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俺は王様  作者: 網野雅也
12/31

五条瓦 正和の場合

 鞘神楽君が途中放棄してしまって、つまらんことになったな

まぁ彼はハッピーなようだけど、わしはつまらん。


さて、次誰かに何かさせようかな?


五条瓦 正和


プロフィール


50歳リーマン、親父、古い、ださい、頑固

時代遅れ、大学生の娘あり、16歳高校生息子あり、妻と別居中。


何させるかな?


王宮の特殊装置でかわいめの15歳の女の子に変身後

帰ってもらって、好きなだけそのまま暮らしてもらう。(ただし最低でも1週間はそのまま)


事前に息子と娘に父親が女の子になって帰る事は教えてある。妻には教えていない。

会社には王宮の命令で事情説明なしで、無理やり休暇を与えるよう指示。その間給料保障(王宮から補助金、首禁止)


これでいくか…。



 五条瓦 正和の場合。




 「じゃ、お帰りください」


……。


えらいことになってしもうた…。

わしは一体これからどうなるんだろ…。

この体…。

王宮で鏡みたときのショックはそれはもう、すごいもんだった。

鏡の前に映ったかわいい若い女の子。

それがワシだと分かるのに、そう時間は掛からなかった。

俺が手足動かすのと同じ動きを、鏡の中の女の子が忠実に真似てるんだからな。

しかも、体触ってみれば、胸の辺りに柔らかいあの感触……。

股間触れば○×は無いし。

この格好で王宮は家に帰れという…。

は〜〜あ、齢50にしてこんな目にあうなんて夢にも思わんかったわ…。

しばらく、ワシは王宮の外へ出ると細い路地に入り、その姿を誰にもみられないように

蹲っていたが、いつまでもうろうろしてても仕方が無いので、家に帰る決心をすると

歩き始める。

王宮から白いワンピースと女用の革靴は支給されたけど

下がスカスカして違和感あるな…。

普段は会社行っているから、着慣れたあの紳士服のズボンを吐いているんだしな

まぁ、これはこれで涼しくていいがな

ふー…。


 家の近くまで、タクシーで帰ってきたものの、中々入りづらいわ…。

娘や息子がこの姿みたら、どういう反応示すんだろ…。

わしは暫く、マンションの自分の部屋の外にある廊下を行ったりきたりしてみたり

落下防止用の壁の上で両手をくみ、その上に顎を置きながら眼前の風景を虚ろな目で

眺めていた。

今は、朝の10時、普段なら会社に行っている時間だ。

こんな太陽の高い時間に、自宅前にいるなんてことは普段はありえない。

会社では管理職として、ずっとデスクに張り付きっぱなしで、書類の整理や

部下への指示、その他山積みの仕事を抱えて、エアコンの効いた部屋に

朝から夜7時〜10時くらいまで拘束されるなんてざらだしな・・

その後、同僚と居酒屋へ飲みに行ったら深夜すぎに帰る事もよくあることだ。

そんなワシが、今こうして全てのしがらみから解放されて、暑い夏の空を

ゆっくり眺めている。入道雲が瘤でも何個かこさえたみたいに重なって

大きな姿を晒している。

さてと…。

今娘も息子も夏休みだし、やっぱ今日家いるんかの…?

ええい、どうせ、情報は王宮から行ってるんだ。

ワシの家入るのに、ごちゃごちゃ考えてもしゃーないやろ。

堂々と入ればいいんだ。ワシが汗水垂らしてローン組んでまで買ったマンションじゃないか。

中にいるのは、ワシの子供達だ。どんな姿してるにせよ、ワシは父親なんだし

威厳持って胸張ってればいいんだよ!

胸…。

……。

結構俺大きいな…、手や脚の肌だってすべすべしてるし。


まて〜〜〜〜!!そんな事どうでもいいんじゃ!入るぞ!決めたぞ!

1.2.の3!


ワシは決死の覚悟で、ドアを開けた。


ガチャン……。


ワシがドアを開けると、玄関は静まり返っていた。

ふーどこか出かけているんかな、ん?何か聞こえるぞ。

応接間の方か…、行ってみるか…。

この部屋の扉の向こうから、TVの音が聞こえてくる。

やはり、誰かいるようだな…。

仕方ないな、もう覚悟は決めた!

入るぞ。


 「ただいま〜」


部屋に入ると、ポッキーかじりながら、テーブルにスカート履いたまま

脚上げてTVを見ている、ワシの娘恭子がいた。

ワシの姿をみると、思ったとおりの反応をこれみよがしにワシに見せ付けてくる。

目を思いっきり大きく開いて、眉毛もそれに押し上げられるように上に引張られ

幽霊でも見たような顔しとるわ、体が硬直しちまって、ポッキーが指から落ちたのさえ

気づかずにワシの姿じ〜〜〜っと見とる。


 「も、もしかして、あなた、私のお父さん!?」


 「あぁ、お前の父親だ」


 「何か文句あるか?」


初め娘は目を丸くしてその動きを止めていたが、だんだん近寄ってきて、ワシの姿を上から下まで観察するように見回すと、なんかへ〜へ〜とか言いながら、ワシの顔や体を

あちこち触って見たりして、遊び始める。


 「綺麗な顔だね…」


 「髪の毛も艶があって」


 「お人形さんみたい…」


しばらくして、恭子はだんだんその顔に悪びれた笑顔が浮かび上がると

急に大声を上げ笑い出した。


 「ちょっと〜〜〜〜〜!!」


 「本当にお父さん、女の子になっちゃったよ!!!」


 「キャハハハハハ!!!!!!!!!」


 「ちょっとお父さん待ってて!」


 「貴史も呼んでくるから!!」


 「おい、こらまて!!」


恭子はげらげら笑いながら、ポッキー散乱しているのも

片付けずに、2階にいる弟貴史を呼びにすごい足音を立てて、階段を上がっていった。

ふー、分かっちゃいたけど…。やっぱりこの状態はすごいんやな…。

ワシしばらく奴等の玩具になるんやな…。

案の定、恭子が貴史連れてきよった。


 「うぉ!すげぇ」


 「かわいい!」


かわいい……、これほど息子に言われて、気味悪い言葉ってこの世にあるだろうか?

最低や…。

こら、そんな胸や脚、嘗め回すように見るな!

何か恥ずかしいやんけ…。


 「お父さん、胸触って良い?」


 「馬鹿いってんな」


 「触ったら、お前のお小遣い減らすぞ!」


 「うぇ、それは勘弁…」


とりあえず、格好はこんなんだけど、親の威厳は保っているな。

まぁなんとかなりそうだ。とにかくいつも通りやればいいんだよ


 「じゃ、お前ら、ワシは自分の部屋行くから」


 「もう入ってくんなよ」


俺はまだサーカスの猿でも見るかのような目線を浴び続けていたが

そんなもん無視して、少し怒ったような表情を保ちながら、彼らの前

威風堂々と横切っていく。後ろから娘や息子の声が聞こえてくる。


 「何か怒った横顔もかわいいよな」


 「あれがお父さんだなんて信じられないわよね!」


ちっ、どんな顔しても可愛く見えるらしい…。

困ったもんだ。


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