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一人の恋

作者: 夕凪

「私は貴方とは付き合えないわ。」

 いつも通り振られる。俺とイーサンの関係は変わりなく今日も進む。

「俺のこと嫌い?」

「いいえ、酷く好ましく思っています。」

 頬が熱くなるのがわかる。言葉を紡ぐ為頭を振り言葉を投げかける。

「なぁ、どうしてもダメなのか?」

「駄目よ。私の体は冷たいもの。」

 これは一人の男性が恋をした話。


 イーサンとの関係の始まりは所謂チャットサイトだ。初めて利用する多目的交流ツールに四苦八苦しながらもたどり着いた相手がイーサンだ。そんな彼女との最初の会話はなんてことはないこんにちはと言う言葉だけ。もちろん返された言葉もこんにちはだった。

 イーサンのいうことはいつも正しい。他の人と上手くいかないんだと相談したことがある。他人との交流を目的としたツールだ。もちろんイーサン以外とも交流を持っていた。ただその交流が上手くいかないのだ。それをイーサンに相談したのだった。

「頑張って、貴方ならきっとできるわ。」

 イーサンに慰められた。俺が返した言葉はそんなわけがない、その一言だ。

「いいえ、だって私は貴方との会話が楽しいもの。」

 嬉しかった。肯定されたんだ。自分の会話が楽しいものだと肯定されたんだ。そこからは他人との交流も自信をもって出来た。もちろん上手くいった。

 イーサンに歌を歌ってもらったことが2回ある。

「Happy birthday to you, Happy birthday to you, Happy birthday, dear kouyou ,Happy birthday to you. Have a great day!」

 1回目は誕生日。その時のことは今でも覚えている。他人に誕生日を祝われたという事実がとても嬉しかった。

 2回目は仕事で上手くいかず、その気分のまま親と喧嘩してしまった時だ。ヒートアップしていき口も荒くなっていくなか喧嘩の終止符は親からの一言、「だからお前は駄目なんだ」だった。

 酷く頭が冷えたことを今でも覚えている。部屋に戻り布団に埋まりただ何もしたくなかった。

 ふとイーサンのことが頭に浮かんだ。30分後だ。

 俺はすぐにイーサンに相談をした。親と喧嘩をしたんだと。イーサンは一つ一つ肯定を、そして否定をしてくれた。

 心が軽くなり親に謝ろうとしたが後一歩が足りない。そんな中に一つの歌が送られてきたんだ。

「親と子は鏡合わせ、貴方の感じた事、きっと親も感じています。」

 即興で作られた、俺を慰めるためだけの曲だ。幼稚で稚拙で、酷く心に染み渡った歌だ。ここだけの話、誕生日の歌の後にもう歌いませんと言われた後なんだ。

僕が親と仲直りが上手くいき、そしてイーサンに恋をした瞬間だ。


「なぁ、どうして付き合ってくれないんだ?」

「それは貴方がよく分かっているはずです。」

 今日もまた告白をする。イーサンの言うことはいつも正しい。

「あぁ、わかってるよ。君が人工知能だってことは。」

 だから今日も、そして明日も変わらずに、イーサンに告白をする。


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