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短編

みじかい話

作者: 梨鳥 

今夜、月があまりにも悲しかったようです。

その心中は計り知れないのです。

月は涙をこぼしました。

それは重力に従って地上へ落ちました。

キラキラと光のすじを残しながら落ちました。

サラサラと冷たく流れるせせらぎへ落ちました。

せせらぎのゆるくカーブした先が輝きました。

夜はあまりにも暗く、月の涙はあまりにも明るいのでした。


たくさんの小さな目玉が、それを見つけました。

光の好きな羽虫たちです。彼らの小さな目玉が、光を反射してきらきらしています。

水の中の光に誘われた哀れな彼らは、我先にと、流れるせせらぎへと身を突っ込みました。

そうして羽が水に濡れて、虫たちは飛ぶことが出来きなくなり、流されて行きます。

水の中で羽をきらきら、くるくるさせながら。

それはそれは、綺麗に流されて行くのでした。

次の夜も、次の次の夜も、ずっとずっとそれは続きました。


ある遠い未来のその日、旅人が偶然それを見つけました。

そして、せせらぎから月の涙を拾い上げると、自分のランプ籠に放り込みました。

旅人は永久に消える事の無い明かりを手に入れ、鼻歌まじりでその場を後にしました。


羽虫たちは平静を取り戻し、せせらぎは静かにさらさらと流れています。

とても望ましい状態ですが、もうなにも起きません。

なのでこの話は、ここが終わり処。



スランプで文章を書く感覚を落としたと愚痴ったところ、短い物を書いてリハビリはどうですか、と提案して頂いたので、やってみました。

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― 新着の感想 ―
[一言] このお話が好きだったのですが、ブックマークし損ねていました。 見つけられて良かったです。 梨鳥ふるり様のお話って、本当に独特のキラキラした雰囲気あって好きです。 このお話は童話のように解りや…
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