見つけた重傷者
アランを見送ってから、本格的にユージーンを探し始めた。
このところの忙しさもあってしばらく弁当屋はお休み中だけど、早いとこ解決して弁当屋を再開したいものだ。人間の友人も出来たことだし(私は友人と思っている)、いつか弁当を食べに来てくれないかと期待している。
アランには、私が嗜好品として弁当を販売していることは教えてある。弁当が嗜好品なこととか、弁当一つで魔石一個とか(人間には相当高いらしい)、何よりドラゴンが弁当を作るのかとか色々驚いていたけれど。
弁当を売る発想もなかったらしい。弁当は自分や家族が出掛ける際に家で作って外で食べるものという認識で、買って食べたり、色んな味を楽しむものという考えはないようだった。
これはいいことを聞いた。人間に売ることがあったら、独占とは言わずともなかなかいい商売になるかも知れない。うしし。
「ドラゴン、ミツケタ。シニカケノニンゲンガイタ。タブン、アランガイッテイタマモノハンターダ」
「ほんとっ!?場所を教えて!」
「コイツハタベテイイカ?」
「だめ!また弁当作ってあげるから!」
「ナラバイイガ。ニクシカミトメナイカラナ」
ちゃっかりリクエストまでされた。
それにしても、人間と秤にかけて弁当に軍配が上がるとか、魔物たちもなかなかグルメになったものだ。
魔物に連れられて行ってみると、生きているのが不思議な程の深手を負った人間がいた。
まだ意識はあるものの朦朧としているし、少し腐敗臭もしている。怪我した部分が壊死しているのかも知れない。
「大変!早く治療しなきゃ!」
「……ド、ラゴン?ドラゴンに食べ……ラれて、シぬの…か」
「喋っちゃだめ!今助けるからね!」
……左足はもうだめだ。血を大量に流しているし、何より壊死している。仕方ない、切断してしまおう。医療行為だけど、他に出来る人はいないしここにおいておいても死ぬだけだ。アメーバモドキと戦った際に内蔵も多少傷めているようだけど、これはまだ治療できる範囲。
ユージーンと思われるこの人間の命の時間は刻一刻と迫っている。ここからは時間との勝負だ。やるしかない。まったく、この世界の人間は私に優しくない!乙女にこんなことさせるなんて。