フードの中身は
襲われている現場に着いてみればなかなか苦戦しているようで、アランの言うとおり一人だけに集中攻撃をして、あとの人間は片手間にいなす、という感じだった。
「手助けしに来たよ!護衛さんたち、ちょっとどいて!」
魔法を使うつもりなので、護衛に当たったら困る。
「助かるっ!誰だか知らないがっ……」
振り返るなりフリーズした護衛さんたち。確かにドラゴンが来たらびっくりするよねー!でも味方ですから、一応ね。
「ドラゴンヨ。ワタシタチハ、コイツノウゴキヲセイゲンスル。ソノアイダニコオリマホウヲウチコメ」
「はいよ!準備はいーい?」
「イツデモ」
フリーズしたままの護衛さんたちは放っておいて、魔物たちと作戦を決める。
魔物たちが俊敏な動きと魔法を活かして敵の行動範囲と触手の伸縮範囲を制限する。その間に、位置が固定された敵に私が氷魔法を撃ち込んで氷づけにして、オブジェの完成と言うわけだ。全然可愛くも綺麗でもないけど。
「あまねく魔に連なる者たちよ。我に力を示せ!」
ちょっと格好良く呪文っぽいものを唱えてみた。本当は呪文なんかいらないし、氷魔法を使いたい、って心の中で念じるだけでいいんだけど。
ギャラリーいるし、ちょっとは格好つけたいじゃん?
「ドラゴンヨ……。ナニヲアソンデオルノダ」
あ、今魔物たちに呆れられた。はいはい、真剣にやりますってば。
アメーバモドキの触手を避けながら、魔物たちが炎の魔法や氷の魔法を撃ち込んで、触手の動きを制限する。凍った触手は崩れ落ち、燃えた部分は黒く焦げてまだ火がくすぶったまま。
再生しないなら、十分勝ち目はある!
「いっくよー!それっ!」
私が氷魔法を放ったと同時に、触手がこちらへ伸びてきて、凍りながらもまだ伸びてくる。ピキ、ピキ、という音と共に触手の伸びが鈍くなり、やっと止まったら私の腹の5センチ程手前まで来ていた。あっぶなっ!
「アソンデイルカラダ。キヲヌクデナイ」
「ごめんね」
護衛たちは未だ訳が分からないのか、こちらを凝視している。
「済んだよー。怪我はない?」
「あ、あぁ。俺たちは無事だ。助かった、ありがとう……」
お礼を言えるいい子だね!助けた甲斐があるってもんだ。
「あなたは大丈夫?」
商人の方へ振り向くと、ハラリと落ちたフードの中身は……美少女でした!
「はい、ありがとう御座いました。あなたのお陰で無事です」
うぅ……。うらやましくなんてないやい!何故こんな美少女に生まれ変われなかったんだ、なんて思ってないんだから!