカウボーイの兄ちゃん、止まれ!」
見ると、5つの黒い影が周りを取り囲んでいた。
グルフはその影に視線を巡らせると、左右に首を振りながらため息をつく。
この手の山賊どもには、嫌気がさしていた。
散々グルフは似たようなのに襲われていて、返り討ちにしてきていた。
この辺のそういう輩には、既にグルフの強さが伝わっていて、もう襲ってくる奴等はモグリか、流れ者の山賊くらいだ。
取りあえず、暗がりのせいで、自分の事が見えてないのならと、
「俺の名はグルフ、この名を知るものあらば、一目散に逃げる事だな、今のうちなら追ってまで殺す事はしない」
グルフが山賊達に大きな声で言い放つと、せせら笑う声とその場で足踏む音、鞘と剣が擦れる音が賑やかに奏でられる。
「グルフだかなんだか知らないが、さっさと置くもの置いて、平謝りするした方が身のためだぜ」
「ふん、やはり流れ者か、なら……死ぬしかないようだな」
グルフの言葉を聞いた山賊どもが、笑いながらも殺気を漂わせる。
円状に彼を囲むと、鞘から剣を一斉に抜いた。
「馬鹿な兄ちゃんだ」
赤い眼帯を右目につけた男が言った。
月の光に反射して赤く光るルビーが埋め込まれた眼帯を薄っすら捉える。
しかし、僅かな光しか差さないこの場所で、闇で取り得た情報はそれだけだ。
後は数人の黒い影と、金属音、男の汗臭い匂いのみ。
砂を靴の硬い底が擦る音が聞こえてくる。
次の瞬間――、四方から男達が襲ってきた。
「死ねや〜〜〜!」
その粗暴な声が間近まで迫る前に、上空高く舞うグルフ。
宙で体を捻らせ、下を見下ろすと影の配置を掴む。
そして、チョッキに差されたナイフを重ねるようにして、右手に集めると上空で体を回転させた反動で、下にいる黒い影に投げつける。
肉に鋭いものが刺さる音が、刹那の瞬間にほぼ同時に呻き声と共に聞こえてくる。
この時、グルフは違和感を頭の中で覚える。
――おかしい……一人逃れたか?
地に着地すると、長剣の鞘に手を掛け辺りに警戒した視線を流す。
耳に神経を集中させるグルフ。
しかし、布がはためく様な微かな音を捉えると、横っ飛びに地を蹴りその場を離脱する。
彼がいた場所に上から、剣が突きたてられる。
グルフはたたらを踏みながらも、そっちに体を向けると、赤い眼帯を間近に見る。
「終わりだ……」
その声がしたのとほぼ同時に、鋭いものの先が腹に突き当てられる。
ガキーーン!
赤い眼帯の男が突き出した短剣は、確かにグラフに刺さるはずだった。
だが、腕に伝わるはずだった肉を貫く感触は、硬い金属を擦る感覚が取って代わり、逆に、背中に鋭利なもので突き刺される痛みが走った。
「終わり? お前がな」
呻きを上げながら、その場に崩れ落ちる赤い眼帯の男。
右手に持つナイフが、雲が流れて月が顔を出すと、鈍い光を発している。
その先に滑る赤い血。
倒れこんだ男を見据えながら、周りを見渡すグルフ。
他の山賊達は完全に息絶えているようだ。
足元に倒れる赤い眼帯の男に視線を戻すと、まだ息があった。
「殺せ……」
その男は体を震わせながら顔を上げると、そう呟いた。
「あぁ、殺せだと? 俺に命令するんじゃね」
グルフがぶっきらぼうに男に言うと、
「ふ、分かった、このまま野垂れ死ぬよ……」
眼帯の男はそう低く声を漏らし、頭を地につけ動かなくなった。
グルフは剣をポケットから取り出した布で拭うと、一呼吸置いた。
その男から金目のものを奪おうと、体を屈ませ、ズボンのポケットに手を入れると何か入っていたので、中からそれを取り出した。
「ふーん、いい財布持ってるじゃないか、山賊にはもったいねぇ、ん?」
折りたたまれた財布の中身を覗いたグルフの目が留まる。
金髪の女性の写真がビニールの子袋に入れられていた。
その写真を目を細めて最初は眺めていたが、すぐに折りたたんでポケットにいれた。
そして男に視線を降ろすと、その背中に右手の平を当てる。
まだ心臓は動いているようだ。
顔をしかめて、一度舌打ちをするグルフ。
何を思ったか、男の傷口にある服の布をナイフで切り取り、傷口を顕にした。
「貸しだぜ」
なにか怪しげな言葉を口ずさむ。
すると、赤い炎が右手に宿ったかと思うと、ナイフの先をその炎で熱し、赤くなったその先を男の傷口に当てて焼いていく。
小さく呻く赤い眼帯の男。
一通り傷口を焼き終えると、男を馬に放り投げ自分も一緒に飛び乗った。
馬はその突然の重さで嘶くと、グルフが馬の手綱を握り、舵を取り馬を走らせた。
砂煙が漂う荒野を、蹄鉄が砂を叩く重い音が響き渡る。